2025.9.23 Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME

ライブレポ

 2008年8月2日に足を運んだROCK IN JAPAN FESTIVAL以来全ての公演参加履歴をメモしていますが、それによると今回自分がPerfumeを見るのは42回目となります(フェス含む)。東京ドームへ見に行くのは2013年LEVEL3ツアー以来12年ぶり。メジャーデビュー20周年・結成25周年という節目を考えると今回は参戦以外の選択肢は有り得なかった訳ですが、チケット入手時点ではまさかコールドスリープという名の活動休止最後のコンサートになるとは思いもせず。確かにここまでずっと大きな休みなく走ってきた彼女たちなので、どこかでそういう時期が来るとはここ何年も想像はしていましたが…。

 というわけで今回は極めて重要な意味を持つライブであり、終演直後から各スポーツ紙に情報番組など多数のマスコミが取材しています。本当に詳細なレポはそれこそPerfumeとともに発展した媒体・音楽ナタリーが記事にしています。というわけでこの記事では詳細というより現場の雰囲気・自分の観点や振り返りに重点を置いて書くことにしました。

 

~開演前~

 JRの水道橋駅から東京ドーム、さらには東京ドームシティを歩き回りましたが言うまでもなくPerfumeのファンだらけ。グッズ売り場は普段以上に長蛇の列ですが、ファン同士の交流があったり各曲衣装のコスプレ撮影会のようなものがあったりする光景はいつも通り。コールドスリープという大きな発表はありましたが、案外オーディエンスの表情に悲壮感は無くいつもと変わらない様子に見えました。むろん内心は分からないですが…。

 入場するのは24番ゲートですが、そこに向かう途中にあったのは今年逝去されたミスタープロ野球・長嶋茂雄氏のコーナー。永久欠番の背番号3、さすがにそれを3人組の彼女たちに結びつけるにはこじつけが過ぎますが、なんとなく運命めいたものを感じる部分もあります。ちなみに長嶋選手が現役だったのは1958年から1975年、ルーキーの年は引退する年から数えてちょうど17年前のことです。

 

 24番ゲートから入場した席は1階3塁側43通路16列410番、いわゆる内野席。東京ドームはアリーナからスタンドにかけての壁が低く、会場の広さに対してあまり遠さを感じさせない良席でした。12年前LEVEL3ツアーの時に2日間足を運んだ際は1日目がスタンド最後方で音が反射しまくり、2日目が1階と2階の間にあるバルコニー席。12年前は今より倍率が高かったという側面もありますが、当時よりは格段に良い席を確保出来ています。

 30分前にトイレに行きましたが、そこでは女子だけでなく男子の方も長蛇の列。というわけで結果的に開演時間は15分遅れました。開演予定時間が近づくにつれてメンバーへの声援が大きくなり、5分前辺りからはいつも通り手拍子発生。数万人レベルが手を叩いていますが、館内アナウンス開始とともに1人残らず鳴り止むのがファンマナーの良さでしょうか。10年ほど前、場内の声に対して”はーい!”と返事する流れにあ~ちゃんがMCで直々に注意する一幕はありましたが、もうそんな方は1人たりとも残っていません。

 ただそんな係の方も、当然このたびのニュースは頭に入っています。淡々といつも通りアナウンスした後、”それでは最後までお楽しみください!”の声は明らかに上ずっていました。

 

コールドスリープ直前・最後の幕開け

 ネビュラロマンス前篇のツアーでは、アルバムと全く同じ曲順でストーリーとともに進行する展開でしたが、後篇の幕開けは17年前の出世作「GAME」でした。これは2020年の“P Cubed” in Domeツアー(2/8 福岡公演レポにリンク)と同じ、つまり言うと5年前に開催中止になった東京ドームのリベンジというわけです。

 個人としては、2008年にファンとなったきっかけがアルバム『GAME』。インストアイベントに行き、ロッキンに行き当時大阪開催もあったCOUNTDOWN JAPANにも行き…とライブに足を運ぶきっかけにもなった作品です。つまりこのアルバムがなければ今の自分の音楽スタイルは全く異なっていた…それくらいに自分の音楽史における重要な作品になっています。初めてこの曲を聴いた時の衝撃は、17年経った今でも鮮明に憶えています。

 その次に披露された曲は「再生」、2020年当時の最新曲です。つまり言うと5年前のリベンジを果たす形になるわけですが、コールドスリープ発表後に見ると早くも先を見据えているような…そんな選曲にも見えました。

 

