第72回(2021年)NHK紅白歌合戦~その4~

紅8(全体17):milet(2年連続2回目)

・2019年デビュー、第71回(2020年)初出場
・生年月日非公表 東京都出身
・楽曲:「Fly High」(2021/11/30 配信

  詞:milet 曲:milet / TomoLow
  映像演出:玲架
・歌前テロップ:NHKウィンタースポーツテーマソング
・歌唱中テロップ:NHKウィンタースポーツテーマソング
・演奏時間:2分16秒

 NHKウィンタースポーツテーマソングに起用されている楽曲ということで、2022年の北京オリパラに臨むアスリートのVTRが流れます。なおNHKプラスでは権利関係で、冒頭の映像が未配信でした。

 キンプリのステージから舞台上に花が無くなり、階段のみが設置されるシンプルなセットになっています。前半は暗転の中レーザー照明が光る演出、後半は画面が白飛びするほど明るい太陽の光が大スクリーンに映し出されていました。衣装はフィギュアスケートで演技する選手をイメージしたようなデザインで、左手を上げると大きな布が広がります。いわゆるジュディ・オング「魅せられて」形式の衣装、と書くと往年の歌謡曲ファンには分かりやすいでしょうか。階段上で歌い上げるmiletさんの歌声は素晴らしい迫力で、楽曲のイメージにもよく合っていました。

解説

・2021年のmilet最大のハイライトはやはり、東京オリンピックの閉会式で「愛の讃歌」を歌ったことでしょうか。この式には東京スカパラダイスオーケストラやDJ松永も出演、レーベルとしてはソニー系がやや強めの人選でした。

・「Fly High」はNHKウィンタースポーツテーマソング、翌年開催の北京五輪中継でも多く流れました。前回の「サザンカ」まではオリンピック中継のタイアップですが、今回からは対象がウィンタースポーツ中継全体に広がっています。

 

白9(全体18):まふまふ(初出場)

・2010年活動開始、2017年メジャーデビュー
・年齢・出身地ともに非公表
・楽曲:「命に嫌われている。」(2017/8/6 カンザキイオリ)
  詞・曲:カンザキイオリ
・歌前テロップ:曲の最後に込められた力強いメッセージに注目!
・歌唱中テロップ:ネットで人気の歌い手 魂の叫び
・演奏時間:2分25秒
・会場:渋谷・NHKスタジオ

 VTRでは東京ドーム無料配信ライブの様子や、「立ち入り禁止」のMVが流れます。彼が発信する「生きることの意味」を初めてテレビで届けることを、川口さんのナレーションで伝えます。

 シルエットから徐々に映し出されるまふまふさんの姿は黒いマントのような衣装を身に着けていて、曲紹介や本人のコメントにあった通りマスクを外して歌っています。スクリーンには大きな文字で歌詞が流れ、両サイドにバンドセットを配置。床面にはドライアイス演出が施されています。

 命をテーマにした歌詞は現実をありのままに伝えていますが、普段テレビに出ない彼の御姿と普通の人には出せないハイトーンはやや非現実的な光景にも見えます。テレビ初出演ということを差し引いても、これまでの紅白歌合戦では見たことがないタイプのステージに見えました。ただ歌う本人はまさに全身全霊このステージにぶつけていて、歌う時の表情が非常に顔に出ています。歌い終わってからの全てを出し切ったように思える姿も非常に印象的でした。

 歌唱後は大泉さんから「一言お願いします」と聞かれて、「貴重なご機会で、大変光栄でした。ありがとうございました」と深々と挨拶。紅白出場発表からここに至るまで真摯な人柄が感じられる場面が多く、番組を通してファンになった方々も間違いなく多数いるのではないかと思われます。場所の明記はありませんが東京国際フォーラム内でないことは確かで、おそらくNHKのスタジオからの生中継と推測できます。この紅白をきっかけに、ネット音楽の隆盛は今後さらに進むのではないでしょうか。

解説

・ニコニコ動画で活動開始したのが2010年12月29日、以降多数のオリジナルと歌ってみた動画をアップしています。メジャーレーベルからのリリースは2019年以降で、アミューズ系のA-Sketchレーベル所属。この年は1月10日に14曲同時配信がありました。

