2019.3.7 Perfume 7th Tour 2018 「FUTURE POP」代替公演 in 大阪城ホール

ライブレポ

 2018年8月15日リリースのアルバム『FUTURE POP』を引っさげて、全国のアリーナ会場でツアーを開催したPerfume。個人的には2012年のJPNツアー以来毎回足を運ぶようにしていて、違う会場で複数回見ることも恒例で今回もその予定でしたが、あいにく9月の大阪城ホール公演は台風で延期、11月の北海道に至ってはまさかの体調不良で足を運ぶことが出来ないという有様。当然いまや当日券を簡単に購入できるクラスではなく、年末の横浜アリーナ公演もスケジュール的に参戦不可能だったので、ようやく年が明けて3月の代替公演でやっと見ることが出来た形。もっともブログで一般公開できるのは、どちらにしてもこの公演終了後だったかもしれないですが。


 NTTdocomoとの連携もここ1年近くで恒例となり、上の広告動画にもYoutubeで開くたびにかなりの頻度で遭遇しています。いまや『GAME』「ポリリズム」以前どころか、5, 6年前くらいと比較しても想像できなかったほどに大きな存在となっているPerfume。今回も完全に別格のスケールでした。

最新の映像技術とダイナミックな踊りに驚嘆させられた序盤

 記録的な台風で公演が中止になったのは9月30日、半年も前のこと。中止になった公演の振替は3月7日のみですが、前日の6日は純粋に追加公演が行われました。予定では国内ツアーを既に終え、2月からは海外ツアーも始まって既に上海・台湾でのステージも回っています。この2日間で追加された大阪城ホールでのライブは、いわば関西でPerfumeを見ることができなかったファンへのプレゼントのようなもの。開演前の会場の熱気が極めて高いのは彼女たちのワンマンでは日常風景ですが、この日はいつも以上に高まっているような気がしました。開演予定時刻の19時が少し過ぎ、あらためて諸注意アナウンスが始まった瞬間に湧き上がる大きな歓声が、それを物語っています。

 まずはデビューからの足跡を振り返る映像からスタート。2004年から行われた全てのワンマンライブとアルバムのデータが映し出されます。やはり2008年以降から、ステージの数は爆発的に増えています。おそらくツアーでは2018年までだったと思いますが、今公演については2019年まではっきりと。「Start-Up」から始まって、「Future Pop」「エレクトロ・ワールド」で始まるセトリは、大晦日のNHK紅白歌合戦を通して全国津々浦々に中継された横浜アリーナのステージと同様。というより元々今回のツアーからしてそうなので、実際には今ツアーのオープニングがそのまま紅白にフィットした形。「エレクトロ・ワールド」のリリースは2006年6月、13年の歳月が流れています。これまでのワンマンやフェスでも見た機会は相当多かったはずですが、スクリーンを駆使した映像演出と重々しく地面に響く音は確実に今までと違いました。心なしかゆっくりに聴こえるテンポが、スケールが極めて大きく成長していることを証明しています。

 直後のMCでかしゆかが話していたことは、NHKホールで昨年3月に行われたReframeのステージからまだまだ大きな可能性がいっぱいあると感じたこと。それぞれ短い演奏時間で繰り出される「If you wanna」「超来輪」「FUSION」「Tiny Baby」「Let Me Know」は、いずれも一曲辺りの濃度が際立っていました。「超来輪」では楽曲とリンクさせた手の動きが、さらに映像単位で表現されています。土台のステージが曲に合わせて大規模に動くのはいつも通りですが、バックで特に作り込まれたセットは特になし。ただいくつかある大きなスクリーンに映し出される映像の作り込みは相当なもので、もしかするとスタッフやバイトを総動員して作られるセット以上にかけられた総労働時間は長いかもしれません。1秒の映像を曲とダンスに合わせるためにどれだけのコストを要するのか、想像を絶するほどにプロフェッショナルな仕事であることは間違いないはずです。曲に合わせて湧き上がるオーディエンスの多さがPerfumeのライブの特徴ですが、ここでは手を動かしつつもそのステージに驚嘆していた人が大半だったのではないでしょうか。曲間に入ることの多い声援が、場面によっては全くなかったことがそれを物語っています。

ステージとの大きな落差、同じ時間の掛け方とは思えないMC

 今までにないほどの凄さを序盤からおおいに見せつけたPerfumeですが、「のっちです」「かしゆかです」「あ~ちゃんです」「3人揃ってPerfumeです」の挨拶はそのまま。そこから間髪入れず半年近く待っていたオーディエンスに深々と挨拶する場面もそのまま。3人がそれぞれの言葉で、それぞれ感謝の気持ちを話していました。振替公演であらためて人を集めることの難しさを脱出ゲームに例えるのっちの独特性も、やはりそのままでした。そんなのっちは、ライブDVDは本編ではなく副音声から見る派。他の2人が普通本編から見るよね?などと話す光景に「あっ、そう」と一蹴する彼女の扱いは、やはり何年経っても変わりません。

