泉谷しげる(初出場/第63回/2002/66/青森県出身)
「春夏秋冬2014」(1972/泉谷しげる/泉谷しげる/初)
~未来へ歌う「春夏秋冬2014」~

デビュー42年、ライブに出演した時の映像が写真で振り返られます。最初の1枚で横にいたのは森高千里ですね。かなりあっさりとした曲紹介ですが、おそらくもう少し時間が設けられる段取りだったことは容易に想像できます。確かに後半は段取りにないことも色々あって、一聴した立場でも押していることがよく分かります。
やはりライブ活動を中心にして活動している泉谷さんらしく、生バンドを基調とした生演奏。マイクもしっかりコードマイクが用意されています。41年前のアレンジはアコースティックギターメインで相当シンプルな編曲でしたが、時を経てかなり力の入ったロックサウンドに進化しています。
 曲のラストに入ると語り口調での歌唱になり、そして手拍子が入って完全に語りに入ります。
「おい!手拍子してんじゃねぇよ!誰が頼んだコノヤロー!いいか!してんじゃねぇっつってんだよ!
 今日ですべてが終わる!今日ですべてが変わる!するなっつってんだよ!テレビの向こう側によ、一人で紅白を見てるお前ら!ラジオを聴いてるお前ら!いいか!今年は色々あったろ!色々辛いこともあったろ!だからよ、忘れたいことも忘れたくないことも!今日は、自分の今日にしろ!自分だけの今日に向かって、そっと歌え!
 今日ですべてが終わる!今日ですべてが変わる!今日ですべてが報われる!自分に向かって、そっと歌いやがれ!
 いいか、声を出さなくてもいいぜ!自分だけに向かって歌え!自分だけの今日に向かって!自分だけの今日に歌え!」

 まさしく長く活動しているフォークシンガーの神髄を見たようなステージでした。どこかしこに乱入する暴走親父でもなく、ドラマにおける名優でもなく孫を見てやたら笑顔になる姿でもなく、あくまでも「ミュージシャン・泉谷しげる」を、このステージでは勿論ですが紅白歌合戦という放送時間内でも徹底していたように思います。あらためて紅白でやる価値が非常にあるステージでしたね。最高です。歌い終わり退場のタイミングでギターを投げるパフォーマンス、その姿にゲスト審査員の風吹ジュンが驚いた表情を見せていました。(5分14秒)

 

(ウラトーク)
 「この頃は意外と恋愛ソングが多かったんだよ」「だからこういった歌を歌う人があまりいない時代で、泉谷さんは新鮮だったねぇ」同じ時代を生きた証人としてテリーさんが語ります。「ストレートに突き刺さってくる」「全てが大人に感じますね」とは壇蜜さん。
 「今の人って世の中を斜めに見れるから」「当時はね、もうちょっと世の中素直だった」「でも若者はどこか閉塞感みたいなのがあって…、こういう歌がすごく救われた部分があるんだよね」と、若い時にこの時代を体験したテリーさんが話します。語りを聴いて「泉谷さんのコンサート行きたくなるよね」「もっと楽しみたくなりますね、長い時間」と大絶賛。

 

(解説)
・泉谷さんは青森県出身を公称プロフィールにしていますが、青森に住んだのは3歳まででその後は東京育ち。これは当時フォークシンガーが地方出身者のイメージが強く、レコード会社の方針でそう売り出したという形のようです。

・「春夏秋冬」は1972年発表の代表曲で、以降たびたび再レコーディングされています。翌年すぐ発表されたアルバム『突然炎のように!』でも、「春夏秋冬2014」と題したセルフカバーが収録されました。

・紅白出場に至った経緯としては、本人のブログによるとこの年発売されたカバーアルバム『昭和の歌よ、ありがとう』の好評が大きかったようです。さらに「ヨイトマケの唄」をカバーするきっかけになったのは前年の紅白で、ある意味では美輪明宏の出場が無ければこのステージにも繋がらなかったというわけです。