・「命に嫌われている。」のオリジナルはカンザキイオリのチャンネルで初音ミクボーカル、2017年8月6日にYouTubeで配信開始。まふまふの歌ってみた動画は2018年1月10日投稿。歌ってみたはつまり言ってしまうとカバーですが、再生数はオリジナルの約6倍。現在1.4億にまで達しています。

・紅白歌合戦出場でネット以外の注目度・知名度は大きく上がりましたが、その反面心ない者の反応も増えたようです。療養期間という形で翌年6月から活動休止、再始動まで1年の期間を要する形になりました。

 

紅9(全体19):水森かおり(19年連続19回目)

・1995年デビュー、第54回(2003年)初出場
・1973年8月31日生 東京都北区出身
・楽曲:「いい日旅立ち」(1978/11/21 山口百恵)…33年ぶり2回目
  詞・曲:谷村新司
・歌前テロップ:カラフル特別企画 ラストの場所にご注目!
・歌唱中テロップ1:絶景でめぐる日本の旅!ラストは…
・歌唱中テロップ2:ラストの場所に注目!
・演奏時間:3分0秒
・会場:京都・清水寺

 このステージは「カラフル特別企画 水森かおり 日本各地の絶景で歌う!」というコーナーに内包されています。画面左上の紹介文は「Go To カラフル! 来年こそは旅をしたい」。なんだか開いた口が塞がらないようなふざけたテロップです。「いい企画だと思います」と大泉さんがかなり流し気味に感想を述べた後、水森さんに中継が繋がります。場所はこの時点でまだ非公開ですが、右側に映るタワーで大まかな場所が分かった人はいたのではないかと思います。ちなみに外は雪が降っていて、かなり寒そうです。

 VTRとして流れた映像は水森さんが日本各地を訪れる内容。まるでカラオケMV映像を見るようで、何とも言えない雰囲気です。サザエさんのオープニング、という声もありました。ただ歌う曲も含めて、結局やっていることがおんな一人旅であることは変わりないようです。

 歌詞テロップもVTRではなぜか左揃え、演出だけでなくこの配置も紅白史上初めてです。ラストサビ前にはわざわざ「まもなく生中継!」のテロップ、まるで間奏◯秒の字幕のようです。映し出された場所は京都・清水寺、京都から紅白のステージが中継されたのは第54回、東寺から歌った倉木麻衣以来18年ぶりです。歌い終わった後は一足先に参拝、司会者とやり取りした後に和久田アナが『ゆく年くる年』を番宣。歌い終わってすぐ拝む歌手も初めて見ましたが、『ゆく年くる年』を宣伝する紅白もおそらく史上初ではないかと思います。少なくとも1963年以降の紅白では見た記憶がありません。

 なおVTRで訪れた場所は以下のハッシュタグで説明されています。結論を言うとインスタ映えを相当に意識している一人旅ということで、いいのでしょうか…。

「#高知 #土佐くろしお鉄道 #ローカル鉄道 #一人旅」
「#佐渡島 #廃墟萌え #北沢浮遊選鉱場」
「#佐渡島 #たらい舟 #たらい好きと繋がりたい」
「#静岡 #見晴らし #茶の間 #予約は3か月待ち」
「#京都 #ルーフトップバー #紅白をイメージしたカクテル」

解説

・国民的ヒット曲である「いい日旅立ち」ですが、紅白歌合戦で歌われた回数は意外に多くありません。11月リリースということもあって山口百恵の歌唱は無し、第29回・第30回はそれぞれ「プレイバックPart2」「しなやかに歌って」を選曲。谷村新司の歌唱も第41回(1990年)の1度だけ、ただ新たな歌詞で鬼束ちひろに提供した「いい日旅立ち・西へ」は第54回にセルフカバーしています。

・清水の舞台から飛び降りる、という言葉は江戸時代から伝わっていますが、紅白歌合戦で本当に清水の舞台に立った歌手は言うまでもなくこの時の水森さんが初めてです。

・紅白歌合戦の後に放送される『ゆく年くる年』は1955年から放送開始、これもまた長きに渡り大晦日~元日の恒例行事として定着しています。なおこの年は、清水寺も中継地の一つとして『ゆく年くる年』の一幕に登場していました。

 

白10(全体20):Snow Man(初出場)

・2012年結成・2020年デビュー
・18歳~29歳・9人組
・楽曲:「D.D.」(2020/1/22 シングル)
  詞:栗原 暁(Jazzin’ park) 曲:HIKARI
  演出映像制作:h + TOS (A4A)
・歌前テロップ:磨きのかかった9人のダンスに注目!
・歌唱中テロップ:1年越しの紅白初出場
・演奏時間:2分36秒

 前半大トリのステージ前なので、ここで視聴者投票を再び実施するアナウンス。その後Snow Manのメンバーが登場。リーダー・岩本照目黒蓮が代表して1年越しの紅白に臨む意気込みを話します。

 今回ジャニーズ事務所からは5組が紅白歌合戦に出場していますが、一番激しいアクションを見せていたのは彼らです。長身もしくは脚が長いメンバーが多いので、キックなど下半身を使う振付が特にダイナミックです。間奏では難易度の高い大技続出、バク宙を見せたのは岩本照佐久間大介宮舘涼太。身体能力の高いグループといえば少年隊がいますが、彼らの若い時より1曲あたりの運動量は激しいように思います。同時デビューのSixTONESは歌唱に魅せられる部分が多いですが、ダンスパフォーマンスについてはこちらの方が上です。歌唱後も「ブラボー!」はありませんが、「カッコ良かったー!」と大きな声で大泉さんが出迎えます。やり切って笑顔を見せるメンバーも、大変充実した表情でした。

 Snow Manは結成からデビューまで能力がありながら苦労している人も多いので、先行デビュー組との比較がやや難しい面もありますが…。ただ現在ジャニーズ1番の人気を誇る理由が、非常によく分かるパフォーマンスでした。近年は音楽・演技ともに評価の高い人が本当に多く、俗に言う”ジャニタレ”という単語が死語になる日もそう遠くない将来に訪れそうです。

解説

・本来前年の第71回で初出場が決定、「D.D.」の歌唱まで発表済でしたがメンバーのコロナウイルス感染のため12月24日に出場辞退を発表。これによる出場歌手の代役は設けていませんが、天童よしみのステージでやる予定だった腹筋太鼓は少年忍者にバトンタッチしています。

・そのため2021年リリースの「Grandeur」「HELLO HELLO」「Secret Touch」はいずれも紅白で歌わない形となりました。CDシングルの初動売上はオリコン調べで70~80万枚、現在もジャニーズ事務所(現・SMILE-UP.)所属アーティストではトップの数字を記録しています。

 

企画2(全体21):松平 健(17年ぶり2回目)

・1980年歌手デビュー 第55回(2004年)初出場
・1953年11月28日生 愛知県豊橋市出身
・楽曲:「マツケンサンバⅡ ザ・カラフルREMIX」(2004/7/7 シングル)…17年ぶり2回目
  詞:吉峯暁子 曲:宮川彬良
  踊り1:腰元ダンサーズ 振付1:真島茂樹
  踊り2:カラフルダンサーズ 振付2:梨本威温、笹尾 功 (HIDARI)
  DJ:TeddyLoid
  演出映像制作:きほ + h (A4A)
・演奏時間:3分32秒(冒頭DJプレイ含む)

 タイトルロゴをバックに2回目の途中経過発表。結果は先ほどと同様に紅組優勢、かと思いきやすぐ白に切り替わりました。と思いきや、赤と白でチカチカし始めます。と思いきや青とか緑とかも混ざって、おかしな雰囲気です。その後映像は急にスタッフ室に切り替わります。どうやら東京オリンピックの開会式同様、劇団ひとりが勝手に副調整室の機械を操作しているようです。彼の出演は、事前アナウンスの一切ないサプライズ出演という部分でも共通しています。

 大泉さんが何度もツッコミを入れますが、うるさいということで大泉さんの所だけ照明がオフにされてしまいます。不敵な笑いを見せた後に今度は、照明が全て大泉さんに照らされて逆に見えないという蒸発現象が起こります。「おい!劇団!わかってるんだぞ!劇団!」と相当強い調子で怒り始めます。その後Enter passcode「5089」を入力、大泉さんの目の前でドライアイス噴射演出発生。さらに紙吹雪や紙テープも噴射。わざわざ砲台の前に大泉さんが移動している部分に、台本上のやり取りであることが証明されています。さすがに川口さんも劇団さんに注意。「あんた、いい映画撮るんだから、そういえば以前彼が原作・監督を担当した『青天の霹靂』の主演は大泉さんでした。

 どーもくんの人形を手でどかすと、そこには金色のミラーボール状のボタンがあります。左下には「MKS」の文字…これを押すと国際フォーラムから光が発生。バイクに乗って金色ヘルメット・金色の和服を着たライダーが登場。新国立競技場を走り抜け、スケボーに乗りながらホールAに入る映像とリンクするように、松平さん本人がスケートボードに乗って登場します。ローラースケートは過去に何組かいますが、スケートボードに乗るパフォーマンスを紅白で見せた歌手は史上初です。

 

 真島茂樹を筆頭とした腰元ダンサーズがステージを盛り上げます。17年前との違いは、大型スクリーンの映像や編曲もありますが、やはり間奏から登場したカラフルダンサーズの曲芸パフォーマンス。本番数日前になってもゴタゴタだらけだったオリンピック開会式はついにマツケンサンバ待望論がSNSで出る有様でしたが、今回の演出はそれを最大限に実現させた形になります。今年は年末で見られる機会も多かったですが、やはりそれを実現させるに相応しい場所は、歌手の祭典と言って全く差し支えない紅白歌合戦のステージでした。ラストは映像で劇団ひとりも、副調整室から飛び出して一緒に踊っています。

 郷ひろみ石川さゆり氷川きよしDISH//BiSH純烈Awesome City Clubなど出場歌手も笑顔で一緒に踊ります。オーサムの3人はこのために渋谷から有楽町に移動しました。乃木坂46から参加した山下美月清宮レイ早川聖良は、つい先日の『乃木坂工事中』大忘年会でこの曲を仮装で披露したメンバーです。わざわざNHKも参加メンバーにこの3人を選ぶ辺り、今回のスタッフに乃木坂推しの方が確実にいらっしゃることがよく分かります。

 パフォーマンス後司会者とのやり取りあり。その中に「東京国際フォーラムの敷地内でのスケートボードは禁止されています 特別な許可を得て撮影しました」というテロップが画面下に表示されました。来年の大河で平清盛役を演じることを言及しますが、思えば2004年紅白も翌年の大河『義経』で武蔵坊弁慶役を演じています。そもそも1979年に『鎌倉殿の13人』と同時代の『草燃える』で北条義時役を演じ、これが『暴れん坊将軍』とともに出世作になったので、今回の紅白出演にあたっては不思議な縁を感じる部分が非常に多いです。なお途中経過は白組優勢でした。

 さて前半戦はここまでで終了ですが、今回後半戦の予告動画が史上初めて作られました。内容は完全にあの作品のオマージュです。というわけで、ナレーション全文をここに掲載して後半戦に続きます。なおニュース担当は3年連続で瀧川剛史アナウンサーでした。

「紅白歌合戦、後半戦もカラフルに彩るアーティスト達!そこに、突如現れた使徒。紅白の運命や如何に!? けん玉は世界記録達成なるか?バンプ、あいみょん、布袋、MISIA、風!まだまだ続く紅白歌合戦、後半戦も!サービスサービスぅ!」

解説

・東京オリパラの開会式についてはトラブルの連続で、何か不祥事が報じられるたび担当者が辞任するという有様でした。あまりの惨状にインターネット・SNSでマツケンサンバ待望論が急浮上、さすがに採用はされませんでしたが、開催以後再び歌番組に出演する機会は確かに増えました。

・開会式における劇団ひとりの映像パフォーマンスは大きく話題になりましたが、この紅白歌合戦出演も同様にサプライズ出演となっています。なお映画についてはこの年12月に監督・脚本を担当した『浅草キッド』がNetflixで配信開始、こちらも大きな話題になりました。

・前回の「マツケンサンバII」は翌年の大河『義経』で武蔵坊弁慶、この回は同様に『鎌倉殿の13人』で平清盛として出演するタイミングでの紅白出演でした。ただ大泉さん演じる源頼朝と清盛は物語上接点が無く、撮影で一緒になる機会は松平さんがチラっと話した通り本当に無かったものと思われます。

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