 3人の挨拶の後は、かしゆか→のっち→あ~ちゃんの順で1人ずつメンバーが登場。半年の間に全員が30代になったと話すメンバーはやはり時間の経ち方が早くなったこと、そして3人の仲が更に良くなったことを話します。「みそじー!」とかしゆかがかわいくはしゃぐとともに、喋りがますます増えたと同時に内容がどんどん薄くなっていることを、「アレ」という言葉をやたら使うトークで証明していました。

 今日来てるお客さんに半年で変化があった人も聞いてみます。様々な声が挙がりますが、やはり拾われたのは結婚した人や子どもが産まれた人。特に後者の男性は本来の公演予定日に産まれたことで、ものすごくいじられていました。石川からライブのために身重の奥さんを残して大阪に向かい、知らせを受けてすぐに帰ったのだそうです。「ライブ中止になって良かったじゃん!」、さらにお子さんの名前のくだりになって「あらし?」と勝手に名前を予想されたり、仕舞いには自分に名前をつける権限がなかったとの返しに「そりゃこんな時に大阪までアイドル見に行ってるんだから当然じゃわ」とあ~ちゃんの至極真っ当なツッコミ。見事に話のオチをつけていました。

 さらにトークは続いて、30代になった彼女たちの決意を話します。まずあ~ちゃんは「ピアスの穴を空けること」、これは既に実行済。もうひとつは「家を引っ越すこと」。次いでのっちは「背を伸ばさないこと」。どうやら彼女の家系は背の高い人ばかりだそうで、親族で集まるとむしろ低いくらいですがPerfumeの3人で集まるとやや高め。バランスを崩さないように、母からは伸びるのは意識だと言われたとのことですが当然他の2人はツッコミ入れつつ大ウケ。のっちワールドは三十路になってからも健在のようです。かしゆかは「字を綺麗にすること」。20代のうちはかわいい文字と言われても30を越えるとそれは痛い、あ~ちゃん曰く特に「か」の字が酷いようです。右上の点をつける位置がおかしくて読めないと、体全体を使って解説していました。以前から気にしてはいたそうで、実際ボールペン字の講座まで申し込んだようですが一瞬で挫折したそうです。抱腹絶倒、話のテンポの良さや面白さはやはり以前と同様、変わりはなさそうです。

 最後は恒例チーム分け。オーディエンスを「ふ」チーム「り」チーム「か」チームに分けてコール&レスポンス、「え」で全員レスするとともに万歳三唱。開演してここまで約1時間、そのうち約30分をまるまるMCに費やしてます。

選曲と編曲の妙に唸る中盤戦

 「宝石の雨」からライブ再開。タイトルを意識したようなキラキラの映像が目に入ります。中央に設置されてるサブステージ、前半では演出の都合もあって出番なしでしたが、この曲でようやく初使用。メインのステージに戻って披露されるアカペラは、「Butterfly」の一節。アルバム『GAME』に収録されている楽曲は、先述のReframeでも披露されていましたが、セトリに入るのも日本では初武道館以来10年ぶり。3人のアカペラをこうやって聴けること自体が、まさしく新しい試み。冒頭以降のアレンジも当時と比べてバージョンアップしている印象で、新録として新たに配信があっても不思議ではなさそうです。曲の後半で衣装が変わり、スクリーンでは日付がカウントダウンされます。遡った先の日付は2011年11月2日。次に演奏される楽曲のシングルが発売された日です。

 その「スパイス」も、近年ステージで見た記憶がありません。相当久々に見た気がしましたが、あらためて調べると2012年サマソニ大阪以来。実際今ツアー以前に日本で披露されたのも5年ぶり。この曲に限っては、スクリーンの映像もなくひたすら3人の動きを見てもらう形でした。久々の選曲が続いた後は、近年の定番曲になりつつある「TOKYO GIRL」。高層ビルを模した映像とダンスに魅了されます。またまたJPNツアー以来久々の「575」を経て、『Future Pop』のラストを締める「Everyday」。定番曲でなく久々に演奏される楽曲が多く混じる挑戦的なブロックもまた、新しいPerfumeを再構築する過程として必要なステージだったのかもしれません。

 

PTAのコーナーも、ツアーごとにまだまだ成長発展中

 Perfumeのライブにおいて、もはや完全に無くてはならないPTAのコーナー。いつものように「男子!」「女子!」から入ってコールしてもらいますが、今回は職業を聞いています。内訳は、弁護士(数名)・医者(十数名ほど)・先生(そこそこ)・会社員(大半)・主婦(若干)といった具合。それぞれの職業に、あ~ちゃんがテンション高く感謝の意を述べます。一応会社員のところは、自分たちもアミューズ所属の会社員ですと話します。その後に続くのはおなじみ「はみがきじょうずかな」の一節。