あらためてネビュラロマンス・後篇のスタート

 前篇でも展開されていたストーリー映像も交える形で、「Cipher」「再起動世界」「ネビュラロマンス」の3曲をパフォーマンス。今回のアルバムはこれまでになく歌詞が前に出ている印象を持ちましたが、それはコールドスリープ発表によってより顕著になったような気がします。パフォーマンスからもそこが読み取れるような、いやあるいは案外気負わずいつも通りでもあるような。3人は機械人間と思いきや真人間というアルバムと連動したストーリーは、楽曲とパフォーマンスを持ってより説得力を持たせているようにも見えました。

 一旦パフォーマンスを終えて、MCの時間に入ります。「ユカです」「アヤノです」「アヤカです」、劇中のキャラクターと連動させているので名前がいつもと違う口上になっています。怒られてる時にしか呼ばれたことのないアヤカの呼称、実際に使われていたとしたら同時期にヒットしていた漢字のみ異なる女性歌手と混同しそうな勢いです。

 コールドスリープが前向きな決断であること、5年前の東京ドームのリベンジであること、アンケートによって10代から70代以上まで揃う客層であること、各ブロックごとへの声出しなどが今回のMCの流れ。大変広い会場である東京ドーム、あ~ち…アヤカの指示は”1階!と言い終わるか否かのタイミングで声を出す”とのことでした。果たして配信では、あるいはいずれリリースされるであろうブルーレイではどう聴こえているのでしょうか…。

 

3人はこれからも、ずっと大丈夫

 ライブ再開後の披露曲は「エレクトロ・ワールド」、もう何度現場で見たか分からないほどの定番曲です。声出し直後の選曲、推定4万5千人の”Yeah!”はさぞかし圧巻だったと思われます。プロモーション番組でありえないほど狭いスペースで踊った映像は今でも動画サイトに残っていますが、いまやドーム公演で何度も披露され紅白歌合戦歌唱曲にもなっています。ところで映像では、「リニアモーターガール」「コンピューターシティ」を筆頭とするMVが流れます。不思議なモードの中、再び『ネビュラロマンス』から「ソーラ・ウィンド」「Virtual Fantasy」と続きます。このアルバムにおける新曲はコンセプト性が強いだけあって活動再開後パフォーマンスされる可能性は極めて低い必見シーンです。「ソーラ・ウィンド」ではレーザー光線で柱を作る見たことのないような演出、「Virtual Fantasy」はキックボードで花道を動き回るパフォーマンス。映像や曲もさることながら、演出もまた一朝一夕で実現させることが不可能な領域にこの時点でもう達しています。

 天井まで影が伸びる「FUSION」の演出は自分が見る角度からだと体感しにくい部分もありましたが、後であらためて写真を見ると圧巻も圧巻。その流れで始まる「Perfumeの掟」は2010年東京ドームの進化版。自分はDVDで1回見たきりなのでほぼ新鮮な気持ちで凄さを体感しましたが、この現場にも多くいただろう15年前を直接見た立場だとまた異なる面もあるかと思います。アップデートされた「10人のかしゆか」「あ~ちゃんの風船狙撃」「のっちの歴代シングルのポーズ」。当時もそうですが現在の世界から見ても、日本の映像コラボパフォーマンスでこれ以上の内容はまず見れないと言い切れるパフォーマンスです。

 「Flow」を経て「Teenage Dreams」はそれぞれの花道先端ステージでマイクを持って歌う生歌パフォーマンス。後者では間奏にネビュラロマンス後篇のストーリー映像が挿入されます。物語もいよいよ大詰め、「Human Factory -電造人間-」「Moon」を経ていよいよ「exit」。”これからも、ずっと大丈夫”というキャラクターのセリフは、劇中だけでなく現実世界の3人に向けての言葉にもなっています。具体的にいつコールドスリープの話があったかは分からないですが、今思うとこの結論から逆算して映像込みのアルバムが作られたような気もしています。

 

興奮が止まらない後半パート

 “ARE YOU READY TO DANCE?” “REMIXED BY YASUTAKA NAKATA”、スクリーンに映し出された文字とともに始まるのはあの「ポリリズム」。3人の存在が世の中に広まる大きなきっかけになった曲は、発表から18年経っても会場をダンスフロアに変貌させるナンバーとして作用してます。その後は『GAME』収録曲「Butterfly」。近年だと2018年のFUTURE POPツアー(翌年3/7 大阪公演レポにリンク)で披露していました。”気になる気になる”でおなじみの「edge」を経て、「チョコレイト・ディスコ」はその勢いのままいつもより若干速いテンポで披露。4万5千人の”ディスコ!”はもはや初めてのことでは無いとは言え、ステージにはどう聴こえていたのでしょうか。

