第72回(2021年)NHK紅白歌合戦~その3~

白6(全体12):SixTONES(2年連続2回目)

・2015年結成、2020年デビュー 第71回(2020年)初出場
・24歳~27歳・6人組
・楽曲:「マスカラ」(2021/8/11 シングル)
  詞・曲:Daiki Tsuneta
・歌前テロップ:King Gnu常田が引き出す6人の色気
・歌唱中テロップ:King Gnu常田大希が作詞作曲
・演奏時間:2分26秒
・会場:渋谷・NHKスタジオ

 純烈のステージ後、清原果耶にコメントを求めます。「とっても楽しいです」と素直な内容でした。直後、和久田アナが中間投票のアナウンス。

 今回は渋谷のNHKスタジオからの中継で、歌前に司会陣とやり取り。ジェシーが代表して喋りますが、やはりメインは朝ドラ『カムカムエヴリバディ』に出演した松村北斗。その話メインでいくかと思いきや、話題は大泉さんを尊敬しているという内容でした。どんな所が魅力ですかと答えるために用意したコメントは、魅力が多すぎてまとまらなかった結果「この世に存在してくれてありがとうございます」。ただ大泉さん的には期待していた回答と違うようです。

 スタジオからの歌唱ですが使用される映像は特に無く、暗転の空間の中で幾筋もの照明が光る演出でした。そのミステリアスな雰囲気が、6人の色気を際立たせています。男性ならではの激しさを前面に出すジェシーと、ウィスパーボイスを効果的に使う京本大我の歌声はやはり絶品で、ソロパートもこの2人中心に展開されています。往年のジャニーズらしい印象はありませんが、かと言って他事務所あるいはK-POPのボーイズグループみたいという印象でもありません。それはすなわちSixTONESらしさが確立されていることを意味しています。

 なお前回は嵐を除くジャニーズ事務所所属歌手の歌唱映像がNHK紅白のティーザーとして流れましたが、今回は事前のメッセージ動画なども含めてそういった類は一切無しでした。

解説

・ジャニーズ事務所所属歌手の朝ドラ出演は『芋たこなんきん』の城島茂が名高いですが、この年は『おかえりモネ』の永瀬廉、『カムカムエヴリバディ』の松村北斗と連続して出演しています。2000年代はNHKドラマ出演さえも少なかったですが、この頃になると特に珍しいことではなくなります。

・松村さんはヒロインを演じる上白石萌音の夫役として出演、大きな評判になりました。出征前に結婚するものの戦死、大晦日の放送前に出演は終了しています(その後幻という形で再登場はあり)。

・前年のYOSHIKI、この年の常田大希という具合に豪華な楽曲提供が2年連続で続いています。普段のシングル表題曲で名前を見る機会が多いのはSAEKI youthK、2010年代前半に西野カナのヒット曲を多く手掛けた人物です。

 

紅6(全体13):天童よしみ(25年連続26回目)

・1970年デビュー、第44回(1993年)初出場
・1954年9月26日生 大阪府八尾市出身
・楽曲:「あんたの花道~ブラバンSP~」(2002/1/
23 CD)…2年連続4回目
  詞:木下龍太郎 曲:安藤実親 指揮:梅田隆司
  演奏:大阪桐蔭高等学校吹奏楽部
・歌前テロップ:家の中に滝がある
・歌唱中テロップ:名門 大阪桐蔭吹奏楽部と共演
・演奏時間:2分17秒

 先ほどの視聴者投票の結果は、会場全体の色で判別できるようです。これは観客が持つペンライト表示で、とりあえず真っ赤に染まっているので紅組優勢のようです。司会者は今回特にどちらにも属さない中立の立場なので、「今年も白組、不利ですか?」と話す大泉さんの表情もいくぶん穏やかです。

 天童さんが歌唱直前に登場するのは4年ぶり、今回のコラボについて説明します。番組内でのアナウンスはありませんでしたが、高校野球の応援歌としては2018年以降演奏、その年の『うたコン』でも共演済。その後和久田アナが全国大会の常連・年間90公演行っていることを紹介。「TEAM NACKSよりもずっと多いですねぇ」と、実に大泉さんらしい感心の仕方です。なお2018年に開催されたTEAM NACKS第16回の公演数は56でした。そんな大泉さんは直後「あんたの花”街”」とタイトルを間違えて紹介。口に出た瞬間”やってしまった…”という表情になっていましたが、カメラの前ではとりあえず顔に出さずそのまま通します。

 ブラバン演奏は振付もあるようで、途中移動したり手を動かしたり掛け声を挙げたりする場面もありました。ただマイクや指揮者もしっかり用意されているので、過去の紅白でよくあるブラバン”風”ではなくれっきとした生演奏です。イントロがカットされるシーンもありましたが、歌声はやはり流石の内容。ラストのロングトーンや決めのポーズも、掛け声とともに鮮やかに決まりました。大泉さんも「ブラヴァー!」としっかり叫んでいます。

 歌唱後、大泉さんが高校生の1人に話を振ります。「今年一年を漢字一字に例えるとなんですか?」と、なぜか今回リハーサルの記者会見で異常に多かった質問をぶつけます。台本に全く無いことで困っていますが、「充実の「実」です」と結構いい感じに答えました。その能力の高さに大泉さんも驚嘆。なお参考までに、天童さんは最初この質問で一字と言ってるのに「活動」と二文字で答えています(参考記事)。

解説

・大阪桐蔭高等学校吹奏楽部は2005年に創部、梅田隆司総監督のもとコンクールの常連となります。歌番組やライブなどでコラボ出演する機会も多々あり、海外遠征でカーネギーホールの舞台にまで立っています。土日はほぼどこかしらで演奏会を開催、おそらく部員はほぼ休みのない状況ではないかと思われます。

・元々は野球部の応援のために創部された吹奏楽部、言うまでもなくこちらも甲子園の常連です。21世紀に入ってからは特に強く春夏ともに4回ずつ優勝、プロ野球で活躍する選手も多数います。

天童よしみが紅白で2年連続同じ曲を歌うのはこれが初めてです。こういった選曲はいまや珍しくもないですが、どちらにもサブタイトルがつくという事例は他にありません。

 

白7(全体14):KAT-TUN(初出場)

・2001年結成、2006年デビュー
・35歳~38歳・3人組
・楽曲:「Real Face #2」(2018/4/18 シングル「Ask Yourself」)
  詞:スガシカオ 曲:松本孝弘
  演出映像制作:ヒカワヒカル (A4A)
・歌前テロップ:ファンネームは「ハイフン」
・歌唱中テロップ:絆で結ばれた3人が届けるデビュー曲
・演奏時間:2分34秒

 ここ数年曲紹介でVTR使用が常態化していましたが、今回は14組目でようやく初採用。今年の楽曲「Roar」や3人で初めて発表した「Ask Yourself」に乗せて、15年の歴史を振り返ります。そこには6人でデビューした当時の「Real Face」ジャケットの写真も含まれていました。VTR明けにメンバーを代表して亀梨和也がコメント。「(ファン・スタッフ・関係者の皆さんに)感謝を届けたい」と同時に、「抜けた3人に対しても何か感じてもらえるようなステージにしたい」とも話していました。特に後者は脱退後のメンバー(全員ではないですが)が起こしたことを考えると、大変重い響きに聞こえます。曲紹介、KAT-TUNにとっては初めての単独公演が東京国際フォーラムなので特別な場所という和久田アナのアナウンスもありました。

 デビュー当時とはメンバー編成もそうですが、ラップの歌詞も変わっています。そもそもラップを担当する上田竜也も、元々このパートは担当していません。中丸雄一のボイスパーカッションは当時と同様です。ふと考えるとボイパをステージで披露する歌手も近年非常に少なく、紅白だと第53回(2002年)に出演したRAG FAIRの奥村政佳以来ではないかと思われます。

