第71回(2020年)NHK紅白歌合戦~その3~

白6(全体12):純烈(3年連続3回目)

・2007年結成、2010年デビュー 第69回(2018年)初出場
・34~49歳・4人組
・楽曲:「愛をください ~Don’t you cry~」(2020/2/26 シングル)
  詞・曲:幸 耕平
・歌唱前テロップ:リモコン決定ボタン連打 紅白花が乱舞!
・歌唱中テロップ:ボタン連打!500万 1000万で紅白花が乱舞!
・演奏時間:2分2秒

 コロナ禍で試行錯誤した今年の活動をVTRで振り返ります。無観客10周年ライブ・観客1人”おもてなし”ライブ・オンラインチケットの手売り・密着できる等身大人形などが紹介されました。今回の試みはリモコンの決定ボタンを連打するリモート握手。連打すればするほどステージに花びらが舞い降りる内容のようです。

 歌前のトークは酒井一圭白川裕二郎が登場。目標は1000万回。500万突破で紅い花、1000万突破で白い花が乱舞、達成されなければえらいことになるみたいです。それにしても酒井さん、髪を白く染めて衣装だけでなくそこにもハートをあしらって、張り切り過ぎてます。スタンバイ直後、内村さんには「またお笑いの人が来た」呼ばわりされてしまいました。

 曲紹介の時点でリモート演出が始まりますが、思いのほか早く連打されていて、イントロ開始時点で303万回。演奏開始20秒であまりにもあっさり目標達成となりました。まずは赤いハート型の紙吹雪がステージに舞いますが、かなりサイズが大きいです。ラストサビでは白い紙吹雪も舞いますが、サイズが大きい上に量が異常に多いので歌う4人の顔が見えないくらいになっています。「風雪ながれ旅」もビックリの内容でした。歌終わりには罰ゲームと形容される量、皆さん紙を口に入れてます。なおボタン連打の演出が前面に出ていますが、セットのリモート銭湯ライブを模した映像のクオリティーも優れていました。

 最終的には曲終わりで7845万回、その後も集計されて8264万3118回にまで到達。少し読みが甘かったかもしれません。次にまた同じ企画をもしやるとしたら、若干ステージの尺を伸ばして1億までやってもらいましょう。

 

(ウラトーク)
 「多分LiLiCoさんが500万回押すから」とは、リモート企画が始まる前の感想。ウラトークでもボタン連打を呼びかけます。投票数が集まる勢いに2人ともビックリしてます。白い紙吹雪は、あまりの量に2人とも大爆笑。歌い辛そうというツッコミも入りました。

 

(解説)
・ファンとの触れ合いが身上とも言える彼らの活動は、コロナ禍でかなりの苦戦を強いられました。一方CM起用がこの年多くなり、エム・データの調査によると新たに4社起用。TV-CM新規急上昇ランキングではミルクボーイに次ぐ2位を記録しています。

・紙吹雪演出は第32回(1981年)以降の紅白ではお馴染みの演出で、当年大トリの北島三郎「風雪ながれ旅」はあまりの量で鼻に入ったとまで言われる状況でした。少なくとも口に入ったことは間違いなさそうですが、今回のステージは幸い?鼻に入るようなサイズではなくやや大きめに仕上げたようです。

・紅白歌合戦のステージに際して衣装を張り切る出場歌手は過去にも多数いますが、さすがに白地にハートの型を入れた髪にしたのはこの時の酒井さんが史上初です。髪を白く染めたケースはゼロではなく、例えば第53回(2002年)の中居正広などが該当しています。

紅7(全体13):坂本冬美(18年連続32回目)

・1987年デビュー 第39回(1988年)初出場
・1967年3月30日生 和歌山県西牟婁郡上富田町出身
・楽曲:「ブッダのように私は死んだ」(2020/11/6 配信)
  詞・曲・口上:桑田佳祐
・歌唱前テロップ:桑田佳祐が作ったこん身の1曲
・歌唱中テロップ:桑田佳祐プロデュース 大人の歌謡曲

・演奏時間:3分36秒

 第69回NHK紅白歌合戦で特別出演したサザンオールスターズ、そのボーカル・桑田さんに楽曲提供を依頼した冬美さん。レコーディングの様子などがVTRで流れます。

 二階堂さんによると、冬美さんはサザンの大ファン。そのきっかけは、地元和歌山の中学時代の初恋相手だったそうです。というわけで、その人からVTRでメッセージが届きます。送り主は、和歌山在住・みかん農家を営んでいる桑畑佳祐さん。冬美さんと、4人の司会者とも知り合い?らしくてそれぞれメッセージを贈ります。テロップも含めて、『さんまのSUPERからくりTV』のビデオレターのコーナーみたいでした。なおサザンオールスターズはこの大晦日、22時から配信ライブを事前録りの形で開催しています。

 イントロで桑田さんの口上が入ります。「深く愛したあの人に、気付けば捨てられ殺められ。この世を去った今もなお、女の業から抜け出せず。古代より続く命を落とした地上の縺れが、近松世話浄瑠璃の如く令和の世にも響き渡ります。主演は勿論この方、坂本冬美さんで「ブッダのように私は死んだ」」。ドレスで歌うのは「また君に恋してる」の時以来で紅白では10年ぶり。その曲は2009年に話題になり、紅白効果で更に大ヒットして2年連続歌唱でした。

 ストーリー性豊かな歌詞と、それを完璧なまでに表現する歌唱力。”歌を演じる”と書く本来の”演歌”は、着物で着飾って七五調で歌うありきたりな曲ではなく、こういった曲を指すのではないかと言わんばかりのステージング。声だけでなく、表情も楽曲にどっぷり入り込んで世界を作っています。純白の色をしたドレスは、貴方色に染め上げてくださいという意志の表れなのかもしれません。32回目の紅白ですが、間違いなくこれまでと比較しても歴代トップクラスのパフォーマンスだと思います。痺れました。

 

(ウラトーク)
 坂本冬休みさんの名前がすごい好きといういかにもウラトークな話題の後、桑畑佳祐さんに大爆笑。ステージは2人とも釘付け、特に歌詞を絶賛しています。「ファーストコンタクト刺激的だね」、ですが「しっとりとしたT.M.Revolution」「お釈迦様に殴るイメージがないからさ~」という言葉には、サンドウィッチマンからうるさいの声が挙がっちゃいました。

 妖艶さに脱帽、ラストは「ついさっきまでみたらし団子食べたかったんだよ?」「いやあれは色んな意味が含まれてる」というやり取りで締めました。

 

(解説)
・冬美さんが中学生の初恋相手をきっかけにサザンのファンになったというのは本当のエピソードらしいです。紅白歌合戦まで直接会った機会はなかったそうですが、双方とも1988年のアルバム・RCサクセション『COVERS』にゲストボーカルで参加しています。勿論、初恋相手が桑畑佳祐というのは真っ赤なウソで、インタビューではヤマモトくんだったと話しています。

・桑田佳祐の楽曲提供は平成以降ほとんどなく、妻である原由子作品を除くと23年ぶりでした。紅白では1980年代に高田みづえ「私はピアノ」「そんなヒロシに騙されて」、研ナオコ「夏をあきらめて」が歌唱されています。

・ロングセラーが期待された作品で、確かに冬美さんのシングルでは比較的売上も高く、YouTube再生回数も250万を超えました。ただ作品の凄さや評判の割に歌い継がれている印象でなく、ビルボード総合チャートには残念ながらランクインしていません。ただ平成以降の演歌がカラオケで歌いやすい曲メインになる中、こういったゴリゴリに聴かせる作品が一定の評価を得たことはもう少し評価されて欲しい所です。若手には書けない、いや書かない作品の良さがこの曲にはあると思っています。

白7(全体14):Kis-My-Ft2(2年連続2回目)

・2005年結成、2011年デビュー 第70回(2019年)初出場
・29~35歳・7人組
・楽曲:「We never give up!」(2011/12/14 シングル)
  詞:上中丈弥(THEイナズマ戦隊) 曲:Andreas Ohrn / Henrik Smith
・歌唱前テロップ:ローラースケートによる迫力のステージ!ラストに注目!
・歌唱中テロップ:ラストの展開に注目!
・演奏時間:2分31秒

 ゲスト審査員のサンドウィッチマンに話をふります。楽しみにしている歌手は伊達さんが瑛人、富澤さんがBABYMETAL。坂本冬美さんのパフォーマンスは漫才だったと伊達さんが話しますが、各所から意味が分からないのツッコミが入ります。富澤さんも後半は横になって見たいとボケてます。ですがこの2人は9年前の震災以降ずっと東北の被災者を勇気づけてきた2人。落ち着いたらまた東北の沿岸に遊びに来て欲しいというメッセージもしっかり残します。ワイプでも東北各所を訪れる2人の姿が映りました。