・泉谷さんはテレビ番組等だと”乱入芸”と称する大暴れが持ち味ですが、その一方でボランティア・被災者支援にも積極的という一面を持ちます。前半終了前の「花は咲く」全員合唱に参加したのも、おそらく後者のコンセプトに共鳴したからだと思われます。泣きながら歌う綾瀬さんに声援を贈る姿が、引きの絵で確認できました。

・泉谷さんらしいワイルドなステージ展開でしたが、本番後のブログによると本番直前に差し歯が取れたり、演奏を間違えてステージ後スタッフにギターを放り投げたりするなどなかなか思い通りにはいかなかった模様。またこれは最初から公言していましたが、エンディングは不参加。そのまま自宅に帰ったようです。

・テリーさんのウラトークですが、確かに泉谷さんが登場する前の1969年近辺の歌謡曲は恋愛ソングが多く、特に女性ポップスでそれが目立っていました(「恋の奴隷」「初恋のひと」などが代表例)。逆に1972年当時になると泉谷さん以外でもフォークソングがランク上位に入るようになり、歌謡曲もアイドルが増えて恋愛ソングがやや少ない時期に入っています。

いきものがかり(6年連続6回目/第59回/2003/29~31/神奈川県出身)
「笑顔」(2013/水野良樹/水野良樹/初)
~みんなが笑顔になれるように 思いをこめたメッセージソング~

 北島三郎和田アキ子中居正広が登場。中居さんが聞くサブちゃんの今の心境は「だんだんなんか、寂しい気持ちもする」「新しい時代がくるんだ、そんな時は見守ってやらなきゃいけねぇかな」。アッコさんもサブちゃんに感謝、「緊張したらいつも頑張って来いって、背中を押していただいて、どんだけ気持ちが嬉しかったか」という言葉を伝えます。この言葉を直接言えたということもあってでしょうか、話し終えた後のアッコさんはホッとした表情を見せていました。
 前年トリ、今回もラストに近い曲順ですが、なんだかカットできる部分は可能な限りカットしているような演奏でした。最初サビのコーラスもカット、Aメロも半分カット、ラストサビ前のCメロ完全カットでアウトロも大幅カットという感じでなかなか散々でしたが、なんだかんだでこれでも時間的にはそこそこに落ち着いています。メッセージ性の高い歌詞や吉岡さんのいつもながらの丁寧な歌唱は相変わらず素晴らしかったです。ここ3回の曲順も考えると、今後も後半トリ付近常連に落ち着きそうな雰囲気もあります。(2分37秒)

 

(ウラトーク)
 北島三郎の言葉を聴き入った後、壇蜜さんに普段どんな歌を歌ってるの?と尋ねるテリーさん。「わたし歌歌わないです。ヘタですもん」「銀座のホステスやってた時はテレサ・テンの歌を歌っていました」「大変でしたよ。ガラス割れちゃいそうですよ」。自分は芸能界には「向いてないですね」と語る壇蜜さん。「やっぱりファンのことを考えるから、色んな人にイヤな思いさせるんですよ…」とも話してます。

 

(解説)
和田アキ子は第21回(1970年)、中居正広は第39回(1988年)に紅白歌合戦初出演(中居さんが歌手として出場したのはこの3年後)。第48回(1997年)では両者が紅白の司会、第49回(1998年)は中居さんが白組司会でアッコさんとサブちゃんが両組チームリーダーという関係でした。サブちゃんの統率力は若い時から抜群で、チームリーダー制が設けられた際は全ての年で白組チームリーダーに選ばれています。

・「笑顔」は『劇場版ポケットモンスターベストウィッシュ~神聖のゲノセクト ミュウツー覚醒』主題歌でした。劇場版ポケモンの主題歌が紅白で選曲されるのは小林幸子「風といっしょに」以来15年ぶり2回目。この後も紅白では一度も歌われていないので、意外と少ないです。

・また、この曲はタレントも含む多くの人々の笑顔がテーマになったMVも話題になりました。ちなみにそこに登場した安藤玉恵や野間口徹といった面々もまた『あまちゃん』ファミリーです。

嵐(5年連続5回目/第60回/1999/29~32)
「New Year’s Eve Medley 2013」
 「Endless Game」(2013/100+/Chris Janey/Dyce Taylor/初)
 「Breathless」(2013/HYDRANT/Takuya Harada/Christofer Erixon/Joakim Bjornberg/初)
~巨大セットに嵐が命を吹き込む!~

