第68回(2017年)NHK紅白歌合戦~まとめ~

 皆さん、今回の紅白歌合戦はいかがだったでしょうか?

 前回はあまりにも賛否両論な内容だったので、放送が終わって少し経ってから座談会を開いて紅白ファン以外からも多く意見を聞く形にしました。今回はそれと比べると概ね好意的な評価が多いです。近年の紅白は案外放送前から色々言われる割に、放送後は良かったという意見が多く見られます。今回はその最たる例かと思われます。ただ課題が全くないかと言われると、そうではありません。以下項目ごとに書いていきます。

・司会

 連続テレビ小説の番宣の要素もある紅組司会はともかく、総合司会の内村光良と白組司会の二宮和也は第70回まで続投で良いと思います。やはり司会が良いと番組の評判も自然と上がりますね。第66回もそうでした。特に内村さん・LIFE!に関してはまだまだネタもあって新しく出て来る可能性も高いです。是非今回の紅白も総合司会して頂くよう、今からでも交渉して欲しいところです。有村架純も司会としては経験値が上がって良い出来でした。例年の傾向を考えると今年は変わる可能性高いですが、続投という選択肢も十分ありかと思われます。ニノに関しては本番中、大野さんが口にした通りです。彼とマツジュンはマイナスのスクープがあり、櫻井さんだとNTV色が強すぎます。全く違和感を感じさせる場面がなかったので、是非続投して頂きたいところです。

 サポートの桑子真帆アナは冒頭2度ほど噛んだ場面が気になりましたが、それ以外は特に問題なく。ラジオ実況は今回聴いていないので何とも言えません。ウラトークチャンネルの塚原愛アナは限りなく進行に徹した形、前任の久保田アナや橋本アナほどインパクトは強くなかったでしょうか。あとは有働由美子アナのまさかの活躍。中継レポーターなのに踊りまで参加してもらったのはまさしく彼女の人徳。ただ『あさイチ』キャスターは今年3月卒業なので、次回の紅白に関してはその後の異動次第になるでしょうか…。

 

・ステージについて

 ここ数年、見た側の感想として個人的にテーマを設定しています。前回は「虚構」、その前は「実験」、もうひとつ前は「ライブ感を味わう」といった具合。

 今回つけるとしたら「新時代」でしょうか。若者向けの紅白だった、とまでは言えないですが、新しい希望を感じさせる演出が非常に目立ちました。「Jupiter」のアカペラで幕を開けたLittle Glee Monster、高校生ホーン隊と共演したSHISHAMO、弾き語りで歌い上げる竹原ピストル、今までにないような歌の上手さを感じた丘みどり、無音シンクロダンスおよび歌って踊れる歌手の極致を見せてくれた三浦大知、ベテランであるが故に紅白・音楽・視聴者全てにリスペクトを感じさせてくれたエレファントカシマシなど初出場歌手ではそれが特に顕著でした。他にも洋楽カバーを着物で歌い上げた島津亜矢、生演奏の編曲でいつもと違う雰囲気を見せてくれた三代目J Soul Brothers関ジャニ∞、バブリーダンスをバックに踊り歌った郷ひろみ、何より見事な大トリステージを務めあげたゆず。「実験」の時と違うのは、勝算があると確信できる割合が高い演出が目立ったこと。本来の歌の良さをキープもしくは更に引き出す、そういった意図が見えたステージは全て良かったです。それ故に今回は、いつも以上にバックに派手なセットや人がいない歌手だけのステージが印象的でした。その分映像に力を入れていたというのもありますが、すごくスッキリした演出がいつも以上に良い方で目立っていたような気がします。そして、それが活きていたのは総じて歌唱力の高い人か一定以上に踊れる人だったことは特筆しておきたいところです。
 逆に人を多く使うステージだと、今までの紅白ならではの演出の方が活きていた気もします。出場歌手がバックで応援する坂本冬美天童よしみ山内惠介、早替えを取り入れた西野カナは安心して見ることが出来ました。

 ですので今回の紅白で目立って残念だったのは演歌の演出。市川由紀乃石川さゆりは選曲段階で間違ってます。演歌に興味ない層に届けたところで見る人が増えるはずもない時代、演歌ファンに素直にステージを届ける形にした方が間違いなく良いような気がします。石川さゆりの「津軽海峡冬景色」で編曲をガラッと変えた意図は分かるのですが、個人的にはっきり言わせて頂くと違和感がありました。そもそもの問題として、そこまでするくらいなら素直に別の曲にした方が良かったのではないかというのが正直な意見です。平尾さん追悼目的で、「夜空」をオリジナルに近いアレンジで歌った五木ひろしとは非常に対照的な結果になったと言って良いでしょう。またいくら伝説的・偉大な歌手と言っても美空ひばりの曲を3年連続で歌うのは明らかにやり過ぎで、特に「人生一路」は2年前に天童よしみが歌ってるため、ここで市川さんも歌うとなると、どうしても比較されてしまいます。勿論本人としては非常に意気に感じて思いも強かったとは思いますが、視聴者から見ると損でしかなかったような気がします。福田こうへいも今回の「王将」は選曲理由がはっきりしていたので悪くはないですが時間にすると短く、紅白全体からすると印象度は高くなかったです。三山ひろし水森かおりも歌の印象が大変薄くなってしまう演出で、この辺りは本当に再考して頂きたいです。裏番組で2年ぶりに演歌番組を復活させたテレビ東京の視聴率が大幅アップしているのが、現状の演歌ファンにおける紅白への期待度の表れと言って良いのではないでしょうか。

