2001年の紅白歌合戦は、ザ・ドリフターズが唯一歌手として出場した回として広く認知されています。「ドリフのほんとにほんとにご苦労さん」を軸にしたメドレーだけでなく、全員集合!のくだりや少年少女聖歌隊などもあって、特に当時生で見ていた1960年代生まれの人にとっては拍手喝采でした。私の世代はそれよりもう少し後なので、リアルタイムで見た時は古さが目立つと言いますか、21世紀最初に前面に押し出す内容なのかな…?と思った部分も正直あります。ですが、それでも世代を超えた面白さと存在感は間違いなく確かなものがありました。長さんが僅か3年後にこの世を去ってしまったので、余計に後世まで高い価値が残る映像になったように思います。間違いなくこの年、ザ・ドリフターズが紅白で見られたのは大成功でした。

 その一方で、割を食った印象もあるのは同じ年に「明日があるさ」をリバイバルヒットさせたRe: Japan。ジョージアのCMから派生してドラマ化までされ、元々のCMで歌っていたウルフルズと一緒に立ったステージは間違いなく豪華で目玉的存在だったはずですが、あまりにもドリフが鮮烈過ぎて損をしていたという印象は正直あります。

 

・台本通りにやってその通りにウケない辛さ

 Re: Japanのメンバーはダウンタウン、ココリコ、ロンドンブーツ1号2号、東野幸治、藤井隆、山田花子、間寛平、花紀京。京やんは2015年に逝去されましたが、それ以外は20年経った今でも第一線で活躍を続ける超豪華メンバーです。

 ところが、そのメンバーを持ってしても、ステージの合間に出て来るやり取りで笑いが起こりません。いや正確に言うと、わざわざ笑いを取る必要がないのに台本で笑いを取ろうとして、それにRe: Japanのメンバーが巻き込まれるという状況でしょうか。ダウンタウンの2人はステージ以外ほとんど登場しない形を取ったので事なきを得ましたが、他はなかなか大変でした。

 ココリコと藤井隆さんは紅組に対するやられ役という程度で全く見せ場なく終わります。ロンブーはアッコさんの悪口を言うと後ろから本人が出てくるという演出でしたが、前年に似たような展開があった上に淳さんのリアクションが薄く不発でした。この年はタレントだけでなくNHKアナウンサーに両軍司会を初めて任せたという状況なので、余計にアドリブは厳しく制限されていたと思われます。ですのでまだほとんど20代だった彼らにとっては、台本の不備をカバーできる技術もまだ不足していた上にそれが出来る状況でもなかったように見えます。藤井さん以外は持ちギャグで笑いを取るタイプでない点も、難しい部分でした。

 ドリフでも加藤茶さんと志村けんさんが合間に出てくる箇所がありましたが、持ちギャグが豊富なので問題なく乗り切りました。もっともギャグに頼りっきりの脚本だったのも、よく見ると確かなのですが…。

 

・あまりのスベリっぷりに…

 モーニング娘。のステージが終わって、客席から走って登場したのが間寛平さんと東野幸治さん。聖火ランナーとして、トーチを持っています。マラソンで金メダルを目指す、次の年はソルトレイクシティーオリンピックということでそれに因んだ演出ですが、その五輪は冬季五輪でマラソンはありません。

 そこを有働さんがツッコむと寛平さんが一旦怒って「キツく言ってごめんね」という持ちギャグですが、まあ凄かったです。会場から笑い声が一切起きません。モー娘が超パワフルなステージを展開して、その余韻も残る中のやり取りでしたが、ある意味その一言で余韻が完全に消えたと言っても過言ではありませんでした。

 東野さんが帰ろうと促しますが、寛平さんは同じ展開のギャグを繰り返して粘ります。ところが、一度作られてしまった空気はもはや覆ることがありません。どうにかこうにかして東野さんが寛平さんを引っ込めますが、その光景は地獄以外の何物でもありませんでした。東野さんもマイクをオフにするまで本来は我慢するべき所だったとは思うのですが、間違いなくそれが出来る状況ではなかったのでしょう。あまりのスベリっぷりに大笑いしてしまう音声は、しっかり放送に残ってしまいました。台本通りにやってウケなかったというより、台本を超えたスベリっぷりで、繰り返し見るとその空気に笑ってしまう映像に仕上がってしまいました。

 寛平さんは10年前の紅白でもひきずり女でやらかしていて、まあいたたまれない状況でした。ただその時でも多少は笑い声が起きたように思います。この時は本当に笑い声が一つも起こらなくて、凄かったです。後年にも笑いという点でどうしようもない台本・演出は他にも色々出てきますが、この時以上の凍りついた空気は発生していないように思います。寛平さんは言うまでもなく偉大なコメディアンですが、実のところ紅白に限らず笑いが不発にパターンも多くある人なので(『痛快!明石家電視台』で特に多く見られます)、それが見事に出てしまったという形でした。

 

・ステージ後も…

 本番のステージは良かったですがその後も大変で、翌年に行われるサッカーワールドカップに因んだコーナーも大災難。メキシコのサボテンに扮したココリコ・東野・花子・寛平の5人はここで下ネタ系のギャグをやってしまいます。全くウケなかったとともに、抗議の電話まで殺到するという本当に悲惨な結果になってしまいました。

 とは言え東野さんと花子さんは最後に爪痕を残します。東野さんはエンディングでなぜか近くのマイクがオンになっていて、「やったー!」などの声が多くオンエアに乗りました。そして花子さんは持ち前のキャラクターと低身長を活かして、蛍の光のラストでサブちゃんの横の最前列に映り込みます。実を言うと花子さんは前年まで応援ゲストの常連で5年連続の出場。白組歌手の紅一点としてだけでなく、そういった部分の配慮もあったでしょうか。なかなか粋な演出でした。

 吉本興業のタレントはこの回以降もゲスト・歌手に関わらず紅白には多く出演していますが、今の所Re: Japanのその後の出演は藤井隆さんが第69回に『おげんさんといっしょ』で登場したのみ。ダウンタウンとココリコは2006年以降完全に裏番組が恒例となっています。気がつけばダウンタウンの2人も、この年の加藤茶さんと同い年になっているのですが、裏番組終了後にひょっこり大晦日のNHKに出演することはあるのでしょうか。笑ってはいけないシリーズも15年連続、企画以上にココリコでさえも50歳を迎えるメンバーの高齢化が相当深刻になっているような気がしてならないのですが…。