2017.6.29 レキシツアー2017 不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち in 神戸国際会館こくさいホール

 今年レキシは活動10周年を迎えました。また、池田貴史個人としてはSUPER BUTTER DOGや100sも含めてメジャーデビュー20周年になります。活動内容は10年間全く変わってないですが(本人談)、取り巻く環境は特にここ数年で随分変わりました。ロックフェスではもう常連中の常連でなくてはならない存在、ワンマンツアーの規模も昨年からホールがメインで少しずつ大きくなっています。今年のツアーは全公演ソールドアウト、先日は秋に大阪城西の丸庭園と日本武道館、沖縄でのワンマンも決定しました。おそらく来年以降も更に勢いを伸ばすものと思われます。

 私が初めてレキシを聴いたのは2014年の4thアルバム『レシキ』、現場は12月のRADIO CRAZY。その後も見る機会は多く、ここ1年で3度見ています。また池田貴史としても「ねぇ バーディア」(Negicco)や「なないろ」(私立恵比寿中学)など、思いっきりマイベスト年間上位にランキングしている楽曲が提供されています。特に今年はこの2組メインでスケジュールを組んでいるので、余計に外せないアーティストと化しています。というわけで、今回ツアー神戸公演に足を運んだのでその様子をどうぞ。

 神戸国際会館こくさいホールは個人的に一番好きなホールなのですが、振り返るとバンド形式で足を運ぶのはSCANDAL以来3年半ぶりでかなり久々。そもそも男性ソロのアーティストのワンマンに行くのも斉藤和義以来で3年ぶり。ここ最近フェスで見る機会が多いとはいえ、ワンマンとなるとやはり新鮮な部分が多いです。

 客層は20代~50代くらいまでかなり広め、どちらかと言うと女性の方が若干多いでしょうか。私くらいの30代~40代くらいが中心のようで、これまたいつも行くフェスとは少し違うみたいです。そしてやはり、稲穂を持っている人が大多数を占めています。もはやアイドルのライブでいうサイリウムと大差ありません。使う場面は一箇所しかないのですが…。

 開演時間、オープニングの狼煙がSEとしてまず鳴ります。いよいよ開演というところでスクリーンが降りてきて、ほぼ全員立ち上がったお客さんはすぐに着席。「星の流れに」のSEが流れてタイトルバック、早々に文字がディズニーのオマージュ。とてもDVDに収録できそうにありません。直後始まるのは時代劇と思われる寸劇。「KATOKU」の衣装で弓の練習をしている若君(池田貴史)が父と母に呼ばれます。父親役はいとうせいこう、母親役はなぜかみうらじゅん。斜め上に豪華です。長年の交流があるので、ギャラは高くなくても呼べそうですが。

 家督を譲る流れというわけで、家宝を2つ授けます。1つは仏像。運慶と快慶が合成樹脂で作ったとかなんとか、みうらじゅんワールド炸裂の逸物。芝居中3人が素で笑ってると思われる場面も多々、なかなかのフリーダム。もう一つはオルゴール、ただ元服するまで絶対開けてはならぬということ。父親は”開けるシチュエーションがなかった”と、時代劇にはあるまじき言葉を普通に使ってます。とは言えやはり、そんなことを言われると開けたくなるもの。夜に一人で勉強している場面(同じフレーズ読んでるだけですが)でこっそり開けます。すると曲が鳴るや否や、大量の光が放出されて吸い込まれます。スクリーンが上がった後の舞台には、大きなオルゴールの箱が設置されています。

というわけで、その箱を中から開く形で池ちゃんが登場します。劇中と同様の衣装、やはり1曲目に演奏されるのは「KATOKU」。PVの妙なカメラ目線はライブでも同様、笑いも起こります。ラストはカツラが取れるというハプニング…というよりわざと飛ばしていました。

 そのまま次に演奏されるのは「大奥~ラビリンス~」。天井にはミラーボール、照明も加わってディスコティック。あまりの雰囲気に、ついつい「チョコレイト・ディスコ」(Perfume)や「September」(Earth, Wind & Fire)の演奏が割り込みます。「チョコレイト・ディスコ」のバンド演奏は、どこかしらで数年に1回聴いてるような気もしますが…。「September」といえば、2年前Negiccoに提供した「ねぇ バーディア」はこの曲のオマージュでもあります。

