2007年に梅小路公園で初開催となったくるり主催の京都音楽博覧会は、今年で19回目を迎えます。いまや京都のアーティスト主催フェスとしては10-FEETの京都大作戦、秋の近畿開催ではT.M.Revolutionのイナズマロックフェスと双璧を成す老舗的存在です。ジャンルを超越した出演アーティストは2007年時点で気になっていましたが、19回目にしてようやくタイミング合って足を運ぶことが出来ました。
個人的には今年ようやくのフェス初参戦。コロナ禍の時期以外にこれだけフェスに行ってない年は2008年以降初めてですが…。そんなわけで今回は2日間とも参戦する形としました。
岸田繁弦楽四重奏
「開会します!」というあまりにも短い開会宣言を経て、登場した弦楽器隊の4人。もちろん岸田さんによる丁寧な事前説明はありまして、つまり言うと岸田さんの描き下ろしクラシック楽章を4名が演奏するとのことです。会場ではCDだけでなく楽譜も販売、音大に通っている方々たちにも演奏を薦めていました。
ステージは心地よいバイオリンの音に酔いしれることが出来るという、まさにクラシックを体現したような内容。事前の喋りでもあった通り本来ならコンサートホールで聴くような音楽なので、野外のスタンディングで聴くのは新鮮な感覚でした。この会場は言うまでもなく京都鉄道博物館から至近距離、演奏の切れ目で鳴る蒸気機関車の汽笛が絶妙なタイミングだったことが印象深かったです。
【くるり・岸田繁】
クラシック作品
岸田繁・Style KYOTO管弦楽団弦楽四重奏
『岸田繁 弦楽四重奏作品集 第1巻』明日から開催「京都音楽博覧会2025」会場にて販売!#くるり #岸田繁 #StyleKYOTO管弦楽団 #京都音博2025 https://t.co/gbioyDEQ20 pic.twitter.com/b7uChMfWuF
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岸田繁弦楽四重奏京都音楽博覧会2025
2025.10.11sut – 12sun
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Omoinotake
統一された効果音とともにアーティスト名(場所によっては写真などもあり)を大々的に映像で紹介するのが各フェスの定番ですが、このフェスでは開演時間になるとすっと映像で出演アーティストの魅力をくるりの2人が紹介する形をとってます。事務所で適当に撮ったという雰囲気でゆるゆるトーク、これもまた京都音博恒例の風景…なのでしょうか。まずは次に登場するOmoinotakeを紹介。歌唱力や楽曲の絶賛と、出身の松江を若干ディスりつつ(あくまで現在ではなく過去についてです)?の内容でした。
昨年「幾億光年」が大ヒットして紅白歌合戦出場まで果たした3人組。ですがこの曲以外もSpotifyによる配信数を見る限り人気曲は多くあります。ここ数年は彼らに限らず余程の大ヒット曲以外新曲を聴く機会がめっきり減っていまして、正直「幾億光年」以外はほぼ聴いていない状況。そういう意味ではかなりフラットな視点で見る形になりました。
結論から言うと大変素晴らしいステージでした。歌唱力の高さは昨年のテレビ出演で証明されていますが、生で聴くとさらに納得。高音の響き・発音ともに極めて美しく、キーボードがボーカルを務める編成も含めて同郷のOfficial髭男dismとの共通点は多め。曲の方は彼らと比べるとクセが少なく実直さが目立つ印象でしたが、その分爽やかさはこちらの方が上でしょうか。
いずれにしてもチャラチャラした浮つき感とは全くの無縁、とにかく真面目に真摯に音楽に向き合うアーティストという印象で大変な好感を持てるパフォーマンスでした。知名度は「幾億光年」が圧倒的ですが、今回のセットリストだと「ひとりごと」「幸せ」「心音」あたりも再生数多く堅調な人気。当面の間はフェス常連アーティストになるはずで、また見る機会も訪れそうな気がしています。
京都音楽博覧会2025 in梅小路公園@kyotoonpaku
ありがとうございました!
