紅白歌合戦・岩崎宏美の軌跡~データ&エピソード編~

 今回の紅白歌合戦歌手特集は、14年連続紅白歌合戦出場を果たした岩崎宏美について書いていきます。

 デビュー当時はアイドル歌手の側面が強く、紅白歌合戦もそれに準ずる扱いでした。ただ歌唱力は当初から非常に近く、1980年代以降は実力派歌手として後半で歌う機会も増加します。

 平成以降は出場していませんが、昭和の紅白は最後まで連続して顔を見せる形になりました。そんな彼女の紅白歌合戦を振り返っていきます。

岩崎宏美の紅白歌合戦エピソード

デビュー年から14年連続出場を達成

 演歌ではそこまで珍しくない記録ですが、ポップス系で特に紅組から14年連続出場となるとそう多くはありません。以下、紅組で10年連続出場した歌手の一覧です。歌手名は演歌系を細字、ポップス系を太字表記としています。

 演歌と違うポップス・歌謡曲系で14年連続出場は紅組歴代6位。デビュー年からの連続出場記録は小柳ルミ子ザ・ピーナッツに続く紅組歴代3位の記録となっています。

歌手名 連続出場数 デビュー年 初出場 連続最初 連続最後 備考
石川さゆり 38年
(継続中)
1973年 第28回
(1977年)
第35回
(1984年)
第72回
(2021年)
第34回は妊娠のため辞退
仮に出場ならば45年連続となる
小林幸子 33年 1964年 第30回
(1979年)
第30回
(1979年)
第62回
(2011年)
島倉千代子 30年 1955年 第8回
(1957年)
第8回
(1957年)
第37回
(1986年)
和田アキ子 30年 1968年 第21回
(1970年)
第37回
(1986年)
第66回
(2015年)
第56回は白組からの出場、紅組としては19年連続が最長
天童よしみ 25年
(継続中)
1970年 第44回
(1993年)
第48回
(1997年)
第72回
(2021年)
水前寺清子 22年 1964年 第16回
(1965年)
第16回
(1965年)
第37回
(1986年)
都はるみ 20年 1964年 第16回
(1965年)
第16回
(1965年)
第35回
(1984年)
坂本冬美 19年
(継続中)
1987年 第39回
(1988年)
第54回
(2003年)
第72回
(2021年)
第39回~第52回は14年連続出場
第53回は休止中のため辞退、出場ならば34年連続となる
水森かおり 19年
(継続中)
1995年 第54回
(2003年)
第54回
(2003年)
第72回
(2021年)
小柳ルミ子 18年 1971年 第22回
(1971年)
第22回
(1971年)
第39回
(1988年)
江利チエミ 16年 1952年 第4回
(1953年)
第4回
(1953年)
第19回
(1968年)
美空ひばり 16年 1949年 第5回
(1954年)
第8回
(1957年)
第23回
(1972年)
ザ・ピーナッツ 16年 1959年 第10回
(1959年)
第10回
(1959年)
第25回
(1974年)
青江三奈 16年 1966年 第17回
(1966年)
第19回
(1968年)
第34回
(1983年)
八代亜紀 15年 1971年 第24回
(1973年)
第24回
(1973年)
第38回
(1987年)
藤あや子 15年 1987年 第43回
(1992年)
第43回
(1992年)
第57回
(2006年)
浜崎あゆみ 15年 1998年 第50回
(1999年)
第50回
(1999年)
第64回
(2013年)
越路吹雪 14年 1946年 第2回
(1952年)
第7回
(1956年)
第20回
(1969年)
第2回は松島詩子の代役出演
岩崎宏美 14年 1975年 第26回
(1975年)
第26回
(1975年)
第39回
(1988年)
川中美幸 14年 1973年 第32回
(1981年)
第49回
(1998年)
第62回
(2011年)
Perfume 14年
(継続中)
2002年 第59回
(2008年)
第59回
(2008年)
第72回
(2021年)
佐良直美 13年 1967年 第18回
(1967年)
第18回
(1967年)
第30回
(1979年)
森 昌子 13年 1972年 第24回
(1973年)
第24回
(1973年)
第30回
(1985年)
長山洋子 13年 1984年 第44回
(1993年)
第46回
(1995年)
第58回
(2007年)
ペギー葉山 12年 1952年 第5回
(1954年)
第5回
(1954年)
第16回
(1965年)
第17回は専任の紅組司会、第18回は妊娠辞退
第19回は出場
伍代夏子 12年 1982年 第41回
(1990年)
第41回
(1990年)
第52回
(2001年)
第57回~第66回も10年連続出場
aiko 11年 1998年 第51回
(2000年)
第54回
(2003年)
第64回
(2013年)
AKB48 11年 2006年 第58回
(2007年)
第60回
(2009年)
第70回
(2019年)
二葉あき子 10年 1936年 第1回
(1951年)
第1回
(1951年)
第10回
(1959年)
西田佐知子 10年 1956年 第12回
(1961年)
第12回
(1961年)
第21回
(1970年)
モーニング娘。 10年 1998年 第49回
(1998年)
第49回
(1998年)
第58回
(2007年)

とにかく速いテンポでのステージが続く

 歌唱力が高いということは対応力も高いということでしょうか。アップテンポの曲が選曲された第26回(1975年)~第31回(1980年)は、いずれも原曲よりかなり速いテンポでの歌唱となりました。