 ゲスト審査員の滝川クリステルがステージ袖に登場、この紅白の舞台もしっかり楽しんでいる様子。今回の紅白は数々の歌手が「お・も・て・な・し」を披露していますが、さすがに本家は流れに乗って簡単に披露はしません。「これが流行りに終わらず、7年後が本番なのでそれまで皆さんここでグッと留めててほしいな」というのは、偽らざる本音だと思われます。
 このステージも例のごとくプロジェクションマッピング演出。衣装だけでなくステージといいますか、映像演出のための幕が舞台に降りていてその後ろで歌う形です。「Endless Game」が歌われる中で、黄緑色を中心とした様々な形の光がステージを彩っています。
 1コーラス披露した後に舞台暗転、電子的な演出を駆使した映像で繋げた後に幕が上がって「Breathless」。こちらはメインステージの上に作られた大きなセットの上で、ブラックホールを演出したような映像をバックに雰囲気タップリのステージを展開。今回は2曲ともややシリアス系の選曲でしたが、その2曲に大変よく合った雰囲気のステージでした。デビュー当初からカッコ良い5人ですが、その個性は15年近く経ってもまだパワーアップし続けています。(5分3秒)

 

(ウラトーク)
 肩を出したドレスを着てトークをする2人を見て「半裸に見えません?」と壇蜜。さすがにそこは橋本アナがしっかりツッコミを入れます。
 冒頭の演出に思わず「おっ!」と声をあげるテリーさん。ステージについて「薄い幕があって、その後ろで嵐の皆さんが歌っていて、その幕に映像が」「光の度合いでお顔がどのくらいはっきり見えるとか、そういう調整も沢山していて」と橋本アナが解説。このステージを見て、「やっぱりヒーローですね」と呟く壇蜜さん。テリーさんは演出家の立場で、「凄すぎてこっち側の手柄にならない」「演出家いらない」「やってもあんまりありがたいと思わない」「ここと一緒にやるというのは、演出家冥利につきることもある」「舞台とかやりたい」と話していました。

 

(解説)
・滝川クリステルは2013年IOC総会のスピーチで一躍時の人になりました。もっともそれ以前から『ニュースJAPAN』『Mr.サンデー』のキャスターして広く知られています。最初は共同テレビアナウンサーで後にフジテレビ出向、アナウンサー経験者がゲスト審査員を務めるのは実質初のケースでした(第36回(1985年)に一般代表として、NHKドイツ語放送アナウンサー、フリードリッヒ・グライルが務めた前例は一応あり)。

・この年の紅組司会は滝川さんの人選も考えられましたが、FNS歌謡祭で見せた司会ぶりは私が見たところ、残念ながら音楽番組に向いているとは全く言えない状況でした。実際翌年以降同番組で司会は務めていません。2019年に衆議院議員の小泉進次郎と結婚後は出産もあって、あまり表舞台では顔を見せなくなっています。将来的には彼女がファーストレディーになる可能性もありますが、今の小泉さんの政治家としての資質を見ると果たしてどうでしょうか…。

・Perfumeと同様、プロジェクションマッピングの演出も着実に進化を遂げています。ステージに幕を降ろして、その後ろでパフォーマンスを行うというのも紅白初の出来事です。前々回はスクリーン、前回は画面の映像に乗せた振付というパターンでした。

・「Endless Game」は櫻井翔主演のドラマ『家族ゲーム』、「Breathless」は二宮和也主演の映画『プラチナデータ』の主題歌でした。ここ3年シングルA面曲で紅白未歌唱になったのは「Lotus」「Your Eyes」「Calling」ですが、いずれも相葉雅紀主演のドラマ主題歌です。相葉さん主演の作品主題歌が歌われたのは第69回(2018年)の「君のうた」のみで、その点だけで考えるとかなり冷遇されていると言って良いかもしれません。

