エヴァの真希波マリが歌っていた「真実一路のマーチ」について、私が知っている事を書きました

 Spotifyのバイラルチャートで、水前寺清子さんの歌う「真実一路のマーチ」が8位にランクインしています。

 今月8日に映画『シン・エヴァンゲリオン』が公開されましたが、そこに登場するキャラクター・真希波マリが歌っていたことが大きな話題になっているようです。あいにく私は歴代のエヴァンゲリオンを全然見ていない人なので、この観点で語る事はできません。ですが原曲は知っています。というわけで今回は、私が知っている「真実一路のマーチ」についてちょっとばかり語ってみたいと思います。

・いつの歌?

 この曲は今から52年前、1969年の9月にシングルレコードで発売されました。当時の日本は高度経済成長期から安定成長期に入り、カラーテレビが少しずつ普及し始めた頃。学生運動が最も盛んな時期で、東大安田講堂事件をはじめとする大学紛争が非常に盛んな頃でもありました。アポロ11号の月面着陸が大きな話題になった年でもありますね。

・誰が歌った?

 既に国民的歌手になっていたチータこと水前寺清子。紅白歌合戦も常連どころか、前年1968年には紅組司会も務めています。その流れで、ちょうどこの曲が発売された時期に開始した日本テレビの『紅白歌のベストテン』紅組司会に抜擢されました。歌手だけでなく、喋りの巧みさも評価され始めた時期だったと推測されます。

・どんな曲?

 「三百六十五歩のマーチ」が前の年11月に発売されて大ヒットしましたが、その流れを汲む明るい楽曲です。作詞・星野哲郎、作曲:米山正夫は同じコンビ。”タンバリンリン、タンバリン”のフレーズが映画で歌われたという話らしいですが、実際は「三百六十五歩のマーチ」の歯切れの良い歌唱のイメージで異論は無いと思われます。

・当時のヒットぶりは?

 発売当時オリコン上位にランクインしていた曲は青江三奈「池袋の夜」、弘田三枝子「人形の家」、森山良子「禁じられた恋」、皆川おさむ「黒ネコのタンゴ」など。社会現象になった黒ネコは例外として、演歌~フォーク調で聴かせるような曲が多いです。1969年のヒット曲は正直明るくない曲が多いのですが、その傾向が更に強い時期でもありました。オリコンのデータ上では最高36位、約9万枚の売上で年間100位にも入っていません。これは当時のヒット曲の流れに合わなかったことと、前の年リリースでこの年はじめに大ヒットした「三百六十五歩のマーチ」と印象が重なり過ぎたことが原因ではないかと思われます。

 ただ当時の国民の印象には確実に残っている曲のはずで、テレビで披露されることも少なくはありませんでした(おそらく)。大晦日に放送された日本レコード大賞(大衆賞受賞)、紅白歌合戦ではいずれもこの曲を歌っています。なお紅白では前の年に「男でよいしょ」、この年に「真実一路のマーチ」を披露したことで、「三百六十五歩のマーチ」は1980年まで歌う機会はありませんでした。

・ステージ展開

 レコード大賞はカラーで保存されていますが、紅白歌合戦は当時の総合司会・宮田輝アナウンサーが自宅で撮った白黒映像しか残っていません。当時の他の番組はほとんど保存されていないはずなので、おそらく今から歌唱映像をピックアップするとしたらこの2つのどちらかになるはずです。

 紅白・レコ大ともに賑やかなステージ内容です。大勢の女性ダンサー(紅白ではスクール・メイツ)を引き連れて歌っています。チータ自身も専用のタンバリンを持っていて、叩く面に「チータ」とマジックで書かれています。右手でタンバリンを持ち、時折高らかに掲げて演奏しながら歌います。マイクはハンドマイクではなく、スタンドマイクを使用しています。ですので左手はフリー、タンバリンを上に掲げる時は横に広げています。

 つまりまとめると、この曲をステージで歌う時はタンバリンを持ちながら、大きな動きで明るく笑顔で。これが非常に重要なポイントになりそうです。

・カバー、配信

 今回思いがけない形で劇中に触れられましたが、今のところ歌番組も含めて誰かが「真実一路のマーチ」をカバーしたという情報はありません。「三百六十五歩のマーチ」の陰にやや隠れていましたが、これだけ明るく憶えやすい楽曲が50年近く埋もれていたのは大変惜しいこと。これをきっかけに、若い人にもまた広がって欲しいと願うところです。ちなみに所属レーベルの日本クラウンから配信されたのは1年か2年くらい前でやや最近でした。レコード会社を移籍した時期(1981年~1988年)のベストはもっと前からありましたが…。近年ようやく少しずつ増えたとは言え、クラウンさんは過去曲のストリーミング解禁にかなり消極的な印象があるので、これを機会にもう少し何とかしてもらい所であります。チータの曲でも他に配信されていない曲は山ほどあるので…。

 ちなみに昭和の紅白歌合戦の顔であったチータは「ヒット曲が出ない限出場しない」とのことで、1987年以降一切顔を見せていませんが、もし今回の件でこの曲が更に大きな話題になれば特別出演でもいいので是非…とも個人的には思っています。

 まとめると、とにかく明るくて親しみやすい名曲ということです。こんな感じで急に思いがけない過去曲が注目された際は、またその都度取り上げて書くつもりです。

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