・司会

 まずこれは、次回の紅白歌合戦を作るにあたって最大の懸案事項になります。正直申し上げると、根本的に選出方法を変えるべきだと思っています。

 司会の上手さが勝利に繋がるとは必ずしも限らないですが、司会が上手くないと勝てる可能性はかなり低いです。過去の事例を見る限り、そういった技量の司会で勝てたのはせいぜい第40回(1989年)の三田佳子くらいでしょう。今回は審査方法が前回と同じだったら確かに紅組勝利の可能性もありましたが…。それくらい吉高由里子の司会は苦しい印象でした。勿論彼女なりの頑張りは見え、後半以降は多少持ち直した印象もありますが、全体的には台本通りに進めるのが精一杯という状況で綾瀬はるかほど笑えるハプニングもあまりなく。特に今回は仲間由紀恵井上真央と一緒に喋ったシーンもあったので、余計にそれが目立った感もあります。やっぱり初めての司会で上手いというのは井上真央が例外みたいなもので、あとは本当に難しいです。

 次回はもう朝ドラや大河ドラマなどに拘らず、単純に司会が上手そうという人を特に紅組司会で選んだ方が良いのではないでしょうか。仲間さん以降たまに例外はあれどもうこの傾向は10年近くになりますので、そろそろ本気で替え時だと思います。後で審査方法云々についても書きますが、紅組勝利への一番の近道は上手い司会者に変えることだと個人的には思ってるので…。

 一方白組もが5年連続。妖怪ウォッチもトリのステージも本当に見事で、確かに今回の紅白も嵐なしでは成立しないという状況でした。前回は櫻井翔が素晴らしいと書きましたが、今回は二宮和也が特に良い仕事していたという印象です。桃組が揉めていた楽屋裏中継、ウラトーク席でももクロを紹介するときの進行、そして個人的に一番凄かったのはダラダラ喋りそうだった吉高さんを一喝したようにも見える美輪明宏の曲紹介のシーン。いくら讃えても足りないくらいの内容でしたがもう5年連続。アナウンサー以外で5年連続司会を務めるのは史上初という事実を考えると、やはり変えることを念頭に置いて考えた方がいいような気がします。

 今回はV6が初出場、『あさイチ!』司会の井ノ原快彦が喋るシーンが非常に多かったですが、その全てで司会者としての技量を十分過ぎるほどに感じました。特にラストのトリの曲紹介は、これまで嵐が紹介した過去4回以上に素晴らしいという感想を持ちました。もう次の白組司会はこの人で決まりでしょうと何度も思ったと同時に、実際すごく見たくなりました。ただそうなると紅組司会は有働由美子アナで決まり、総合司会の人選が難しくなります。再び阿部渉アナを起用するか、あるいは歌謡コンサートの高山哲哉アナ辺りを持ってくるのか。また仮に紅組司会・井上真央再起用だとイノッチ以外の相方も考えたくなります。6年連続で嵐もありなんですが、個人的には大泉洋辺りを見たいです。あるいは今回ゲスト審査員で出てきた尾上松也辺りもありそうな気がしましたが、どうでしょうか。NHKと梨園の関係は深いので、決してあり得なくはなさそうで…。

・テーマ

 今回ほど紅白歌合戦のテーマ「おおみそかは全員参加で!」を押し出した年はなかったと思います。正直年末の番宣で流れた量もかなりのもので、単純にウザいと感じた人もいたのではないでしょうか。まあ紅白歌合戦のテーマは昔から大筋は共通していて、基本的には”みんなで楽しみましょう”という内容ではあるのですが。

 本番全て見終わった感想としては、このテーマは”良かった”という評価に個人的には落ち着きます。よくよく考えれば、これだけの豪華メンバーが集まるから紅白を好きになったという部分が自分の中で相当大きく、ステージ後ろで出場歌手を探したりツッコミどころを探るという作業は実に面白いものです。「紅白歌合戦はお祭りです!」とかつて司会を務めた中村勘三郎が曲紹介で言っていたこともありますが、まさにその通りで。勿論締めるところは締めると言わんばかりに歌で聴かせるステージも素晴らしく、今回だと天童よしみ長渕剛はそれだけで引き込まれる部分が大きかったと思います。それもまた紅白の素晴らしさだとあらためて思います。