松田聖子(2年ぶり17回目/第31回/1980/51/福岡県出身)
クリス・ハート(初出場/第64回/2013/29)
「New Year’s Eve Special Love Song Medley 2013」
 「あなたに逢いたくて~Missing You~」(1996/Seiko Matsuda/Seiko Matsuda&Ryo Ogura/13年ぶり3回目)
 「夢がさめて」(2013/SHIROSE from WHITE JAM/ヒロイズム/SHIROSE from WHITE JAM/NIKKI from WHITE JAM/初)
~カウントダウンライブからの生中継!~

 東京・品川から小林千恵アナが中継担当。会場にはSeiko!コールが巻き起こっています。スタージに立つ前に2人にコメントを求めます。それにしても、先ほどから綾瀬さんも滝川さんも有働アナも、今回は肩を出したドレスを身に着けている人が明らかに例年より多いです。
 大盛況のライブ会場の中で、聖子さんのソロ歌唱は代表曲「あなたに逢いたくて~Missing You~」。会場のゴージャスな雰囲気にはピッタリの選曲ですが、過去紅白で2度歌ってるので個人的には別の曲の方が良かったかなという思いもありました。ヒット当時と比べて歌い方が少し変わっていますね。相当タメの部分が目立っています。
 1コーラス歌唱後は、デュエットで「夢がさめて」。美しいハーモニーを披露していました。大人の品を感じる素晴らしいステージングでしたが、クリスさんの扱いはこれで本当にいいのかなという思いはやはりあります。白組歌手なのかゲスト歌手なのかもよく分からない状況でソロ歌唱も無くしかも中継、でも本来ならゲスト扱い止まりのはずなので、結局扱いがいいのか悪いのかは結論づけにくい所です。(4分34秒)

 

(ウラトーク)
 テリーさんにとって、クリス・ハートは日本テレビの番組で審査員をやった時からの縁。「松田聖子にとってもこのデュエットは良かった」という意見。
 壇蜜さんから見た松田さんは「おそらく耳に入ってとても心地良い声の持ち主なんだろうなぁ」と強く思っているそう。「松田聖子さんの時報が聞きたい」と独特の表現。
 「自分が歌うまくないとデュエットできないんですよね」と、2人の競演を見て話します。「グラミー賞みたい」、だからこそ松田聖子は「怪物」なんだよねとも話しています。「変わってないようで変わっているって一番いい表現ですね」、と壇蜜さん。

(解説)
・中継先のコンサートのタイトルは”Seiko Matsuda 2013 New Year’s Eve Live Party”、当日は2部構成の第2部で22時半開演でした。会場はFNS歌謡祭会場でもお馴染みのグランドプリンスホテル新高輪飛天、ここでは2週間前にもディナーショーを開催しています。

・当日は4曲パフォーマンスした後に中継が入る形でした。足を運んだ方のブログレポを見る限り、23時くらいに小林アナが登場してやり取りした後衣装を変えて、15分に中継開始になったようです。モニターで待機中、いつしか応援拍手からコールになったというレポもありました。ちなみに「あなたに逢いたくて~Missing You~」は3曲目に歌っていて、会場のお客さんにとっては前半にして早くも2回目を聴く形になったようです。

小林千恵アナは2002年入局、2008年に東京アナウンス室に異動。第59回(2008年)では直前情報番組に、当時『パフォー!』で共演していたテリーさんの秘書という立場で出演したことがあるようです。その後は大阪放送局を経て現在は京都放送局所属、NHKの女性アナとしては珍しく地方配属の方が長い期間になっています。

・クリス・ハートに近い形で、白組歌手ではなくゲスト歌手として出演した例は第43回(1992年)のWANDS(中山美穂とデュエット)、第54回(2003年)のコロッケ(華原朋美とデュエット)、第60回(2009年)のmisono(倖田來未とデュエット)などの例があります。ただデビュー1年目ながらカバーアルバム『Heart Song』はヒットしていて、翌年も実績を残して無事白組からNHKホールで歌唱出来たことは大変喜ばしいことです。

・この年はトリの後にもう1つステージがあるとはいえ、紅白史上初めてトリ前が中継という形。当時見ていた立場としては、かなりの違和感を持ったステージでした。ただ終盤に中継を持ってくるケースがその後増加したこともあって、今見ると当時ほど違和感がないようにも見えます。