第64回(2013年)NHK紅白歌合戦~まとめ~

・全体の感想

 視聴率は関東地区で前年よりアップしたそうです。色々思うところもありますが、個人的には奇跡的にすごい紅白になったという印象が今回は強いです。台本もかなり作り込まれていましたが、台本を越えたところで面白い部分が多かったという、生放送ならではの雰囲気を堪能できました。そういう意味では第56回(2005年)、第58回(2007年)と近い部分があったように思います。

・ステージ演出

 LEDをはじめとする美術スタッフは世界一と言って差し支えないレベルだと思います。本当に素晴らしかったです。ただ今回は演歌歌手のバックでアイドルを踊らせるなどの、舞台上の演出に対する意見が例年になく多く見られました。意外と今回は演歌歌手の歌唱自体に感じる部分が多かったので(年を取った所以かもしれませんが)、何と言いますかもう少しステージ上での演歌歌手の扱いを大切にした方がいいんじゃないのかなという気もしました。特に次回は北島三郎が紅白を卒業する分余計にそういう心配も大きくなります。だからと言って1990年代の紅白みたいな優遇は必要ありませんが。

 『あまちゃん』コーナーに関してはドラマを見た人からは大大大好評の声が大半でしたが、見ていない人は置いてけぼりなのではという声も多くありました。確かにその気持ちも分からなくはないのですが、放送中・放送後の反響の大きさ、「じぇじぇじぇ」が流行語大賞になるほどのブームっぷりを考えるとNHKなので、これくらいやっても私は問題ないように感じました。自分自身『あまちゃん』はDVDで後追い視聴でしかもまだ最後まで見ていない(レビューサイトであらすじは把握済)立場でしたが、仮に見ていなくても見たいと思わせるような演出にはなっていたように感じました。見ていないと楽しめない演出ならまず連続テレビ小説の応援自体をなくさなければならない、他局のドラマのセリフを引用した応援を禁止しないといけないという話にもなりかねないので、意見としては大変非現実的だと思います。ただコーナーを短くしてその分歌唱時間を長くしてほしいという意見は自分としても理解できるので、その辺りはスタッフの方にも再考してほしいです。

 

・曲目、曲順

 曲目はまずメドレーが今回多かったです。それ自体はステージが賑やかになるのでいいのですが、第63回(2012年)の矢沢永吉のようにメドレーにするより1曲をじっくりフルコーラスの方がカッコいいという事例もあると思うので、その辺りは要検討願いたいです。

 今回は演出を重視した選曲と推測できる部分が多くありました。浜崎あゆみ藤あや子辺りは特にわかりやすかったですね。何を歌うかも大事ですが、やはりどういうステージを作るかということを特に重視すべきであるとは自分も思います。その点では良かったのではないでしょうか。

 曲順は発表の並びを見るとかなり違和感ありましたが、通しで見ると案外すんなり入っていけました。さすがに男女対抗形式をやめるのはある意味で番組の根幹を放棄することになるので反対ですが、対決色を薄めるというのはそんなに悪いことではないような気もします。ただトリ付近に中継を入れるのはやはり少し違うような気はしました。トリに向かって高まるという雰囲気も紅白ならではだと思うのですが、少なくとも髙橋真梨子のステージの前でそれは一切感じなかったので、そこはもう少し大事にしてほしかったようにも思います。

 

・演奏時間、出場歌手選出、放送時間

 一部のステージを除くと演歌は概ね1コーラス半、1コーラス半がテレビサイズの基本とも言えるJ-POPに至っては1コーラスのみというステージもかなり目立ちました。平成以降は概ねどのステージも2分半~3分くらいの時間はあったと記憶していますが、今回は2分を切るステージもあったりして、ある意味では1970年代の紅白に逆戻りしているような印象さえあります。平成の紅白より昭和の紅白の方が面白い!という意見も十分理解できますが、演奏時間に関しては確実に平成以降の方が充実しているはずなので、そこは戻す部分ではないように思いました。ただ演歌は1コーラス自体が昭和と比べて案外長くなっている傾向もあるので、一概には言えない面もあります。紅白歌合戦は音楽番組であると同時に日本屈指のエンタテインメント番組でもあるので、歌と歌の間のやり取りや特別企画なども他の番組以上に大きなウェイトを占めます。ただ今回はステージよりそちらにやや比重がかかり過ぎてるという印象は、確かに否めませんでした。

 放送時間に関してはこれまでの紅白だと長いと感じた年もありましたが、今回に関してはあっという間に過ぎたという印象でした。クオリティが保持できるならば、次回以降もまだこの放送時間で問題ないかもしれません。

