ここ10年近くで多くのアーティストを現場で見ていますが、その中でも特に圧倒されたのがSuperfly。過去2009年ロッキン、2014年のレディクレで見ていますが、両方とも度肝を抜かれたとかそんな次元を優に超えたステージを見せつけていました。というわけで、今回ようやくという形ですが彼女のワンマンライブに足を運ぶことが出来ました。休業期間を挟んだ関係で全国アリーナツアーはなんと3年半ぶり、ツアータイトルにもなっている2020年1月リリースのアルバム『0』に至っては4年半ぶりのオリジナルとなります。そうなると、今ツアーがいよいよ本格的に活動再開という形と言って良いのでしょうか。当然ながら、ワンマンライブも非常に素晴らしい内容でした。ではレポをどうぞ。
開演時間は16時半ですが、今回個人的に17時開演と勘違いして会場到着はかなりギリギリ。したがっていつもと違い開演前に色々見る余裕はなかったですが、どう見ても客席は立ち見も含めて満員。男女比も大体同じくらいで、年齢層もエリアによって変わると思いますが20代~50代くらいまでバランス良く。思ったより若い人が少ないかもしれないと思いましたが、2007年メジャーデビューと考えると自然でしょうか。「愛をこめて花束を」当時に高校生だった人は、もうみんな20代後半になっています。
オープニング映像から始まり、バンドメンバー登場。アリーナクラスのライブを当たり前に行うアーティストは、その人数も多いです。ギターは2人、バイオリンやトランペットも加わり曲が始まるとダンサーまで登場します。最初に演奏されたのは話題のドラマ『わたし、定時で帰ります。』主題歌「Ambitious」。会場全体から手拍子が入ります。曲に合わせて演出される照明もバッチリ決まっています。比較的新しい曲メインのセットリストを予想しましたが、続く楽曲は「Wildflower」「やさしい気持ちで」というそれぞれ2010年、2009年を飾る名曲。最初から越智志帆の歌声と、素晴らしい楽曲に魅了される時間帯に入ります。
3曲終わって会場暗転。”志帆ちゃーん!””志帆さーん!”という声援が方々から起こります。程なくMC。500人の立見客含めて、これ以上入らないくらいお客さんに入ってもらったこと、3公演目にして関西を回るのはラストなのでツアーファイナルのつもりで頑張りますということを話します。今回のツアータイトルは”0(ゼロ)”。プラスでもマイナスでもないフラットな気持ちをタイトルにした、ということも喋っていました。新曲もいっぱい歌いますというMCの後に演奏されたのは「Gifts」。昨年のNコン課題曲で、新しいアルバムにも収録されるようです。更に続くのは前作アルバム『WHITE』収録の「Beautiful」。迫力のある歌声と演奏が、大阪城ホール全体に響き渡ります。
1年近い休止期間の間には海外旅行に行ったり、多くの本を読んだり料理をしたりなど気ままな時間を過ごしていたというMC。音楽にはあまり触れていなかったようですが、ジャズだけは聴きまくっていたそうです。というわけで2曲、まずは「恋する瞳は美しい」をジャズアレンジで演奏。もう1つはそもそもがジャジーなアレンジ強めの「Fall」。管楽器隊が躍動していました。
映像とインストで構成されるインターバルの間に、虹色のドレスからシンプルな衣装に着替えて名バラード「My Best of My Life」。素晴らしい楽曲であるとともに、こういう歌い上げる系の女性バラードの名曲が最近随分少なくなったなぁと思いながら。この曲が発表された2009年近辺には、少なくとも今よりは相当多くあった記憶があるのですが…。「氷に閉じこめて」はシングル「Ambitious」のカップリングに収録されている楽曲。中央の小さなステージでダンサーが躍動します。その上にも照明が設置されていて美しい光景でしたが、スタンド正面からだとメインの越智志帆の姿がやや遮られる形にもなりました。
そこに越智さんが移動して、1stアルバム『Superfly』に収録されている「I Remember」を完全アカペラで披露。少しMCを挟んで、アルバムにも収録される新曲「Lilyの祈り」。中盤は比較的落ち着いた時間が流れますが、バンドセッションを経た後は「覚醒」で再びステージを少しずつ温め始めます。同じく「Ambitious」のカップリング収録のこの曲もまた力強い演奏、サビの変拍子がクセになる楽曲でもあります。
後半はSuperflyを代表する盛り上げ曲が続きます。お馴染み「タマシイレボリューション」、一緒に踊ることを促す「Dancing On The Fire」、会場が一体になってコールする「愛をからだに吹き込んで」。このゾーンは本当に一瞬とも思える、超が何個もつくくらいに楽しいひととき。「Good-Bye」で一旦落ち着かせて、ラストは「99」。2016年発表、一昨年のベストアルバム『LOVE, PEACE&FIRE』収録曲で本編を締めます。
アンコールも新曲「サンディ」で始まります。もう1曲はここまで演奏されていなかった国民的名曲「愛をこめて花束を」。サビはみんなで大合唱…といったところですがスタンド席になるとそこまで歌っている人はいなかったでしょうか。ラストはバンドマスターの八橋義幸がアレンジ、歌詞を書いた本人もモデルとなる主人公に感情移入したと語る、翌日から放送のNHK連続テレビ小説『スカーレット』主題歌の「フレア」。
Nコン課題曲の「Gifts」もそうでしたが、活動休止後のSuperflyの楽曲は優しい歌声と歌詞が非常に印象に残ります。この曲もそうで、特にサビ終わりの歌詞が大変耳に残りますね。とても綺麗で爽やかで、朝に聴くにはピッタリハマる楽曲であることは間違いなさそうでした。
「I Remember」アカペラ直後のMCで、歌の仕事を始める時には本当に一人だったと話していました。大阪城ホールを満員にするほど多くの人々や、強力なバンドメンバーなど色々な仲間に支えられて今があることも話していたでしょうか。MCは特別個性的という印象ではなかったですが、真摯な人柄がすごく出ていました。少なくとも、鼻につくような言動は何一つ見当たりません。2007年メジャーデビューで第一線を走り続けているのは楽曲のクオリティーや歌唱力の高さもそうですが、何より一緒に仕事をしたいと思わせる人柄が一番大きいことを再確認出来ました。ここまで5年に1回のペースで彼女のステージを見る形になりましたが、次に見るのは5年後でしょうかそれとも案外来年辺りになるでしょうか。いずれにしても、数十年経ってもずっと第一線で活躍する存在であることは間違いなさそうです。