Support Member
Sax : 後藤天太 @Tenta_Sax
Per : 関根米哉 @dontokoimaiyaPhoto by Daikichi Motouchi#京都音博2025 pic.twitter.com/KqLrCjKQbx
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[Alexandros]
ロックフェスではもう長年お馴染みの存在ですが、ここ何年かの彼らは多くがトリかトリ前の出演。2番手・13時台に登場するのはいまや滅多にない貴重な機会ではないかと思われますが、もう一つ意外なことは今回が京都音博初登場であるということ。音楽的には岸田さん曰く「かけ離れている」2組ですが、ドロス側特に川上さん的に言うとくるりは最も憧れのバンドであるとのことです。自ら主催のフェスにも呼んだりするなど、「根回し」の成果を殊更にアピールしていました。
「Adventure」からいきなりオーディエンスを掴み大合唱、「Waitress, Waitress!」「Starrrrrrr」と初期からの代表曲はいつ聴いても圧倒的な演奏レベル。過去フェスで見た3回は激しいステージの印象強かったですが、今回はバラードの「ハナウタ」も混ぜます。その次は2015年に一度出演している京都大作戦を主催している10-FEETの話題、現在彼らが担当しているアニメ主題歌の先輩ということをプチ自慢?しながら「超える」を演奏する一幕も。
くるりの「ブレーメン」を一節カバー、”渡り鳥”の歌詞が出てきたところでラストはお馴染み「ワタリドリ」。雨が降りそうな曇り空で始まったステージは、この曲の演奏に入る頃には太陽が雲間から顔を覗かせていました。演者が天気を操作しているような場面はたびたびフェスで遭遇しますが、どうやら今日はドロスがその担当にあたるようでした。
25.10.11 京都音楽博覧会2025https://t.co/CnYeM7k5DX
▼Setlist Playlisthttps://t.co/aDptT2uKMA#Alexandros #京都音楽博覧会2025 #くるり@kyotoonpaku @qrlinfo pic.twitter.com/0T0x7z9Kpy
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佐野元春 & THE COYOTE BAND
ロックを愛する人間なら一度は体験したい佐野元春のライブ。COUNTDOWN JAPANは毎年出演、今年はライジングにフジロックなどフェスに出演する機会は少なくないのですが、個人的にはようやくの初見となりました。音博は今回が初出演、映像でも待望の出演であることをくるりの2人が話していました。
デビュー45周年、今年は3月にTHE COYOTE BANDの演奏でアルバム『HAYABUSA JET I』をリリースしています。いわゆるセルフカバーアルバムのように見えますが、オフィシャルの立場としては「元春クラシックスの再定義」「オリジナル盤と匹敵するくらいのコンセプチュアルな作品」だそうです。というわけでセットリストは、これまでのフェスでは無いほどの名曲揃いになりました。
「Young Bloods」はイントロの編曲が大きく変わり、しっかりリニューアルされています。「ガラスのジェネレーション」は「つまらない大人にはなりたくない」に改題してレコーディングされていますが、どちらにしても最後の歌詞は心に響きます。なりたくないと歌う”つまらない大人”、これは結果的に元春さんから最も遠いフレーズになっていることは疑いようありません。
先述のアルバムには入っていませんが、長年音楽ファンのみならず大勢の人々に愛されている「サムデイ」も演奏。「ロックファンなら一度はライブで体験したい楽曲」ランキングがあれば確実に上位に入る曲で、もうこの場にいることだけで感激という状況ですが、さらに畳み掛けるのは「約束の橋」。平成を代表する名曲中の名曲で、サビの歌詞に歌いながら感動する状況になりました。これで締めかと思いきや、もう1曲「これが本当の最後の曲だよ」と言って演奏されるのはこれまた名曲「アンジェリーナ」。69歳にして演奏も歌声も佇まいも未だに現役中の現役、自分が中高生ならばこれを見て「佐野元春のようなカッコ良い大人になりたい」と確実に思うであろう名演中の名演でした。
佐野元春& ザ・コヨーテバンドが、くるり主催の「京都音楽博覧会」に出演。タイトでストレートなビートを響かせ観客を魅了した。主催の岸田繁さん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんとの交流も。レポートを公式Facebookページで公開。#佐野元春#京都音博2025https://t.co/EajUwZ9Aa6
— 佐野元春 DaisyMusic Info.(公式) (@DaisyMusicInfo) October 11, 2025
10-FEET
私が初めてロックフェスに足を運んだのは2008年のROCK IN JAPAN FESTIVALですが、10-FEETはこの時に初めてGRASS STAGEに立ちました。当時は曲どころかバンド名さえも分かっていませんでしたが、そんな予備知識ゼロの状況でも観客を乗せるパフォーマンスと熱い演奏に感心したものです。言うまでもなくフェス常連バンドですが、なぜかその後見る機会が全く訪れず。この音博でなんと17年ぶりに見る形となりました。ちなみに彼ら主催でこちらも毎年恒例の京都大作戦は、2008年が初開催(予定では音博と同じ2007年ですが、台風で中止)。もちろん映像のアーティスト紹介は京都をともに盛り上げる存在として…、よりも”100フィート””1000フィート”といったフレーズをゆるーい感じで連発。このくだりは後の映像でもたびたび出てきました。これが会場に切り替わると一斉に10-FEETと書かれたタオルがオーディエンスによって掲げられています。それを見るだけで彼らがライブ巧者であり、ファンに愛されていることが非常によく分かります。
