1993年・平成5年の紅白歌合戦は前回より放送時間10分短縮されましたが、この年もJ-POPのヒット曲多め。ZARDやWANDSなどのビーイング勢はほとんど辞退でしたが、それら抜きでも十二分に成立する顔ぶれになりました。ただ前回顕著だった紅組・白組の格差はこの年も是正されたとは言えず、2年連続紅組司会の石田ひかりにとってはいささか辛い部分もあったような気がしています。
演奏時間&構成表 1(第44回・1993年)
演奏時間・構成は紅白歌合戦で実際に披露したステージを指しています。フル再生時間はSpotifyの音源基準、オリジナル未配信曲は手持ちのCDからインポートしたiTunes音源を基準としています。
曲順 | 楽曲 | アーティスト | 演奏時間 構成 |
フル再生時間 構成 |
1(紅1) 紅前半1 |
「男」 | 久宝留理子 | 2分52秒 2コーラス |
4分14秒 2コーラス半 |
2(白1) 白前半1 |
Tears | X JAPAN | 4分31秒 2コーラス+サビ |
10分30秒 2コーラス+サビ2 |
3(紅2) 紅前半2 |
涙 止まらない | 西田ひかる | 2分45秒 2コーラス半 |
2分59秒 2コーラス半 |
4(白2) 白前半2 |
$10 | SMAP | 3分6秒 1コーラス+サビ |
4分26秒 2コーラス+サビ |
5(紅3) 紅前半3 |
無言坂 | 香西かおり |
2分52秒 2コーラス |
4分30秒 2コーラス+サビ |
6(白3) 白前半3 |
流氷子守歌 | 山川 豊 | 2分43秒 2コーラス |
4分33秒 3コーラス |
7(紅4) 紅前半4 |
酒きずな | 天童よしみ |
2分33秒 2コーラス |
4分21秒 3コーラス |
8(白4) 白前半4 |
心凍らせて | 高山 厳 | 2分21秒 1コーラス+サビ |
4分12秒 2コーラス+サビ |
9(紅5) 紅前半5 |
LOVE | GAO |
3分16秒 1コーラス半+サビ |
5分4秒 2コーラス半+サビ |
10(白5) 白前半5 |
何も言えなくて…夏 | J-WALK | 3分29秒 1コーラス半 |
5分29秒 2コーラス |
各ステージ・補足
トップバッターは初出場の久宝留理子。紅白歌合戦史上最も挑発的な歌詞と言っても良い「男」を熱唱します。2コーラスですが、2番サビ入りの直前に本来ならラストサビ前に入るタメが含まれていました。
X JAPANは前回の紅白全員合唱曲をあらためてレコーディング・シングル化した「Tears」。テロップでは大文字表記でした。東京ドームでのカウントダウンライブが控えているため、トップバッターでの出演となっています。フルコーラス10分半は当然テレビだと難しいですが、歌詞のカットは最後のサビ1回分のみ。半分以上のカットは、ほとんどが演奏のみです。
西田ひかるはコマーシャルソングとして話題になったバラード「涙 止まらない」。5分台のヒットが主流の当時において、2分59秒のフルコーラスは異例の短さでした。というわけで平均3分台になった紅白歌合戦のステージ、なんと2番手にしてフルコーラス歌唱となっています。演奏以外もカット無しでした。
SMAPはヒット曲「$10」、この年辺りから人気・CD売上とも軌道に乗り始めます。1コーラス終了後に長めの間奏、ここで中居さんがセリフパートで「白勝ち!」とアドリブ。歌・踊りでおおいに魅せた後、ラストサビを最後まで歌い切っています。
香西かおりは大ヒット曲、この約1時間後に日本レコード大賞受賞曲にもなる「無言坂」でした。イントロ・間奏・アウトロと歌以外は大幅カットですが2コーラス歌唱。2000年代の紅白でも複数回歌っていますが、2番を歌っているのはこの時だけです。
山川豊は「きずな」がヒットしていますが、この年の歌唱曲はなぜか1984年発表・代表曲とも言えない「流氷子守歌」でした。平成以降の紅白ではトップクラスの謎選曲ではないかと思います。ステージは兄の血筋も感じさせる、1番と3番の2コーラス。紅白の山川さんは聴かせる歌謡曲調が多いので、やや珍しいステージだったと言って良いのかもしれません。
天童よしみはこの年、苦節24年での紅白初出場。「酒きずな」は現在も「珍島物語」に続くCD売上を記録しています。ただ現在まで続く連続出場のきっかけは、「珍島物語」が大ロングセラーを記録した第48回・1997年なのでまだ少し先でした。1番と3番の歌唱。なお応援には、当時駆け出しのバラエティタレントだった久本雅美が登場しています。
高山厳も苦節22年で初出場、「心凍らせて」は当時演歌ファンでなくても広く知られた大ヒット曲でした。年末の音楽特番、特に賞レース系はほぼ全て出演していた記憶もありますが、紅白は間奏無しの1コーラス+サビ。かなり短い演奏時間になってしまったのが惜しまれます。
GAOは昨年の「サヨナラ」から大きくセールスを落としていますが、歌唱力の確かさとNHK番組での実績が大きかったのでしょうか。「LOVE」は1994年2月リリースのシングル曲、この時点ではアルバム『GAO』収録曲という扱いでした。構成は1番+2番ラスト+間奏+それ以降。力強いステージは前年と同様です。
J-WALKも結成13年で初の大ヒット、バンドでは過去になかったほどの遅咲きでした。代表曲「何も言えなくて…夏」をテレビサイズの1コーラス半、フェイドアウトの終わり方は当然ライブ仕様の生演奏になっています。(ステージレビュー→紅白歌合戦・バンド出場歌手の歴史)
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