今年は3月に学天即・奥田修二主催のアイドルイベント、6月にエレキコミック・やついいちろう主催のYATSUI FESTIVAL!といった具合で芸人主催のフェスに行く機会が出てきています。そこで満を持したかのように?2014年で一旦ファイナルを迎えた小藪千豊主催のKOYABU SONICが3年ぶりに復活。以前から思いもよらぬ豪華出演アーティストが話題になっていて、興味のある音楽フェスでしたがこれまでなかなか行く機会に恵まれず。そこで今回の開催、3日間のうち2日目のみではありますが足を運ぶことにしました。やついフェスやイナズマロックフェスなど、芸人が出演する音楽フェスは他にもありますが、その最初は2008年に第1回が開催されたKOYABU SONICではないかと思います。
空きっ腹に酒
大阪を拠点に活動しているロックバンド、今年で結成10周年を迎えます。今回このフェスに呼ばれた縁は、吉本新喜劇ィズが難波ロケッツで初ステージを踏んだ時の対バン相手だったからなのだそう。自分としては完全初見のバンド、出演者側からしてもインテックス大阪は初舞台。まだ朝の11時ということもあって、序盤はまだ会場が温まっていない状況だったでしょうか。ですがステージはかなり熱め。ミクスチャーとオルタナティヴを融合させたような、思いっきりロックな演奏を見せていました。
中盤のコール&レスポンス辺りから徐々に観客も応えはじめ、ラストでフリースタイルラップを披露する頃には完全に場を掌握。その様は実に痛快でカッコ良く。インテックス大阪を巨大なライブハウスにしたメンバーにとっては勿論のこと、ステージを拝見したオーディエンスにとっても忘れられない名場面になったのではないでしょうか。
tricot
このフェスではステージ間で小籔さんをはじめとする新喜劇メンバーがトークで場を繋げます。この日登場したのは松浦真也、金原早苗、今別府直之、爆乳三姉妹(服部ひでこ・森田まりこ・岡田直子)といった面々。今別府さん以外はラストに出演する吉本新喜劇ィズのメンバーです。横のステージではアーティストが音出し等のリハーサル、これは他のフェスだとなかなか見られない光景です。ただアーティスト・お笑いのステージだけでなくこういったフリートークまで楽しみたいとなると、外に出る隙が全くありません。これでも個人的にはトークの合間に3度外に出ましたが、食事は建物の目の前にある売店で丼モノを頼んだ程度。おかげでフードコートやミニステージなど、メイン以外に関してはほとんど分からないまま終わってしまいました。複数日参加ならもう少しゆっくり見たいところでしたが…。
さてメインステージ2番手はtricot。女性3人組ですが、サポートにドラムの男性が入っています。そのドラムと小籔さんは師事している先生が共通、またボーカル&ギターの中嶋イッキュウはBSスカパー!の番組『BAZOOKA!!!』で共演する間柄。この番組は時に地上波ではとてもじゃないけど出来ないことをやるようで、直近の11月6日OAはなんと『千眼美子の幸福のBAZOOKA!!!~全部、やっちゃうね~』たる企画。もっとも彼女は関西でお馴染みの年末特番『オールザッツ漫才』アシスタントを務めたこともあって、女優だけでなくバラエティ経験も豊富。あんなことがなければ地上波でも全然問題はないはずなのですが…。
話が大きく逸れました。tricotのライブを見るのは初めてですが、音は2015年のアルバム『A N D』である程度イメージ済。リズムの使い方と演奏に長けたバンドというイメージでしたが、ステージもまさにその印象でした。演奏されたのは6曲ほどでしょうか。いずれも流石の迫力で、実力あるバンドであることがよく分かる楽曲だったと思います。突き抜けて凄い楽曲の存在と、ボーカル・イッキュウさんの発音が更に良くなればもう向かう所敵なしといったところでしょうか。また見たいです。それにしてもインテックス大阪、3年前のRADIO CRAZYよりも音が良くなっているような印象あるのは気のせいでしょうか。
ネタブロック(1)
