2018.11.11 私立恵比寿中学 秋のツアー2018~9年目、義務教育からの卒業~ in 神戸国際会館こくさいホール

ライブレポ

 ここ2年ですっかり行く回数が増えた私立恵比寿中学の学芸会。思えば初参戦はまだ9人時代の2013年で、その次は2016年の神戸国際会館こくさいホール公演。アルバム『穴空』がリリースされた直後の全国ツアーでした。当時はやっとメンバー全員の顔と名前が一致し始めた頃。年1くらいならともかく、ファンクラブに入って何ヶ月に1回のペースで足を運ぶことはまだ想定していなかったです。今回の秋ツアー、こくさいホールで開催されるのはその時以来2年ぶり。グループ編成も大きく変わりましたが、結構な大きさの会場をソールドアウトさせているのは変わりありません。果たしてどんな内容だったでしょうか。早速レポしていきます。

 エビ中のFC先行チケットは毎回席運がかなり良く、今回も前から8列目真ん中。6人の表情が肉眼ではっきりと見れる好位置。ただこれだけ良席が続くと果たして埋まっているのかという気持ちにもなりますが、今回の秋ツアーは全会場チケット完売。来月クリスマス近辺に3日間行われる幕張イベントホールワンマンも1日目は即日完売、集客力はまだまだ好調といったところ。結成9周年、ちょうど義務教育の期間と同じということでツアーテーマ及び場内SEは卒業。「贈る言葉」に始まり「さよならの季節」「サヨナラの意味」「卒業」(渡辺美里、ガガガSP)など、J-POP中心に洋楽や合唱まで網羅したそのセットリストは、他でまず聴けないと思われるノンジャンルっぷりでした。

 

 昨年の秋ツアーと同様、セットは至ってシンプル。ビジョンに柱上の照明が6つ置かれているくらい。いつもの「ebiture」が場内に流れて幕が開き、しばらくするとメンバーが下手側から登場。グレーを基調とした衣装はシックな装い、髪飾りのようにチョコンと乗った小さな帽子がアクセントになっています。一曲目は「きっとインフィニティー!」。演奏される機会は少なくありませんが、ライブのトップを飾るナンバーとしてはかなり意表を突く選曲です。2曲目は「キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~」、3曲目はダイオウイカのくだりから「未確認中学生X」。のっけからアゲ曲連発、シンプルなセットと合わせると3月に足を運んだFCイベントに近いスタート。

 

 最初のMCで、今日の日直が安本彩花であることが発表。東急ハンズかロフト辺りで買ったと思われる”本日の日直”タスキがかけられます。今回のツアー、それぞれの公演に日直を設けて、10周年に向けてひとりひとりの推進力を促進していこうという狙いがあります。”推進力””促進”という慣れない言葉になるとしどろもどろになる安本さん、早速らしさを見せています。ちなみに今ツアーは2公演目、先週の川崎公演ではぽーちゃんが日直だったようです。自己紹介は安本→柏木→中山→星名→小林→真山の順。パートごとに、それぞれメンバーカラーに変わるセットの照明が粋です。美怜ちゃんは自己紹介前にロックバンドっぽい声出しをやや長々と、ぽーちゃんは”神戸牛だけにギュギュッと”なんていうくだりを必要以上に何度も。そして真山さんは前方普段以上に女性の比率が多いのを見て、男子!女子!というよくある形の会場アンケート。全体的には男性が多いものの、FC会員がほとんどと思われる1階前方エリアは男女比6:4か5:5くらいで拮抗しているようにも見えました。初めてエビ中を見る人はやはり2階3階が多い模様。なお”リア充!”のくだりでは、色々喋った後最終的に彼氏彼女がいなくても今日見に来てくれた人はみんなリア充という結論に至ります。結局もう一回、リア充の呼び掛けに全員でイエーイ!とレスポンス。

 

 続いてのブロックもアゲ曲、もう学芸会の定番となっている「CHAN-CHARA-CHAN」から。それに続くのはクールにカッコ良く聴かせる「キャンディロッガー」。同じアップテンポでも、曲の雰囲気やリズムの使い方が随分違います。その両方で最大限に魅せたところで今年の楽曲「スウィーテスト・多忙。」。90’s J-POPの雰囲気も感じさせる明るいナンバーの次は、トリビュートアルバムで歌った椎名林檎のカバー「自由へ道連れ」