 キスマイのステージは101スタジオからの中継、今回もローラースケートを履きながらの歌唱です。動くよりも動かない方が難しいこの履物、よく生で歌えるなぁと見るたびに感心します。そんなことを考えていたらスタジオを飛び出して、審査員ルームに颯爽と登場。ゲスト審査員やウラトーク席の2人も大はしゃぎしています。曲中にスタジオからホールのステージに移動する演出は2年前に松任谷由実がやっていましたが、スタジオからスタジオは今回が初めて。意外と民放の歌番組でも、こういった演出は過去あまり見た記憶がありません。無観客ならではの演出というのは簡単ですが、可能なら今後の紅白あるいは他の番組でも多く見られる手法になるのかもしれないです。

 ラストのメッセージは、サンドウィッチマンの目の前に立つ宮田俊哉の担当でした。番組で共演している関係なので、ステージ終了後すぐそちらに向かって手を振って挨拶しています。

 

(ウラトーク)
 こちらのスタジオがザワザワして、さっきよりも音が大きくなったと実況。お互いの声が聴こえない状況らしく、確かに視聴者としてウラトークを聴く立場でも心なし音が大きくなった気がしました。「(ローラースケートで)よく止まれますよね」、とは直美さんの談。

 マイクはサンドウィッチマンの2人やチコちゃんにも入っています。大興奮の審査員ルームでした。

 

(解説)
サンドウィッチマンは通算5回目の紅白出演になりました。コンビ芸人としてはコント55号爆笑問題の6回に次ぐ数字で、紅白史上でもトップクラスの出演回数です。なおゲスト出演最多のコロッケは第66回(2015年)までに計15回出演しています。

・キスマイとサンドウィッチマンはテレビ朝日『10万円でできるかな』で2017年から共演。2019年から毎週月曜20時からの放送、最高視聴率15.3%の人気番組になっています。

・キスマイの歌唱曲はデビュー曲と2ndシングルが続く形になりました。氷川きよしがデビュー翌年に2ndシングル表題曲を紅白で歌っていますが、過去曲としての選曲に関して言うと前代未聞の記録と言えます。

・そうなると2021年の紅白では「SHE! HER! HER!」を歌うことも期待されましたが、残念ながら2年連続で出場は一旦ストップ。また紅白に出場する可能性は十分ありますが、果たしてどうなるでしょうか。

紅8(全体15):天童よしみ(24年連続25回目)

・1970年デビュー 第44回(1993年)初出場
・1954年9月26日生 大阪府八尾市出身
・タイトル:「あんたの花道~腹筋太鼓乱れ打ちSP~
 楽曲:「あんたの花道(2002/1/23 シングル)…4年ぶり3回目
  詞:木下龍太郎 曲:安藤実親
  太鼓:少年忍者/ジャニーズJr. 踊り:花柳糸之社中 振付:花柳糸之
・歌唱中テロップ:腹筋太鼓とコラボ!

・演奏時間:2分25秒

 今回の演出テーマは腹筋太鼓。滝沢歌舞伎ZEROの映像が流れます。本来はSnow Manの予定だったのですが、出られないということで少年忍者のメンバーが代わりに担当。VTRから紹介を経ることなく、直にステージの映像に移行します。

 少年忍者のメンバーは22人いますが、元々はSnow Manの予定だったので太鼓を叩くのは9人。階段上ではソーシャルディスタンスを取りながら、花柳社中の方々も10人の少人数ですが加わります。1コーラス半ですが、冒頭の太鼓を含めるとパフォーマンス時間は4年前よりも長め、迫力ある歌声は勿論健在でした。腹筋太鼓もなかなかの音量で、過去の太鼓演出は意外と他の要素にかき消されることが多かったので、素晴らしい出来と言えるのではないでしょうか。太鼓と太鼓の間に仕切りは用意しても良かったように思いますが。

 

(ウラトーク)
 VTRに入っても余韻が残ります。キスマイの皆さんにスタジオ拍手。そして直美さんはホールでの出番があるので一旦移動退出。腹筋太鼓の凄さを、山里さん一人でしっかり伝えます。

 ここからはサンドウィッチマンも加わって3人で進行。伊達さんと富澤さんが、審査員の苦情を代表して伝えています。

 

(解説)
・腹筋太鼓のパフォーマンスは滝沢秀明がプロデュースした舞台『滝沢歌舞伎』で披露される演目です。Snow Manはこの年の『滝沢歌舞伎 ZERO 2020 The Movie』で腹筋太鼓を披露しました。