2組ライブが終わったところで、ステージはネタブロックに突入。最初に登場したのは、ABCお笑いグランプリ2017で優勝した霜降り明星。ボケ担当・せいやのモノマネを軸としたネタはなかなかの精度、個人的には桑田佳祐や武田鉄矢をマイナーな曲でモノマネするのがツボでした。武田鉄矢の時に歌っていたのは「スタートライン」だったでしょうか。桑田さんの方もサザンのファンなら多分分かるかもしれないですが…。
続いてはコロコロチキチキペッパーズ。2015年のキングオブコント王者。ボケ担当・ナダルのナダルリバースエボリューションや、KOCでもやってた卓球ネタなどを披露。一昨年は優勝直後に仕事激増したようですが、アメトークでナダルの本性が世に知られてからすっかり落ち着いたとか…。
藤崎マーケットはラララライ…ではなく相当細かい”おるおるモノマネ”の連発。例えば”ジョーシンのCMでよく見る阪神の選手のテンション”など。これは過去にオールザッツ漫才でも同じフォーマットでやっていたような記憶。安定して笑えます。
天竺鼠はいつ見てもボケ担当・川原さんの発想に脱帽。
このブロックラストのザ・健康ボーイズはまさしく質より量。それでも意味のないクイズの畳み掛けは大変面白かったです。あと八木さんは最近高橋さんよりこっちでの仕事の方が多いのだとか…。トークでは緊張すると膝が曲がらなくなるというエピソードも話していました。
フジファブリック
フジファブリックはもうフェスで何度も見ているバンド。初めて見たのは2008年RIJなので、まだ志村さんが健在の頃。今回見るのはPerfume FES~三人祭~以来。ちなみにそのPerfumeとは対バンという形で今年Zepp Osaka Baysideで共演しています。
したがって2年ぶりに見る形ですが、その間に見ている他のライブも相当数になっているのでそれ以上に久々に見た印象でした。山内総一郎がボーカルを担当するようになってもう随分経ちますが、久々に見るとここまでハッキリと良い声で歌うボーカルだったのかと実感。「夜明けのBEAT」から始まって、「カンヌの休日」ではギターを放り投げるように見えたなど今まで見た記憶がないくらいの大暴れ。コアファンによると、裏では結構バタバタしてたという推測もあるようですが…。
最初に見た2組で知っている曲がなかったので、「夜明けのBEAT」もそうですが「銀河」までやってくれるとこちらとしてはもう絶大な安心感。思わず口ずさんでしまいます。「LIFE」を経て早くもラスト、ただその曲が超のつく名曲「若者のすべて」。実を言うと自分が見てきた過去4回選曲された機会がなかったので、ものすごく嬉しい気持ちになりました。
志村さんの出身地である山梨県富士吉田市では、時期限定で年に何度かこの曲が夕方5時のチャイムで流れています。特にライブ中でそれに言及することはないとしても、聴く側としてはついつい思いを馳せてしまいます。ちなみに山内さんの出身は大阪。今でも小籔さんがビリジアンというコンビを組んでいた頃の番組『すんげー!Best10』を時々見てると、ライブ後のトークで話していました。
チャットモンチー
今回のチャットモンチーは”大阪支部”という括弧書きがついています。チャットと小籔さんの付き合いは長いようで、ドラムの元メンバー・高橋久美子が脱退した2011年以来。2012年のKOYABU SONICで、初めてチャットのバックで「シャングリラ」のドラムを叩いていますがそれ以降も時々ゲスト出演しているようです。かくいう私も2013年Zepp Nambaワンマンのアンコールで彼のドラム演奏を拝見してます。その時は「Last Love Letter」も叩いていました。昨年徳島で主催したこなそんフェスにも出演していたようですが、今回はステージの最初から最後まで小藪千豊・こやびんがドラムを担当。途中のMCでは、初めてドラム担当で出た時とは比較にならないくらい緊張していると話していました。
