2018.8.12 YOKO OGINOME LIVE 2018 RETURN THE HERO!! in umeda TRAD

ライブレポ

 昨年「ダンシング・ヒーロー」が思わぬ形で再び脚光を浴びた荻野目洋子。ただそれより前にもいつの間にか盆踊りの定番になっていたり、バブリーダンスで話題になる少し前にも平野ノラが出囃子で使ったりするなど流れは作られていたのかもしれません。「ダンシング・ヒーロー」以外にも1980年代後半~1990年代まで多くのヒット曲が存在する荻野目ちゃん、個人的に言うと実は一連のヒットしていた曲は知っていて好きでもあったり。機会があれば一度見てみたい歌手の一人でしたが、今がまさに一番のチャンス。というわけで足を運んで来ました。

 umeda TRAD、足を運ぶのはまだumeda AKASOから改名前の2016年・Negiccoワンマン以来2年半ぶり。過去3度足を運んだ時は春で、気候的にちょうど心地良い季節でしたが今回は夏真っ盛り。狭い空間に何百人かの人が集まった状況なので、入る前の時点でものすごい汗をかいてしまいました。客層は30代~50代辺りの男性中心、おそらく30年近く応援し続けている人も多くいたのではないかと思われます。実際MCで聞いた限り、初めてワンマンに来た人はあまりいないようです。ただグッズ装着率は見る限り相当低く見えたのも気になりました。もしかすると20~30年前は、アーティストTシャツを装着する文化が今ほど根付いていなかったのかもしれません。

 会場内は前方3列に椅子が用意されていました。17時開演ですが、ほぼ満員に近い人の多さなので入場がやや遅れている様子。時間になると一拍ごとに観客の手拍子が入ります。開演前の手拍子はPerfumeが恒例ですが、それ以外で遭遇した記憶は多くありません。いずれにしてもオーディエンスは、現役の女性アイドルグループのファン同様あるいはそれ以上に熱い方々が多いようです。本来の開演時間後でも流れるSE、1曲終わってまた次の曲がかかると同時に”えー!”という声も挙がりました。

 10分ほど押して公演スタート。最初に流れるのは、昨年の下半期に何度も聴いた記憶があるアレンジの「ダンシング・ヒーロー」。早々にキラーチューン投下で一気に会場のテンションが最高潮に達します。登場した荻野目ちゃんはなんと、ライブで披露するのは初めてらしい浴衣姿。これも会場が沸き上がる大きな要因だったでしょうか。終盤でワンフレーズずつ歌うシーンではコール&レスポンスも起こっています。続く曲は1987年に一番多くのレコード・CDを売り上げたアルバム『NON-STOPPER』収録の「Melting Point」。この曲も海外の楽曲のカバーみたいです。この時期は「ヴィーナス」「ハートは戻らない」などユーロビートのカバーが多くヒットしていましたが、おそらくそのキッカケも「ダンシング・ヒーロー」だったのではないかと思うわけです。

 最初のMC。まずは衣装が浴衣であることの理由を話します。なんでも先日愛知県・一宮の盆踊りにゲスト出演した時に大好評だったみたいで、大阪の皆さんだけに特別に披露という形になったとかなんとか。


 浴衣姿に関しては後ろの方だとよく見えません。後方の客からは”しゃがんで!”と大きな声でリクエストが挙がりますが、なかなかそういうわけにもいかず。というわけでブログとTwitterでその姿をアップすると約束。


 あとは昨年の「ダンシング・ヒーロー」再ブレイクに大変驚いていたことを話すとともに、一度やってみたかったということで小さなくす玉が登場。第59回日本レコード大賞特別賞と、第32回日本ゴールドディスク大賞特別賞を一緒にこの場で祝いました。

 続いては懐かしいヒット曲メドレーを、なんと打楽器の演奏をしながら。後ろからだとドラムかと思いましたが、そこまで大掛かりなものではなかったようです。それでもこういった形で叩いて演奏する光景は、テレビだとまず見られないパフォーマンスだったのではないでしょうか。楽曲は「湘南ハートブレイク」「モーニング・コール」「湾岸太陽族」「Dance Beatは夜明けまで」「さよならの果実たち」。「モーニング・コール」はアルバム曲なので個人的には初聴でしたが、それ以外はいずれも1980年代後半にヒットしたお馴染みのナンバー。ライブならではのステージを展開していました。

