国道1号線、静岡には白須賀という所がございます。9号線には島根県の大田市、国道7号線には新潟県の勝木、そして国道8号線には石川県の利屋町というのがございます。それではこの国道の標識で占ってみましょう。せーの、バサッ。おっ、1978年は白大勝利、ヤッター!(第29回・山川静夫)
— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) June 13, 2021
今回取り上げるのは、白組司会・山川静夫アナウンサーの名調子。これは、1978年紅白歌合戦の白組3番手・狩人「国道ささめ雪」の曲紹介です。
・楽曲およびアーティストについて
狩人といえば、当時人気を博していた兄弟デュオ。1977年「あずさ2号」でデビューしてすぐに大ヒット、紅白歌合戦初出場を実現させました。1978年は、前年に続く2年連続出場という形になります。作曲を担当したのは現・文化庁長官の都倉俊一氏。当時司会を務めていたNHKの『レッツゴーヤング』で積極的にオンエアしたのが、ヒット要因の一つだったそうです。ピンク・レディーの一連の楽曲を手掛けていた都倉氏は、この時期作曲家としてはトップクラスのヒットメーカーでした。もっとも、この後はかなり早い時期にヒット曲戦線から離れる形になりますが…。
ピンク・レディーに対して狩人のヒットはあまり長く続かず、オリコン週間TOP10入りは「あずさ2号」とその次の「コスモス街道」のみ。1978年には20位以内にも入れなくなります。とは言え全く売れなくなったわけでもなく、『レッツゴーヤング』では1978年4月から司会を担当するようにもなります。したがって紅白出場自体は順当で、おそらく疑問の声はあまり多くなかったと思われます。
「国道ささめ雪」は1978年10月リリースで、大晦日の時点では最新曲。デビュー以来作曲を担当していた都倉氏に代わり、杉本真人氏が作曲を担当。歌謡曲中心に16曲歌われ、自身も第58回(2007年)に「吾亦紅」で初出場を果たした杉本氏が、新沼謙治「北挽歌」とともに初めて紅白に送り込んだ楽曲でした。作詞を担当したちあき哲也氏はこの年「飛んでイスタンブール」で名を挙げ、その曲と同様に提供曲が初めて紅白で歌われます。そういえば、「吾亦紅」を作詞したのもちあき哲也氏でした。
・曲紹介の解説
曲順は白組3番手、同じ2回目出場の故郷演歌・石川さゆり「火の国へ」の後を受けてのステージ。
白組歌手4人が大きな国道の標識を持ちます。前川清が持っているのは国道1号線、以下千昌夫が9号線、細川たかしが7号線、新沼謙治が8号線。おにぎり型のマークの下にはそれぞれ地名が記入されています。1号線が静岡県白須賀、以下島根県大田市、新潟県勝木、石川県利屋町。
その標識を見て、山川さんがアナウンサーらしく早口で説明しています。早口ですが言葉は整理されていて滑舌も抜群、非常に聴き心地が良いです。そんな中で突然国道占い。地名が書かれた標識がめくられると、そこにはそれぞれの頭文字のみが大きく濃く書かれています。白須賀、大田市、勝木、利屋町…。国道の番号に合わせて、「1978年は白大勝利、ヤッター!」。内容自体が面白いかどうかは議論分かれる所ですが、喋りのテンポの良さは間違いなく抜群でした。応援が決まった所で間髪入れずイントロの演奏が始まり、狩人の2人が舞台中央から駆けながら登場して正規の曲紹介に移る、その流れに無駄は全くありませんでした。
この年の紅組司会は経験豊富な森光子でしたが、喋りのリズムは山川アナが1歩も2歩も上をいっていたというのが私の印象です。結果としてこの年の紅白は本当に白大勝利で終わりましたが、それはステージよりもこういったテンポの良い曲紹介が白組の方に目立っていたことが大きな理由ではないかと思っています。
狩人は次の年「アメリカ橋」がロングセラーになりますが、残念ながら紅白出場はこの年限りとなります。ちなみに、紅白でタイトルに国道と記された楽曲が歌われたのは後にも先にもこの曲のみです。国道という字面の限定がなければ、昨年乃木坂46が国道246号線をモチーフにしたと思われる「Route 246」を歌ってはいますが、1/3くらいWOW WOW WOW WOWという具合なので少し微妙な部分があります…。
・登場した国道と地名の解説
せっかくなので、この時に登場した国道そのものについても深く書いていくことにしましょう。
国道1号線は東京~大阪を結ぶ国道で、主に旧東海道を通る路線です。静岡県白須賀は湖西市の海沿いにある地名で、すぐ隣が愛知県になります。静岡県で最も南西部にある町で、古くは東海道五十三次の32番目の宿場町でした。
国道9号線は京都から鳥取・島根といった山陰地方を経由して下関に至る国道です。島根県大田市は出雲市の西にある石見地方の都市で、当時の人口はおよそ3万人。2005年に邇摩郡温泉津町・仁摩町と合併して市域が広くなりました。戦国時代から名を馳せる石見銀山のある町です。
国道7号線は新潟から庄内地方・秋田や大館などを経て青森に向かう国道です。新潟県の勝木は山形県に近い新潟県北部の村上市にある町で、駅もあります。ここの交差点は、国道345号線との分岐点でもあります。ちなみに7号線といえば、Negiccoが歌う「ルートセブンの記憶」は個人的にオススメ曲です。
国道8号線は新潟から北陸地方を経て滋賀県・京都府に向かう国道です。石川県の利屋町は金沢市北部に位置していて、河北郡津幡町に近いです。この区間は能登半島の付け根にあるかほく市から金沢市までの津幡バイパス上にあり、利屋ICというのも存在しています。
コメント