今週のビルボードチャート~3/30(INI、藤井風、Creepy Nuts他)

今週のチャート総評

 先週初登場の際に取り上げた乃木坂46「Actually…」が順当に1位獲得。ただ56万枚のCD売上は前作より9万枚減、強力なテコ入れを目論んだもののかえって数字を落とす結果になっています。メンバー卒業で離れた分を埋められなかったというより、ここ最近の報道で気持ちが離れたという人が多かった可能性もあります。とは言えCD売上がポイントの75%を占めつつも弱点のストリーミング以外は各要素上位にランクイン、リッピングも一応1位となっています。YouTubeは11位、10日前公開で217万再生は前作「君に叱られた」よりも早いペースです。こちらの再生数はランキング記事を見れば参考にしやすいと思うので、もし良ければ是非ご参照ください。

 上位の初登場が今週は目立っています。まず4位はボーイズグループ・INI「CALL 119」。ストリーミング1位で比率約80%、ただSpotifyでの再生数はまだ38万程度。言うまでもなくLINE MUSICキャンペーンです。1000回再生が特典プレゼント要件になっています。ビルボードチャートを毎週見る人にとってはもうすっかり”いつもの案件”で、21世紀以降のオリコンCDシングルチャートに近い部分もあります。このキャンペーン自体は今後もボーカルグループだけでなく他ジャンルのアーティストが取り入れても不思議ではないですが、ヒットチャートの見方という部分では最重要の注意点として、業界だけでなく音楽ファンも頭に入れておく必要があるように思います。

 8位初登場のMr.Children「永遠」はダウンロード1位、これだけでデジタル系1位なので相当数字を稼いでいます。ストリーミングは100位圏外ですが、木曜日の集計開始なのでもう少し様子を見る必要がありそうです。ただSpotifyの再生数を見る限りでは、INIと大差ありません。今さらランキングがどうこうという存在ではないですが…。なお今作はNetflix制作の映画『桜のような僕の恋人』主題歌となっています。

 10位は藤井風「まつり」。アルバム『LOVE ALL SERVE ALL』発売週でそちらではもちろん総合1位、14.2万枚の売上はゆず『PEOPLE』の約5倍の数字です。楽曲はアルバム発売3日前の20日から配信されています。ラジオオンエアはもちろん1位、同日配信のYouTubeは5位で現在280万再生。もう少し再生数が伸びていてもいいような気がしますが…。ストリーミングも既に多く33位にランクイン、しばらくは50位圏内で見られる楽曲になることは間違いないはずです。また間もなく配信開始から1年となるロングセラー「きらり」もポイント上昇、順位も30位から27位に上がっています。

 16位に原因は自分にある。「結末は次のトラフィックライト」が初登場。先週12位の「青、その他」はこちらでもレビューしましたが、その続編にあたるようです。LINE MUSICキャンペーン実施でストリーミング5位ですが、それ以外の要素は一切加算されていません。ちなみにファンクラブ会員かつ両曲9999回再生でバーチャルハイタッチ会に参加できるらしいです。INIよりもはるかに異常な条件ですが、これによって知名度を上げる一助にはなっています。もっともチャートハックと言われると返す言葉もなく、一つ間違えるとバッシングの温床にもなりかねないので、そこはもう少し何とか…と言ったところです。

 19位の初登場はBMK「だって今日まで恋煩い」。CD売上2位ですが、リッピングはほぼ加算されていません。ただラジオオンエアは20位、不思議なデータになっています。正体はBOYZ AND MEN研究生、彼らも長年CD売上は高いですがその割に固定層以外になかなか広がりません。今作はアニメ『デジモンゴーストゲーム』EDテーマ、TikTokで人気の「グッバイ宣言」を手掛けたChinozoプロデュースの楽曲です。

 先週レビューしたMrs. GREEN APPLE「ニュー・マイ・ノーマル」も23位まで上昇。ラジオオンエア3位、ストリーミングも45位で堅調にアップしています。元々活動休止前もストリーミングは強かったので、今後のロングセラーも期待したいところです。

 初登場が多いのでロングセラーは軒並み順位を下げています。注目のBE:FIRST「Bye-Good-Bye」は多少ポイント数が下がっているものの5位、動画指標1位とストリーミング8位はまだ十分な高水準です。Tani Yuuki「W / X/ Y」はまた最高位を更新して17位、ポイントも少しですがアップしています。Vaundy「恋風邪にのせて」RADWIMPS「うるうびと」Lizabet「Another Day Goes By」は早くも大幅ダウン。Ado「永遠のあくる日」も昨年のような粘りがありません。Stray Kids「MANIAC」が89位から43位にアップしています。

 上位以外も今週は注目作が多いです。38位に初登場はCreepy Nuts×Ayase×幾田りら「ばかまじめ」。オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』主題歌となっています。ダウンロード6位・ラジオオンエアは当然上位で9位でした。おそらくニッポン放送ではANN中心に相当数オンエアしていたものと思われます。