今回演奏された曲は、彼が好きで叩きたい楽曲をそのままセトリにした形。最初から「真夜中遊園地」を選ぶ部分に、本当にチャット好きであることがよく分かります。続いては「Last Love Letter」。素人目に見ても難しく・魅せ場も多いドラム演奏ですが、しっかり形にしてステージで披露できるだけの内容に仕上げています。これは間違いなく尋常でない量の練習を重ねないと出来ない芸当です。本当に凄いことです。
「バスロマンス」もまた個人的に大好きな曲。3人時代の、2009年のRIJで演奏されていましたが本気でその時のことを思い出しました。ラスト前のMCで”クミコンが降りてきた”と小籔さんが言ってましたが、あながち大げさではなかったかもしれません。流石に”霊”という言葉が出た時は2人して”生きてるから!”とツッコミを入れていましたが。「染まるよ」もまた懐かしい曲、これもドラムに限らないですが演奏で魅せる場面が満載です。あらためて凄い曲ばかり発表しているバンドだと驚嘆しました。ちなみにハシエリのボーカルも当時と変わらず、あるいはそれ以上のボーカル。迫力ある歌声もはっきりと聞き取れるフレージングも抜群、ただ見た目は2年前見た時と比べて確実に母親らしくなっています。
ラスト2曲はやはり定番、「風吹けば恋」と「シャングリラ」。いずれもドラムの第一音で始まる曲なので、こやびんがメンバー2人とアイコンタクト。これがたまらなく微笑ましかったです。総計6曲、まさしくコヤソニでしか見れないスペシャルアクトでした。そのうちワンマンでも出ずっぱりになるかもしれません、もっとも本人は”5年やってこの6曲がやっとですから”と話しているのでさすがに難しいとは思いますが…。新喜劇だけでなくテレビ出演も多数こなしている中なので、余計に価値は大きいです。
ホフディラン
ホフディランのステージを見るのは今回が初めてですが、1990年代後半のシングル曲はよく聴いていました。「恋はいつも幻のように」「欲望」辺りは今でも好きですが、ステージはその当時の楽曲「遠距離恋愛は続く」からスタート。渡辺さんの独特の声は20年近く経っても全く変わっていないようでした。その後は10月に出た新作アルバム『帰ってきたホフディラン』より、「僕のかわいい女の子」「恋は渋谷系」「夜を越えて」。資産家でもある?小宮山さんの声もやはり全く変化ありません。それどころか青春の恋を歌うピースフルな雰囲気も、当時と全然変わらずそのまま。すごくほっこり、かつ安心。知らない人が見たら名前はボブ・ディラン、見た目はコブクロみたいな印象もありますが。なおキャリアは言うまでもなくホフディランの方が長いです。
デビュー曲「スマイル」も彼らを知るキッカケになった楽曲だったので、非常に嬉しい選曲でした。ラストは「また逢う日まで」。良いステージでした。なおKOYABU SONICは第2回からずっと出演していて常連中の常連。そういえばやついさんの方にも毎年出ていたような…。音楽好きの芸人さんの好みは、案外共通しているものなのでしょうか。
レキシ
ここ1年、レキシさんを見る機会が非常に増加しています。昨年のMBSビクターロック祭り、CDJ、今年の大阪メトロックに神戸のワンマンツアー。どうせなら名古屋のPerfume FESや、10月に行われた大阪城西の丸庭園のワンマンにも行くべきだったのではないかとも思いましたが。ついでに言うと池ちゃんはNegiccoや私立恵比寿中学に曲を提供している上に演奏機会もそれぞれ非常に多いので、気がつけば現場に行くたびに彼が作った曲を聴いているような状況にまでなっています。今年はここまで20近い現場に行ってますが、レキシとNegiccoとエビ中を合わせると余裕で半分を超えてますからね…。相変わらずグッズ装着率は高く、開演前のアーティストグッズ売場を見るとやはり列は一番長め。今日も稲穂がものすごく売れているようです。
ステージは「KMTR645」からスタート。イルカのクラウドサーフも完全にお馴染みの光景ですが、今回やけに一箇所に集まるシーンが目立ちました。CDJではキュウソネコカミと共演していましたが、今回は出演日が違うので当然それはなし。ですがチャットモンチーは先ほど出てきました。というわけで「SHIKIBU」は阿波の踊り子とレキシネームをつけられた2人が登場して生コーラス。この曲も大体見るたびに演奏されていますが、意外と共演する場面に出くわしたことがなかったので非常に嬉しい名場面。ちなみにあっこぴんは吉本新喜劇ィズでベースも担当しているので、今日は本当に大忙しです。