 さて、この曲は長年好きでこうやって歌っていましたが、映像化する際はやはり著作権という大人の映像で毎回カットになるようです。ところが2019年に入ると、NHKから直々に許可を得て、亀田誠治さんの編曲のもと歌わせてもらえることになりました。というわけで今回、1コーラスまるまる振り付けをみんなに教示した上で一緒に踊ります。手の動きに足の動き、初めてやるにはやはりそこそこ長い上に難しく、最初の動きが繰り返される中盤辺りは「流れに任せる!」の一言。それでも普段からあ~ちゃんの動きに合わせて無茶ブリにもおおいに応える人の多いPerfumeのライブ、終わってみるとそこそこ動きも揃っていて3人とも大喜び。ちなみに今回のセットリストはツアー開始以降基本的に各会場共通ですが、PTAのコーナーに関して言うと前日とこの日の大阪公演が初披露。おそらく次のツアーでもこの流れが踏襲されるかと思いますが、チャットモンチーに作ってもらった新しい「はみがきのうた」の行方はどうなるでしょうか。そこは少し気になるところです。

アッパーなナンバーに、これまでのPerfumeらしさが詰まる

 終盤戦、PTA明けは過去にもその流れで演奏されることが多かった「FAKE IT」。曲に合わせてジャンプせずにはいられない曲ですが、振り返ると今回は会場が一体になってダンスフロアになる光景はここまで無かったような気がします。「エレクトロ・ワールド」の演奏も序盤ありましたが、どちらかと言うとその時は映像とダンスがリンクする演出が主体になっていたように思います。声が出るというより、息を飲むというような。「FLASH」を経て、「Party Maker」も歌詞に合わせて全員が手を挙げる一体系ナンバー。この2曲は過去振り返っても大体これくらいの曲順で、目の前のステージよりもひたすら一緒にテンション高く踊れて楽しかったという思い出の方が強いです。PTAのコーナーでさえも大きな変化を感じた今回のツアーにおいて、この部分がステージにおいて一番今までのPerfumeらしさを感じられる場面だったような気がします。

「天空」「無限未来」と、一番大切な部分がそのままであるという素晴らしさ

 ラスト2曲は「天空」と、間に3人の挨拶があって「無限未来」で締めるという流れ。字面にすると「天空」「無限未来」、ここまでスケールの大きな曲名の並びも滅多にありません。「Perfumeの未来は無限です!」と最後にあ~ちゃんが笑顔で話していましたが、その根拠は直前のMCにあったような気がします。

 今公演、振替公演が行われたこと自体もそうですが、そのために大事な一日を空けてくれたことに深く感謝する場面が幾度もありました。Perfumeに限らず、何年も人気を持続させているアーティストはほぼ全てライブでスタッフやファンへの感謝を忘れません。支えてくれるファンがいるから今の自分がステージに立たせてもらえる、その気持ちが自然に表れている印象ですが、とりわけPerfumeの3人は一番顕著にそれが出ているように思います。来てくれた全ての人に向けて深々と長い時間かけるお辞儀が証明しています。そしてその姿勢は、初めてロッキンで見た2008年以来ずっと変わりありません。

 海外のステージが多くなり、いまやiTunesチャートで20ヶ国1位になったり米国のフェス「コーチェラ・フェスティバル」にまで出演することになったりしていますが、それ故に日本が素晴らしいと感じることも増えたよう。今回のラストの挨拶、とりわけあ~ちゃんが顕著でしたが、日本大好き!との言葉がこれまで以上に耳に残りました。ただ先ほども書いた通り、ファンや関係各所への姿勢・取り組みという一番の長所がそのままであること。音楽的な変化、細かいところだとはみがきじょうずかなが長年かけて公式の許可を得た理由も結局はそこに帰結します。毎回のライブで思うことではありますが、ステージ上での変化が今まで以上に大きかった分、この「変わらないこと」の大切さが強調されていた気がしました。

 スクリーン一面を大空に見立てて、その中で歌っているように見せる「天空」のステージ。観客に笑顔で手を振ったり、曲中でお辞儀をしたり。異空間の中にある自然な表情がすごく出ていました。ラストの「無限未来」は、また再びツアーでアメリカに飛び立つ決意にも見えたのは気のせいでしょうか。アンコールはなしで約2時間のステージ、長くはない分これまで以上に濃密な内容はまた2019年に見たライブの中で強く印象に残るでしょう。次に見るライブでもまた新しく魅力的な、それでいて何ら変わりのないPerfumeらしいステージになることでしょう。日本ではこれまでにいなかった唯一無二の存在として、世界の中における日本を代表するアーティストととして。そのストーリーはまだまだ面白い展開を見せてくれそうです…。

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