 そのまま突入したP.T.A.のコーナー。あ~ちゃんの号令に合わせてみんなで踊るライブお馴染みの企画も15年近く続けています。男子!女子!に始まり、上の歯下の歯の「はみがきのうた」を経て、皆さんに秋の風物詩かぼちゃ・すすき・栗拾いのポーズをそれぞれ模写してもらう展開でした。配信を行っている関係もあるでしょうか、人の歌を拝借して一緒に踊るパートは今回無し。いやもしかすると配信が無くとも今回が暫しのお別れなので、Perfumeの曲で完全に埋め尽くしたいという意図ももしかするとあったのかもしれません。

 コーナー明けの曲は「FAKE IT」「だいじょばない」「Party Maker」あたりが定番ですが、今回はスタイリッシュな「NIGHT FLIGHT」でした。これも2009年の曲、ネビュラロマンスパート以外はブレイク期の懐かしい曲が中心になっています。

 手のひらをオーディエンス全員に掲げてもらって始まるのは「MY COLOR」。2012年JPNツアーでは初日公演と武道館ファイナルに足を運びましたが、最初全然揃わなかった観客の動きが武道館で完璧に揃う光景を見て感動した記憶があります。今はもう毎回のツアーで披露しているわけでもないですが、歌詞に合わせた細かい手の動きは何度も足を運ぶ人が多い1階席ならば指示なくとも大体は揃っています。美しい光景です。ただこの曲をやるとなると終盤も終盤、”ありがとうございました”と深々と挨拶した後に3人それぞれ話すパートが設けられます。

 

コールドスリープにあたっての最後の挨拶

 各媒体、これについては大きく報道されています。中日スポーツでは1人ずつ記事が作られているので、まずはそれぞれリンク先を掲載します。

【かしゆか編】Perfume活動休止前ラスト公演最後のあいさつ:「寂しい気持ちと、大好きだからこそ、かっこよくこ締めくくりたいという気持ちが両方」

【のっち編】Perfume 活動休止前ラストライブ最後のあいさつ:「みんなに寂しい気持ちにさせないために、一生Perfumeでいるための決断です」

【あ~ちゃん編】Perfume 活動休止前ラストライブ最後のあいさつ:「Perfumeは一生続けます。不可能? いや、私は挑戦してみたいんよ」

 Perfumeはずっと続ける、そのためにコールドスリープする、これも一種の挑戦。3人はこの挨拶だけでなく、最初のMCでもその姿勢をずっと強調していました。周囲のアドバイスがきっかけだったという点は少し驚きましたが、ファンである立場からすると十二分に納得出来る内容でした。

 そもそもメジャーデビュー以降の20年で大きな活動休止もメンバー変更もないことが、移り変わりの激しいJ-POP史においては異例のこと。特に女性だとグループどころかソロでもほとんど聞いたことがありません。そう考えると納得どころか、むしろ自然な現象として受け入れることが出来ます。何より一生続けるという言葉が出たことが、これ以上無いほど嬉しい気持ちになりました。

 

エンディング

 近年のPerfumeのワンマンライブはアンコール無しが慣例化していましたが、今回は自然に近い形で手拍子が起こります。やがて「願い」をバックに、グループの軌跡を描いた映像が流れます。結成から25年となると歴史的な映像も多く、当時のことも思い出します。センターステージに登場してパフォーマンスするのは、やはりアルバムラストを飾る最新シングル曲「巡ループ」。100曲を超えるPerfumeのナンバーで、これだけしんみりした気持ちにさせたのは個人的に言うとこれが初めてです。

 センターステージからそれぞれの方向へ花道をゆっくり歩く3人。その先には風船で人形のオブジェが作られています。25からのカウントダウンとともに、目的地までたどり着くと手を振りながらせり下がりで終了。写真は、終演直後に自分の席から撮影したものです。

 

まとめ

 コールドスリープという名の活動休止ですが、言ってしまうといわゆる長期休みのようなものだと思います。2025年いっぱいは通常通り活動して2026年以降は一旦お休み、ただファンクラブ運営をどうするかという話もあるのでそこそこの期間になりそうな可能性はあります。ソロ活動は演技方面や連載等なら可能性あるかもしれませんが、振り返ると音楽では他のアーティスト作品に客演が若干ある程度。ただ20年近くでメンバーの名前が描かれたタオルなど個別グッズを見た記憶が無いことを振り返ると、そちらも実際のところは考える必要は無いような気がします。

 活動休止を経た後に第一線で活躍する事例は少なくありません。特にアミューズだと、サザンオールスターズや福山雅治という偉大な前例があります。SNSなどでも可視出来る好感度を考えると、おそらくPerfumeも復活後は今まで通りの人気を保つことでしょう(ツアーの規模は大きくなくなるかもしれないですが)。ライブが好きだと語る3人、さて活動再開後はどういった内容になるでしょうか。もちろん自分も行くつもりであると同時に、それまで足を運べる状況であるように務めていきたいです。楽しみにしています。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました