2025.10.12 京都音楽博覧会 2025 2日目

ライブレポ

岸田繁弦楽四重奏

 前日もオープニングに登場した岸田繁弦楽四重奏ですが、2日目は曲が異なるとのこと。優雅な雰囲気に酔いしれたのが1日目なら、今日は「変な料理」というタイトルで分かる通り細かいプレイが要求される楽曲でした。多少シリアス・コミカルに聴こえるような場面もあって、さながらサウンドトラックを聴いているようでした。

 そういえば岸田さんが初めて音楽を手掛けた映画『ジョゼと虎と魚たち』はもう22年前の作品。今回のクラシックはこれだけですが、以前の音博ではクラシックに1ステージが割かれることも珍しくはありませんでした。来年以降はもしかするとオープニングだけでなく、もう少し長い時間聴ける形になるのかもしれません。

SHISHAMO

 彼女たちは一時期ワンマンライブにもよく足を運んでいました。コロナ禍以降は2023年ビバラのみで行く機会は減りましたが、この日が活動終了発表後最初のステージになるとはチケットを取った時点で想像もしていませんでした(これについてはMCで知って驚きましたが)。彼女たちの現場だと2017年紅白歌合戦初出場が決まった直後のワンマンに遭遇したこともあり、巡り合わせというのは不思議なものです。前日同様くるりの2人によるゆるい紹介映像からスタート、そこでは宮崎さんのギタープレイを大絶賛していました。

 ギターのストロークから始まる楽曲は「男の子と女の子」、この日限りで披露されるくるりの名曲カバーです(一応3年前出演時は別の曲をカバー)。原曲よりもかなり速いリズム、編曲含めて見事にSHISHAMO色に仕上げていました。スピーディーな「夏恋注意報」を経てMC、「緊張したー!」とホッとした3人の表情が印象的でした。なおドラムスは吉川さんが活動休止中、サポートには赤い公園で演奏していた歌川菜穂が加わっています。

 新曲「運命と呼んでもいいですか」、さらに「ハッピーエンド」「最高速度」と比較的近年の曲が続きます。非常に新鮮な気持ちで聴く形になりましたが、このタイミングということもあって本来のラブソング以上に大きな意味を持つ歌詞に聴こえました。ギターやベースなど個々の演奏も以前より難度が確実にアップしているような印象で、そういう意味では10年近い活動の集大成にいよいよ近づいているという緊迫感が伝わります。ラストは「明日も」「明日はない」のセット、”泣くのは別に悪いことじゃない”という歌詞にこの日はひときわ感情が入っているように聴こえました。バンドの活動を最後まで駆け抜けるという、決意と覚悟が伝わるもの凄いステージでした。

 最後のステージは6月、ですがその間のフェスは出演するはずで全国ツアーも予定されています。最後になる川崎2daysは既に予約しましたが(1日目のみの参戦になりそうですが)、それまでにもどこかしらに足を運ぶ予定で考えています。ワンマンも良いですが、個人的にはフェスでトリを任される彼女たちをどこかで見たいと願っていますが…。


RIP SLYME

 RIP SLYMEは今年度限りの再集結ということで、現在ツアー展開中とともに出来る限りのフェスを回るというライブ中心の活動を行っています。この京都音博もその一環の一つ、出演は2013年以来12年ぶりでかなり久々とのことです。私も一応彼らのステージは見たことあるのですがこれが2009年ロッキン、ですので16年ぶりです。かなりのブランクです。

 当時の記憶とブログに書いた記録では「とにかく楽しかった」「思わず体が勝手に動いた」といったところですが、結論を言うとこれは16年経っても良い意味で変わりありません。今年配信の「どON」「Wacha Wacha」や某局漫才番組でおなじみ2015年発表の「JUMP」は当然16年前には存在していない曲ですが、リズムに合わせて体を動かすのは同じです。「JUMP」はその名の通りひたすらジャンプなので、スタンディングエリアにいるととにかく体力を使います。「楽園ベイベー」「熱帯夜」といったキラーチューンはもちろん健在、「JOINT」のタオル回しもあってとにかく忙しかったです。コロナ禍以降のフェスは概ねステージをじっくりという見方が主流になっていたので、最初から最後まで体を動かすのはかなり久々。純粋に楽しかったと同時に、15年経っても見事な4MC1DJのパフォーマンスにおおいに唸らされました。

 さて彼らはかつてくるりとコラボシングルを発表したことがあります。2006年7月発表の「ラヴぃ」「Juice」がそれにあたるわけですが、ラストはバンド機材とくるりの2人が追加されて「ラヴぃ」のパフォーマンス。ライブでもゼップ以来実に19年ぶりということで、締めはまさにお宝ステージ。SHISHAMOとともにこちらも圧倒的な内容で、これだけでチケット代の元は取れたと思いましたが…。

マカロニえんぴつ

 マカロニえんぴつを見るのは2023年ビバラ以来2年ぶり。早い段階で2回目を見たいと書きましたが、まあそこそこのインターバルでしょうか。ただ当時若手だった印象の彼らも、ヒット曲を多く量産してることもあっていまや中堅にさしかかってます。2年ぶりに見たはっとりさんは、なんだかユニコーン時代の民生さんみたいな雰囲気もありました。もちろんまだステージにビールを持ち込んで飲むという領域には達していませんが。

 バラードで聴かせる代表曲も多いですが、今回は若手らしく?アップテンポの盛り上がる曲中心のセトリになりました。「レモンパイ」「ブルーベリー・ナイツ」「洗濯機と君とラヂオ」「星が泳ぐ」辺りが今回の定番曲、新しい曲は「いつか何もない世界で」「静かな海」といったところ。「なんでもないよ、」「恋人ごっこ」「リンジュー・ラヴ」を外したセトリは攻めているとも言えますが、それでも何ら問題ないところに彼らの層の厚さを感じました。

 パフォーマンスは歌声も演奏も文句無し、MCも実に好感を持てる内容。大型フェスでももう彼らを見ればとりあえず間違い無いという領域には完全に入っています。そもそも音博初登場ではなく2回目で呼ばれることに、信頼があるということです。次に見るステージも、あらためて期待します。

ASKA

 昭和~平成を駆け抜けたレジェンド中のレジェンド、CD売上はアルバム・シングルともにミリオンセラー多数。こういったフェスに出演すること自体以前なら考えられなかったアーティストですが、この京都音博は前回に続いて2年連続出演。今回も出たいという本人側のリクエストがあったそうです。リハーサルの音合わせで演奏されるメロディーは平成J-POP屈指の傑作「太陽と埃の中で」、この時点で一緒に歌うオーディエンスが複数発生しています。

 非常に豪華なバンドをバックに披露される最初の曲は「恋人はワイン色」、のっけから名曲です。そもそも彼の作品は名曲の数が多過ぎてきりが無いのですが、次に放たれるのは国民的アンセム「SAY YES」。サビが合唱になるのは言うまでもなく、BメロでCHAGEパートを代わりに歌うオーディエンスも相当数発生しています。少なくともこの会場に足を運んだ人で、アラフォー以上なら知らない人は1人たりとも存在しないと思われます。知らない曲を楽しむのもフェスの魅力ですが、誰もが知ってる曲を味わえるのもまたフェスの大きな強みです。

 ピアノの演奏バックに披露される「好きになる」は、歌手・ASKAの真骨頂でした。半端ない声量もさることながら、この特徴的な歌い方で歌詞が完璧に聴き取れる優れたフレージング。半端無い歌唱力の高さで、自分が生で見た男性歌手の中でも五本の指に入ります。マイクで声量をコントロールするという手の動き、そういえば久しく見ていないような気がします。

 「僕はこの瞳で嘘をつく」はJ-POP史上でも数少ない全編サビのように歌い上げる楽曲、この人くらいの声量でないと成立しないナンバーです。67歳でこれを歌うのは完全に異常と言って差し支えないですが、そのまま続くのはなんと「YAH YAH YAH」。「innocent world」やら「タマシイレボリューション」やら「青と夏」やらこれまでもフェスにおける数千あるいは数万のオーディエンス大合唱は経験していますが、この曲のパートは歌詞無しで歌い上げるので全員が初聴でも実現可能です。というわけでサビは大変ものすごいことになっていました。そもそも野外で歌うことも少ない歌手なので、レア度も極めて高いです。前回の音博でこの曲は歌われていないため、もしかするとワンマンに足を運ぶファン以外はほぼ全員初めての体験だったのではないでしょうか。

 こんな空間を見せられると、極端な話あとは何を歌っても問題ないわけです。というわけで「消えても忘れられても」は2020年発表のソロ曲、最後は1991年を生きた人ならばやはり屈指の名曲「BIG TREE」で締めました。というわけで感想はただただ一言、凄かったです。レジェンドのフェス出演は前日の佐野元春、他にも矢沢永吉やサザンオールスターズにB’zなども見ていますが、間違いなくこの人もトップクラスのステージでした。

くるり

 前日に続いてのステージですが、今日最初の曲はサポートのメンバーやや少なめ。「せとのうち」はまだ配信されてない新曲ですが、おそらく11月か12月になれば音源化されるのだと思います(披露は前年末のレディクレで既にあったとのこと)。「ワンダリング」「Regulus」と新曲連発で始まるセトリ、あとは概ね順番違いで同じ曲の演奏ですが「男の子と女の子」は「グッドモーニング」になっていました。最後は「奇跡」、アンコールはおなじみ「宿はなし」。19回目を迎える京都音博は、美しく綺麗な締めとなりました。

 

おわりに

 アーティスト主催のフェスはこれまでも何度か足を運んでいますが、毎年恒例になっているケースは多くありません。それだけに、19回も同じ場所で続けられるのはそれだけでリスペクトに値します。開催のたびにアンケートを募り、その中で毎年進化させているのが現在の姿。したがって非常に過ごしやすくアイデアも豊富で、個人的にはフードエリアの食器を再利用出来ること・シートを配布していることが他のフェスに見られない大きな特徴かと思いました。

 ライブエリアはスタンディングエリアにあたる部分は全体の10%程度で、あとは芝生エリアが多数。家族連れのオーディエンスも多く、そもそも古くからのくるりのファンはアラフォー以上が高い割合になっています。全体的には非常に優しさに溢れるフェスであるように感じました。

 来年は記念すべき20回目を迎えます。日程さえ合えば是非足を運びたいと思ってます。最後に音博仕様にこの2日間限定でライトアップされた京都タワーを掲載して、レポを締めます。ありがとうございました。

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