・「あんたの花道」は紅白歌合戦で3回目の披露。上半身裸の男性は第53回(2002年)歌唱時にダンサーで多数いたので、この曲のパフォーマンスにおいては18年ぶり2回目の登場という形になります。

・コロナウイルス流行の影響でダンサー演出が激減したこの年の紅白ですが、少人数ながらも花柳糸之社中の出演は継続となりました。第38回(1987年)・第39回(1988年)・第42回(1991年)には登場していませんが、それ以前は1970年代中盤から欠かさず出場、現在29年連続出場継続中。振付担当の花柳糸之は第28回(1977年)でテロップ初登場、長らく紅白振付陣の最古参として君臨しています。

特別1(全体16):さだまさし(13年ぶり20回目)

・1973年デビュー、1976年ソロデビュー 第30回(1979年)初出場
・1952年4月10日生 長崎県長崎市出身
・タイトル:「奇跡2021 ~紅白バージョン~」
 楽曲:「奇跡2021」(2020/10/28 配信)…21年ぶり3回目
  詞・曲:さだまさし 指揮:渡辺俊幸
・歌唱前テロップ:日本中にささやかな勇気と希望を送る
・歌唱中テロップ:新しい年へ希望を込めて
・演奏時間:4分3秒

 こちらもVTR。被災者支援・医療従事者や福祉・介護現場への支援などの活動が振り返られます。不安と闘う人たちへエールを、オーケストラスタジオに内村さんが足を運んでさださんとのトーク。曲紹介も担当、自身の故郷・熊本人吉の大水害についても思いを込めて話しています。

 21年ぶりの歌唱で、比較的キーが高い曲なので当時より少しキーを下げています。”大きな愛になりたい”のサビで世界が広がるようなメロディー展開、オーケストラとの親和性が大変高いです。このステージの指揮を務める渡辺俊幸はさださんと古くからの友人関係、したがって一体感もかなりのものがあります。聴く人の心にそっと寄り添ってくれる、まさしくそんなステージだったのではないでしょうか。過去2回の紅白では歌い出しプラス2コーラスの構成でしたが、今回は2番の一部をカットしてラストにサビの繰り返しを入れる形でした。

 

(ウラトーク)
 「さださんもね、ローラースケート履いて来てくれりゃいいのに」と富澤さんがひとボケ。キスマイとサンドは番組共演している仲、先ほどの登場はカッコ良かったと素直に話します。さださんとも一緒に舞台をやらせて頂いたという仲だそうです。それだけでCDを出すほどのMCは、伊達さんも勉強になりますと言うほど。

 ステージはさださんの歌声に大絶賛。また、NHKホールでセットが変わっているところも実況。純烈のステージで降り注いだ紙吹雪を片づけているそうです。伊達さんはさださんの本を常に持ち歩いて読んでいるという話をしていますが、何を書いているのかは全く教えてくれませんでした。2年前担当した際はウラトークなのにずっと歌を聴いちゃったために、次の年から呼ばれなくなったと話していました(個人的には全くそんな印象ないのですが)。さださんについては歌声だけでなく、若手みたいなスケジュールでライブの本数をこなすタフさにも脱帽していました。

 

(解説)
・コロナウイルス流行も大変でしたが、この年7月の豪雨による災害も非常に甚大でした。特に熊本県の球磨川水系は多数の箇所で氾濫・決壊、60人以上が犠牲になっています。沿線を走るJR肥薩線は、3年以上経った現在も復旧の目処は経っていません。

・「奇跡」は第42回・第50回と計2回紅白歌合戦で歌われています。さださんが平成以降発表した楽曲で複数回紅白で歌った例は他になく、それだけファンに広く愛されている楽曲であると言えます。2020年に「奇跡2021」として配信で発表、SOMPOケア株式会社のCMソングとしても起用されました。

・指揮を努めた渡辺俊幸は元々フォークグループ・赤い鳥のメンバーで、さださんのソロデビュー当時からプロデューサーとして活動しています。1980年代中盤以降は映画やドラマなどの作曲家としても多くの実績を残しました。

・当日は21時半からカウントダウン配信開始、さらに同時中継の形でももいろ歌合戦にも出演。もちろん年明け0時20分からは『今夜も生でさだまさし』、2006年以降16年連続放送ですっかり恒例行事となっています。

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