無駄なことをやっている時間がないので「SHIKIBU」は1コーラス半、次の曲も間髪入れずに演奏に入ります。お馴染み「狩りから稲作へ」。この曲でしか役に立たない稲穂が一斉に日の目を見る瞬間です。縄文土器と弥生土器のイメージが強すぎて、時々タイトルを忘れそうになってしまうのが難点。原曲の長さは6分ですが、ステージでは常にその倍以上の時間が演奏に充てられています。毎回”暮らし安心クラシアン”とか”キャッツ”とか歌っていますが、そんな歌詞は元々存在などしていません。”イネトラソウル!”なんて具合に突然曲が変わったりもしません。急な展開に関わらず一斉にジャンプするオーディエンス、それを見て”稲葉さんすげぇわ、やっぱりイナバ、100人乗っても?””(客)大丈夫!”。そろそろバックバンドだけでなく、オーディエンスもプロと称したくなる勢いです。曲が終わったと思ったらまた途中、というのもいつも通り。完全に「やっぱ好きやねん」を歌ってた場面もありました。突然ハイトーンボイスになって「ひなげしの花」を歌ってた場面もありましたが、これは年代的に古すぎることもあってあまりウケなかったようでした。
本編ラストが「きらきら武士」なのもいつも通り。いつか椎名林檎と一緒に歌ってるステージも見たいところですが、難しいでしょうか。”歌とお笑いと歴史を一人でやる”と紹介されたこともあって、ライブ後のトークも舌好調。小籔さんからは普段の礼儀正しい姿と全く違うと暴露されてました。
~ネタブロック(2)~
スーパーマラドーナはM-1で3位の実力派。仕事が増えた矢先に武智さんがNON STYLE井上の車に同乗してたことで激減したという話を冒頭にしていました。そんな漫才は水分補給を取れる時間が全くないほど笑いが途切れないネタ。田中さんは忙しいことを望んでいないようですが、このネタを見ると本当にM-1で優勝しても全く不思議でない面白い漫才を披露していました。
麒麟は旅番組のネタ。一つのシチュエーションからここまでボケのパターンが生まれるのかという、深みを感じさせる内容でした。
テンダラーはもうツカミから天丼まで本当にいつもやっているネタ。何をやるか分かり切っているのにそれを期待しておおいに笑ってしまうというベテランの極致。どの年代が見ても間違いなくウケるというのもおおいに納得できる内容でした。
土肥ポン太はフリップを使ってシチュエーション芸。どちらかと言うと同期の小藪さんとのウソだらけのトークが本番だったような…。
ゲスの極み乙女。
今回2日目のチケットを選んだ目的は、このバンドのステージをまだ見ていなかったから。アルバムで演奏力・楽曲構成力の高さが十二分に伝わっているからこそ、生のステージを体感したかったという部分があります。本来なら2014年のRADIO CRAZYで見るチャンスもあったのですが、入場口のものすごく長い列を見て別ステージを選んだという経緯があります。出来れば騒動前に見るチャンスがあればもっと良かったですが、それは今更言っても仕方ないことで…。
定番曲の「私以外私じゃないの」からスタート。のっけから本来のアレンジとは違う、川谷絵音とほないこかが足場に立って歌うデュエット形式。そこから「シアワセ林檎」「ロマンスがありあまる」と続きます。演奏力はやはり非常に高く、休日課長のベースやほないこかのドラムもさることながら、ちゃんMARIに至ってはソロでジャズコンサートをやっても間違いなく成立するレベルに達しています。「シアワセ林檎」で歌う絵音さんはさながら指揮者のよう、何よりギター無しで成立させているのが新しいです。「ロマンス~」は絵音さんとMARIさんの連弾から始まり、ギターも絵音さんメインで入る形。こう見ると楽曲もさることながら、従来のバンド形式に囚われない柔軟な発想力が今更ながら物凄いです。
予定にはなかったというMC、川谷さんが早口でまくし立てるように喋ります。騒動から1年以上経っても相変わらず記者に追われているようで、結果的にこの日もしっかり記事が出来上がっていました。本人もそんなに興味ある?と疑問をしっかり提起しています。最大で11台の車に追われたり、不倫の話題になるたびに自身の曲が流れることにツッコミを入れたり…本当によく喋ります。なんだか必要以上に喋りすぎと言いますか、同時に思ったことは絶対口にしないといけない性分なのでしょうか。いずれにしても、天才的な音楽脳とは裏腹な人間らしさを強く垣間見た瞬間でした。
インディーズ時代からの定番「キラーボール」、まだライブでも数回しか披露していない新曲を経てラストは「影ソング」。会心のステージの後は小籔さんとのトーク。家族ぐるみのつき合いをしているようで、彼らのライブを見て小藪家はセカオワファミリーからゲスファミリーに鞍替えしたのだとか。また、これまた先日『BAZOOKA!!!』においてジェニーハイというバンド結成を発表。こちらについてもよろしくと、何度も宣伝していました。ゲス極・インディゴに続く3つ目の機軸になるかどうか…そういえば川谷さんは学生気分というボカロPユニットも先日結成していました。なんだかんだ言いつつも、音楽方面での活躍はまだまだ続きそうです。
ハナレグミ
ハナレグミも長年ずっと高評価を得ているアーティストですが、ライブで見るのは今回が初。曲も「家族の風景」「深呼吸」以外はしっかり耳にしたことなかったですが、この日のライブに関してはそんなことまるで関係なし。はっきりとした発音は、歌詞を全く聴いたことなくても耳に入り、何より歌声が非常に綺麗です。最近は発声以上にはっきりと言葉を聞き取れることが、歌の上手さにおいて重要ではないかと考えてるところですが…。そういう意味では本当に最高のボーカリストだと、心から感じたステージでした。
演奏された楽曲は「my California」「Primal dancer」「フリーダムライダー」「あいまいに甘い」「wake up してください」「深呼吸」。宣伝はほとんどなかったですが、新しいアルバムからの選曲もありました。これもまた、あらためて聴きたいと思わせるステージでした。
サニーデイ・サービス
サニーデイ・サービスもまた、1990年代後半のシングル曲を個人的に好きでよく聴いていたアーティスト。KOYABU SONICは第1回、再結成前の曽我部恵一BANDの時から継続出演。ちなみに東ではYATSUI FESTIVALにもずっと出演、テーマソングも書き下ろしてます。東西の芸人から深くリスペクトされるアーティストである曽我部さん、むろん音楽ファンからも長い支持を受けています。今年のやついフェスで見られなかったので、個人的にはこれまた今回が初見になります。
ホフディランの2人やハナレグミの永積さん同様、曽我部さんも完璧な歌唱力。言葉も歌声も実にはっきりとして美しく、聴き惚れます。「baby blue」「忘れてしまおう」「あじさい」「苺畑でつかまえて」、新旧混ぜ合わせたこのセットリストもまた、知ってる知らないに関わらず楽しめる内容。曲を聴いたことがなくても、歌詞に合わせてついつい口ずさんでしまいます。トラックで聴くとフォークの香りもある楽曲群ですが、ライブで見ると紛れもない力強いロックな演奏。その真骨頂が「セツナ」でした。
コンセプトが大変不思議なMVはユニークですが、ライブで歌うこの曲のパフォーマンスはまさしく鬼気迫る雰囲気。サビの繰り返しから数分間延々と続くセッションは壮絶極まりないものがありました。楽曲も素晴らしいですが、何よりもパフォーマンスそのものに感動。全てを出し切って、まるでアンコールかのように歌われるラストの曲は「白い恋人」。自分が中学生の時に何度も聴いて、歌詞もほぼ全て憶えるくらいに好きな曲なので嬉しいとかそういう次元以上の選曲でした。大満足のステージとともに、21世紀に入ってからの曲をちゃんと聴いていないことに少し後悔。世間的には広く知られてなくても、音楽ファンにはずっと長く愛されているサニーデイ・サービス。その理由が分かりすぎるくらい理解できた神アクトでした。
