2018.8.5 乃木坂46 真夏の全国ツアー2018 in ヤンマースタジアム長居

ライブレポ

 TOKYO IDOL FESTIVALに4度足を運び、その間に様々なワンマンライブにも足を運んだことで2010年代に活躍する女性アイドルグループは大体見てきたつもりですが、これまで唯一見る機会なかったビッグネームが乃木坂46。2012年のCDデビューから既にそれ相応の地位を築いていますが、ここ数年で更に足固めを強化しています。公式ライバルと位置づけられたAKB48の人気は完全に追い越して、いまやその全盛期に迫るあるいは同等のポジションつまりは国民的アイドルグループ。ようやく見る機会が出来たのでレビューします。

 乃木坂46全体の全国ツアーは毎年夏に開催されています。関西はこれまで大阪城ホールが恒例でしたが、今年は初の野外・ヤンマースタジアム長居での開催。キャパはこれまでの3倍くらいになりますが、2日公演のうち初日は早い段階で完売、足を運んだ2日目も完売まではいかなくとも9割9分くらいの入りでほぼ満員。

 アクセスは大阪城ホールの方が間違いなく優れているので、開演前と終演後は暑さも加わって大変な人口密度の高さ。会場最寄りの駅には開演1時間ほど前に着きましたが、それでも余裕は全くありません。コンビニや自販機のペットボトルは売切多数、トイレも長蛇の列かつ会場周辺は数もやや少なめ。

 一応男女比は男中心で全体の8割~9割くらい、男子トイレは会場内に仮設トイレまで作られていました。それでも女性の数自体は、他の女性アイドルグループのライブと比べて明らかに多いです。

 最寄りの駅は大阪メトロ御堂筋線の長居駅とJRの鶴ヶ丘駅・長居駅。JRの阪和線は普通しか止まらない上に、この日は快速の臨時停車もなし。したがって大阪中心部への往来は、やはり地下鉄の方が圧倒的にスムーズでした。

 開演前からファンのテンションは非常に高め。至るところから、本来ならメンバーの名前が叫ばれるものですがなぜか”ヤッホー!”ばかりが連発。確かに『乃木坂工事中』では、ごくまれにヤッホー選手権が行われてはいますが…。ステージ形状は意外とセットに関して言えば凝ってなく、十字状に花道が作られる形。メインが1つにサブ3つ、中心に円形状のものが1つ。私の席はステージ正面から全体の演出を見渡せるスタンド上段。ビジョンからも遠く、メンバー個別の表情を見るには少し辛い位置でした。屋根の下だったので暑さに関してはかなり軽減されましたが、スピーカーから距離がある上に柱に近いこともあって音はあまり良くなかったです。これは会場というより位置の問題と考えて良さそうです。

 開演時間17時を迎えて、メンバーが影アナとなって注意事項などをアナウンス。本日の担当はさゆりんごこと松村沙友理と、3期生の伊藤理々杏。さゆりんごはご当地大阪、りりあんは彼女を慕っている3期生。その仲の良さは、イチャイチャを通り越して新たな愛が生まれそうなほど。ヲタとしては歓声が自然に挙がるのも無理ないような、そんな雰囲気でした。

 「Overture」に乗せてビジョンにはオープニング映像、乃木坂駅を通る千代田線の車両がテーマとなっているようです。メインステージの左を見渡すと、大掛かりな千代田線の車両セットが。どうやら最初に登場するメンバーはそこに乗車しているようです。窓から観客席などへ手を振りながら「裸足でsummer」でライブスタート。2番に入る辺りで、向正面のサブステージに到着した電車からメンバーが降りて走り回ります。登場したのは15人、白石西野飛鳥松村高山若月など選抜常連メンバー。ですので続く楽曲も「夏のFree&Easy」「命は美しい」とシングル表題曲が続きます。この2曲は西野七瀬がセンター、ですので関西出身ということを差し引いてもビジョンでアップに映る場面が多かったです。「夏のFree&Easy」はいきなりの大放水演出が炸裂、やはりこれだけ大規模なライブだと演出の幅も大きいです。