 間奏で「国際フォーラム!」と叫ぶ上田さんの姿が非常に熱いです。クールな中丸さんや単純に格好良い亀梨さんとは三者三様のキャラクターですが、紅白のステージに対する想いはおそらく同じではないかと思われます。映像に登場する太陽やステージに吹き上がる炎と同様かそれ以上に、熱い気持ちがほとばしっている素晴らしいステージでした。

解説

KAT-TUNは元々6人組、グループ名はメンバーそれぞれの頭文字が由来になっています。ただ2010年に方向性の違いを理由にグループを抜けた赤西仁はともかく、田口淳之介田中聖は脱退後に大麻取締法違反で逮捕歴あり。亀梨さんのコメントがやや重い内容になったのも、これが理由だと思われます。

・「Real Face」は2006年のCD売上1位の大ヒット曲で、発売週に75万枚(オリコン調べ)を売り上げるロケットスタートを記録しています。前年に亀梨さんが参加した修二と彰「青春アミーゴ」が大ヒット、さらにデビュー前から一定以上の人気・知名度があったという背景もありました。その後も長きにわたって好セールスを記録、発売されたシングル・アルバムは全て週間1位を獲得しています。

・スガシカオ・松本孝弘の楽曲提供も発売当時大きな話題になりました。なお松本さんは1988年・第39回にTM NETWORKのステージでサポート参加していますが、名前がクレジットされたのはこの紅白が初めてです。

 

紅7(全体15):上白石萌音(初出場)

・2011年女優デビュー、2014年歌手デビュー(映画内の役として)
・1998年1月27日生 鹿児島県鹿児島市出身
・楽曲:「夜明けをくちずさめたら」(2020/5/
11 配信)
  詞・曲:水野良樹 ピアノ:角野隼斗
・歌前テロップ:人気ピアニスト角野隼斗と共演
・歌唱中テロップ:透き通る歌声が未来を照らす
・演奏時間:2分8秒
・会場:渋谷・NHKスタジオ

 ここで和久田アナが石川佳純にコメントを求めます。「迫力の歌声を聴けてすごく感動しています」とまずはノーマル。大泉さんは三谷幸喜に、「短めにお願いします」とわざわざ一言添えて話を振ります。一旦大泉さんの司会をほめますが、「ただ『鎌倉殿の13人』の、第1話の最後のセリフがちょっと僕のイメージと違う」と注文。すぐさま大泉さんがクレームを入れて話を止めます。なお『鎌倉殿の13人』は1月9日放送開始予定。ラストのセリフが気になるという点で、非常に高等な番宣方法になっています。

 上白石さんも渋谷のスタジオから中継。灰色のドレスでやや薄めの生地、若手トップ女優とは思えないシックな衣装です。「感謝を込めて歌わせて頂きます」とコメント。ちなみにドラマでの稔さん、SixTONESの松村さんとは「さっとすれ違いました」「パワー頂きました」とのことでした。

 テレビの歌番組ではカバー曲を歌う機会が多かった彼女ですが、ここでは『みんなのうた』でも放送されたオリジナル曲を歌います。声質の良さが魅力的な代わりに発声で若干難がある、というのが個人的印象でしたが、ここでは思いっきり体を使って歌い上げるシーンに大変な感銘を受けました。歌の世界を最大限に引き立てるためあえて目立たない衣装にしたセンス、ピアノや弦楽器を中心とした生音アレンジ、クライマックスの照明演出など、どの観点から見ても文句無しに素晴らしいステージでした。前半のMVPを1組選ぶとしたら、私は彼女のステージを選びます。同時に2022年以降歌番組に出演する機会があれば、カバーではなくオリジナルをどんどん歌わせてあげて欲しいとあらためて思いました。

解説

上白石萌音の名前が大きく知れわたるようになったのは映画『舞妓はレディ』の主演でした。その一環で”小春”名義で同名の曲をシングルリリース、これが歌手デビュー作となっています。なお上白石萌音名義でのデビューは2016年のEP『chouchou』、こちらも当時主役の声を演じた『君の名は。』主題歌の「なんでもないや」カバーが話題になっています。

