2018.7.8 NANA MIZUKI LIVE ISLAND 2018 in 大阪城ホール

ライブレポ

 長年に渡り足を運びたいと強く熱望していた水樹奈々のワンマンライブ、今回当ブログの読者およびtwitterでフォローして頂いている方の縁あってようやくやっと初参戦になりました。

 名前を聞くようになったのが2005年「ETERNAL BLAZE」、意識して聴くようになったのが2007年「SECRET AMBITION」、アルバムレビューは2012年12月『ROCKBOUND NEIGHBORS』以来毎作品。大体の場合フェスのステージを見てからワンマンに行く形になることが多いのですが、アニサマ以外基本フェスにあまり出ない彼女の場合ワンマンが初参戦。というわけでかなり楽しみにしていたライブですが、噂通りあるいはそれ以上に素晴らしい内容のライブでした。ではどうぞ。

 先週のLiSAに引き続き今週も大阪城ホール。さすがに紅白歌合戦に連続出場していた頃と比べて多少人気が落ち着いたとは言え、多くの人で賑わっています。会場はしっかりスタンド席の立見も出るといった具合で上々の入り。ただ先週と比べると多少周りの年齢層が高い気はしました。それでも20代~30代中心に50代くらいまで幅広く、男性ばかりが目立っているわけでもありません。客層に大きな偏りはなさそうです。セットはKブロック付近にメイン、そこから中央にある島状のステージまで花道が作られているというよくある形。バックは夏をテーマにした島国風、そしてバンドセットに目をやるとドラムセットが3台もあります。いずれにしても、予算はかなりありそうな印象でした。

 オープニングは映像演出から始まります。舞台は南国、沖縄県でしょうかそれともグアムかサイパン辺りまで行ってるのでしょうか。奈々さんがレジャーを楽しんでいるようです。海の上を水上バイクでかっ飛ばしています。なかなか簡単にできることではないような気もしますが。

 映像終盤でバンドメンバーが続々入場、島ステージにあった幕が降りて奈々さん登場、会場大歓声。青いペンライトに囲まれて「STARTING NOW!」を、先ほど乗っていたモデルの水上バイクに乗りながら歌っています。”NM7”という記号が書かれていることから推測するに、おそらく今ツアーのために特注で作られたものと思われます。で、これが登場するのは1曲目だけで、曲が終わるとセリにて舞台下に退場。そのまま次の曲「Angel Blossom」に移ります。舞台上見渡すとバンドだけでなくダンサーも8人登場して、奈々さんも一緒に踊りながら歌っています。サビではしっかりとした振付があるようで、オーディエンスも一緒に手を動かしています。あまりテレビのパフォーマンスでは踊る印象がなかったのでやや意外でしたが、後から考えると序の口も序の口。2014年アルバム『SUPERNAL LIBERTY』収録の「Fun Fun★People」を経て、1回目のMC。この日はなんとか雨もあがっていましたが1週間ほどの天気は生憎の状況、大雨になった2016年甲子園球場ライブ以来雨に取り憑かれているのかなと言いつつ、原因は声優界で雨男と呼ばれる約2名が大阪入りしてるからではないかという話。ちなみにこの日大阪にいた声優陣は以下の面々らしいです。


 ちなみにこれは大雨の前日、浪川さんが来た8日はパワーが相殺されて晴れたということ。こんな感じで奈々さんのMCは直々同業者の名前が出てくるようです。おそらくこれはほとんどの声優で共通ではないかと思いますが。更にオープニングで1曲だけ登場した水上バイクも再び登場。直にパパッと免許を取って自ら運転したということを喋っていました。インストラクターにはスジが良いと褒められたのだとか。

 ライブは続いて2曲、「Happy Dive」「セツナキャパシティー」。持ち歌が非常に多くなっている彼女はライブのたびにレア曲を演奏していて、2007年シングル「MASSIVE WONDERS」カップリングの「Happy Dive」は今ツアーで10年ぶり披露のようでした。ここまで演奏中心に聴いていましたが、「セツナキャパシティー」では奈々さんの歌に着目、やはりものすごく上手いです。高音もそうですがやはり低音~中音は他に類を見ない安定度だとあらためて確認。言葉もほぼ間違いなく聞き取れて、耳に馴染んでない曲でもしっかり頭に入ります。天性の声質も含めて考えると、まさしくボーカリストの理想形と呼んで差し支えありません。

 2曲終わったところで、バックバンドの紹介に入ります。cherry boysという名前がつけられていますが、わざわざオリジナルソングまで作られています。Beach Boysをイメージした夏らしいテイストは今ツアーのために作られたのでしょうか。各人ごとにガッツリ映像まで作られていて、力入りまくっています。