 入れ替わりに登場したのは白を基調とした衣装を身に着けたメンバー。ビジョンに映る顔を見る限り、間違いなく3期生メンバーのようです。楽曲も「三番目の風」「トキトキメキメキ」、3期生メインの楽曲2つ。その後に登場するのは、一言で言うとそれ以外のメンバー。所謂アンダー曲というもので、まずは鈴木絢音センターで「自惚れビーチ」。その後は斉藤優里センターの「13日の金曜日」、渡辺みり愛センターの「風船は生きている」。一般に乃木坂46のイメージと言えばやはり白石麻衣や西野七瀬、あるいは秋元真夏や高山一実辺りになるのだと思いますが、アンダーのステージを見るとファンになった場合彼女たちを応援する方が楽しめるのかもしれないと軽く想像。和田まあや、伊藤かりん、山崎怜奈辺りはかなり濃いキャラクターなので、アンダーに置いておくには色々勿体無いようにも思いますが、ステージに立つアイドルとして考えるとまた別なのかもしれないと感じたり…。

 でもやっぱり「シンクロニシティ」のパフォーマンスを見ると、センターに立つ白石麻衣のオーラは別格。ビジョンだけでなく、遠くから肉眼で見る小さな姿からもそれを強く感じました。このPVでは純白ですが、ライブで身に着けていたのは赤いドレス。それが余計にカッコ良さを演出していたのかもしれません。

 

 9曲終わって最初のMC。キャプテンの桜井玲香が何人かのメンバーに話を振ります。次の日に誕生日を迎える中田花奈は8月6日で24歳、”23歳最後の私を見てください”とのことでした。あとはさゆりんごが大阪弁で、”もうかりまっか!””ぼちぼちでんな!”という具合にコール&レスポンス。そしてここから今回のツアー特別企画、新曲「ジコチューで行こう!」に因んでメンバーが勝手に1曲プロデュースするというコーナーに入ります。各会場ごとに色々変わるようなので、全部見るとなるとそれこそツアー全参が必須条件。でもおそらく全会場足を運んでいる方々も結構いるのではないかと思いますが。

 まずは井上小百合プロデュースで「自分のこと」。昨年末に卒業した中元日芽香のソロ曲で、初収録は今年1月発売のアンダーベストアルバム『僕だけの君~Under Super Best~』。ですのでこの曲はライブで披露される機会が過去なかったようです。さゆにゃんはひめたんと大親友、既に卒業した伊藤万理華とともに3人で温泉旅行に行く仲。後のMCによると、前日も普通にさゆにゃんはひめたんとメールしていたらしいですが、さすがにここで歌うことは言えなかったそうです。決して上手ではないのですが、緊張しながらも気持ちを込めてまっすぐに歌うさゆにゃんの姿が非常に美しかったです。

 続いては新内眞衣プロデュースで「大人への近道」。新内とともに登場したのは山下美月・中村麗乃・伊藤理々杏・佐藤楓。中央ステージに登場する5人は赤ちゃんの姿。まあまあシュールです。最年長の新内がこの格好をしてるのもさることながら、佐藤楓が棒読みで”バブー”と泣くのがそれに拍車をかけていました。曲が始まると小学生姿に早替え。リコーダーやらハーモニカやらを持つ他の4人は3期生なのでまだ良いのですが、番組でBBAとテロップで幾度となく表記されている新内さんがその格好で歌うのは無理があり過ぎます。もっとも後半はナチュラルに兼業しているOLの衣装でしたが。ただ曲の内容とはしっかり合っていて、彼女が持つコメディエンヌな才能も実にバッチリ。

 そして松村沙友理プロデュースの「命の真実」。彼女の演出能力は鬼才とも言えるレベルで、ネットで放送された乃木坂46時間テレビでは全身タイツで何人か引き連れてピグミンの姿になって踊る企画をやっていました。というわけでここで登場するのはさゆりんご軍団(松村・寺田蘭世・伊藤かりん・佐々木琴子)。さゆりんごがお姫様、蘭世さんが王子様、琴子とかりんが家来になるのでしょうか。元々は生田絵梨花が歌うミュージカル曲ですが、このステージでは歌詞を変えてます。内容は見事なくらいのお米賛歌。さゆりんごにツッコミを入れる蘭世と、ステージでひたすら白米を食べるかりんと琴子。ノーマルな発想では絶対に出てこない、大変カオスなステージでした。

