2018.5.20 SHISHAMOワンマンツアー2018春「ドキドキしながら手を握ったのは、君には見えないあの娘が大人になるのが怖かったから」 in 神戸国際会館こくさいホール

ライブレポ

 3月24日・オリックス劇場から始まった今年のSHISHAMOの全国ツアー「ドキドキしながら手を握ったのは、君には見えないあの娘が大人になるのが怖かったから」。今回は5月20日の神戸公演の様子をレポしていきます。3月に行われたオリックス劇場の公演はツアー初日ということもあって、最小限のネタバレで書いた形ですが、今回はセトリ他普通にレポしていきます。

 神戸公演は昨年のワールド記念ホール公演以来約1年ぶり。その時は実写のミニシネマに合わせた進行でしたが、今回は宮崎朝子が絵だけでなく脚本も作ったというアニメーションが用意されていました。開演予定時刻の5分前、スクリーンが降りてきて朝子さん手描きアニメーションのグッズ紹介が始まります。ドラム・かつ”なにかと宣伝担当”の吉川さんが滞りなく一つ一つグッズを宣伝。絵だけでなく声もおそらく事前録りと思われます。本番前に写真で撮った今回のグッズは、以下の通りです。

 

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 何分か押しで開演ブザーが鳴り、スクリーンが舞台に降りてきます。映し出されるのは、紅白歌合戦出場など目覚ましい活躍を遂げたSHISHAMOのメンバー3人。大きな期待をもって開催される全国ツアーですが、本番1時間前になっても来ないので大騒ぎするホールの面々。その時3人は道を聞こうということで、廃校に入り込みました。誰もいない廃校、しばらく廊下を歩きましたが誰とも会わずに、同じ場所に辿り着いてしまいます。そこで聞こえる人の声。それは3人の声ではなく、ここで命を落としたらしいお化けの声が姿とともに登場します…。


 アニメでの3人の衣装は上の絵にある通りですが、それと全く同じ衣装でスクリーンの後ろから1人ずつ登場。挨拶したところでまずは3曲、「水色の日々」「中庭の少女たち」「笑顔のおまじない」を演奏。オリックス劇場の音も悪くはなかったですが、やはり神戸のこくさいホールは大変上質。クリアで明るく広がる音の響きが、最初から最後まで本当に素晴らしかったです。演奏で魅せるSHISHAMOには、より映える会場だと思いました。

 前半は場面ごとに、アニメのストーリーと実写のライブが繰り返されます。ストーリーの方は、お化けになる前は歌が好きだった…という内容。ちなみに、3人は吹き出しと効果音のみ・お化けは吹き出しに喋り声が入るという演出でした。楽器は3人とも持っているので、目の前で演奏しようというのが大まかな内容。そこからのセトリは「音楽室は秘密基地」「行きたくない」をアコースティック。吉川さんはアコースティックドラム、彩ちゃんは鍵盤ハーモニカと鉄琴を担当。一生懸命他の2人が細かく強い音を演奏する横で鮮やかに鉄琴を鳴らす彩ちゃんが、らしいと言いますか何と言いますか…。

 再びストーリーに戻って、体育館でお化けが集まる中でライブをしてみんなが喜んでもらえたら帰れるという流れに。みんなで歌おう、ということなので本当に”ラララララ…”と歌ってもらう「魔法のように」。そこから新しい曲「ドキドキ」を経て普段だとアンコールで演奏されることが多い「恋する」

 「恋する」はお化けの顔が書かれた大きい風船が客席中に舞う演出でした。ただ所狭しと動く風船は、うっかりすると演奏する3人にぶつかりそうになります。フロントのスタッフが必死で後ろの方に飛ばしますが、神戸公演では上手くいかず歌い出しが入れなくなってしまいました(演奏はなんとか続けてましたが)。そのせいかどうか分かりませんが、得意のギタープレイが若干上手くいかなかった箇所がこの日は2, 3回ほどあったでしょうか。ホールでこの演出をするには手狭だった印象で、次にこれをやるとしたらドーム公演か、あるいは案外直近に控えている等々力スタジアム公演になりそうです。

 無事ライブは盛り上がって、廃校から脱出できることになったようです。もっとも見送りはお化けモード全開で、結局逃げるように廃校を後にしたという形でした。そこから急に実写映像になって、なんとか神戸・三宮に到着したという体で3人登場。ライブ当日はちょうど神戸まつりが開催されていて、普通に3人が祭りに紛れて屋台での食事を楽しんでいます。思いっきりギターを背負って行動して当然撮影もしているので、相当目立っていたのではないかと思われます。実際Twitterでも目撃ツイートがチラホラ見られました。どうやら午前11時くらいにその様子を撮影したようです。

 ここまでが第1部、映像の間に衣装もチェンジして第2部に入ります。今度は1階席客席扉から通路を通って3人が登場、オーディエンス大喜び。まずは声出し。いつも通り高校生、中学生とコールしましたが今回は浪人生までコールしていました(さすがにほとんどいなかったですが)。演奏は「みんなのうた」「量産型彼氏」