 メンバーはギター2人(市川祥治中村修司)、ベース(坂本竜太・進行も担当)、ドラム2人(渡辺豊松永明日斗)、ドラム&パーカッション(福長雅夫)、キーボード&マニピュレーター(大平勉)、サックス(藤陵雅裕)、ヴァイオリン(門脇大輔)といった面々。むろんそれぞれにトム君、アニキ他のニックネームがあります。ドラムの松永さんはいつも参加している方の息子だそうです。あと2名ほど母親が見に来ているようで、わざわざ関係者席にスポットが用意されていました。

 時間にして10分~15分くらいでしょうか、今まで見たワンマンの中でもかなりの長さです。生バンド態勢で全国ツアーを行っているのは2002年からのようですが、その当時からずっと演奏している方もかなりいらっしゃる様子。冒頭の歌詞によると平均年齢は55歳、相当なベテランばかりが集まっています。したがって演奏に関しては全く文句なしの上手さ。メンバー同士あるいは奈々さんとのやり取りも極めて軽妙、毎年のツアーでは色々な意味で欠かせない存在になっているようです。各人へのコールの量も半端なく多く、まさしくファミリーといったところ。

 その間に奈々さんは何をしているかと言うと、裏で衣装を替えているわけです。赤系の服から白いドレスになって歌うのは「囚われのbabel」、5月に配信リリースされた新曲「BLUE ROSE」。再びのMCは先ほどのバンド紹介他についてなど、その後にアコースティックコーナーが設けられているという紹介。こちらの選曲は日替わりで、今回は2002年アルバム『MAGIC ATTRACTION』収録の「deep sea」を演奏。普段と異なる編曲は演奏も3人に抑えられ、それぞれの音と歌声を堪能するには十二分の時間帯。良い曲です。

 その次は長年声と主題歌を担当している『魔法少女リリカルなのは』シリーズの話を少しして「SECRET AMBITION」。2007年StrikerSシリーズのOPテーマです。ここも選曲は日替わりのようで、前日演奏されたのは2010年の「PHANTOM MINDS」でした。昨年の劇場版シリーズ挿入歌「Invisible Heat」を経て再びバックメンバー紹介コーナー、今度はダンスメンバーのようです。

 ベースの坂本竜太がDJさかりゅうに扮してダンサー8人を次々紹介。こちらはteam YO-DAという名前がつけられています。若々しい方ばかりかと言われると意外とそうでもないようで、結婚している方もおられます。お酒が何より楽しみという方もいらっしゃるようで…。ダンスはやはりプロフェッショナルだけあって素晴らしい動きでした。

 cherry boys同様、こちらのメンバーにも個別に大きな声援が挙がります。彼女たちのコーナーが終わった後にまた早替えして奈々さん登場。ハンズフリーのマイクで、「PARTY! PARTY!」「Gimmick Game」をかなり本格的にダンサーと一緒に踊ります。更に言うと口パクでもどうやらなさそうです。ダンサー紹介だけでなく、そのコーナー自体も毎回のツアー恒例のようですが、ワンマンライブに行かないとなかなか見れない一面のような気がします。ものすごく激しい振付というわけではないのですが、2曲も踊るとなるとかなり体力消費するような気がするのですが…。

 歌い終わった後の奈々さんは全く疲れを見せないどころか息もほとんどあがっていません。年齢も加味して考えると、とんでもない体力です。ついでに”♪エイサイハラマスコイ~”というよく分からない踊りも直後に披露。


 これは話題となったアニメ『ポプテピピック』第11話にてポプ子を演じた時に披露したもの。流行るかな?というセリフもアニメからの流用です。ちなみにこの回のオープニングはこれをひたすらリミックスして踊るという内容でした。制作風景はやはり普通のアニメと全く違う型破りだったようで、一緒に声を担当した大の仲良し・能登麻美子と最初にしていた雑談が録音されていたり、台本は決まっているところ以外ほぼアドリブと表記されていたり。興味深い話を展開していました。MC終了後は「エゴアイディール」「夏恋模様」を披露。「夏恋模様」は聴かせるバラード、さすがにこういった曲だと複数ドラムは若干過剰気味にも感じました。

 2曲終わって再び映像コーナー。水上バイクをかっ飛ばした先は無人島みたいな所で、そこでガタイの良い外国人2人にジェスチャーゲームをすれば先に進めるという謎展開。ヤドカリのジェスチャーを伝えるのに四苦八苦している奈々さんがツボでした。無数に散らばる青い光…というわけで次に歌うのは「アオイイロ」。これをハンググライダーのようなセットを使って飛びながら歌っています。宙吊りになって歌う人は一時期の紅白歌合戦で何人かいましたが、上空から地面に向かって歌う態勢を目にしたのは初めてです。これを特に音程もブレることなく普通に歌うのは只事ではありません。相当しっかりした芯が通っている歌声と腹筋が必要です。こういったステージも毎回のワンマン恒例のようで、過去には東京ドームでホウキに乗って歌ったこともあるようです。直後のMCでは自ら”飛ぶ声優”と称するくらいで…。宙吊り演出は調べるとジャニーズ、あるいはエイベックス女性ソロの大物が取り入れてはいるみたいですが。

