くるり「野球」を起点に、約70年前の名曲を思い出す

コラム

 くるりのアルバム『天才の愛』収録の「野球」が、一部SNSで話題になっています。

 既に細かく考察している方もいらっしゃるようですが、この「野球」という曲はこれまでプロ野球で活躍した名選手を列挙しているという特徴があります。一番古いのでワンさん(王貞治)、チョーさん(長嶋茂雄)、ノムさん(野村克也)、ハリー(張本勲)、親分(大沢啓二)辺りなので昭和30年代。一番新しい選手は菅野(菅野智之)でしょうか、翔平(大谷翔平)でしょうか、ギータ(柳田悠岐)でしょうか、あるいは戸柱(戸柱恭孝)でしょうか。この並びに戸柱選手を入れるところがミソなのかな、とも思った次第。あとカープの選手が妙に多い気がするのは、言うまでもなく岸田さんがカープファンだからなのでしょう。でも一番美味しいのは、「金村!」と野次られた人のような気がしますね。ガラガラのパリーグを想像させるその野次は、おそらく元近鉄・現野球漫談家の金村義明のことを指しているものと思われます。もしかすると元日ハム・現阪神タイガース投手コーチの金村曉かもしれませんが、そうだとすると少し時代が成熟しているような。いや札幌に移転する前の東京ドームの日ハム戦も、かなりガラガラではありましたが。

 今回のアルバムは「野球」以外も、タイトルだけでツッコミを入れたくなるような楽曲が多数あります。実際聴いたら、これまた各所からツッコミを入れたくなるような楽曲ばかりで、大変ユニークな作品です。一応私もかつてプロ野球専用のTwitterアカウントを作ったことがあるくらいなので、それなりには語れるつもりです。というわけで今回は、「野球」をテーマにして書くことにします。

・実はくるりが野球について書くのはこれが初めてではない


 色々あらためて野球絡みのフレーズについて調べると、くるり自身が以前に野球をテーマにした曲を書いていますね。2000年のアルバム『図鑑』に収録されている「ホームラン」。まだメジャーデビューしたばかりの頃なので、今ほど自由自在に作っている状況ではありません。歌詞もホームランから連想されるストーリーを言葉にした内容で、純粋に良い曲です。Spotifyでの再生回数も、アルバムの中では高い方になっています。

 ホームラン、というタイトルから連想される曲となると「ホームラン・ブギ」でしょうか。笠置シヅ子さんが1949年に歌った楽曲です。

・もしかすると、複数球団並列の歌詞はこの曲以来?


 ピックアップしたアルバムが、そもそもバリバリの野球…。

 この「ホームラン・ブギ」は、当時のプロ野球球団が登場しています。8番の八つチームは、当時存在していたトラ・巨人・ロビンス・阪急・鷹・東急・中日・スターズ。これは今の球団に置き換えると阪神・巨人・大洋・オリックス・ソフトバンク・日本ハム・中日・ロッテですね(ロビンスとスターズは細かく言うと違いますが)…。楽曲が発表された1949年は、川上哲治や青田昇、藤村富美男や大下弘がホームランを打ちまくり、空前のホームランブームが起きた時代でした。球団数は8でまだ1リーグの頃です。ただこの年シーズン終了後複数球団が加入して、翌年からセリーグ、パリーグに分かれた公式戦が実施されるようになります。

 くるりの「野球」は歌詞を見る限り、全球団の選手が登場しています(中日だけ落合しかいないような気もしますが)。この70年の間に特定の球団の応援歌や、それらをテーマにした楽曲は複数生まれていますが、プロ野球のチーム全体をフォローしたのはほぼこの曲以来ではないかな、と思っているところです。

 ちなみにこの曲は、1953年1月2日放送の第3回NHK紅白歌合戦の紅組トリとして歌われました。対抗の白組が灰田勝彦さんの「野球小僧」。紅白の野球ソング対決は、後にも先にもこの時だけです。なお灰田さん自身も大の野球ファンで、紅白では「野球小僧」を2度、さらに「僕は野球の選手」という楽曲も歌っています。ステージで観客席にサインボールを投げる場面もありました。今では考えられないですが…。

・ちなみに…

 くるりのアルバムにはもう一つニッチな曲があります。それは昨年12月に発表された「コトコトことでん」。題材になっている高松琴平電気鉄道、これは「赤い電車」の京浜急行電鉄とも深い関わりのある会社です。現在ことでんで走っている電車は京急のお古、車内にもしっかり羽田空港を起点に!という内容の京浜急行の広告がありました。私も3年前にことでんに乗車して、京浜急行ラッピングの京急車に乗ったこともあります。その時の写真です。

 …前面に少し違和感は残りますが、横の塗り分けは間違いなく京急です。ことでんも応援しているMONSTER BASHに出演する際には、是非歌って頂くことを願いたいですね。

 

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