吉本新喜劇ィズ
KOYABU SONICが開催されたそもそものキッカケは、小藪さんとレイザーラモンで結成された下ネタユニット・ビッグポルノ。2014年の解散と同時にコヤソニもラストになったわけですが、復活したキッカケもまた吉本新喜劇ィズというバンドの結成。今年は3日間開催ですが、その全てでヘッドライナーを務める形になります。
リハーサル、練習と称して演奏される楽曲は洋楽カバー。シャウトの連続。ボーカル担当は新喜劇でヒロインを務めることも多い宇都宮まきですが、巫女姿に門松のような髪飾りにアイシャドウという実にパンキッシュなメイク。ただ歌声は音程・声量ともに結構なもの。生演奏に全く負けていません。その生演奏のメンバーはドラム・小藪千豊、ギター・松浦真也、キーボード・金原早苗。ベースはなんと本職・チャットモンチーの福岡晃子。あっこぴんは3日間しっかりこのバンドで出演していたようで、イベントにも新喜劇メンバーと一緒に参加。すっかり馴染んでいるようです。ドラムは一度入りを間違えるハプニングあったものの、なかなかの出来。ギターは半分本職みたいなものなのでこちらも問題なし。キーボードも経験ありそうで悪くなかったです。
楽曲はまずカジヒデキ提供の「アイ ラブ ジョージ!」。これは昨年亡くなった島木譲二について歌った楽曲だそうです。生前のプロフィール写真も一緒に掲げられています。カジさんが作ってるので、当然陽気なスウェディッシュ・ポップ。強面ながらも愛嬌の良さで座員全員に愛されていたことが非常によく分かるナンバーでした。
次もまた、今年亡くなった中山美保について歌った「マドンナ」。メンバーだと特にまきちゃんが公私ともにお世話になった、思い出深い人だったのだそう。これまた作詞作曲はクリープハイプの尾崎世界観、恐ろしく豪華です。更に続くのは、これまた昨年亡くなった井上竜夫をテーマにした「TATSU-G」。往年の竜じいのギャグも歌詞に入れたナンバーは、思いっきりパンクロックでした。
映画音楽を主に担当する上田禎が作曲した「Luck book new joy play?」、タイトルの由来は”吉本新喜劇”を一文字ずつただ英訳しただけなのだとか。新しい新喜劇のテーマソングとして定着させたいとMCで話していました。そういえば1990年代からお馴染みの「エクスタシー」も20年以上前です。オリジナルは4曲しかないのであとはカバー曲。帯谷孝史とMr.オクレについて歌っていました。なおオクレ師匠の元歌は今日の出演者でもあるアーティストの「私以外私じゃないの」。これを”オクレ以外オクレじゃないの”と歌詞を替える形でした…。
ラストは今日の出演者全員集合して「アイ ラブ ジョージ!」を歌唱。ジョージさんとは縁もゆかりもない人もいますし、池ちゃんは勝手に自分のパートで”埴輪”とか歌っていましたが…。ただこういうフェスのラスト全員集まる場面で、本当にひとり残らず全員揃っていたのは初めて見たような気がします。午前中の出演者や、芸人も全員残っていました。
というわけで、一日だけでしたが非常に楽しめたフェスでした。元々はサマソニのパクリみたいな形の命名ですが、そのサマソニとは全く違う形の独自性あるフェスというのが正直な印象でした。アーティストのライブだけでなく、合間まで一秒たりとも退屈させないサービス精神は本当に素晴らしかったですが、その分休憩のタイミングが難しいというのが難点だったかもしれません。
チケットの方は完売とまでいかなかったようで、RADIO CRAZYと比べると当然入手はしやすく、また人の数が少ない分快適という面もありました。とりあえず言えることは、来年以降も続けて欲しいとともにおそらくまた足を運ぶことになるだろうということでしょうか。私自身も吉本新喜劇で育った人間の一人なので、少なくとも他地域の人間よりは愛着が強いつもりです。これからも、関西大阪を代表する音楽&お笑いフェスティバルとして長く続くことを、あらためて願いたいです。
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