スタンディングエリアが狭いことと、フェスとしては比較的高い年齢層ということもあって会場でのモッシュダイブは禁止になっています。それもあって今回のセットリストはひたすら代表曲がメイン。「RIVER」に始まり「Re方程式」「ハローフィクサー」「第ゼロ感」「その向こうへ」「蜃気楼」「ヒトリセカイ」、サブスク再生数の上位曲全てを演奏するようなラインナップでした。ダイブが起こりそうな曲は「昔の曲です」と話して始まった「goes on」のみ。ただ頼り甲斐のあるMCと圧のある演奏はバッチリ、最後は36秒残っているということで再び「RIVER」を若干やって終了。一緒に歌ったりする場面はもちろんありましたが、今回は思いのほかパフォーマンスに唸らされるアクトでした。
おそらく京都大作戦を筆頭として、場所が変わるとまた別の魅力的な彼らを見ることが出来るでしょう。さすがにもうモッシュダイブの渦中に入るのは厳しいですが(というより若い時でも無理でしたが)、次に見る際はもしかするとまた別の環境になるかもしれません。そういえば17年前のロッキンは、まだモッシュダイブが公式に禁止される前でした。
#京都音博2025
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10-FEET(@10FEET_OFFICIAL)京都音楽博覧会2025
2025.10.11sut – 12sun
✤京都梅小路公園 芝生広場ℎ 井上嘉和 pic.twitter.com/m4v4BGowar
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ASIAN KUNG-FU GENERATION
もう20年近くJ-ROCKの第一線で活躍しているアジカン、ワンマンに足を運ばない立場でも見る回数は自然に増えてきます。個人的には今回4回目、2019年のビバラ以来6年ぶり。当時5年ぶりで久々に見るという感覚だったのに今回あまりそう感じなかったのは、間にコロナ禍が挟まったこともあって行くライブの場数が少なくなったからでしょうか。「ブルートレイン」で始まったのは発表されてからちょうど20年、鉄博に近い&岸田さん自身が鉄道ファン、「赤い電車」との対比など様々な理由をつけることができそうです。
ゴッチ曰くサビを一緒に歌いたい曲第1位「リライト」を経て、「Little Lennon」では岸田さんも登場して一緒にギターを弾くパフォーマンス。京都ということで「出町柳パラレルユニバース」演奏、「ライフイズビューティフル」「MAKUAKE」といった新しい曲の披露もあり。夕焼けが美しく彩られる空の下で、「ソラニン」が始まる光景はまさに野外公演ならではの名場面でした。
#京都音博2025
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ASIAN KUNG-FU GENERATION(@AKG_information)京都音楽博覧会2025
2025.10.11sut – 12sun
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くるり
くるりのステージを見るのもそういえばかなり久々で、最後に見たのは2014年のRADIO CRAZY。11年のブランクがあります。2008年最初に見た頃は全国ロックフェスの常連でしたが、そういえばここ何年かは若手の台頭もあって出演は少なくなっていました。過去にフェスで見た時は飄々とした雰囲気が印象的で、もちろんそれは今でも変わっていないのですが、さすがにフェスの主催者となるとサポートメンバーも多くなります。ギター、ドラムス、キーボード、4人のストリングス隊、更には女性ゲストボーカルとして畳野彩加(Homecomings)も参加しています。
いつの間にかくるりで最もメジャーな曲になった「琥珀色の街、上海蟹の朝」からスタート。心地良い空間に浸った後、「アナーキー・イン・ザ・ムジーク」で激しいステージになります。ストリングス隊の激しい腕の動きは、クラシックではなかなか披露する機会ないのではと思うほどでしたが。「Liberty & Gravity」は当時メンバーだったファンファンのトランペットが聴きどころでしたが、ここではストリングスが代わりを果たしていました。
2002年に発表された「男の子と女の子」は、畳野さんのボーカルで味のあるデュエット曲に進化していました。お馴染みの名曲「ばらの花」も、24年前とはまた違う輝きを見せています。新曲は「Regulus」が心地良くポップな雰囲気、「ワンダリング」はオープニングの四重奏でも活躍した山田周のバイオリンが大きなポイント。そしてラストは「ブレーメン」の見事なアンサンブル。素晴らしいステージ・素晴らしい1日になりました。
これで1日目終了ですが、まだもう1日あります。2日目のステージは次の記事で書くことにします。
#京都音博2025
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京都音楽博覧会2025
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