第60回(2009年)NHK紅白歌合戦~その6~

紅15(全体35):Perfume(2年連続2回目)

・1999年結成、2002年デビュー 第59回(2008年)初出場
・20~21歳・3人組 広島県出身
・楽曲:「ワンルーム・ディスコ」(2009/3/25シングル)
・詞・曲:中田ヤスタカ
・歌唱前テロップ:磨きのかかったダンスに注目!
・演奏時間:2分34秒

 再び長崎から福山雅治レポ中継。長崎の夜景が一望できる高台は、グラバー園前でしょうか。久保田祐佳アナによると、この日は雪が降ったりやんだりの天気だった模様。「(長崎ロケについて)一応あると思います」「(故郷から紅白に出られることなど)感動しています、この時間を」と話します。事務所の先輩の中継を見守るPerfumeの面々は歌前トークもあり、今回の曲は「一人暮らしを始める女の子の期待と不安を歌った曲」ということ。前年同様声援が多いです。

 ミュージックビデオを模した映像がバック。セクシーさにプラスアルファを加えたという衣装は、どちらかというとメンバー全員が20歳になったということでの大人な雰囲気ということでしょうか。ダンスパフォーマンスは相変わらず言うことなしで、3人ともかわいかったですが、どうしてもリップシンクな分迫力という面では少し不利に働いている印象もあります。

 

(解説)
・Perfumeの2009年シングルは「ワンルーム・ディスコ」のみですが、オリジナルアルバムは『⊿(トライアングル)』のリリースがありました。「ワンルーム・ディスコ」はオリコン週間1位獲得のヒット、ライブの定番という曲紹介でしたが10年以上経った現在でも披露される機会は多いです。

・当時はまだマイクを持ちながら歌っています。紅白でピンマイク常用のパフォーマンスになるのは第64回(2013年)以降。ライゾマティクスはこの時期辺りからPerfumeと関係していますが、紅白のステージに携わるのは第63回(2012年)以降になります。

白15(全体36):東方神起(2年連続2回目)

・2003年結成・2004年デビュー 第59回(2008年)初出場
・23~25歳・5人組 韓国出身
・楽曲:「Stand by U」(2009/7/1 シングル)
・詞:Shinjiroh Inoue 曲:UTA, REO
・歌唱前テロップ:アジアのスーパースター 珠玉のバラードを歌う
・演奏時間:2分23秒

 リハーサルの時点で報道陣シャットアウト、事務所を訴えた3人と残りの2人の間で亀裂が生じている状態であるという報道もある中でのステージはPerfumeが終わってすぐという形。曲紹介はPerfumeと同じタイミングで、イントロで新たに入る形でもありません。

 画面右側の2人、ユンホチャンミンは報道された通りやる気がなかった、ということはないと思いますが他の3人と視線を合わす場面は全くなし。歌唱も残り3人が表情豊かに歌っているのに対してややあっさりした内容でした。声質が良いのでステージとしては何とか形にはなっていましたが…。歌った後の観客からの声援は、パフォーマンスの素晴らしさとはまた別の悲痛な叫びにも聴こえます。

 韓国では活動休止状態ですが日本では今後も5人で活動するとのこと。既に新曲・ベストアルバムの発売も決定していますがグループ存続はもはや予断を許さない状況。この調子では2010年の紅白出場はかなり厳しいものと思われます。たとえ5人揃っているとしても、日本のファンが見たいのはこんなステージではないはず。

 

(解説)
・東方神起の3人(ジュンス、ジュジュン、ユチョン)と事務所の関係性が悪化したのは2009年7月のこと。この時期韓国での活動は既に休止状態で、5人でのパフォーマンスはこの紅白と直後のCDTV年越しプレミアライブがラストだったのではないかと思います。

・その後、3人は韓国の事務所から独立してJYJを結成しますが、契約面などでその後も色々ややこしいことがあったようです。詳しいことはここでは書きません。事務所に残った2人はそのまま2011年に再始動、紅白にも1度だけではありますが復帰します。

ジェジュンは2017年以降ソロ活動を本格化、日本の歌番組にも再び多く出演しています。ユチョンは2019年に引退しましたが、2021年にYouTubeチャンネルを開設しています。ジュンスもYouTubeやSNSなどで元気な姿が見られます。双方ともJ-POPカバーを歌っている映像が確認できました。

紅16(全体37):水森かおり(7年連続7回目)

・1995年デビュー 第54回(2003年)初出場
・1973年8月31日生 東京都北区出身
・楽曲:「安芸の宮島」(2009/4/1 シングル)
・詞:仁井谷俊也 曲:弦 哲也
・振付:山中陽子 パフォーマンス:G-Rockets
・歌唱前テロップ:ご当地ソングとアクロバットダンスの共演!
・演奏時間:2分44秒

