2019.5.4 VIVA LA ROCK 2019 in さいたまスーパーアリーナ 2日目

ライブレポ

 2014年初開催以来、ゴールデンウィーク恒例のロックフェスとしていまや完全に定着しているVIVA LA ROCK。これまで3日~5日の3日間開催だったのが、今回は6日まで4日間に拡大。ステージもアリーナモードからスタジアムモードに変えて、これまで以上に快適なフェスを作り上げたということです。個人的には今回ビバラ初参戦、スーアリ自体も初めてなのでこれまでとの比較はしにくい面がありますが…。

 今回は2日間参戦、そのうち2日目(4日)、3日目(5日)に見たステージを日毎に書いていきます。記事ではTwitterでのクイックレポをまず載せて、その後に全編見たステージは細かい内容を、断片的に見たステージはざっくりという形で書いてます。

never young beach(VIVA! STAGE)


 入場SEとともに、一人ひとりのメンバーの名前が呼び上げられながら登場します。一番最後に出てきたボーカル・安部勇磨は少しおどけながら。俳優の高橋一生の弟としても有名ですが、キャラクターはどうやら二枚目ではなく三枚目らしいことがその時点で想像つきます。「STORY」「どうでもいいけど」「あまり行かない喫茶店で」を立て続けに演奏。音源と比べると若干テンポが速かったでしょうか、演奏される音も生音の響きが心なしかやや激しめ。

 令和最初のライブということで、メンバーのテンションは高め。音源はクールなイメージもありますが、キャラクターは想像していたよりもかなり若々しい様子。「fam fam」、そして新曲の「いつも雨」を演奏した後に再びMC。このステージで使える炎の演出について解説をはじめます。各アーティストについて1回ずつ好きな場面で使っていいようですが、この演出が似合いそうな楽曲は彼らに関するとあまりないそうです。というわけで、誕生日を迎えたばかりのギター・阿南智史へ「Happy Birthday」を一節歌った後にありったけの炎を打ち上げる新しい使い方を見せていました。

 直後に歌う「明るい未来」は、なんだか彼ら自身について歌っているかのような印象も持ちました。「お別れの歌」をラストに持ってきて、流れもバッチリ。発表された楽曲が楽曲なだけに、もう少し落ち着いたステージを想像していましたが、少なくとも演奏とノリに関しては明るく迫力あるロックでした。一般層にもライブキッズにも好まれそうな雰囲気を持っているのは強いです。次にステージで見る頃には、もっと大きな存在になっているような、そんな気にさせる素晴らしいアクトでした。

竹原ピストル(STAR STAGE)


 スタジアムモードの一番大きなステージは、スタンドを含めると1万人を余裕で超える規模。ですが竹原ピストルはソロアーティストであるとともに、自前のバックバンドも全く引き連れていないので、ステージに立つのは完全に1人。その人数の対比が、彼の場合他のアーティスト以上に際立ちます。

 「おーいおーい」、曲紹介を兼ねたMCを経て「LIVE IN 和歌山」。1曲ごとに丁寧に進みます。オリジナルの音源はバンド演奏などもありますが、このステージは本当にギター一本。彼の野太い歌声が直に広い空間に響き渡ります。声量も、歌声に込められる心も溢れるばかりの凄まじさ。彼以外には真似できない、出せないような歌声です。

 「Gimme da mic」、「Forever Young」。さらに吉田拓郎の名曲「落陽」のカバー。ジャンルに入れるとするならば、おそらく敬愛する拓郎さんが属するフォークソングなのだと思いますが、魅力はそのジャンルに収まり切らないものがあります。長渕剛、河島英五…男らしくシンプルで、どことなく不器用さも感じさせる人間性。近い系譜にいるとしたら彼らのような気もしますが、でもやはり突き詰めていくと前例のない存在であることは間違いないように思えます。

 「Amazing Kiss」に、自ら”スマッシュヒット”と称して歌う「よー、そこの若いの」。大きな映像に映る自分を見て”歌いにくいなァ”と笑いながら自虐的に、しかし更なる大ヒットを求めて貪欲さをアピール。そこから語りの楽曲「狼煙」を経て、ラストはハーモニカも加わってお馴染みのスタンダード「My Way」で締めくくります。これほどまでに声の力が凄いと思わせるステージは初めて見たような気がしました。次に見る時は、逆に小さいライブハウスのワンマンになるかもしれません。

SKY-HI(VIVA! STAGE)


 CAVE STAGEの赤い公園が入場制限だったので、急遽こちらを見る形に。ビルボードチャートレビューでチラホラ取り上げる機会はあったものの、しっかり聴いてはいなかった形。リハーサルでは本人(設定は本人でないようですが)も登場しますが、アリーナの埋まりはまだそこまでではない様子。