出場歌手選考、企画ステージの扱い

 以前と比べて、無意味な企画ステージは確実に減りました。今回は妖怪ウォッチ・花子とアン・アナ雪・明菜・サザンといった具合で、いずれも多くの視聴者に喜んでもらえるだろうと考えて企画した内容だと思います。花子とアンに関しては見てる人と見てない人で感想が大きく分かれてしまいましたが、それでも1990年代の企画と比較すればやる必然性は高いと思います。問題はその扱いで、例えば同じステージなのに神田沙也加は出場歌手なのにイディナ・メンゼルは特別出演、絢香は正式歌手というよりも特別ゲストみたいな扱い、中森明菜は特別ゲストなのに出場回数が明記されている、Dream5キング・クリームソーダはゲスト扱いなのに初出場の記者会見に出ているという具合で実にバラバラ。アナと雪の女王はおそらく松たか子との交渉もあったはずで最終決定まで相当難儀したことが推測されますが…。
 確かに内容さえ良ければこういう細かいところは一般視聴者にとっては些細なことだと思います。でも長い歴史のある紅白歌合戦、スタッフはこういう部分も果たして考えているのだろうか…とも感じてしまいました。
 見ている分にはうまく料理したなぁと思える点も強かった紅白ですが、表面的に見ると総じて今年は分かりにくい内容だったように思います。一応紅組と白組と分けてやっている以上はバランスも考えて欲しいです。出場組数のアンバランスさが相当気になったので…。

 次は演歌枠の扱いでしょうか。なんだかんだで存在感を見せていた人がほとんどだったので心苦しい部分もありますが、本当に紅白各3~4組ずつに減らしてもいいのではないでしょうか。特に前半に固められている人に関しては…。もっとも今回ラスト3組ずつに演歌が皆無だったと言いつつ中島みゆき美輪明宏が好きな層は演歌とそこまで変わりなく、郷ひろみよりキャリアの長い演歌歌手が3人しかいないのもまた事実。もしかすると演歌・歌謡枠でとらえて考えること自体既に陳腐な話になっているのかもしれません。ただどのジャンルでもそうなんですが、演出しやすいから選ぶのではなく出来る限りその年の活躍を重視して選んで欲しいです。
 あとオリコンの数字に囚われている部分も歌手選考の時点であるかもしれません。昔ならともかく今のオリコンシングルランキングは偏りがあって本当のヒットが見えにくい部分があるので、選考する人にはもっと総合的な評価で見て欲しいです。個人的にはライブの動員数や評判などを特に重視してほしいと思っているのですが。今はCDなどの音楽ソフト市場が縮小している反面、ライブなどの市場は年々伸びているというデータもあるので…。

 また今回はジャニーズやLDH、アミューズといった事務所枠の話題も目立ちました。あまり事務所の勢力が強くない常連が不出場だった事実もあったので尚更でしょう。ただ事務所に関しては時代の流れもあるので難しい部分もあります。ジャニーズ6枠は個人的に言うと納得できる範囲内で、アミューズも外せない印象はかなりあります。もっともサザンと福山さんライブ出演で吉高さん司会はやり過ぎかなとも思いましたが。ただ1970年代にはナベプロが相当な割合を占めていた年もあったので、この辺りは時流の流れに拠る部分も大きいのではないかと思います。

 あとはライブ中継の是非。生演奏になる可能性が非常に高いという良い部分もあるので一概に言えないですが、個人的に今回のサザンのステージは紅白でやることなのかな、という思いが少なからずありました。わざわざNHKが紅白のために海外まで足を運ぶとか、それに向けて作り込むというのならば全然問題ないのですが…。したがって都合がつかずレコーディングスタジオとか、演出の都合上101スタジオでやるとかは問題ないと思います。ただ正直に言うとライブ会場からの中継はNHK・現場双方に負担がかかる面もあるので、もういいんじゃないかという感想を持っています。NHKホールの人は臨場感を感じにくく、何より紅白歌合戦らしさに欠けると思います。

 そして今回は白組が勝ちましたが、ゲスト審査員の人選も含めて選考は露骨に紅組を勝たせようとする意図がはっきりと見えてしまった部分がありました。確かに総合成績は近年白組が圧倒してますが…。そういう意味では今回のTOKIOのステージは痛快極まりない部分もありました。この辺りの工夫ももう少しあっていいんじゃないかと。

・ステージ演出

 全員参加ということで、会場の空気を一気に持っていく演出が今回は特に目立ちましたね。要は今回の裏テーマは「ライブ感を味わう」だったような気がします。NHKホールで生放送でやる以上間違いなくライブで、その判断は正しかったように思います。特にジャニーズ勢で今回それが目立ちました。ジャニーズの枠が多くて、ファンも多くて白組に多く入る投票の原点は間違いなくステージングの素晴らしさにあると今回はっきり分かりました。勿論紅組も素晴らしいステージが多かったですが、白組と比べると全てを持っていってるという内容はやはり少なかったように感じます。

 今回の紅白はTOKIO以前、TOKIO以後というほどでそれだけその前後に差があったように思いました。要は前半の内容がイマイチということです。正直トップバッターが浜崎あゆみでなくなることでこんなに地味な始まりに感じてしまうとは思ってなかったです。さすがにカムバック希望とまでは言いませんが、もう少し最初はパンチのきいたステージが欲しいですね。

