昨日ちょうどNHKでスペシャル番組が放送されたということで、昨年11月にリリースされたこのアルバムについて書きます。

 収録された曲数は12、そのうち先行配信シングルは4曲。コロナ禍のステイホーム期間中で作られた作品で、録音は全て自宅スタジオ。番組のインタビューによると、全てのレコーディングを終えた感想は「楽しかった」、これは過去になかった経験だったそうです。

 1曲目の「1920」からユーミンらしさが溢れています。ちょうど100年前は自身の母親が生まれた年でもあるそうですが、スペイン風邪が大流行してアントワープ五輪が少ない観客の中行われた年でもあります。時代は大きく変われど本質的な部分は今も昔も変わらない、そんなメッセージが曲中に込められています。「ノートルダム」はフランス・パリの大聖堂、今思えば2019年4月の大火災が現状の世界を預言していたのかもしれません。そこからインスパイアされたと思われる歌詞は、激しい説得力を持って聴く人の胸を貫きます。

 テレビで歌う機会の多かった「知らないどうし」は今年10月に先行配信。”愛していた””孤独”という言葉、背景にこの1年の雰囲気があることは容易に想像できますが、かと言って単純なメッセージソングではなく、どの時代でも共通して聴ける曲を作る所がシンガーソングライター・ユーミンたる所以のような気もします。背景を知ることでよりカッコ良さが浮き彫りになっている、そんな楽曲でもあります。コロナ禍を受けての作品という中でラストの「深海の街」はそれ以前に配信された楽曲。これをタイトルにするのが、また今作の面白い部分ですね。

 全体的に聴いていて感じたのは、やはりこの世にいるからこその「生」。コロナ禍の今でしか作れないアルバムと本人はインタビューで語っていましたが、結果的には原点回帰に近い部分もあるような印象を持ちました。個人的に好きで聴いていたアルバム『OLIVE』『REINCARNATION』、サウンドはその2作品よりバリエーション豊富ですが、作風にはそれを彷彿とさせる部分がいくつもあります。あと”永遠”という単語とそれに近い意味の言葉が今作では特に印象的でした。

 シンガーソングライターの最大のメリットは、自分の人生で感じたことをそのまま楽曲で表現出来るということ。そしてユーミンが凄いのは、還暦を過ぎた今でも敏感にアンテナを受信して、アウトプット出来るということ。多少年齢を重ねて心境は変われど、芯が変わっていないことは過去作を含めて聴くと本当によく分かります。この人ほど、「老」という文字が似合わない人も珍しいです。そしてユーミン以前に、自身ほど売れている女性シンガーソングライターがほとんどいなかったことを考えると、今でも彼女はパイオニア的存在。素直に尊敬します。ユーミンを長い間聴いてこなかった人も、聴いたことない人にも是非聴いて欲しい、オススメのアルバムです。