・初のオリジナル曲は2017年にリリース、ただ2021年は『あの歌』2部作のリリースもあってカバー曲による歌番組出演が多めでした。

・『カムカムエヴリバディ』だけでなくこの年は大河ドラマ『青天を衝け』にも出演、朝ドラ繋がりで『わが心の大阪メロディー』司会も担当。そもそもドラマデビューが大河ドラマ『江 姫たちの戦国』ということもあって、NHKとの縁は当初から深いです。

・楽曲提供の水野良樹はいきものがかりのギター担当、2017年以降は他アーティストへの作品に携わる機会が多くなります。主なところだと井上苑子「せかいでいちばん」、大原櫻子「さよなら」、坂本冬美&五木ひろし「ラストダンス」、鈴木雅之が歌う『かぐや様は告らせたい』シリーズなどが挙げられます。

 

白8(全体16):King & Prince(4年連続4回目)

・2018年デビュー、第69回(2018年)初出場
・22歳~26歳・5人組
楽曲:「恋降る月夜に君想ふ」(2021/10/6 シングル)
  詞:栗原 暁 (Jazzin’ park)
  曲:久保田真悟 (Jazzin’ park) / 栗原 暁 (Jazzin’ park)
  演出映像制作:玲架 (A4A)
・歌前テロップ:衣装をよ~く見ると…来年の干支!?
・歌唱中テロップ:あふれる恋心を歌う
・演奏時間:2分36秒

 黒地に柄を入れたジャケットを着用、インナーは来年の干支・虎をイメージしたらしい黄色で統一されています。キンプリの魅力は王子様然としたルックスと綺麗な歌声ですが、ソロパートを多く振られている平野紫耀は過去3回と比べて声の調子があまり良くなさそうでした。逆に髙橋海人の調子が良さそうで、Aメロ後半のソロパートはかなり良い声が出ていました。個人的には岸優太の歌声が一番好きですが、この曲はソロパートやや少なめ。そしてやはり、『おかえりモネ』で今年大活躍した永瀬廉のソロショットが歌割りと比較してやや多めです。バックの宇宙をイメージした映像も綺麗で、ラストの紙吹雪演出もキンプリの魅力をおおいに引き立てていました。白組はジャニーズ所属のステージが3組続きましたが、3組とも男性ボーカルグループの王道演出を素直にしっかり魅せる内容で非常に好感度が高いです。

 曲紹介は2曲続けてであっさりですが、ステージ終了後にはしっかりトークの時間が与えられていました。もちろんメインは永瀬さんで、審査員席にいる清原果耶坂口健太郎にも感想を聞きます。ドラマの役としては亮ちん、役者仲間としてはレンレンと呼んでいるようで、ドラマチームの絆の深さを感じる場面でもありました。本人も2人でこのステージを見ているという話に、「裏でニヤニヤ止まらんかった」とコメント。ついでに1月8日から毎週土曜21時に放送される、永瀬さんが主演するドラマ『わげもん ~長崎通訳異聞~』の宣伝も入ります。

解説

・「恋降る月夜に君想ふ」は平野紫耀主演の映画『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナル』主題歌、前作の主題歌も2年前の紅白で歌った「koi-wazurai」でした。アニメは2019年・2020年・2022年にTVシリーズが放送、こちらは鈴木雅之が歌う女性歌手とのオープニングテーマが恒例になっています。

・歌唱後に軽く宣伝された『わげもん ~長崎通訳異聞~』は1月8日~29日に土曜ドラマで放送されました。タイトル通り長崎を舞台にした作品で、他に小池徹平・石黒賢・武田鉄矢などが出演しています。

・栗原暁(Jazzin’ park)の名前もこの時期あたりからクレジットされる機会が多くなりました。ジャニーズ事務所所属のアーティストへ提供する機会が非常に多い(特にKis-My-Ft2は多数)ですが、それ以外のアーティストも広く手掛けています。

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