・司会

 当たり前と言われれば当たり前なのかもしれないですが、の白組司会は4回の中で一番良かったです。今回は台本通りにいかない部分も過去3回と比べて多々あったと思いますが、よくこなしていたと思います。特に櫻井翔は本当に素晴らしかったです。嵐は5人だからこそ意味のあるグループであることは間違いありませんが、今回の仕切り方を見ると一度櫻井さんの単独司会も見たくなったほどです。他の4人も本当によく頑張っていました。あと番組内では関ジャニ∞の活躍も今回は目立ちました。やはり次期白組司会として考えている部分もあるような気がします。

 綾瀬はるかは凄かったですね。噛むわ曲紹介を間違えるわ段取りを間違えるわ泣いてしまうわで、歴代の紅組司会の中で考えると上手さという点では間違いなくワーストに入るはずですが、彼女の屈託のない表情を見ると全て許せるというその魅力。彼女にしか出来ない司会をしてくれたという点で非常に意義のある内容だったと思います。今回の紅白が面白かった理由の半分くらいは彼女にあると言っても過言ではありません。たださすがに異質も異質なので、次回も彼女に司会をさせるのは難しいと思います。井上真央吉高由里子あたりが候補ですが、ウラトークを聞く限り私はももいろクローバーZのグループ司会も面白いように感じました。

 総合司会の有働由美子アナは今回も特に問題なかったですが、大久保さんが指摘した通り衣装はもう少し地味にした方が良かったかもしれません。ちょっと目立ち過ぎでした。まあそこもある意味彼女らしいような気もしますが…。

 

・ウラトークチャンネル

 橋本奈穂子アナの進行は良かったですね。進行役としても上手く回していて、時には表情豊かになったりして暴走もありませんでした。松本和也アナや神田愛花アナは暴走する傾向があり、小松宏司アナは黒子に徹しすぎて面白味がなかったという印象だったので、そういう意味では非常にバランスの良い仕切りでした。
 テリー伊藤はすっかりウラトークに欠かせない顔になりました。今回は特に彼の視野の広さをうかがえる場面が目立っていたように思います。ゲスト歌手の立場からすると安心できる存在という印象もありました。そうなるとまだ当分続投になるでしょうか。
あと今回は林修壇蜜を筆頭にゲストの人選が特に良かったです。知性を感じる人はツッコミ・見方も相当鋭いと思わせる部分が多く、聴いていて感心しました。出場歌手もこの4回で多くゲストに出ていますが、まだ過去4回ゲスト出演していない方も結構いるので次回はその辺りも呼んで欲しいです。ベテランだと森進一五木ひろし石川さゆり和田アキ子辺り、若手~中堅だとPerfumeいきものがかりaikoコブクロEXILEゴールデンボンバー辺りを期待したいです。

 

・審査方法

 今回から従来のボール審査の方法に戻りました。これはこれで視聴者やホールの観客の意見が軽んじられるとか、極端な回になると第55回(2004年)は会場・視聴者全部白組優勢だったのに紅組勝利という大いなる矛盾が生じるなどの批判もあるので難しい所ですが、味があるのはやはりこちらの方だろうという気はします。まあ第54回(2003年)みたいなストレート勝ちが起きなければ大丈夫ではないでしょうか(結果は納得いきますけどやっぱりあれだと紅組が可哀想なので…)。ゲスト審査員は10人が慣例ですが、20人務めた年も過去にはあるので、ギャラに余裕があればもう少し多く呼んでもいいのかもしれません。あるいは1970年代までの紅白のように一般審査員を事前に選出するという方法もありでしょう。

・最後に

 基本第60回(2009年)辺りから今回まで司会者・選出・ステージ・テロップなど同じ傾向が続いていますが、そろそろ様変わりを期待したい部分も個人的にはあります。例えばトップバッターを中心とした曲順、司会者の選出方法などはその一例ですね。ただ美術班を中心とした映像演出やウラトークチャンネルなど、ここ数年で恒例となり好評となった企画は名物として今後も残してほしいです。要は多くの視聴者にとって良いと感じられる部分はいつまでも継承してほしいなぁということですね。

 そういうわけで次回の紅白歌合戦も楽しみにしています。是非70回、80回、100回を目指してNHKには頑張ってほしいです。ここまで本編レビューを読んで下さった方々、そして当日番組に関わった多くの出演者・スタッフの皆様、本当にありがとうございました。

 

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