 もう一つは3期生の大園桃子プロデュース「やさしさとは」。彼女が尊敬する先輩のひとり・齋藤飛鳥とともに一緒に歌いました。与田祐希とともに早くから選抜に選ばれている彼女、MCはやや苦手な印象もありましたがかわいさとステージ映えはやはりとびっきり。天性のものを感じさせます。コーナー終了後のMCは伊藤かりんが進行。今回のジコチュー企画をプロデュースした3人に話を振っていました。かりんちゃんは将棋番組のMCでもお馴染みで、全くよどみのないテンポの良い喋り。乃木坂46は個性が光るメンバーの宝庫ですが、個人的に一番過小評価されているのは彼女ではないかと思っています。

 中盤に入って演奏されるのはシングルのカップリング曲。聴かせる楽曲「僕だけの光」「失いたくないから」、入れ替わって3期生の曲「僕の衝動」「未来の答え」と続きます。ファン以外に馴染みがやや薄い楽曲ですが、乃木坂くらいの規模だとビジョンにタイトルと歌詞テロップが表示されます。3期生に目をやると、大園与田に次いで目立っていたのは山下美月でしょうか。大体の曲で”超絶かわいい○○!”といった具合にAメロでコールが入るので、非常に分かりやすいです。

 その2人がメインステージに立つ選抜メンバーに加わる形で「逃げ水」の演奏に入ります。その後はシングル表題曲がメインの進行。「制服のマネキン」「インフルエンサー」「君の名は希望」「いつかできるから今日できる」と続きます。この辺りになると演出も大掛かり、「インフルエンサー」では炎の他に幾度となく大音量の特効演出が入ります。アリーナの前方にいるとビックリして心臓が持たなくなりそうな勢いです。キレのあるダンス、卒業や欠員の穴埋めでしょうか先ほどようやく初選抜となった鈴木絢音の姿も見えました。直後のMC、髪型を変えた堀未央奈が彼女のことを喋っていました。2期生の中で地方組、上京して頑張っているのはこの2人だけ。絆の深さは各所で語られていますが、あらためてそれを確認。楽曲に戻ると、「君の名は希望」はあらためて生で聴くと本当に良い曲です。単純な歌詞の良さもそうですが、乃木坂46が歌う必然性を強く感じさせる内容でもありますね。

 間もなく発売されるシングル「ジコチューで行こう!」、これに収録されるカップリング曲を披露。高校生クイズのタイアップがついた「あんなに君が好きだったのに」はセンター・齋藤飛鳥の歌い出しが聴きどころ。「三角の空き地」はアンダーのメンバーがメイン。センターの中田花奈が先頭に立って、他のメンバーを引き連れるように移動するシーンが印象的でした。「アンダー」でセンターに立っているのは、先日体調不良による活動休止から復帰したばかりの北野日奈子。彼女も笑顔がとびっきりかわいく、個性もリアクションの大きさが印象的な女の子。選抜メンバーも勿論魅力的な人ばかりですが、そうでないメンバーも更に光を当てて欲しい人が乃木坂46には本当に多く存在します。

 ライブも大詰め、最大級の盛り上がりを予告するテロップがビジョンに出て「ガールズルール」。ライブで演奏される機会も非常に多いこの曲では、10m以上の勢いで噴き上がる水が何度もアリーナ中に放たれます。水分補給を通り越してずぶ濡れになりそうな勢いです。「ロマンスのスタート」「ハウス!」ではトラックが登場して、会場中を手を振りながら周ります。これもまた大会場大人数ならでは活きる演出。ステージ同士を繋ぐ花道にもメンバーがいっぱい、アリーナやスタンド前方だと誰かしらハッキリ顔を認識出来たのではないかと思われます。

 ラストは齋藤飛鳥が感想を交えたMC。自らセンターを務める新曲「ジコチューで行こう!」を、なぜか謎掛けで曲紹介。”乃木坂46とかけて、ストライカーと解きます””(観客)その心は!””ジコチューで行こう!”。うーん、こういうちょっと不完全な所がとても彼女らしくて、魅力的です。

 曲調的にはあまり乃木坂らしくないという声もありますが、あらためて生で見るとすごく良い歌詞です。メッセージ性が大変活きているとともに、この歌詞で彼女をセンターにしたことも意味を感じると言いますか。デビュー当時から乃木坂46の楽曲は評価が高い印象でしたが、ここ数年は更に良い曲が増えているような気がします。秋元康が力を入れていること、良い作曲家に恵まれていることもあるとは思いますが、これもまた乃木坂46のメンバーが魅力的であるからこそ。そんなことを、ダイナミックなパフォーマンスを見ながら考えました。24~25歳くらいのメンバーが増えてきた今、メンバーの卒業も今後少しずつ出てくるだろうとは思いますが、まだ19歳の齋藤飛鳥や若い3期生メンバーがステージで躍動しているのを見ると、このグループはまだまだ安泰だろうと感じるところであります。

 

 アンコール、今回の大阪公演に参加できなかった生田絵梨花のメッセージが流れます。調べによると、ミュージカル『モーツァルト!』の名古屋・御園座公演と完全に重なってしまったみたいで…。事前録音っぽい雰囲気でしたが、話を聞くと”大阪行きたかったなー…行っちゃおうかなー”…というわけでなんとサプライズで登場。向こうの公演が終わってすぐ移動したのでしょうか、凄い体力です。曲は「ダンケシェーン」、サイリウムは一面真っ黄色。生の歌い出しは、やはり他のメンバーと比べて群を抜く上手さでした。そして生田絵梨花と言えばこれまで数多くのミラクルを起こした御仁。この日もあろうことか最後の歌い出しを間違えて若月のツッコミが入り、次の演奏曲が「そんなバカな…」という大変よく出来た繋がり。最後の最後に短い時間で全てをかっさらっていった生田絵梨花は、やはり本物のスターでした。

 乃木坂46のライブ、ラストはいつもこの曲。デビュー当時から存在する「乃木坂の詩」


 グループの団結力を強く感じさせる歌詞、サイリウムはユニットの公式カラーである紫に統一されてます。開演時には青くて光が照っていた空も気がつけば夜空、ビジョンの明かりも消して紫の光で埋め尽くされてる光景はスタンド上段から見ると本当に美しくて圧巻。つまるところ、乃木坂46のライブはこの壮観なラストを見るために足を運ぶようなものと言っても過言ではないような。ここまで美しい締めの形が毎回決まっているアーティストは、多分ほとんどいないような気がします。

 ものすごく楽しかった、と本当に心から思えるライブでした。いや正確に言うとライブやコンサートというよりショーと言った方がいいかもしれません。楽曲の良さは保証されていますが大体が1コーラス半の短縮ver.、各個人の歌声そのものはやはりそんなに印象的なものではないので、普通のミュージシャン、あるいは4846系ハロプロ以外の女性アイドルグループのライブと比較しても毛色は全く違うと考えて良いと思います。また沢山の魅力的なメンバーが存在する乃木坂46はそれだけで深く楽しめる要素が本当に満載で、個人に注目すると乃木坂の中でより爪痕を残すにはどうすればいいかと自然に考えられるようになりますね。もっともそれは個々人の、特に卒業後の進路を考えるとなるとやや難しい部分でもあったりはしますが…。ただ乃木坂46というグループのライブで考えると、これだけの人気にまで登り詰めたのは本当に必然という内容に仕上がっていました。まとめサイトの数も大変多く、レポを書く分の情報収集には事欠きません。ですがその分ファンの属性も他のアイドルと比べて良くも悪くもバリエーション豊富で、メンバーは大きなステージに立つための苦労をほとんどする必要がない代わりに別の苦労も大変多そうな…。

 夏に行くとなるとロックフェスもあったり他のワンマンに行く可能性があったりで、また乃木坂46がフェスに出る可能性はかなり低い上に必然性もほとんどないので次にステージを見る機会を作れるのはいつになるか分からないですが、機会が出来ればまた是非見に行きたいとあらためて思うところです。

 

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