先日5月中旬に開催されたMUSIC AWARDS JAPAN 2025。日本発信の国際音楽賞第1回として、特に22日に開催されたGrand CeremonyはNHK総合で大々的に放送。視聴率こそ高くなかったようですが、音楽ファンを中心にSNSでは概ね好評と言える内容でした。いずれは紅白歌合戦のように50回・70回と恒例の音楽行事にして欲しいと願うところですが、良い点課題点含めて気になる点はやはりあります。また前回の紅白歌合戦でNHKでの放送が予告されていたことを考えると、今年の紅白歌合戦にも大きな影響を与える可能性も高いように思います。その観点からでも、個人的に感じたことをつらつらと書いていきます。
華麗かつ超豪華な顔ぶれのオープニングショー
いきなりPerfumeの3人が登場したシーンは毎年足を運ぶワンマンライブかと思いましたが、このショーは予告無しでこれでもかと言うほど豪華な面々が続々登場。繰り広げられるのは1980年発表の「ライディーン」をベースにした内容、直前のスピーチを担当したのがこの曲を作ったYMOのひとり、細野晴臣氏。先人たちのリスペクトと現在から未来へ向かうかのような先進的な映像とアレンジ、”意義のある”という一言では到底片付けられない内容でした。ただ第2回以降同じクオリティーでこれを作ると考えると無茶にも程があるので、これに関してはまさに第1回ならではのセレモニーではないかという気がしています。
多岐にわたるノミネートと受賞の顔ぶれ
19日開催の演歌・歌謡曲LIVEにおける最優秀演歌・歌謡曲賞発表を皮切りに、21日開催のPremiere Ceremonyで40部門発表。最終的には62部門、とりわけ主要6部門についてはGrand Ceremonyでも大々的に表彰されました(顔ぶれはオフィシャルページを参照)。
メインどころのJ-POPだけでなく、演歌歌謡曲やインストに洋楽特にアジアへ目を向ける部分は特に志の高さを感じます。反面音楽人5000名の投票と言え、どれだけの方が実際のノミネート曲をちゃんと耳にしたかという点では難しいところがあります。特にアジア関連の賞だとしばらくはK-POPが日本に大きく馴染んでいる韓国のアーティストが圧倒的有利になることが予想され、その点では改善が必要です。いっそのこと、アジアとは別にK-POPはそれのみの部門を作っても良いのかもしれません。
ノミネートはビルボードチャートの実績を元に選出されていて、そこから2段階の投票(1回目で5曲に絞り込む)を経て1曲が選ばれるという方式でした。選出方法に異論は特に無く、ノミネートがビルボードを元に選ぶという点は説得力が段違いなので今後も継続して欲しいです。反面ビルボード自体サブスク要素が現在圧倒的に強く、それ故に2024年の楽曲を主対象にしているにも関わらず2023年以前の曲が選ばれるケースもいくつか存在しました。第1回の今回はいいとしても、一歩間違えると2年連続・3年連続受賞の部門も出てきそうで…。そこは例えば該当部門の受賞曲からノミネートを外すルールにするなど、何らかの制約を入れてもいいのではないかと感じます。
なおビルボードの方では6月4日発表分よりリカレントルールと称して、一定期間以上ランクインしている楽曲・アルバムのストリーミングポイントを一定の割合で減算するアナウンスがありました(該当記事)。
受賞者が必ずしも会場にいるわけではなく、例えば今回だとtuki.やSnow Manなどは不在でした。演歌・歌謡曲の方でも大々的なライブが行われたにも関わらず、最優秀の受賞歌手はこの日不参加の山内惠介でした。レコード会社が特定のアーティストに賞を取らせるために投票者へ営業活動をする…なんていう光景は、昭和ならともかく今の時代には合わない話です。いずれMAJがより大きな存在となっても、公正無私である部分はそのままであって欲しいと個人的には願います。投票に関しては、可能であれば全投票者のリストをホームページで公開しても良いのではないでしょうか。
Grand Ceremonyの講評