 ゲスト審査員の阿部寛が登場。「歌から発する力を感じながら楽しく聴かせてもらってます」とコメントします。で、仲間さんと阿部さんと言えば『TRICK』の名コンビ。上田教授と山田奈緒子のやり取りが始まります。仲間さんが決め台詞を言おうとしたところで、中居さんが割り込んで「まるっとお見通しだっ!」と横取り。このコンビは2000年以来もう10年になりますが、今年は久々に映画として帰ってくるようです。公開開始は5月8日の予定、待ちどおしいです。

 3年ぶりに後半での歌唱になりましたが、ステージは前半に多く見られそうな内容でした。真っ赤な衣装を着たダンサーが大変アクロバティックで、身体能力の高さを見せています。見事なものでしたが、「安芸の鳥居」の歌詞のところで本当に鳥居を模した部分は、どちらかと言うと凄いというより「何これ?」というツッコミが先に来る人が多かったのではないかと思います。

 このステージも1コーラス半でした。演歌は可能な限り2コーラス欲しい所ではありますが、1コーラスの長さとイントロやアウトロが割とじっくり演奏されていたこともあって、時間にするとそこまで短くありません。

 

(解説)
・アクロバティックなG-Rocketsの踊りが目を引くステージでした。水森さんのバックダンサーとして、この年から3年連続出演します。

・『TRICK』は2000年にテレビ朝日で放送されて以降、たびたび新シリーズや映画が作られましたが2014年で完結します。紅白では第54回(2003年)に仲間さんが応援に登場した際に決め台詞披露、また第65回(2014年)には2人同時にゲスト審査員を務めています。ただ主題歌を多く担当していた鬼束ちひろは、残念ながら1度も紅白に出演していません。

・広島県をテーマにした歌謡曲は過去にも多くありますが、意外にも宮島をテーマにしてヒットした曲はこの「安芸の宮島」のみ。ちなみに水森さんはこれ以前に、「尾道水道」という曲も歌っています。

白16(全体38):五木ひろし(39年連続39回目)

・1964年デビュー(1971年再デビュー) 第22回(1971年)初出場
・1948年3月14日生 福井県三方郡美浜町出身
・楽曲:「凍て鶴」(2008/11/19 シングル)…2年連続2回目
・詞:喜多條忠 曲:三木たかし
・歌唱前テロップ:今年デビュー45周年!渾身の熱唱!
・演奏時間:3分21秒

 『釣りバカ日誌』の22年来の名コンビ、西田敏行三國連太郎がステージ脇に登場。お互いがお互いを褒めあいます。これまでどんな時に「歌の力」を感じて来ましたか、という阿部アナの質問に三國さんは「戦前と戦後を対照しながら、藤山(一郎)さんとかディック・ミネさんの歌を心ひそかに歌いながら…、何と言うんでしょうかね~」と答えます。もう86歳ですが、それなりにしっかり受け答えしていてまだまだ元気です。なおこのコーナーは総合司会の阿部アナが進行で両軍司会の登場は無し。

 2年連続の歌唱ですが今回は和服姿。前回はこの曲を作曲した闘病中の三木たかし氏に向けたステージでしたが、残念ながら5月に亡くなってしまいました。番組で追悼の意を表した演出はありませんでしたが、おそらく彼に向けたステージであったことは間違いないはず。

 さすがにこの人の歌唱をカットするわけにはいかず、しっかり2コーラス。後ろのモニターに映された雪の中の鶴の映像も雰囲気抜群でした。

 

(解説)
・三國さんは第7回(1956年)の審査員で、紅白にはそれ以来なんと63年ぶりの出演。86歳での出演は男性だと第55回(2004年)審査員の日野原重明(当時94歳)に次ぐ高齢で、第50回(1999年)の森繁久彌と同い年です。また第7回の審査員は、当時俳優から史上初めて選出された形でした。当時はまだ元気でしたが、2013年に90歳で亡くなります。

・『釣りバカ日誌』は1979年から連載、映画は1988年から2009年まで計22作作られてました。当初は『男はつらいよ』と同時上映でしたが、すぐに人気シリーズと化します。なお原作は現在も『ビッグコミックオリジナル』で連載中。コミックは112巻まで刊行されています。

・タキシードやスーツで歌うことの多い五木さんですが、紅白では和服で歌うことも稀にあります。第34回(1983年)「細雪」、第37回(1986年)「浪花盃」、第57回(2006年)「高瀬舟」に続いて4回目でした。

