今週のビルボードチャート~6/8(SEVENTEEN、YOAKE、さとうもか他)

今週のチャート総評

 今週の1位は日向坂46「僕なんか」、約47万枚のCD売上を記録しています。前作「ってか」より売上は増加、さらにオンラインミート&グリート、いわゆるミーグリ全完売という結果になりました。乃木坂46や櫻坂46で全メンバー分完売というのはまず起こらないので、これは快挙と言って良いのではないかと思います。またLINE MUSICキャンペーンの影響でストリーミング指標も45位でした。

 8位にYOASOBIの新曲「好きだ」が初登場。5月30日の月曜配信開始、ダウンロードは3位止まりですが早くもストリーミングは39位。Spotifyでは既に100万再生突破、現在のデイリーは50位を下回るライン。TOP50に入ればプレイリスト発の再生数が一気に伸びるので、その点では来週以降に注目です。なおいまだにTOP50入りしている「夜に駆ける」「群青」「怪物」も、これらに呼応するかのようにポイント・順位とも先週分より上昇しています。

 今週はCD・ダウンロードともに新譜少なく、TOP50の初登場はYOASOBIのみという珍しい週になりました。その次の初登場上位は54位のNCT DREAM「Beatbox」。K-POPの新曲で、韓国のSpotifyデイリーでは現在10位となっています。

 58位はCreepy Nuts「2way nice guy」。こちらもラジオ指標が強く5位、ポイントの50%近くを占めています。ダウンロードは17位でした。

 60位にSaucy Dog「優しさに溢れた世界で」。7月6日発売予定のミニアルバム『サニーボトル』からの先行配信です。ラジオ指標で17位にランクインしました。動画指標は65位、6月1日配信開始でまもなく100万再生に到達しようとしています。

 82位にYOAKE「ねぇ」が初登場。4月29日配信開始の曲がここにきてHot100入りしています。Spotifyのバイラルチャートで現在5位、Apple Musicでは総合チャート42位。公式Twitterでかなりこまめに情報更新しています。TikTokでも人気のようで、注目作になっています。

 86位の麻枝准&やなぎなぎ「Before I Rise」はダウンロード4位、ポイントの大半がこの指標になっています。知名度の低いアイドル系のCD売上や、LINE MUSICキャンペーン中のストリーミングで100%近くを占めることはたまに見られますが、ダウンロードのみとなると少し珍しい気がします。スマホ向けRPG『ヘブンバーンズレッド』の楽曲、この作品からはしばらく新曲の配信が毎週あるようです。

 89位は森口博子「Ubugoe」。『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』主題歌、ガンダムタイアップは「水の星へ愛をこめて」からもう37年という長さです。1990年代は歌手よりバラエティタレントのイメージが一般的に強かったですが、昨今はもうすっかり歌手の印象が定着しているような気がします。CDセールス9位ですが、こちらもHot100入りにはラジオ指標10位が大きく作用した模様です。

 97位は[Alexandros]「無心拍数」、アニメ『アオアシ』のオープニングテーマです。7月には新しいアルバム『But wait. Cats?』がリリース、この作品からの先行配信曲という位置づけになっています。

 99位はさとうもか「melt bitter」、こちらもTikTokやバイラルチャートで伸びている楽曲です。2020年1月に配信された曲が、このタイミングで初のHot100入りになりました。

 Official髭男dism「ミックスナッツ」はすっかりロングセラー組のトップ、今週もポイントは微減傾向に留まってます。米津玄師「M八七」はCDセールス減少もあって1800ptダウン、今後フィジカルが落ち着いてからどれくらいの推移でキープできるかがポイントになりそうです(なおストリーミング6位・動画指標2位)。SEKAI NO OWARI「Habit」は上昇まだ止まらず5位→4位。Tani Yuuki「W / X / Y」もまだ強く、しばらくはこの4曲がビルボードを牽引していきそうな気配です。

 SEVENTEEN「HOT」が49位から11位、急激に順位が上昇しました。韓国のアルバム『Face the Sun』のリード曲、今週は日本の音楽番組出演も控えていて攻勢を仕掛ける形になりそうです。Uru「それを愛と呼ぶなら」はCD発売週、セールスは11位ですがストリーミング46位→34位・ラジオ圏外→30位に上げた影響で総合も44位→15位の大幅アップになっています。Novelbright「愛とか恋とか」は26位→18位→13位、今週も着実にポイントを伸ばす結果になりました。先週28位初登場のMrs.GREEN APPLE「ダンスホール」は20位にアップ、こちらもストリーミングだけでなくラジオでもポイントを大きく伸ばしている様子です。

 きゃない「バニラ」は再びポイント上昇に転じて42位→32位、原因は自分にある。「545」はLINE MUSICキャンペーンによる再生数3位が効いて総合37位にアップ。現在Spotifyバイラルチャート6位の有華「Partner」も99位→76位→51位で、順調にヒットコースを歩んでいます。

 先週9位に初登場の桑田佳祐 feat.佐野元春, 世良公則,  Char, 野口五郎「時代遅れのRock’n’Roll Band」はラジオ指標1位ですが、ストリーミングがやはり相当厳しく完全圏外のため総合50位でした。先週1位のHey! Say! JUMP「a r e a」も配信がないので今週は75位です。一方LINE MUSICキャンペーンのあった=LOVE「あの子コンプレックス」はこれによりストリーミングポイントが加算されて総合は4位→27位でした。広く話題になっているのはどう考えても=LOVEより桑田さんのような気はしますが、ここが現在のチャートシステムの妙であり難点になっている印象です。どうしたものでしょうか。ちなみに桑田さんの作品は昨日MVがアップされて既に100万再生、これをきっかけに再び順位が上昇する可能性も十分あるのではないかと思われます。

今週のピックアップ曲

SEVENTEEN「HOT」

 迫力あるロケーションとそれに負けない魅力的なスタジオ撮影で構成されたMV、ダンスもそのイメージによく合っています。野性味とスケールを最大限に融合させたような楽曲で、非常に格好良い内容です。

 パフォーマンス自体は日本のボーイズグループも負けていないと思いますが、時折登場するワイルドなショットは、品行方正さを必要以上に求めたがる昨今の日本だとクレームを恐れて実現を躊躇する構図が容易に思い浮かびます。そこに現時点の日本から見たK-POPの優位性を感じる次第です。

Creepy Nuts「2way nice guy」

 映画『極主夫道 ザ・シネマ』主題歌、管楽器の音が入って思いのほかポップな仕上がりになっています。ヒップホップよりミクスチャーに近い曲と言って良いかもしれません。とは言えロックではやはりなく、R-指定の歌唱法はやはりヒップホップそのものだと感じます。

 ただ映像に反してサウンドの爽やかさはこのジャンルの中だと歴代トップクラス、彼らに馴染みがなくてもいの一番に薦められる初心者向けの楽曲でもあるような気はしました。

YOAKE「ねぇ」

 プロフィール以外何も明かしていない謎のアーティスト、このプロモーションは1990年代のビーイングを彷彿とさせています。声質的には男性のようですが、MVに出演している青木歌音は男性から女性になった方ということです。

 楽曲自体は優里や川崎鷹也がブレイクした2021年初頭以降のトレンドに乗った内容で、特別な目新しさはありません。ただ歌詞の共感性はやはり高く、若い人に支持されるという点では非常に頷ける楽曲ではないかと感じました。リズムの使い方と意外に個性的な声質がクセになる歌い手という印象もあります。

 確かにTikTokでバズるとなると心地良いリズムは不可欠で、メロディアスに聴こえながらもリズムに非凡さを感じさせるアーティストが最近増えてきた印象もあります。あくまで印象でしかないが、メロディー・歌詞以上にリズムが重視される空気は今後さらに色濃くなっていく可能性は十分ありそうです。

森口博子「Ubugoe」

 6分近くにわたる長尺、非常にスケールの大きいバラードです。「ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~」から30年が過ぎ、歌声には包み込まれるような優しさが当時の何倍にも膨れ上がっています。

 1980年代後半~1990年代前半でも普通にありそうな楽曲で、先ほど書いたTikTokの流れとは完全に逆をいっています。崖の上から空撮で歌うMVも、2000年代くらいだと当たり前のように見た記憶があるのですが、気がつけば久々に見たような感覚です。アラフォーアラフィフくらいになると、こういった曲の方がやはり聴いていて安心します。そもそもガンダムシリーズが長年続いているとともに、その中でこういった主題歌を担当して歌えること自体が凄いことだとあらためて実感します。

さとうもか「melt bitter」

 ミュージックビデオは2019年12月公開、既に535万再生になっています。ただそんな中で現在人気30位のミュージックビデオ、昭和でいうと有線をきっかけにヒットする演歌みたいな売れ方です。

 個性的な歌声がまず耳に入ります。クラムボンのボーカル・原田郁子を彷彿とさせる少し渇いた声です。歌詞は恋愛の別れをテーマにした内容で、曲が進行するごとに悲劇性が増すストーリーが涙を誘います。平凡な部屋を描いたイラストに炎が増えていくMVの描写も完成度高いです。

 最近はイントロ数秒で曲のヒットが決まるという言説もありますが、後半にクライマックスを迎えるこの曲はそういった法則と真逆をいく内容で演奏時間も5分近くあります。大ヒットは得てして、当時の趨勢とは逆をいく内容でそれが基礎として法則化します。もしかするとこの曲をきっかけに、また5分近く聴かせるヒット曲が増え始めるのかもしれません。

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