19日開催のGrand Ceremonyは非常に豪華なアーティストがライブパフォーマンスを繰り広げました。矢沢永吉に藤井風にYOASOBIなど他の歌番組でもなかなか揃わないメンツは別格級、それこそ実現出来るとしたら大晦日の紅白歌合戦くらいという勢いです。演出も凝っていた・考えられていた場面が非常に多く、特にちゃんみなのパフォーマンスには度肝を抜かれました。
地上波で放送された司会を担当したのは菅田将暉、これが完璧な人選でした。進行が極めてうまいという印象ではありませんがアーティストをリラックスさせるにはピッタリのトーク力、全体的に落ち着いた進行。そして俳優だけでなく歌手・アーティストとしての実績は、年が違えばそのままノミネートされあわよくば各賞の受賞もあったと思われるほど。格調高い雰囲気を作り出すにあたって、これ以上ないベストアクトではなかったと感じます。
また各賞のプレゼンターも人選がよく考えられた上に大変豪華な顔ぶれでした。このプレゼンターを予想するのもまた、次回以降の楽しみになりそうなくらいです。
あとは開催時期や場所についてもSNSでは話題になりました。ロームシアター京都での開催は文化の中心であるという観点から考えると間違いはないと思いますが、東京開催でないと…という声もちらほら。自分としては全てが東京で開催されるというのも味気ないと感じるクチですが、予算面やブッキング面などを考えるとやはり地方より首都圏にメリットあるのも確か。状況次第というのが正直なところでしょう。
気になるのは開催時期で、5月の平日だと盛り上がりに欠けるという声が結構見られました。実際に世帯視聴率も決して良い数字ではなかったようです。データからノミネート曲を決めて投票して…という流れを考えると時期は変えようがないと思いますが、金曜もしくは土日メインにした方が盛り上がるという意見は理解できます。ただ土日はコンサート・全国ツアーなどでアーティストのブッキングがより難しくなることも確かで、そうなると平日の方が都合良いという解釈も出来ます。そもそもこの豪華なアーティストを集めたのは第1回だからなのか、それとも次回以降もこのクオリティーを継続させるのか…。そこもまた検討のしどころではないかと思われます。
まとめ
総じて素晴らしい内容でしたが、NHKで放送となるとどうしても気になるのが大晦日の紅白歌合戦との繋がり。前回の紅白でこの放送が予告されていたことを考えると、人選・選曲・セット・演出など少なからず影響があっても不思議ではありません。もっともお祭り色が例年強い紅白、この厳かな雰囲気をそのまま持っていくことは考えにくいですが、出場歌手や司会の選出・選曲についてはどうでしょうか。当サイトでは毎年紅白歌合戦の出場歌手予想を恒例としていますが、今回は再生数等のデータだけでなくMAJの受賞状況を盛り込む必要がありそうです。
夏の特番も「音楽の日」出演者が既に発表、今年も夏の特番出演リストは作る予定です。第1回の紅白出場歌手予想は8月10日前後を予定しています。そちらもあらためて、よろしくお願いします。
コメント
更新ありがとうございます。
私はリアルタイムで授賞式を視聴していました。業界団体主催のうえ、トヨタグループを筆頭に複数の企業がスポンサーだったこともあり、想像以上に大規模なイベントとなりました。受賞作品も極めて妥当な選出でした。来年も同規模で開催されることを願います。
開催地が京都だったのは、協力に文化庁、後援に京都府・京都市・京都商工会議所が入っていることが理由なので、個人的に異論はありません。むしろ他のイベントと差別化を図れるので良いです。ただ「日本の音楽を世界へ」「アジア版グラミー賞を目指す」というなら、大阪・関西万博で開催するのがベストだったのではないでしょうか。
なお、Grand Ceremonyの制作をNHKエンタープライズが担っている(https://agenda-note.com/about/id=6430&pno=1)そうで、個人的に矢沢永吉の登場シーンは第60回(2009年)紅白のオマージュに見えました。今年の紅白出場にも期待したいです。