 1階席・2階席・3階席という具合で声出しもしますが、こくさいホールはバルコニー席みたいな独立した席が両脇に3段あります。何階席と形容しにくい位置なので、朝子さんはその形状を見て”サラダボウル”と名付けていました。ちなみに2年前同所でライブを行った際もそう呼んでいたようです。

 最初のMCの話題はおそらく各公演共通でしょうか、紅白歌合戦の裏話。演奏が終わって朝子さんが後ろを見ると吉川さんが号泣、ビックリという内容。ホーン隊と一緒の演出で、彼らの演奏が始まった瞬間に感極まってしまったのだそうです。その顔を見て2人していじられる辺り、彼女のキャラは確立されています。ドラムの演奏はものすごくカッコ良いのですが(「量産型彼氏」の間奏ソロはまさしく見せ場そのもの)。

 「きっとあの漫画のせい」「すれちがいのデート」「熱帯夜」、さらに新曲も披露。ここ最近ガールズバンドを続けざまに見ていますが、ボーカルに関して言うとやはり朝子さんが一段も二段も抜けています。非常に声量豊かで、なおかつ発声に間違いが全くありません。細やかな感情も出せる歌声の表現力は他に類を見ないタイプで、女性バンドでは他にチャットモンチーの橋本絵莉子くらいではないでしょうか。ハシエリについては「熱帯夜」を聴いた時にふと思い出したことですが。ちなみに「熱帯夜」は本公演で初めて今回のツアーセトリに入った形。確かにそういう季節で、3月にアコースティックで見た「さよならの季節」はいつの間にかセトリから外しているようです。

 吉川さん主導のMCは、ゲームが苦手な私(テトリスくらいしか出来ないとか)におススメのスマホアプリを紹介して欲しいとの話題。彩ちゃんがやっているのは「どうぶつタワーバトル」。オンラインで動物を積んで崩れたら負けという単純なゲームは、会場内でもプレイしている人がかなり多い模様。一方朝子さんは「TWO DOTS」「ママにゲーム隠された」というゲームをやっている模様。双方とも会場内の反応は薄め、特に後者はエンディングが相当シュールな内容のようでした。前者はかなりやり込んでいて、観客の一人がレベル300なのに対してレベル500くらいまで到達しているそうです。吉川さんから見ると、脱出ゲーム系の朝子さんがプレイするアプリは難しそうで、彩ちゃんがやっているゲームをまずは興味を示していました。

 「ロマンチックに恋して」「ほら、笑ってる」、7月川崎の等々力陸上競技場ワンマンについてのMCを経て最終盤は定番曲立て続け、「BYE BYE」「好き好き!」「タオル」「僕に彼女ができたんだ」「君と夏フェス」。「タオル」以降の3曲はもういつも通りと形容して良い領域に自分の中では入っていますが、そのいつも通りが待ち遠しく嬉しい気持ちになる楽曲群です。

 ラスト一曲、演奏前に”多くの人がSHISHAMOを知るキッカケになった曲””SHISHAMOとみんなを繋げる存在になった曲”、そして”SHISHAMOにとってすごく大切な一曲”であることを話します。その楽曲は紅白歌合戦でも歌われた、「明日も」


 ”良いことばかりじゃないからさ”という歌詞も好きですが、個人的には”ちっぽけなことで悩んでる”で始まる2番サビの歌詞。これだけ具体的にヒーローが生き方を教示してくれる曲は、他にないとともにこれからも自分が生きている間は表れないような気がします。もう既に、自分の人生では間違いなく5本の指に入るくらいに好きな曲になっています。SHISHAMOを好きになったキッカケは『SHISHAMO 2』とそれに収録された「さよならの季節」ですが、ここまで思い入れ深いアーティストになるとは当時まだ思っていませんでした。

 3人で手を繋いで挨拶、という段取りを忘れて彩ちゃんが舞台袖に行こうとするハプニングもありつつ終幕。アンコールの演奏は新曲。この曲もまた、朝子さんの具体的なメッセージが曲前にあり、歌詞にもそれがよく表れているナンバーでした。『SHISHAMO 5』に収録されるかどうかは分からないですが、また聴く機会はおそらくあるでしょう。そんな気がします。

 紅白歌合戦に出場したことで、現在のガールズバンド市場はSHISHAMO一人勝ちの様相を見せつつありますが、あらためてライブを見てもそれがよく分かるという内容でした。演奏が上手い方々は他にもいますが、楽曲と歌声にこれだけ強い説得力を感じさせるのはやっぱりSHISHAMOしかいないような気がします。再来月行われる川崎等々力スタジアム公演は、SHISHAMOだけでなくガールズバンドとしても初となるサッカー競技場でのワンマンライブ(野球場は西武球場・東京ドームのプリプリがいます)。もう完全に、SHISHAMOの歴史はSHISHAMO自身が更新するという領域に達してきました。次に行くライブも非常に楽しみです。

 

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