続いて演奏される「KMTR645」はここ最近のフェスでもお馴染み。イントロ演奏直後に、箱から音もなしに風船のイルカが放り込まれます。それにツッコミを入れた後、スタッフが5つほど観客席にイルカを放り込んでキュッキュッキュ。一通り舞った後にステージに戻るイルカは、一匹が池ちゃんの顔にぶつけられていました。曲の方はいつも通り盛り上がってますが、気がつけば”呼吸を止めて一秒…”なんて歌詞になっています。そのまま「タッチ」(岩崎良美)として演奏が終わってしまいました。確かによく聴くとコード進行がほぼ同じ、前の曲もそうですがかなり自然に別の曲に移り変わっています。

2曲目の時点で”レキシでした!”と言っちゃっていますが、3曲終わったところでもう帰ろうとしてます。”これ以上やっても盛り上がらないって” ”やっちゃいますか?” ”どうも、ケビン・コスナーです!”などと喋るMCはもはやお約束。ドリカムのサポートにも参加しているキーボード・元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)にも無茶ぶり。同じく?ツアーでワンダーランドと称するドリカムとの違いは”予算が…”とのことでした。

 次に演奏されるのは「武士ワンダーランド」。3枚目のアルバム『レキミ』収録、”みんな4枚目5枚目のアルバムしか聴いてないやろ” ”知らない曲なうと呟いてください”と曲前に話していましたが、個人的にはフェスで選曲しない曲をあらためて聴くのもワンマンに足を運んだ目的の一つ。とてもファンキーなステージを展開していました。ここまで4曲、人の曲を含めると7曲。”元の世界に帰りたい”と話す流れでセキスイハイムのCM曲を歌って(しかもわざわざ生演奏)計8曲。仙台や札幌の某アリーナで歌われる際にも、こんな感じで無理矢理にでも組み込まれるのでしょうか…。

時間の割に曲が少ないレキシのライブ、そういえば初めてRADIO CRAZYで見た時は40分で3曲でした。というわけで、曲数稼ぎのために?ここでメドレー形式での演奏。「妹子なぅ」「RUN飛脚RUN」「真田記念日」、3曲合わせて「飛脚記念日なう」。ただやはりここで演奏されるメドレーもレキシだとやはり普通ではなく、中盤以降は3曲が色々複雑に混じり合うような形。どさくさ紛れに「きらきら武士」や「狩りから稲作へ」の一節、しまいには「前前前世」「恋」を勝手に歌詞を変えて披露したり。”レキシを超えていけ” ”星野は超えられない”、源さんとは以前一緒に仕事していたこともあったはずですが…。おかげで普通に3曲やるよりかえって長くなるという結果に。冒頭からほぼふざけている前半、”ちゃんとやろう”の一声のもと演奏される「最後の将軍」はマジメに熱唱していました。

 一旦池ちゃんが舞台袖にはけて、しばらくはインストでバンド演奏。メンバーはギター・健介さん格さん(奥田健介 from NONA REEVES)ベース・御恩と奉公と正人(鈴木正人 from LITTLE CREATURES)ドラム・蹴鞠Chang(玉田豊夢)キーボード・元気出せ!遣唐使(渡和久 from 風味堂)サックス&フルート・TAKE島流し 武嶋 聡)トランペット・元妹子(村上 基 from 在日ファンク)。レキシのライブではお馴染みのメンバー、全員が高い演奏技術と無茶ブリにも即座に反応できる万能ぶり。見事なセッションに聴き入った後に、箱から登場する池ちゃんは暑そうな十二単姿。「SHIKIBU」でまた会場を盛り上げます。

 続いての曲は「キャッチミー岡っ引きさん」ですが、サビの歌い出しを池ちゃんと渡さんで練習。このやり取りは長々と続くようで、観客は休憩ということでしばらく座ってもらいます。2人揃って”ラクリマ・クリスティーです”というボケをかます池ちゃん、渡さんは即座に違いますと一応否定。神戸といえば異人、ということでカーリー・レイ・ジェプセンやらテイラー・スウィフトやらエド・シーランやら色々振りますが、渡さんは最近の洋楽に詳しくないようです。不発なやり取りがずっと続いた後で、折角なので渡さんがボーカルを務める風味堂の「愛してる」を歌ってもらおうという展開に。”愛してる~とても~”と曲違いのボケを繰り出す池ちゃんですが(「空に太陽がある限り」)、1番を2人でデュエット。ただ結局はサビで池ちゃんが「大都会」(クリスタルキング)を歌い出して終わるというオチ。こんなことを、かれこれ10分くらいやっていました。

 十手を持ちつつ「キャッチミー岡っ引きさん」、ここでも脱線して突如「涙のリクエスト」(チェッカーズ)を歌い出します。いつものことなのでしょうか、それとも40代くらいの観客が多いからなのでしょうか、思いのほかサビの手のフリが揃ってます。折角なのでもう一度「涙のリクエスト」を冒頭・サビ歌い直し。池ちゃんがフミヤ、サックスが尚之、あとは全員高杢という設定。後ろから”フミヤー!”という声援を贈る女性が約一名。ここは誰のライブなんでしょうか…。