 それぞれの曲の認識が追いついていないので、1曲ごとの推移は省略しますが10曲近く演奏していました。当然楽曲はラップが主体であるものの、そのジャンルはヒップホップの範囲に留まらず、かと言って単純にミクスチャーロックに内包されるわけでもなく。個人の高い能力に、エンタメ性とサービス精神を最大限に取り入れた独自のジャンルを作り上げていました。1曲だけでなく1ステージで複数曲単位で聴くと、それがより際立っていたような気がします。AAAというアイドルグループ(アイドル、というのは自ら言っていました)で活動している関係上周りからも様々言われているようですが、それに左右されずに自分のやりたいことを貫くこと。ステージを通して十分感じられたことではありますが、終盤のMCでその感覚は正しかったとあらためて認識。同時に、自分にとっても印象的な言葉として深く刻まれました。次のステージの関係でしょうか、あるいは彼自身のカリスマ性でしょうか。終わり頃にはしっかりアリーナを埋めていました。

King Gnu(STAR STAGE)


 現在最も注目を集めているアーティストだけあって、会場は1万人以上のオーディエンスでギッシリ。そのままこの会場でワンマンできる勢いですが、ステージも凄かったです。

 話題になったアルバム『Sympa』収録の「Slumberland」からスタート。常田大希が拡声器を使って歌う光景はもはや演説。見た目といい声といい、nobodyknows+を彷彿とさせる部分もありますがトラックの内容は全く違います。横にいるキーボード・井口理は今までにあまりいないタイプの髭面、よく聴くと妙に澄んだ良い声をしています。その後の「Sorrows」「Vinyl」は彼がメインボーカル、現在ヒットチャート上位にランクインしている「白日」では大きな歓声が挙がります。

 セットリストはその『Sympa』中心、後は「Flash!!!」「Prayer X」「The hole」に1stアルバムから「Tokyo Rendez-Vous」。Mステ出演の際に大きな反響になりましたが、あらためて見ると当然。過去全く見たことのない類のステージは、音源よりもはるかに迫力とオーラがありました。THE BLUE HEARTSやBOOWYが登場した時も、もしかするとこういう感覚だったのかもしれません。令和初期の伝説になる雰囲気もアリアリ、ただ逆に言うと20年30年後にこのメンバーで活動する姿も想像できません。いずれにしてもとんでもないバンドが出てきた、それはステージを見た全員が抱いた感想ではないでしょうか。心より凄いと思わせた、そんなステージでした。

CHAI(VIVA! STAGE)


 NEGiFES2017以来約1年半ぶりに見るステージ。全くの初見で見た前回は今までにない楽曲とステージに大変な衝撃を受けましたが、その時にも演奏されていた「ボーイズ・セコ・メン」からスタート。最新アルバム『PUNK』収録の「CHOOSE GO!」「ファッショニスタ」を普通に演奏した後は、グッズとCDの紹介。これを自作の歌に乗せるスタイルも、他のバンドではあまりない新鮮な内容。

 いまや彼女たちのトレードマーク「N.E.O.」は曲紹介にも時間をかけます。マナカナが英語で”コンプレックスはアートなり”などのコンセプトを喋るのを、ベースのユウキが棒読みで日本語に訳すシーンがなかなかシュール。「カーリー・アドベンチャー」「We Are Musician」、ドラムのユナ中心のMCの後に「フューチャー」。相変わらず大変個性的でユニークですが、1年半の間にリリースされて今回披露された楽曲は、以前ほどの奇抜さはなかったでしょうか。それでも初見だと間違いなく驚いたと思いますが。ステージ自体は実力がついて若干の安定も感じたものの、このバンドの場合安定という言葉は全く似合わないような印象もあります。次回彼女たちを見るまでに、果たしてどの地点まで到達しているかといったところ。

田島貴男(GARDEN STAGE)


 こちらもNEGiFES2017以来見るのは約1年半ぶり。ただ前回見たのがORIGINAL LOVEの本気仕様だったのに対して、今回は野外の小さいステージということもあって一人ソウルフルスタイル。ですのでアーティスト表記も田島貴男名義になっています。

 銀色のギターは弦楽器とともに、ボディは打楽器としての機能も果たしているようです。テンション高く、デビュー初期の「BODY FRESHER」からソウルフルな演奏。「ローラー・ブレイド・レース」「フィエスタ」に、最新アルバムからPUNPEEとコラボした「グッディガール」は彼のラップまで自ら担当。名曲「接吻」では大歓声が挙がります。「フリーライド」にラストはハーモニカも入れて「JUMPIN’ JACK JIVE」