 岩崎さんに限らず1970年代後半の若手歌手は早回しのような演奏になることも多いですが、彼女の場合は特に顕著でした。これはステージ編で詳しく書く予定です。

やがてバラード中心の選曲に

 第32回(1981年)で歌った「すみれ色の涙」以降は一転してバラードメインの選曲になります。曲順も前半から後半が多くなりますが、その一方で第34回(1983年)の「家路」は初出場以来となるトップバッターでした。

初めて紅白歌合戦で「レ・ミゼラブル」を歌う

 デビュー当時から高い評価を得ていた歌唱力は、やがてミュージカルの仕事に繋がります。

 1960年代中盤以降ミュージカルからは遠い距離にあった紅白歌合戦ですが、多ジャンル化の方針にともなって第38回(1987年)で久々に選曲されます。この年岩崎さんが紅白で披露した「夢やぶれて」は『レ・ミゼラブル』でお馴染みの楽曲ですが、日本で初演されたのはこの年でした。岩崎さんはメインキャストのファンティーヌ役を熱演、同作品から翌年もエポニーヌ役の島田歌穂による「オン・マイ・オウン」が披露される形になります。

紅白歌合戦当日に芸名を変更

 1988年に結婚、紅白歌合戦は最新曲の「未成年」を披露します。歌唱前のトークで、夫の姓に合わせた益田宏美の名前で活動することを発表しました。歌手テロップも出場発表時は岩崎宏美名義でしたが、本番では変更後の名前が表示されます。

 ただ残念なことに1995年離婚(2009年に再婚)、その後は岩崎宏美としての名義に戻ります。大晦日の紅白歌合戦を機に名義変更する歌手は、それ以前だけでなく以後も現在まで登場していません。

岩崎宏美の紅白データ~14回分のまとめ

出場回
年齢
歌唱曲 作詞者
作曲者
発売日 曲順 主なデータ 主な受賞 他の発売曲
第26回
(1975年)
17歳
ロマンス 阿久 悠
筒美京平
1975/7/25 紅組トップバッター 1975年オリコン年間6位 ・日本レコード大賞新人賞
・FNS歌謡祭最優秀新人賞
・二重唱(デュエット)
・センチメンタル
第27回
(1976年)
18歳
ファンタジー 阿久 悠
筒美京平
1976/1/25 紅組14番手/24組中 1976年オリコン年間20位 ・未来
・霧のめぐり逢い
・ドリーム
第28回
(1977年)
19歳
悲恋白書 阿久 悠
大野克夫
1977/4/25 紅組6番手/24組中 1977年オリコン年間80位 ・想い出の樹の下で
・熱帯魚
・思秋期
第29回
(1978年)
20歳
シンデレラ・ハネムーン 阿久 悠
筒美京平
1978/7/25 紅組2番手/24組中 1978年オリコン年間89位 ・日本レコード大賞金賞 ・二十才前
・あざやかな場面
・さよならの挽歌
第30回
(1979年)
21歳
万華鏡 三浦徳子
馬飼野康二
1979/9/15 紅組5番手/23組中 1979年オリコン年間65位 ・日本レコード大賞金賞 ・春おぼろ
・夏に抱かれて
第31回
(1980年)
22歳
摩天楼 松本 隆
浜田金吾
1980/10/5 紅組6番手/23組中 1980年オリコン年間199位 ・スローな愛がいいわ
・女優
・銀河伝説
第32回
(1981年)
23歳
すみれ色の涙 万里村ゆき子
小田啓義
1981/6/5 紅組18番手/22組中 1981年オリコン年間45位 ・日本レコード大賞最優秀歌唱賞
・FNS歌謡祭最優秀歌唱賞
・胸さわぎ
・恋待草
・れんげ草の恋
出場回
年齢
歌唱曲 作詞者
作曲者
発売日 曲順 主なデータ 主な受賞 他の発売曲
第33回
(1982年)
24歳
聖母たちのララバイ 山川啓介
木森敏之、J. Scott
1982/5/21 紅組17番手/22組中 1982年オリコン年間3位 ・日本歌謡大賞受賞
・日本テレビ音楽祭グランプリ
・檸檬
・思い出さないで
第34回
(1983年)
25歳
家路 山川啓介
木森敏之
1983/8/21 トップバッター 1983年オリコン年間36位 ・日本レコード大賞金賞 ・素敵な気持ち
・真珠のピリオド
第35回
(1984年)
26歳
20の恋 康 珍化
財津和夫
1984/2/21 紅組15番手/20組中 1984年オリコン年間304位 ・未完の肖像
・橋
第36回
(1985年)
27歳
決心 山川啓介
奥 慶一
1985/4/5 紅組6番手/20組中 1985年オリコン年間82位 ・夢狩人
・月光
・25時の愛の歌
第37回
(1986年)
28歳
好きにならずにいられない 松井五郎
山川恵津子
1986/2/5 紅組14番手/20組中 オリコン週間最高57位 ・小さな旅
・夜のてのひら
第38回
(1987年)
29歳
夢やぶれて 岩谷時子
C. M. Schonberg
紅組2番手/20組中 ・最初の恋人達
・風の童話集
第39回
(1988年)
30歳
未成年 山川啓介
三木たかし
1988/12/16 紅組12番手/21組中 ・聞こえてくるラプソディー

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