 引き続き懐かしいヒット曲ということで、1992年の「STEAL YOUR LOVE」、そしてお馴染み「六本木純情派」。「六本木~」のBメロ、今だったらケチャ的な手拍子が入りそうなリズムですが流石にここではそんなことなく普通に。サビの”六本木!”ではオーディエンス含めての大合唱でした。「ジャングル・ダンス」はシングル「スターダスト・ドリーム」のB面ですが、『NHKみんなのうた』で採用された楽曲。ライブではキラーチューンのようで、こちらも盛り上がっていました。

 中盤は新しい曲「キミとタイムマシン」「from my Garden」。「from my Garden」ではスクリーンが降りてきて楽曲が再生され、終盤でスイカのような衣装に着替えた荻野目さんが歌いながら登場します。その後はMCを挟んで洋楽カバーメドレー。「CHA-CHA-CHA」「Havana」、「CHA-CHA-CHA」は石井明美が歌ったVer.とはまた違う日本語詞でした。後半はダンスナンバー中心、「瞳にI Love You」「NON STOP DANCER」「コーヒー・ルンバ」と続きます。MCでは3人いる娘のうち2人が受験生、大変な時期だと話していましたが、華麗なステージと歌声はとても49歳には見えない若さです。

 ラスト前にもう一度「ダンシング・ヒーロー」を演奏。今度はみんなで踊ってというリクエスト、サビの振り付けも懇切丁寧に指導していました。盆踊りというわけではないですが、会場全体がダンスフロアとして一体になるステージ。曲前にはバブル期の携帯電話で平野ノラから連絡が入るという小ネタも。ラストは名バラード「ユア マイ ライフ」。渾身の歌声で、歌い上げていました。

 アンコールは「昨日より輝いて」をエレキギターの演奏つきで。非常にカッコ良く決まっていますが、途中歌詞が思いっきり飛んでしまいました。ライブでこういうハプニングは彼女の場合結構あるらしく、この日も2度か3度歌詞が飛んだり入りを間違えたり。歌い終わった後は少し反省の色を見せていました。2曲目は新曲の予定…だったようですが同事務所所属の「U.S.A.」が大ヒットしたことでOKが出ていないとかなんとか。リクエストに応えて「U.S.A.」を一節踊る…なんてこともありましたが演奏はこの日のために、弾き語りで「想い出がいっぱい」。歌手としてデビューする前、アニメ『みゆき』ヒロイン役の声優として活動していた時はまだ中学生。本人にとってもまさしく想い出がいっぱい、という曲なのだそうです。ラストは「夏のステージライト」。1980年代から、彼女のライブではアンコールでお馴染みの楽曲で美しく締めました。

 1980年代にデビューしてヒットした女性アイドルは多数いますが、その中でおそらく現時点で一番歌唱力高いのは彼女ではないかと感じました。声はさすがに若い頃と少し変わっていますがキーに変わりは全くなく、むしろ声量はテレビで見たアイドル時代よりも優れているかもしれません。出産育児で15年近くの活動休止期間を挟んだことを考えると、驚異的とも言えます。加えてギターも弾ける、パーカッションも叩ける、勿論踊れる。言わば思いっきり現役のアーティストです。こうやって30年経ってもみんなの前で歌えるのは奇跡だと話していましたが、同時に”昔のアイドル”ではなく”現役の歌手”として活動したいとも話していました。その結晶が「ダンシング・ヒーロー」のリバイバルヒットに繋がったと感じたのは、言うまでもありません。

 考えてみると、80年代デビュー組のアイドルは結婚離婚を繰り返して波乱万丈だったりの人とか、女優業メインに転身したりとか、結婚後完全に表舞台から去ったりとか、バラエティーに出ては当時の裏話を披露したりとか若くして亡くなった方もいたり…。この人の場合、結婚の時期自体は早くなかったですが子どもにも恵まれて家庭もどうやら円満そうで。当時活躍した女性アイドルの中でも一番理想的な人生を送っているのかもしれません。家庭との両立、それゆえに仕事は歌メインで、良い意味で他の仕事をする余裕はなさそうな気がします。ツアーも全国津々浦々はやはり難しく、今回は東京と大阪のみでしたが年末には1990年代以来となるディナーショーの開催が発表されました。育児も落ち着きつつある時期、もしかすると何年か後にまたライブを精力的に行い、あわよくば「ダンシング・ヒーロー」だけでなく新曲もヒットすることがあるかもしれません。少なくとも彼女の歌手としての活躍は、ここで終わりでないことは確かでしょう。次に見る機会がいつになるかは分かりませんが、あらためて今後の活躍を期待したいです。

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