 一言で言うと、ギター1本だからこそ極めて自由度の高いステージでした。当日のノリと雰囲気次第でいくらでも変えられると瞬時に推測できるアレンジは、ハッキリ言って物凄いです。学生時代を含めて40年のキャリアを持つ音楽家は、やはりレベルが違います。

Awesome City Club(GARDEN STAGE)


 過去ビルボードチャートレビューで取り上げた際のイメージは渋谷系・シティポップ系といったところでしたが、実際野外のステージで彼らを見た感想は心地良い風が似合う音楽といったところ。冒頭の「Don’t Think, Feel」はまさにその象徴でした。「青春の胸騒ぎ」を経て、「クリエイティブオールナイト」は男2女1のラップが印象的なナンバー。レア曲と紹介してはいましたが、ステージを振り返ると一番記憶に残ったのはこの曲でした。残りの「君はグランデ」「SUNNY GIRL」「Catch The One」は最新アルバム『Catch The One』からの選曲。

 センスの良さと引き出しの多さは伝わりましたが、どの曲が軸なのかメンバー構成以外どこが一番の個性なのかは初見だと少し分かりづらい面がありました。全体的にかなりマジメなグループという印象もあったでしょうか。確かに音源を聴き直すと多彩な音色が耳をひきますが、やや規模の小さいこのステージだとその長所が完全に活かされてたとは言い難いような。注目度の高さの割にもう少し実績があってもいいように思いますが、その理由もほんの少し見えたような、そんな気もしました。

VIVA LA J-ROCK ANTHEMS(STAR STAGE)

 ざっくり言うと亀田誠治が率いるバンドの生演奏で、出演者が色々歌うというコーナー。GARDEN STAGEからアリーナに戻る頃には既に始まっていましたが、そこにはACIDMANの大木伸夫があいみょんの「マリーゴールド」を歌うというなかなか想像できない光景でした。CHAIの双子・マナカナがゴダイゴ「銀河鉄道999」を歌い、亀田さんに「OSCA」の演奏をリクエストした後にこれまた双子のフレデリック・三原健司が「キラーチューン」を歌うというなかなかの展開。で、先ほどGARDEN STAGEで見た田島貴男が登場して人の歌じゃなく自分の持ち歌「接吻」を歌います。

 「接吻」はGARDEN STAGEでも聴いたので本日二度目、もう一つスカパラじゃないこのバンドver.の「めくれたオレンジ」も演奏。go! go! vanillas・牧達弥の「歩いて帰ろう」を経て、ラストはKing Gnuの井口理と常田大希が歌う「Fantasista」。「Fantasista」は本家にも負けないほどの迫力とKing Gnuならではの強い個性で、見事なくらいにステージを自分たちの色に染め上げていました。ドラムの櫻井誠は桜井食堂という名前で出店していて、本人自ら接客してサインなどにも応じていましたが、まさかこんな形でカバーされるとは思わず。トリビュートアルバムがリリースされる機会があれば、もうそのまま彼らのパフォーマンスでこれを選曲して欲しいと心から思える出来でした。

PUNPEE(VIVA! STAGE)


 全くもって初見。ただラッパーとしては噂に聞いているレベルで、確かに遠くのスタンドからでも見ていて気持ち良くなる内容でした。ここでもコラボしている田島貴男がゲスト登場、本日3ステージ目。彼だけでなく宇多田ヒカルに加山雄三とも繋がりがある、ということが凄さの証。次回見る時は、もう少し作品を聴いてから楽しみたいです。

 

Suchmos(STAR STAGE)


 1曲目の「Pacific」からして思いっきり聴かせるナンバー。その演奏とステージングには自信が溢れていていて、強気さを感じました。続く「BODY」も聴こえる音全てが心地良いです。新しいアルバム『THE ANYMAL』からの「ROLL CALL」は、アップテンポでないながらもギター中心にやや攻撃的なサウンド。これだけ”静”の要素が強いロックナンバーも珍しく、Suchmosの新しい凄さが出ている楽曲と言えそうでした。

 MCを経て名曲「MINT」「VOLT-AGE」。昨年は色々言われた「VOLT-AGE」ですが、ライブで聴くとやはり間違いなく完成度高いです。軽快な「YMM」を経て、ラストは最新アルバムから「WATER」で締めます。

 ボーカル・YONCEの噂も常々聞いてはいましたが、やはり流石。ただMCの一言一言よりも、声質からは想像できないくらい伸びのある歌声・声量が強く印象に残りました。自らのやりたいこと・意志を貫いてそれを実行させるという強さを隅から隅まで感じ取れて、だからこそカッコ良いと心から感じられるパフォーマンスでした。