 演奏時間は今回前半で2分を切るステージもなく、多少の改善はされたと思います。後半につれて長くなるのは視聴者のニーズを考えると仕方ないと言いますか当然と言いますか。むしろ安室奈美恵が複数曲どころかフルコーラスでもない、4分満たない演奏時間にしたのが意外に感じました。

 中継は概ね意図を感じたので良かったと思います。曲紹介の映像の長さも前回よりは短くまとめられていた気がします。ただ福山雅治のくだりはもう少し短く出来ないでしょうか…。時間別視聴率を見ると明らかに伸びが足りなく、実際私もこのシーンは映像から目を離す場面が他の時間よりも増えました。福山さんの場合特別出演でなく毎年こういった形の中継なので、余計にそういう印象が強くなってしまいます。色々あるとは思いますが、本当に何とかして頂きたいです。優遇が過ぎます。

・その他演出について

 『ひよっこ』特別編は桑田佳祐も加わったことで企画に大きく箔がつきました。個人的には、出演者の名前のテロップも最後にまとめてという形で入れて頂けると見てない人にも優しかったような気がします。第64回の『あまちゃん』の次に良かったのではないでしょうか。

 全員合唱は「ふるさと」「花が咲く」よりも明らかに知名度高い曲だったので、良かったと思います。気がつけば毎年恒例になっていますが…。個人的にはステージとは違う歌手の表情・衣装も見られるので、単純に批判する気持ちにはあまりなれません。

 紅白ハーフタイムショーはピコ太郎ブルゾンちえみと2年続けて思いっきり旬の芸人が出てきたことで成立しましたが、大ハズレの年が発生するとどうなるのでしょうか。そこが気になります。今回は司会者がしっかりしていたので、お笑いゲストのいわゆる”やり損”がなかったのが何より良かったですね。面白い面白くない以上に、特に紅白初抜擢になった芸人にとってそこはどうしても重要な部分になります。

 紅白楽屋トークは放送中本編と並行として拝見しました。詳しくは本編レビューでも書きましたが、ウラトークチャンネル以上に自由な感じが良かったです。ただ見たいステージと豪華ゲストが重なるとなかなか大変で、PerfumeX JAPANのステージ中に椎名林檎トータス松本が出てきたのはなかなか困りました。逆に福山雅治の映像紹介中はみやぞん渡辺直美の時間で、これも結構辛かったです。

 紅白ウラトークチャンネルは今回も良かったです。福田こうへいのサイドバックのくだりはツボに入りました。ただヒム子企画も恒例になっていますが、そろそろネタがしんどくなる頃かもしれないという気はしてます。もう一つ、来てくれるゲスト歌手が少し固定化され過ぎてます。ただ乃木坂46星野源西川貴教はお約束みたいな部分もあるので難しいところですが…。

 個人的に今回は、ゲストに来てくれる歌手が思いのほか本音の意見をナチュラルに話していたのが興味深かったです。企画自体はバナナマン以前から好評なので間違いなく続くと思いますが、次回の人選はどうでしょうか。もっとも現状の2人の人柄・好感度を考えると、誰かに代えるよりは続投した方が間違いなく良いようにも思いますが。

・審査方法

 今回はどういう審査方法でも白組勝利になっていたと思いますが、果たして次回以降はどうでしょうか。現状の審査方法だと確かにまた白組に偏りやすくなるような…。視聴者投票にすると、どうしても女性ファンの多い男性歌手の方が熱中度も高くなるので票が入りやすくなるのは無理もないと思います。これに関してはいまだに最適解が見つからないので難しいですね。おそらく現場もそれを痛感してると思います。

 何より、実は番組のクオリティーを上げるにおいてそこまでメインになるはずでない要素であるのが難しいところ。ただ審査を廃止すると「紅白歌合戦」でなくなるので、根幹が消えます。悩みどころです。ちなみに過去のデータを見る限り、白組が大型連勝してる間もデジタルTV投票の審査が全部白組優勢だったかと言われると、決してそういうわけでもなかったということは記しておきます。

 

・最後に

 なんだかんだ言いつつも、紅白歌合戦は年を経るごとにつれて時代に即した内容になっているような気がします。昭和の時代から連続出場している歌手も随分少なくなり、ステージの使い方や曲順の傾向も変わりつつあります。それでも、”家族で揃って見る番組”としては今や滅多にない存在で、それこそこれに並ぶのは同じ大みそかの「笑ってはいけないシリーズ」くらいになっているかもしれません。テレビの視聴率が全体的に下がっていて、世代間で共通しているヒット曲がない中で視聴率があまり下がっていないのはやはり凄いことで、しかも関東は下がっていても他では上がっているという地域も多いです。いやむしろ、10代~20代ではこの曲が流行った・親の世代では昔この曲がすごかったという対話のネタとしては家族揃って見る番組としてより相応しい内容になっているのかもしれません。例えばTWICEに関して言うと、お父さんお母さん世代で知らなくても子どもの中では流行っていて、なるほど…という会話が多く見られたと聞きます。そういうきっかけとしても有用で、事実10代~20代の視点から見ると紅白出場は大変理に適った話になっています。

 もちろん個人によって事情は大きく変わるかとは思いますが、それでも紅白歌合戦は大晦日の風物詩として、多くある歌番組の頂点として全ての歌手・アイドル・ミュージシャン・芸人他の目標として。今後も永く続けていくことをあらためて願いたいです。

 最後に、NHKスタッフと紅白歌合戦に関わった全ての方々にあらためて感謝します。素敵な番組を大晦日に毎年放送してくれて本当にありがとうございます。厳しいことも書きましたが、第69回もおおいに期待しています。

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