 鮮やかな振り付けはこの曲に限ったことではないですが、おそらく6人が縦横無尽に動いてステージを目一杯活用する演出はエビ中ならではでしょう。メンバーの素晴らしい歌声は、ただ上手いだけでなく声にもおおいに特徴があり、カラフルと称して全く差し支えありません。そしてアイドル最大の利点としてルックスのかわいさ・美しさがあります。ひなたの”道連れしちゃうぞ”の台詞は特に究極。Youtubeのコメント欄、林檎嬢を通して初めてエビ中を知ったと思われる人々が揃いも揃って絶賛しているのがあまりにも痛快です。

 

 というわけで、前半の時点で早くも凄いものを見せてくれるわけですが、MCは自他ともに認めるグダグダ。確かに2年前、Perfume公演の次の日に足を運んだ時はもうちょっと何とかした方が…と思ったのは間違いなく事実ですが、行き慣れるとこれも味というもの。むしろ素晴らしいステージとのギャップが年々増大していて、もっとカオスになってもいいくらいかもしれません。と言ってもこの日はいつもよりはまとまってた気がします。この会場ならではの、1階席と2階席の間にある横のブロックをどう呼ぶ?という話をしていました(中2階のことです)。

 

 短めのMCでライブ再開後の楽曲は「熟女になっても」。今年発表されたノリノリのラップナンバーもまたエビ中の幅を広げる楽曲になっています。SUSHIBOYSが本来担当しているラップパートは、普段担当しているYASUBOY(安本)に加えてNAKAYAMABOY(りったん)も担当。小道具のサングラスも2つ用意されています。とってもファンキー、極めてグルービー。もう気がつけばエビ中だけでほとんどの音楽ジャンルを網羅できるのではないかという領域に達しつつありますが。「全力☆ランナー」を経て、続いては本日最大のハイライトとも言える「春の嵐」

 

 真山さんのアカペラで始まる歌い出し。その前のMCではステージ袖にはけていましたが、おそらく極度の緊張のためでしょう。それが伝わる歌声でもありましたが、実現可能にしたのは言うまでもなく彼女の圧倒的な歌唱力。アカペラがなくても凄いと感じさせるパフォーマンスになる楽曲にこの演出、言葉を失いました。更に言うと、直後に続く楽曲が思いっきり歌唱力で聴かせる「フユコイ」。いやもうこれは…。両方とも歌うには極めて難しい楽曲、凄いという一言では到底片付けることが出来ないとんでもないパフォーマンスでした。

 

 テーマを設けたMC、今回は会場別、初めてエビ中を見に来た人をステージに招待して一緒にトークするコーナー。今回登場したのは尼崎から来たという中年の男性、職業は声優なのだそう。ですので軽妙な喋りは明らかにエビ中の6人より上でした。あだ名をつけて欲しいというメールの声にお応えして、マリオ以外をお願いしますというリクエストの元つけられたのが「キュッキュ」(りったん)、「ブロッコリー」(ひなた)。なおその方の名前はオカノアキラ。業績は紹介されていませんでしたが、調べると毎日放送のキャラクター・らいよんチャンの声の主なのだそう。結構な大物です。むしろなぜそこを本人もメンバーも紹介しなかったのかというくらい。というわけでブロッコリーキュッキュという名前で、Twitterのプロフィール欄にも早速追加されたようです。MBSではメンバーがラジオ番組を担当していて、前日はそこ主催のイベントにも出演しています。ですのでおそらく関係者的な位置づけで考えた方がいいのかもしれません。