Official髭男dism(VIVA! STAGE)


 リハーサルの時点で思わずオーディエンスが驚くボーカル藤原聡の声量。「ESCAPADE」を演奏していましたが、この時点で場の空気を支配してしまっています。本番も一番知名度が高いと思われる「ノーダウト」を選ぶ辺り強気。ビバラロックは今回初登場だそうですが、全くそんな雰囲気を感じさせません。その後も「Tell Me Baby」「バッドフォーミー」、最初から飛ばしまくってます。オーディエンスの動きも見事に揃っていて、メジャーデビュー2年目のステージとは全く思えない光景。それはライブの乗せ方だけでなく、演奏や楽曲特にメロディーの作り方についても同様。

 バラードを歌いますという紹介のもと選曲した「LADY」、そこで見せた歌声は凄まじいものでした。声量だけでなく、美しい裏声にそもそもあまりそれを必要とさせない音域の広さ。更に言うと言葉を大事にしていると思わせるフレージングへの高い意識、この後に選曲されたアップテンポ曲になっても伝わる明瞭な発音。この10年近くで数多くのアーティストを見てきましたが、今まで見た中で最高クラスの男性ボーカルと言って良いかもしれません。少なくともここ何年かの新顔では間違いなく、ブッチギリでトップです。

 そんな状況なので、続く盛り上げ曲「ブラザーズ」では完全に空気が出来上がっています。サビの手の動きはフロントエリアだとほぼ100%完璧でした。ロック色強いナンバー「FIRE GROUND」、そして極めつけは「Stand By You」。サビの手拍子と、さいたまスーパーアリーナ中に響き渡るオーイング。あまりの凄さに、感動さえ憶えてしまいました。ラストは「異端なスター」、ステージ終了後の余韻は年に1回あるかないかのとてつもない大きさでした。

 RIJでSuperflyを初めて見た時、あるいはレディクレで見たサカナクションや「恋」を初披露した時の星野源辺りとも並ぶ、今までの10年間で見てきたフェスのステージの中でも文句なしにトップクラス。思わずTwitterでは令和のミスチルになれる存在、とまで書いてしまいましたが、そう思わせる雰囲気は間違いなくありました。楽曲の良さ・引き出しの多さは前回のアルバムからも感じましたが、生のライブは更に圧巻。間違いなく後年、この時の彼らのステージを見られて本当に良かったという時期がくるでしょう。既に日本武道館ワンマン完売で追加公演も出るという状況ですが、数年後にはこの会場のワンマンをスタジアムモードもしくは東京ドームクラスまでいくのではないでしょうか。

ASIAN KUNG-FU GENERATION(STAR STAGE)


 この日見た中では田島さんを除いて唯一の古株、見るのは5年前のREQUESTAGE以来。その前が2012年のレディクレなので考えるとかなり前です。というわけで前半は「UCLA」「ホームタウン」「荒野を歩け」と、ここ最近発表されて生で見るのは初めてとなるナンバー。ノリやすい楽曲というわけではないので、会場はじっくり彼らの演奏を聴き入るといったモードでしょうか。場面変わって懐かしい「君の街まで」、そして思ったより早くドロップされた「リライト」。一番盛り上がる曲ですが、今回はその日交渉して快諾してくれたというR指定がゲストボーカルとして出演。ラップが加わって、普段とひと味違うステージに仕上がっていました。「迷子犬と雨のビート」「踵で愛を打ち鳴らせ」辺りは一番アジカンを聴いていた時期の楽曲なので、演奏してくれることの嬉しさと少々の懐かしさが自分の中で共存します。「センスレス」「Standard」を経てラストは「ボーイズ&ガールズ」、アンコールは新曲の「解放区」。後藤さんのMCは、「リライト」以外は…なんていう自虐もありましたが、基本しみじみとこの場の雰囲気を楽しんでいるかのよう。彼らがデビューした当時は、確かに現在のようにロックフェスは多くなく、それが増えたことに先人としての嬉しさを感じている様子でした。

この日の感想

 今回のVIVA LA ROCKはそれぞれ出演アーティストの傾向が決まっているようで、前日はKEYTALKやヤバイTシャツ屋さんなどの盛り上がり系が主役。この日は振り返ると聴かせる系のアーティストが多く、特にラップを多用する方々が目立ちました。SKY-HIやPUNPEEが一番典型的ですが、それ以外でも歌詞を語りのように使うミクスチャー系が目立っていたような。いずれにしても、この日見たアーティストはアジカンを除くとほぼ初見か2回目くらいの新しい人たち。非常に収穫の多い一日であったことは間違いありません。

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