 あと若手はいいのですが前半に出てくるベテランは概ねバックの人か応援・企画頼り、結構苦しい印象もありました。本当にシンプルに歌だけで魅せていたと感じたのは天童よしみくらいでしょうか。こういう演出しか出来ないのなら選ぶ意味あるのかな…とも思ったくらいで。勿論単純に見る分には面白くてそちらの方が楽しめるという位なのですが、だからこそ余計に複雑な気持ちにもなってしまいます。

 セットや美術・照明などの裏方に関しては今回も言うことなし。本当に頭が下がるという一言に尽きます。もちろんどの番組・どのライブでもそうですが、とりわけ紅白は特にそういう気持ちにさせられることが多いです。ただカメラワークとマイクの音量だけは少し気になる部分もありました。特にマイクに関しては大変重要な問題なので、何とか改善できる部分があれば改善してほしいと思います。

・会場

 NHKホールで開催されるのが当たり前だろうという認識だと思いますが、アリーナ会場を見るとやはり手狭に感じる部分が多くなってきました。またNHKホール自体が築40年以上経っていて、大規模な改装も考える時期だと思います。さいたまスーパーアリーナや横浜アリーナ級の大きな建物を使うことも考慮に入れていいかもしれません。もっとも自前のホールでなくなることでステージにかける予算が確実に減ったり出場歌手選考にも大きな影響が出たり、何より慣れないうちは紅白らしさを全然感じられないという大きなデメリットもあります。それを考えると、やはりNHKホールで出来る限り続けてほしいという気持ちにもなります。ですが新しいホールかアリーナ会場をNHK自前で建設することも含めて、今後の会場のこともそろそろ考えるべき時期になっているような気もします。

 

・審査方法

 今回は2年前の方法に戻りました。前回のボール投げとどちらかがいいのかは判断が分かれるところです。デジタルTV、ワンセグ、アプリという内訳でしたが思いのほかアプリの投票が多かったです。全員参加というテーマを掲げている以上この方法にするのは必然と言っていいほどですが、やはり会場審査かゲスト審査員の投票の比率はもうちょっと上げてもいいんじゃないかという気はしました。ですが視聴者あってのNHK、ということを考えるとテレビで見ている視聴者・デジタルTV審査員の投票が重視されるのも自然なことのように思います。出来ればどちらかに統一して欲しいとは感じますが…。

・ウラトークチャンネル

 今までで一番良かったです。バナナマンもさることながら久保田祐佳アナの人選が完璧でした。NHKの人とは思えないほどの自由さを持ちつつ進行もしっかりしていて、素晴らしかったです。ラストの「ふるさと」を歌っている場面は今回の紅白MVP級の活躍だと思います。勿論バナナマンも適当なことを言いつつ各歌手へのリスペクトも非常に感じて、前任者みたいに偉そうなことを言う場面もなかったので聴きやすかったです。あとメインでの出演よりこちらの方が本番じゃないのかというゲストもいましたが、それもご愛嬌でしょうか。というわけで次回も楽しみにしています。当然ながら3人とも続投希望。ただ西川さんとゴールデンボンバーを呼ぶのはやめた方がいいかもしれません。

 

・データ放送、アプリなど

 ウラトークチャンネルも含めてですが、紅白歌合戦の見方のバリエーションも本当に増えたとただただ感心します。録画してもボタンを押せば出場歌手のプロフィールやトピックなどが見られるというのは単純に凄いと思います。ここまで来るともはや録画しないと意味がないという領域にまで入っています。

 またアプリやLINEなどで本番の情報も随時入るようになりました。本番前でも色々な情報が簡単に手に入ります。20世紀では考えられなかったことです。便利な世の中になりました。でもシンプルに紅白のステージを全て見たい視聴者にとってこれらのツールをどれだけ活用する機会があるのでしょうか。そんなこともふと思ってしまいます。

・最後に

 年々規模が増大していく紅白歌合戦。このご時世で40%も視聴率を稼ぎ、年始の音楽業界はこれ次第で大変動が起こるので、本当に凄い番組だと思わざるを得ません。単純に画面だけでは分からないようなことが明らかに増えていっているような気がします。それ故にシンプルさを求めたい気持ちも出てしまうほどで…。

 今後も時代に合わせて紅白も大きく変化していくと思います。場合によっては最後の審査がなくなったり、紅組・白組の区分け自体なくなってしまうのかもしれません。もっともそこまでいくと紅白でも歌合戦でもない完全な別番組になってしまうので個人的にはイヤですが。気がつけばこの流れについていくのも大変な状況になりつつあります。どこまで紅白歌合戦を追うことが出来るのか、そろそろ分からない部分も出始めてきましたが紅白を楽しみにする人がいる限り、このレビューを読んでくれるという人がいる限りはなんとか続けていきたいとあらためて思います。