 さて、ライブ再開後に選曲されたのは「大漁恵比寿節」。この曲は今年1月に卒業した廣田あいか・ぁぃぁぃが特に目立っていた曲なのでどうなるかと思いましたが、口上がぽーちゃんに代わる形で歌い継がれたようです。相当な存在感を見せていたメンバーだったはずなのですが、今となってはその穴が埋まるどころか溢れるほど。考えてみれば恐ろしい話です。それに続くのがひたすらタオルを回して盛り上げる「揚げろ!エビフライ」というのもなかなかのギャップ。そして今年のファミえんのテーマ曲として配信リリースされた「イート・ザ・大目玉」。見応え聴き応え十二分、アイドルソングとしてもロックナンバーとしても超一流の楽曲・パフォーマンス。そこから「Go! Go! Here We Go! ロック・リー」でまた賑やか系。一曲ごとの落差が本当に凄まじいことになっていました。

 

 先述した通り、今日の日直は安本彩花。MCで語ります。”エビ中が歌っている曲はエビ中が歌うべき曲”、”一曲一フレーズでも皆さんの元気になれば”、そんな前フリのもと「I’m your MANAGER!!!」の演奏に入ります。普段は何かしらトチることが多い彼女のMCですが、ここに関しては100点満点の完璧な出来でした。昨年の春ツアーでもそうですが、締める時は本当に締めます。選曲も言うことなしで、本当に素晴らしかったですね。その後の「ポップコーントーン」も聴く人を元気にさせる名曲、ここで紙テープの演出も入ります。ラストは美怜ちゃんの”絶対負けない”という台詞に始まる「涙は似合わない」。言うことなしのラストでした。

 

 本編が全部終わったところで、今日のセトリが書かれたホワイトボード登場&解説。今回は、あらかじめエビ中スタッフ=職員・現国の先生こと近藤キネオ氏が決めたセットリストに何曲か穴埋めを作って、そこに日直が楽曲を埋める形。今回のセトリで、安本さんが埋めた曲は「キングオブ学芸会のテーマ~Nu Skool Teenage Riot~」「キャンディロッガー」「春の嵐」「揚げろ!エビフライ」「I’m your MANAGER!!!」「涙は似合わない」。方向性はキネオ氏と大きくは変わらないようですが、結果としてはほぼ彼女の決めたセトリの方が上回っていたように感じます。「春の嵐」でアカペラを入れることに決めたのは3日くらい前のようで、真山さんがあたふたしていたという裏話も。ちなみに雑談系のMCはグダグダになる彼女たちですが、こういうライブの本筋に関するMCはみんな実にマジメによく考えていて、グダグダ感は全くなかったです。ステージだけでなくそこに至るまでの過程でも、エビ中のメンバー・職員が本当にマジメに取り組んでいることが大変よく分かる光景でした。

 

 アンコールはメンバーTシャツに着替えて「HOT UP!!!」。もう結構な回数を見ている楽曲になりますが何度見ても素晴らしく、安本さんのフェイクも見るたびにクオリティー上がっています。今日の彼女は本当に覚醒したのかと思ったところで、「フォーエバー中坊」の歌い出しでアドリブ失敗。出てきたフレーズの字数とリズムが全く合わず、ファミリーだけでなくメンバーも大爆笑。でも心の中で、少し安心したのは私だけでしょうか。笑顔がかわいいアイドルは他にも多数いますが、そこから人柄の良さも溢れるくらい伝わってくる女性は彼女以外そうそういないのではないかと思います。というわけで、2曲終わった後のMCはやはりその場面が中心でした。

 

 メンバーが6人編成になったのは2018年の1月4日。果たしてどうなるかと言ったところでしたが、明らかに以前より強くなっています。3ヶ月前に見た@ JAM EXPOでは、もう女性アイドルグループで追随する者がいないというレベルのパフォーマンスでしたが、ワンマンになると更に色濃く出ていました。先輩のももクロが既にそういう域に達してはいますが、エビ中も完全に平成後期の女性アイドルグループで言う伝説の存在になっています。ここ2年、飛躍的に足を運ぶことが多くなった学芸会ですが、活動10周年を迎える来年は更に本腰を入れる形にするかもしれません。足りないところを挙げるとしたら実績と知名度だけ。おそらく今のエビ中を知らない人がライブを見ると、その凄さにビックリすると思います。本当にもっと、それこそ興味がない人でも聞いたこあとあるような、知らない人がいない存在になって欲しいです。

 

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