 「Happy Go☆Round!」はコールもしやすいタオル曲。夏ツアーは今年が3年ぶりですが、その時もセトリに入っていました。この時期定番と言えるこの曲は2012年『ROCKBOUND NEIGHBORS』収録。Youtubeにも2013年西武ドーム公演のステージがアップされています。

 続いてこれまでの彼女のライブでブッチギリ演奏機会が多い「ETERNAL BLAZE」。今回はステージ近くにあるスタンド2列目という極めて良席でしたが、炎の演出が直に伝わって大変熱かったです。13年も前の曲、アーティストによってはキー半音下げが発生するほど前になっていますが、今のところそんな気配は微塵も感じさせません。相当音楽活動・ライブに向けて日々研鑽・鍛錬していることは間違いなさそうです。

 何年も聴いていると奈々”様”と言う必要がある程に大迫力超難度の曲が多くあることがよく分かります。後半に盛り上がる曲立て続けというのはほとんどのアーティストで共通ですが、彼女の場合それが「NEXT ARCADIA」「Exterminate」になるわけです。「NEXT ARCADIA」はものすごいリズム感を要する曲で素人にはまず歌えないナンバーですが、オーディエンスも鍛えられているのかしっかりコールで反応しています。「Exterminate」に至っては言葉も出ません。あんな迫力のあるバスドラムの音は初めて聴きました。ラストは「BRIGHT STREAM」のカップリング曲「FEARLESS HERO」。ラストの曲前にカッコ良く挨拶しようとしますが、彼女が大の苦手としている虫が飛んできて狼狽しまくるハプニング。それも含めて名場面でした。

 アンコールは”ナナ!ナナ!”コール。あまり声は揃っていませんが、cherry boysが入場してペンライトで煽ると揃えてコールするという展開。これもまあお約束なのでしょうか。再び登場して歌うのは「Synchrogazer」。ゴンドラに乗って会場を一周するという演出。この曲もまた素人だと青筋立てて歌わないといけないような超難度のナンバーのはずですが、満面の笑顔で手を振りながら余裕の表情で歌っています。確かに6年前のシングル曲なので歌い慣れてはいるでしょうけど…。cherry boysの面々もフル稼働で演奏しています。コーラスなど、多少生じゃない部分もあるとは思いますが。

 「君よ叫べ」を経て、次に演奏されるのは9月発売のEPにも収録される新曲「Birth of Legend」。この曲もまた7/8のリズムがイントロだけでなく歌が始まってもしばらく続くなかなかに難しい曲。この曲はスマホ向けアプリ『交響性ミリオンアーサー』主題歌、他にもなか卯のCMソングなどが収録されるようです。なお今回の協賛企業はJOYSOUNDとなか卯でした。

 ラストは紅白歌合戦でも歌われたことのある「POP MASTER」。奈々さんだけでなくギターやベースなど弦楽器系のメンバーも一斉に中央からメインの通路に集まって盛り上がります。その後メンバー全員で挨拶、ラストは奈々さんがステージ中を回って手を振って笑顔で挨拶してエンディング。結構な時間を取って、ライブ終了後の余韻を多くのファンと一緒に楽しんでいました。

 というわけであらためて足を運ぶと、やはり凄い歌手だなということを強く実感しました。歌唱力に関してはどの要素から見ても弱点らしい弱点はなく、せいぜいビブラートが好み分かれるかどうかという程度でしょうか。MCも長年ラジオ番組『水樹奈々 スマイル・ギャング』(文化放送では最長寿番組にまでなっているようです)のパーソナリティーをやっているので喋りも面白さも実に安定。何かすると決まって観客から”もう一回”コールが起こるのがサービス精神旺盛と言いますか、芸人みたいな状態になっていると言いますか(もっともほとんどの声優はラジオ番組で芸人みたいなことになるようですが)。初めて見ると素で驚くような演出も多々ありましたが、慣れていても新しい試みはその時々によって入れることはあるようで、そういう意味では退屈させないライブにも仕上がっているようです。

 そもそも「ETERNAL BLAZE」で初めてオリコン2位になったのが13年前、「深愛」で紅白歌合戦に初出場したのも9年前になります。声優で音楽をやっている方々は多々いますが、μ’sやアイマス・うたプリにIDOLiSH7といった2次元派生系のグループを別にして考えると、この10年で声優歌手として彼女の域に達した人は誰もいません。藍井エイルやLiSAといった歌手専業の方がようやく何とか追いつきそうなくらいでしょうか。長い期間人気を保っていて中堅からベテランの域に達しても満足度高いパフォーマンスを実現できる、おそらく10年後20年後くらいでも当たり前のようにこれくらいの規模でライブをやっているような気がします。是非近いうちに、奈々さんのライブにはまた行きたいです。

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