 39位にはあいみょん「双葉」が初登場。先日NHKで放送された18祭で披露された新曲です。ダウンロード3位。ただNHKで放送されている割に、18祭のテーマソングはここまで紅白歌合戦で披露された事例がまだありません。これが歌われるかどうかを考えるのは、当然まだまだ先の話ですが…。

 40位にTREASURE「DARARI」、さらに47位もRed Velvet「Feel My Rhythm」が初登場。お馴染みのK-POPグループで、TREASUREは先週の「JIKJIN」に続くランクイン。Red Velvetは動画指標で10位にランクインしています。また99位の中村佳穂「MIU」はアルバムで24位に初登場した『NIA』収録曲、ラジオオンエア指標で2位を記録しています。

今週のピックアップ曲

INI「CALL 119」

 4月20日発売の2ndシングル『I』から先行配信。前回のリリースが昨年11月3日ですが、こちらも「Rockteer」は早い段階で配信開始されていました。当ホームページでもレビューしています。また3日前には「We Are」も配信開始、こちらもおそらく来週には上位に入るのではないかと予想されます。

 MVはメンバーの写真と名前が冒頭に挿入、初心者には嬉しい試みです。とは言え11人いるので、すぐに頭に入るかと言われるとどうでしょうか…。楽曲は激しい振付と野性的な雰囲気がクセになるダンスナンバー。一定年齢以上の男性にはなかなか理解しづらい面もありますが、カッコ良いことだけは間違いなく確か。

藤井 風「まつり」

 日本情緒を感じさせる音楽は、いまや演歌ではなくJ-POPであることをひしひしと感じさせる冒頭のイントロと映像。ただ風さんのボーカルはR&Bの色が相変わらず強く、日本独自の”和洋折衷”をこれ以上ないほど端的に表した内容となっています。単なるカッコ良さだけでなく、誰にでも楽しめる面白さや親しみやすさを兼ね備えているのがこの作品の凄い部分です。天才・藤井風の才能がまたまた新しい形で表現されている屈指の作品で、令和の後半か次の年号になる頃にはおそらくサブちゃんではなくこちらの「まつり」が一般的になっていると思われます。新しいアルバムも近いうちに当ホームページでレビュー予定、おそらく来年のCDショップ大賞はこの作品ではないでしょうか。

Creepy Nuts×Ayase×幾田りら「ばかまじめ」

 全く異なる音楽性の2組ですが、オールナイトニッポンのパーソナリティーだけでなくソニー・ミュージック所属という共通点があるのでコラボしやすい環境でもあります。YOASOBIは多忙のため今年3月で放送終了しましたが、クリーピーは2部から1部に昇格。高い人気はまだまだ持続しそうな気配です。

 冒頭の歌詞はYOASOBIでおよそ聴くことが出来ないフレーズで、これを幾田りらが歌うことだけで独自の空間が成立しています。Ayaseが参加しているとは言え、楽曲は全体的にCreepy Nuts成分の方が強いように聴こえます。とは言えR-指定もR-指定でこれだけ優しい旋律に乗せて歌うことは滅多にないはずで、YOASOBI的な雰囲気はメロディーの方でしっかり成立しています。コラボレーションの醍醐味と言いますか、面白さがふんだんに出ている内容で、こちらも2022年のJ-POPを語るには欠かせない楽曲になりそうです。

Red Velvet「Feel My Rhythm」

 クラシックの名曲・バッハ「G線上のアリア」のサンプリングから始まるオープニング。NiziU「Chopstick」もそうでしたが、向こうの制作陣ではトレンドになりつつあるのでしょうか。そのメロディーが手伝って、全体的にはしなやかさな雰囲気に仕上がっている楽曲になっています。技術的に分かりやすい凄さはありませんが、全体の美しさを重視しているような仕上がりに見えます。日本では2019年以降リリース無しですっかり韓国メインですが、昨今のコロナ渦を考えると致し方ない所でしょうか。

中村佳穂「MIU」

 昨年はmillennium paradeとの「U」で大注目されました。以前から音楽ファンからの評価は高いですが、YouTubeでの再生数は今のところまだ多くありません。

 アルバム『NIA』の核になっているこの曲は、既存のパターンに囚われない自由な旋律とスケールの大きさが特徴的です。どういったメロディーでも自由自在に歌えるボーカルは間違いなく魅力ですが、過去にあまり経験していない感覚ならではのとっつきにくさを感じる人も確かにいるかもしれません。ラストでガラリと変わる楽曲構成と映像が聴きどころ。天才ならではの発想は幾重にも讃えられるべきですが、そういった芸術肌が不思議と商業的な大ヒットを記録しない傾向にあるのもこの業界の難しさだと感じる所です。

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました