2017.3.20 SHISHAMO ワンマンツアー2017春「明日メトロですれちがうのは、魔法のような恋」 in 神戸ワールド記念ホール

 先日アルバム『SHISHAMO 4』をリリースしたばかりのSHISHAMO。そのアルバムは早くも2017年1位確定かと言わんばかりの素晴らしい名盤でしたが、それを引っさげたワンマンツアー「明日メトロですれちがうのは、魔法のような恋」が3月から開催。ガイシ→ワールド記念→武道館の順番でアリーナ会場を回った後、ホールツアーを経て最後は地方のライブハウスツアーで締めるというスケジュールですが、その2公演目にあたる神戸・ワールド記念ホールのライブに足を運んできました。

 ワールド記念ホールはCOMIN’ KOBEで毎年足を運んでいる会場ですが、ワンマンライブで行くのはかなり久々で2013年11月のいきものがかりの『I』ツアー以来。その時はスタンド上段、それ以前2012年1月のPerfume『JPN』ツアーで見切れ席での観戦でしたが、今回は1週間前にも関わらずスタンドCブロックの前から2列目。かなり見やすい席だったのは間違いないですが、会場を見る限りスタンド上段は開放していない様子。知名度や話題性は間違いなく上がっているはずですが、集客に関してはまだまだ伸びる余地ありといったところでしょうか。ただアリーナはしっかり埋まっているので、ホールだとおそらく満員(今のところは札幌以外まだチケットあるみたいですが)・ライブハウスだと争奪戦になることほぼ間違いなさそうです。

 開場時間少し過ぎて会場が暗転、スクリーンに映画が流れます。舞台になっているのは横浜市営地下鉄ブルーラインでしょうか。同じような駅が多い路線なので、どの駅かまでは特定できないですが…。最終的に恋愛関係になる若い2人が告白するまでのストーリーを、10分~15分くらいかけて丁寧に描いています。相対式ホームの反対側にいる男性が、女性に告白しようというタイミングで映画が終わり、演奏開始。「好き好き」「すれちがいのデート」「恋に落ちる音が聞こえたら」。アルバム『SHISHAMO 4』の曲順そのまま、先ほどのストーリーと完全に合致しています。

 3曲終わって挨拶を兼ねたMC。ついでに声出しを兼ねた客席調査。2年前に大阪城野音に足を運んだ時は女子高生と女子大生が中心といった印象でしたが、今回もほぼ同様。中学生<<<高校生<大学生≒おとな、といった印象でした。女子と男子では女子の方がやや多め、専門学校生はほとんどいないようです。なお自分の周りのスタンド席には男子大学生と思われる2人組と、親子で来ていた家族が2組見受けられました。2年前は若い人だらけで若干のアウェー感もあったくらいですが、今回はほとんどそういったことはありません。確実に若い人以外にも支持が高まっているような印象です。MCによると、今回のツアーのテーマは”映画”。あと”神戸、いけるか!”と左膝を上げながら右腕を挙げるボーカル・宮崎朝子がとてもキュートで、絵になります。

 昨年はSHISHAMOを見ることが出来なかったので、『SHISHAMO 3』収録曲はまだ生で聴いていません。そこに収録されている「中庭の少女たち」を演奏してくれたのはやはり嬉しかったです。続いて演奏するのは「きっとあの漫画のせい」「終わり」。早くも『SHISHAMO 4』から5曲ドロップされましたが、演奏の魅せ方が確実に良くなっています。「終わり」のスピード感と迫力は特に素晴らしいものがありました。スリーピースとしてもガールズバンドとしても半端ない音の厚味が出ているとともに、3人だからこそハッキリと感じることが出来る各々の演奏。大変聴き応えがあります。

 ここまで朝子さんはギターを弾きながら歌っていますが、次の2曲はピアノを弾きながらの演奏になります。「あの子のバラード」「昼夜逆転」、どちらもアルバムのオリジナルとは違うバージョン。このピアノアレンジは昨年の秋ツアーから始めたことのようで、今回も踏襲といったところでしょうか。ただ今回のツアーのテーマは”映画”。というわけで2曲の演奏後再びスクリーンに映像が映し出されます。

 田舎から転校してきた女子高生、向こうでは当たり前らしい、弁当に虫(イナゴ?)を食べていることで他の学生からイジメられます。こういうのを見ると、イジメている方を殴りたくなってきます。思わず感情移入したくなる彼女にとって安らげる場所はバレエをしている時間と、音楽室の先生との会話。突然その女子高生が駅で踊り出した辺りで、アリーナ後方がザワザワしています。中央の小さな円状ステージで歌う際に、メイン反対側の出口から花道を通って3人が移動しているようです。朝子さんがアコースティックギター、ドラムの吉川美冴貴が手ドラム、ベースの松岡彩がピアニカと鉄琴を手にして始まるのは「音楽室は秘密基地」。小さいステージで3人が向かい合っての演奏でした。

 中央のステージでそのままMC。”朝子ちゃーん!””彩ちゃーん!”という声が多々上がります。美冴貴さんが喋る場面でもそれは同様で、「みさきちゃん!という声が全く聴こえない」とネタにしていました。そのせいかどうかは分かりませんが、ここから終演まで一番声援を送られていたのは彼女だったような気がします。彩さんは先ほどのピアニカが幼稚園の頃に使っていた楽器だという話。鍵盤は黄ばんでいて、一番低いドの音は変な音になるということを飛びきりの笑顔で話していました。美冴貴さんは喋りが上手いのにどこか自虐的でスポットライトが当たらないキャラ、彩さんはいつも笑顔でマイペース。このポジションは2年前と何ひとつ変わっていない様子で大変安心?しました。ついでに『SHISHAMO 4』で好きな曲は?というアンケートも実施。アリーナからは「好き好き!」「メトロ」の声が多く挙がっていました。

 同じ編成でもう1曲、「恋」。こちらは元々アコースティック要素が多い曲です。それにしても、ライブで鍵盤ハーモニカを吹く人は初めて見たんじゃないかなとしみじみ。こちらも昨年のツアーで初披露だったようですが…。サポート抜きでライブをやっていた2012年のチャットモンチー(ドラム・高橋久美子の脱退直後)程ではないにせよ、SHISHAMOもなかなかのマルチプレイヤーっぷりです。曲が終わると次のステージはメインでの演奏なので花道上を移動。オーディエンスに手を振って応えます。

 季節はずれの曲ですけど、との紹介で演奏されるのは「夏の恋人」「熱帯夜」。落ちついた雰囲気、両方とも使われる照明の色合いは控えめ。「熱帯夜」ではそれが作り出す3人の影が作り出されています。それぞれの立ち位置ではなく、彩ちゃんが真ん中長めであと2人がやや短めになっているシルエットに光の妙味を感じさせる場面でした。

 映画の方は女性の新入社員の物語。月曜日・火曜日・水曜日…。仕事では上司に怒られて、土日に気心知れた友人と遊び、迎えた月曜日にようやく仕事の成果が出そうになる…。そんなストーリーから演奏される楽曲は「明日も」。満員、ではないですがアリーナを埋め尽くした光景を前に歌う3人の後ろ姿を映すビジョンのカメラワーク。等々力陸上競技場で撮影されたMVと同様、楽曲のスケールの大きさをあらためて感じさせる場面になっています。

 ライブも終盤戦ということで、定番曲の演奏になります。「量産型彼氏」「僕に彼女ができたんだ」「タオル」「君と夏フェス」。いずれも2年前、メトロックや野音で見た時よりも間違いなくパワーアップしていました。ビジョンでは後々DVDかブルーレイに収録されそうな映像が映し出されていますが、ただし”1枚1000円、2枚で2000円、持ってない人は物販コーナーまで”でお馴染みの「タオル」はイラスト。なお以前にも書いた通りこの曲はライブ限定曲ですが、デビュー当時からほぼ全ての公演で歌われています。今回のグッズも独特のセンス抜群の商品が勢揃いしていますが、この曲もダウンロード出来るというマフラータオルは相変わらず1000円で売られているようでした。ちなみにアリーナだというのに今回のチケットは4400円。大変お得です。ホールもライブハウスも同値段、むしろライブハウスは1DRINK別なので高くなります。

 映画のラストは別れをテーマにした内容。3週間も既読スルーした彼氏と偶然に駅で再会、理由も言わずに”ごめん”と謝る男に女性がキレるというストーリー。友人と憂さ晴らしでカラオケに行った時に一緒に歌ってくれた店員と、降りた駅でまた再会…というところでエンディング。それをバックに今回の映画の主題歌?「メトロ」を3人で生演奏。映画の内容以上に思いっきり名場面、いやもしかすると映画もしっかりストーリーが作り込まれていたからこそより感情移入出来るものがあったかもしれません。いずれにしても、今までのライブでは見たことのない新しい演出です。映画というより、その度胸と新しさに感動せずにはいられないエンディングでした。

 というわけで本編はここで終了、アンコールに入ります。みんなで歌って欲しいパートがあるということで、女子にそれを促します。当然ながら男子からは”俺も歌わせて!”と複数コールが。女子の歌だと言いつつも、”女の子の気持ちになって歌ってくれるなら許可する”という朝子さんの号令のもと「魔法のように」を合唱。冒頭ギターを弾きながら花道を一周する間、”ラ~ララッララ~”とオーディエンスに歌ってもらいますが男性の声は全く聴こえませんでした。どうやらこの日の男性は紳士たちの集まりだったようです。勿論声を出さずに口ずさんでいた人は多かったと思いますが。

 アンコール残る2曲は「生きるガール」「恋する」。「恋する」もまたアルバム『SHISHAMO』に収録されている初期からの定番曲ですが、あらためて聴くと楽曲の構成は「明日も」に通じる部分があります。6分近い演奏時間がそれを証明しています。紙テープ演出もあっていよいよ終わりかと思いきや、まだ終わりません。ダブルアンコールとして演奏されたのは「さよならの季節」。春という季節に最も合致している、これ以上ないくらいに完璧な選曲です。アカペラからのラストサビで舞い始める紙吹雪は、楽曲の儚さも相まって極めて美しい光景になっていました。

 以上です。2年という期間よりもさらに凄まじい伸びが各所で存在する、文句なしのライブでした。演奏能力の高さもそうですが、ボーカル・宮崎朝子の歌声が特に素晴らしかったです。声量が非常にあるとともに、その範囲内でのテクニックが本当にずば抜けています。チャットモンチーの橋本絵莉子とaikoを足して、2で割る必要のないほどの魅力になっているようにも思えました。

 今回アリーナは空席もありましたが、おそらく数年後にはアリーナツアーが当たり前になると思います。同性の中高生の支持、ということを考えると一番ファン離れが起きにくい層で、むしろ3年後は大学生になることでツアーやCDに使えるお金が多くなる分より伸びる可能性の方が高いです。楽曲やパフォーマンスに個々の魅力、ファンが増える要素は多くあれど、減る要素はまるで見当たりません。『SHISHAMO』から数えて今年で5年目、このキャリアでここまでの凄味を見せたガールズバンドはプリンセスプリンセスかチャットモンチー以来でしょうか。彼女たちにはそれ以上の伸び、それこそ国民的ガールズバンドとして活躍することを期待したいです。そうなる可能性は『SHISHAMO 4』とこのライブを見る限り、非常に高いと考えて良いのではないでしょうか。

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