Spotify Release Reader 新曲レビュー(aiko、SHISHAMO)

aiko「磁石」


 3月3日発売予定のアルバム『どうしたって伝えられないから』から先行配信された楽曲。通算14枚目ですが、個人的には毎回アルバムを楽しみにしている一人です。当サイトでレビューするかどうかは分かりませんが、間違いなく今作もチェックする予定にはしています。

 aikoさんの凄いところはいっぱいあるのですが、一つだけ挙げるとしたら彼女にしか作れないようなメロディーの音運び。イントロから明らかに不自然なコードを使っています。さすがにどのコードかの特定は絶対音感を持っていない以上不可能ですが、少なくともCとかEmとかそんな単純な物でないことは瞬時に分かります。歌のメロディーも早口かつ空間にフワフワ浮いているような状況で、カラオケでもまともに歌えそうな気がしません。長いJ-POPの歴史で使ったことのないような旋律を追い求めているようにも聴こえますが、それが全てaiko節という単語で片付けることが出来る彼女の恐ろしさ。アルバム先行曲から感じた衝撃は「くちびる」「明日の歌」でもありましたが、それと同じ感覚と言いますか、年齢を重ねたから余計に凄みを増したと言いますか。20年前のaikoを知らない若い人たちにも、彼女の凄さをあらためて知って欲しいと自信を持って推薦できる1曲です。それにしても、aikoさんほど親近感のあるアーティストで長年安定した人気を持ち続けた例は、過去にほとんどいないような気がしますね。凄いです。

 

SHISHAMO「君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!」


 そのaikoさんの影響を強く受けているのがSHISHAMOの宮崎朝子さん。昨日放送された『バズリズム』でも、歌詞についての考察やエピソードを語っていたとか。ただこれまで発表された曲でも、歌詞だけでなくメロディーでも強く影響されたと思われる箇所は多々ありました。ですので、長年のaiko好きである私が、何度も足を運ぶくらいにSHISHAMOを好きになったのはとても自然なことです。

 さて今回の新曲。彼女たちのツアータイトルは毎回これくらい長いですが、ついに曲名にまで反映されるようになりました。でも曲を通して言いたいことはとてもシンプル。とにかく”あなたのことがとても好き好き大好き”ということです。それだけなら彼女たちが作るべき大きな必然性はないのですが、やはり決め手は音運びの巧さと朝子さんの声の良さ。こういう所も、本当に先輩のaikoさんの影響だけでなくリスペクトまで十二分に感じさせる部分であります。決して素直なメロディーでないのに、全く違和感なく頭に溶け込ませる音楽を作れるのは、むろん先輩の影響だけではりません。それは朝子さん自身が天賦の才能を持ってかつ更にそれを磨いているから。そういえば彩さんや美冴貴さんも含め、初めて見た7年前と比べて大変洗練された美しい姿になっていますね。

 aikoさんと大きな違いがあるとすればPV。過去にも「みんなのうた」など妙な作品はありましたが、最近の「人間」「明日の夜は何が食べたい?」辺りは色々ツッコミを入れたい状況になっています。今作は完全にその最たる例ですね。見てもらえれば分かります。かなりカオスです。これに関してはaikoより、チャットモンチーの影響を受けてる感じもします。「君と夏フェス」とかでラブストーリーっぽい内容にしていたのが、今となればものすごく懐かしい気持ちになりますね。個人的にはこういうユニーク路線の方が好きなので、大歓迎ではあります。特に昨年のアルバム『SHISHAMO 6』がやや重めで個人的に好みでない雰囲気だったので…。いつも通りのペースなら今年またオリジナルが出るはずなので、また楽しみにしたいです。

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