企画2(全体39):Michael Jackson Special Stage

・楽曲:「Billie Jean」「Thriller」「BAD」「Smooth Criminal」「I Want You Back」「HEAL THE WORLD」
・振付:トラヴィス・ペイン
・踊り:TETSUHARU+DANCERS

 2009年は多くのエンターテイナーが天国に旅立った年。忌野清志郎加藤和彦森繁久彌の写真が表示され、それぞれの功績を読み上げます。そして今年世界中に悲しみを与えた悲報がマイケル・ジャクソンの死。彼を追悼するステージがこれから始まります。生前のマイケルのステージを手がけたトラヴィス・ペインが、本当にこのステージでも振付を手がけたということです。パフォーマンスはSMAP

 セリに乗って登場して出てきたのは木村拓哉「Billie Jean」に乗せて、しばしソロで踊ります。かの有名なムーンウォークも披露。本家に及ばないのは当たり前なので仕方ないですが、少なくともネットで批判されるほどの内容ではなかったように思います。彼なりのカッコ良さは十分に決まっていました。ドライアイスを浴びながら決めポーズ。

 「Thriller」のMVが映像に表示される中で草彅剛、香取慎吾が階段上のステージで踊ります。ここでは約10名のダンサーも参加。続いてメインステージ、「BAD」木村拓哉、稲垣吾郎のコンビで踊ります。さらに階段上のステージに中居さんが出てきて「Smooth Criminal」。バックの映像にはMVが流れています。火薬を演出を経て、5人が勢揃い。Jackson 5の「I Want You Back」サビをSMAPの5人で踊ります。

草彅「全ての常識を覆したキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソン。」
香取「ずーっと僕らのマイケルのようになりたくて、その背中を追い求めました。」
稲垣「これから僕たちが出来るのは、マイケルの遺志を継ぐことです。」
木村「子供たちの笑顔、美しい地球、彼は未来を信じていました。」
中居「マイケルのことが好きでした、そしてこれからも大好きでいたいと思います。」

 ラストは最後は他の出場歌手(Perfumeflumpoolいきものがかり平原綾香FUNKY MONKEY BABYSGIRL NEXT DOORジェロAKB48の数名)や大勢のコーラスも加わって「HEAL THE WORLD」を合唱。黒い衣装に帽子を被って髪にウェーブをかけている平原さんが妙にアメリカナイズされていて、少し気になります。とりあえずは2009年だからこそ出来た企画で、決して意義のない内容ではなかったので、良いのではないでしょうか。なお各曲についてはノンクレジットでした。

 

(解説)
・その年に亡くなった海外の大物を追悼する企画は過去にもいくつかあります。第28回(1977年)は特に顕著で、エルヴィス・プレスリー佐良直美が歌唱)、ビング・クロスビー菅原洋一が歌唱)、チャールズ・チャップリン三波伸介がコント)の3人が大きく取り上げられました。俳優のウィリアム・ホールデンが亡くなった1981年・第32回に菅原洋一が代表作「慕情」の主題歌を歌ったことがありましたが、それ以来の出来事だったでしょうか。

・また2009年はここで挙げられた方々以外にも、石本美由起・丘灯至夫・三木たかし・松井由利夫・高英男・清水由貴子・川村カオリといった方々が亡くなっています。忌野さんは生前紅白出演がなかったので、ここで取り上げられたのは若干意外な感もありました。

・海外のミュージシャンをショーコーナーにしたのは第33回(1982年)のビートルズ・メドレー以来。当時はわざわざ日本語詞にして出場歌手に歌ってもらいましたが、今回はSMAPのダンスをメインにした内容。そもそも没後に公開された『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』のトラヴィス・ペインを迎えているので、内容は1980年代の紅白と比べるのも失礼なほどです。

・「Billie Jean」「Thriller」が収録されているアルバム『Thriller』は1982年リリース、世界で最も売り上げたCDです。また、ミュージックビデオが全世界で話題になった初めての作品でもあります。「BAD」「Smooth Criminal」は1987年、後者は空耳アワーでもお馴染み。「Heal The World」が1992年、Jackson 5の「I Want You Back」が1969年。「I Want You Back」はTWICEがカバーして、第69回(2018年)にメドレーの1曲として披露しています。

・マイケル・ジャクソンと比較されるという点において、この時のSMAPはやや気の毒な面もありました。当時のネットではマイケルと比べると…という意見がかなり見られました。ただ紅白の企画はほぼ例外なく少ない時間の中で形にせざるを得ない状況にあります。その中でこれだけの形に作り上げたのも、十分SMAPの凄さではないかと今にしては思うわけですが…。

 

 

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