 再び”ちゃんとやろう”ということで、真面目なバラード「アケチノキモチ」「憲法セブンティーン」では途中カッコ良いベースソロあり。「刀狩りは突然に」と続く楽曲群、こうあらためてマジメに聴くと本当に演奏をはじめとする音楽は上質。しみじみとそんなことを考えながら聴いてると、またいつの間に「ラブストーリーは突然に」(小田和正)の演奏に切り替わって終わっちゃいました。確かにタイトルだけでなく、サビの三連符もそのままオマージュ。切り替わる場面はまさに”いつの間にか”といったところで、違和感はなかったです。なお照明の光の具合もバッチリ、リハーサルで入念にチェックした場面を想像すると余計笑えてきます。

自ら小田和正ならぬ小田ヘル正と称して、そのまま3度も切り替わるシーンを演奏し直します。今日一番の盛り上がりというより、明らかに本編より盛り上がっています。本人も呆れ気味にツッコんでいました。たださすがに最後はちゃんと本編を演奏し直して終了。「年貢 for you」を経てラストは「きらきら武士」。ラストは定番2曲で盛り上げて締めました。

 アンコール。本人も”この後アンコールです”とちゃっかり説明しているので、手拍子がややまばら。再びスクリーンが降り、映るのは天空をさまよっている池ちゃんと2人の妖精。1人が「キャッツの妖精」ことやついいちろう、もう1人が「稲穂の妖精」こと岡井千聖。猫に扮しているやついさんはともかく、緑の全身タイツで頭に稲穂を乗せたような衣装の岡井千聖はついこの前まで℃-uteのメンバーだったはず。確かにバラエティー寄りのアイドルなので、他のアイドルがやるよりは違和感ないですが…。当然ながら演奏されると思われる楽曲は本編でまだやってない、稲穂を使うあの曲。ただ毎度毎度やっているので”飽きている” ”これが最後です”とは何度も過去のライブで行ってます。それを池ちゃんに2人が諭すかのようなコントを展開していました。岡井ちゃんの印象が強かったので、やついさんはあまり目立ってなかった気もしますが…。

 というわけで演奏されるのは当然「狩りから稲作へ」。ただ箱から出てきた池ちゃんはじめとするバンドメンバーの衣装は、あろうことか先ほど岡井ちゃんが着ていた稲の妖精姿。池ちゃんだけでなく全員その姿なのがとてつもなく頭が悪くてシュール。勿論客席はほとんどがグッズの稲穂を持ってます。中には本物の稲穂を持ってきている方もいるようです。どう考えてもミュージシャンのライブの光景ではありません。かと言ってお笑いライブでこんな光景を見かけることもありません。各所で過去色々おかしなライブも見ているつもりですが、衣装という点で考えると今まで見た中で一番酷いです(むろん褒め言葉)。カオスの極致を超えているような、そんな状況です。

 ”高床式 ””クラシアン!”といういつものノリもあるもののステージも全体的に大暴走。途中メンバー全員でサークルを組んだり花いちもんめを敢行したりしています。”バンザーイ!”とかいいながら「バンザイ~好きでよかった~」を演奏したり、その直後”キャッツだぜ!”とかいいながら「ガッツだぜ!!」を演奏したり。曲が終わってからも”例えば…”とか言いながら「君がいるだけで」のサビを数度演奏。締まったようなそうでないような、カオスな雰囲気のまま終了してしまいました。アンコールが始まったのは20時55分くらいでしたが、結局本編が終わったのは21時20分頃。ちなみに入り口の終演予定時間は21時とありました。これも、不思議の国の成せる業でしょうか(このフレーズ、今回ステージで何かあるたびに多用していたような気がします)。

3時間ほどで、メドレーを1曲とカウントすると本編13曲・アンコール1曲。破格とも言える曲数の少なさですが、それ以上に濃い内容だったことは言うまでもありません。もっとも勝手に許可なく演奏した曲を含めると、間違いなく普通のワンマンより多くなりますが…。10月の大阪城西の丸・武道館も間違いなく面白いことになりそうです。

 笑いあり、上質な音楽あり、涙は…多分ないですが、おそらくDVD化は権利的に不可能なレキシのライブ(と言いつつ昨年末に行われたハナレグミとの対バンは商品化されました)。いわば毎回のツアーが”映像化不可能な幻のライブ”になります。間違いなく行けば楽しめる内容なので、興味ある人は是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

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