第71回(2020年)NHK紅白歌合戦~その8~

紅18(全体39):Superfly(4年連続5回目)

・2007年デビュー 第66回(2015年)初出場
・1984年2月25日生 愛媛県今治市出身
・楽曲:「愛をこめて花束を」(2008/2/27 シングル)…3年ぶり2回目
  詞:越智志帆/多保孝一/いしわたり淳治 曲:多保孝一
・歌唱前テロップ:「愛をこめて花束を」壮大なオーケストラアレンジ
・歌唱中テロップ:日本中に届ける「愛」のメッセージ

・演奏時間:4分32秒

 オーケストラスタジオから、二階堂さんと大泉さんが曲紹介。歌う前に、心を込めて歌いますと話す越智さん。大好きな曲のパフォーマンスを目の前で見られる大泉さんは大興奮、ただ「NHKホールとここ、ものすごい遠いね」と話してるので単純に少し移動疲れもあったのかもしれません。それにしても若い二階堂さんは大変冷静で落ち着いた進行、この紅白だけを見る限りまるで欠点が見つからないような状況です。

 完全生演奏オーケストラは、3年前の紅白歌合戦とはまた違う趣で大変新鮮。この演奏が映えるジャンルはやはりクラシック、歌入りとなるとオペラになるわけですが、遠い時が経って100年後200年後にこの曲がこうやって生演奏されるとしたらやはりこのアレンジになるのかもしれない、とも思ったりします。もっとも200年前300年前にポップスなんていう音楽ジャンルは存在していないので、無意味な仮定でしかありませんが…。

 いずれにしても、そんな感想がつい生まれてしまうのは越智さんの歌唱力がありえないほどに高いから。演奏が終わってすぐに大泉さんが「ブラボー!!」と叫んでいますが、有観客なら間違いなくそういう声が各所から挙がってスタンディングオベーションが起こる領域でしょう(いつもの紅白だとテレビ放送の段取りもあるのでそうはいかないでしょうけども)。音響などの課題もありますがこのオーケストラスタジオのステージは、有観客に戻ってからも今くらいの割合で、継続する方向で考えていくべきではないでしょうか。

 しかしブラボー!と叫んだ大泉さんは白組司会。一瞬我に返って冷静になります。「邪魔しないでくださいね!」とは二階堂さん。少しずつ今回の2人の力関係が、ハッキリし始めました。

 

(ウラトーク)
 大泉さんの興奮がこちらにまで伝わります。「語りだしてルパンみたいになってるもんね」。2人してルパンと化す大泉さんのモノマネをします。

 ステージでは越智さんの歌唱に圧倒。「聴いていたらぎっくり腰治ってきた」とまで話します。ラストでは、あの室伏さんがのけぞっています。主音声だけでなく、ウラトークで聴いていても感動してしまうような内容でした。

 

(解説)
・この年1月にアルバム『0』を発売しますが、それ以降は配信シングル「Together」の発表のみでかなり活動が落ち着きます。全国ツアーも、アルバム発売後ではなく発売前にファイナルを迎える形でした。

・現場もこの年はフリーライブと11月配信のオンラインライブのみで、コロナ禍という状況があったとは言えかなりの少なさです。年末の歌番組出演もMステスーパーライブとこの紅白のみという形でした。

・翌年にレーベルをユニバーサルに移籍しますが、紅白出場はこの年で一旦お休みという形になります。ただ2年後の第73回には復帰、再びベテランの常連枠として連続出場しそうな雰囲気です。

白17(全体40):Mr.Children(12年ぶり2回目)

・1989年結成、1992年メジャーデビュー 第59回(2008年)初出場
・50~51歳・4人組
・楽曲:「Documentary film」(2020/12/2 アルバム『SOUNDTRACKS』)
  詞・曲:桜井和寿
・歌唱前テロップ:12年ぶりの紅白 当たり前の日常のいとおしさを描いた歌
・歌唱中テロップ:今 最も届けたい歌
・演奏時間:4分33秒

 デビュー28年、ライブ会場で「Tomorrow never knows」「HANABI」「GIFT」を歌うVTRが流れます。内村さんと桑子アナがステージ紹介、101スタジオ、桜井さんが冒頭にメッセージ。

 「こんばんはMr.Childrenです。今年はいつもとは違う異常な年だったと思います。でも何の変化もない、いつも通りのことなんかこの世の中にないのではないかと考えたりもします。だからこそ、今まで当たり前にあった日常を、いつもすぐ近くにあった物を人を、いま生きているということを切実に慈しみながら次の曲をお届けしたいと思います」

 101スタジオでのステージ。大きな骨組みを作って、その中で4人が演奏するという形になっています。周りには一定間隔に設置された照明。1番サビ途中で骨組みが上がり、周囲にいる弦楽器隊の存在が認識できるようになります。いずれにしても、こちらもシンプルに曲を聴かせる演出。娯楽・エンターテインメントという単語だけに収まらないステージが、そこにはありました。

 

(ウラトーク)
 「同じ敷地内にいるんだよね?すごくない?」「本当にいるんだね」。セットは「今年ならではの紅白ですよ」とコメント。2人ともミスチルのステージを心から堪能、「本当に最高過ぎると人ってどうしていいか分からなくなる」という一言まで出てきました。ちなみに山里さんどころか、シブヤノオトを担当している直美さんでさえも、ミスチルにはお会いしたことないのだとか。

 

(解説)
・12年ぶりの紅白出場は、記念すべき20枚目のアルバム『SOUNDTRACKS』プロモーションを兼ねる形でした。歌唱曲「Documentary film」は発売前にMVがYouTubeで公開されています。

・放送時、あるいは放送前に事前収録かどうかは全く公表されていませんでしたが、後日事前収録でのステージであることが明らかになっています。

・コロナ禍が長引いていることもあって、このアルバムをテーマにした全国ツアーは行われていません。2022年にデビュー30周年ドームツアー、2023年~2024年にかけては久々にホール主体のツアーが開催されています。

紅19(全体41):石川さゆり(37年連続43回目)

・1973年デビュー 第28回(1977年)初出場
・1958年1月30日生 熊本県熊本市出身
・楽曲:「天城越え」(1986/7/21 シングル)…2年ぶり12回目
  詞:吉岡 治 曲:弦 哲也
・歌唱前テロップ:この1年をともに越えたい 強い思いを込めて
・歌唱中テロップ:みんなで越えたいこの1年

・演奏時間:3分25秒

 『麒麟がくる』番宣映像が流れます。さゆりさんはこのドラマに光秀の母親・牧役で出演。最終回は来年2月、物語はいよいよクライマックス。織田信長役の染谷将太に見どころを尋ねますが、踏み込んだ内容は特に話していません。勿論、楽しみにしている歌手はさゆりさんを挙げています。

 さゆりさんの曲紹介では、不自然なほど急に大泉さんのテンションが上がります。内村さんは苦笑い、二階堂さんに至ってはもはや無視。「いいでしょうか」と、淡々と進行します。

 今回のアレンジはピアノメイン、そこに弦楽器や和楽器の音が少しずつ加わります。優雅という言葉がまさにしっくりくるこの編曲は、冗談抜きで原曲以上だと思いました。もう今後の全曲集はこのアレンジで収録して欲しいと思えるくらいです。担当したのは『鬼滅の刃』の椎名豪さん、ただただ脱帽です。”戻れなくても…”で照明が赤くなるのは恒例の演出ですが、今回は映像・演出ともに炎を最大限に強調していました。素晴らしいです。これでは2年に1回選曲されるのも、無理はないとついつい思ってしまいます。大泉さんからはまた「ブラボー!」の声、内村さんは「熊本の誇り」と最大限の賛辞。

 

(ウラトーク)
 室伏さん退席。大泉さんを見て、「紅組行きたいんじゃない?」「この人紅組押し凄いですね」。直後に二階堂さんが「いいでしょうか」で切るMCに大爆笑してました。

 さゆりさんの歌唱と力の入った演出にまたまた大興奮。ウラトーク席では今回も「越えました」の大合唱。間奏での様子は、「鬼舞辻無惨を倒しに行くみたいな」と形容しています。ステージを存分に堪能した2人ですが、その後の大泉さんについては「ヤケクソみたいになってる」と爆笑してました。

 

(解説)
・『麒麟がくる』は明智光秀メインの物語ですが、染谷さんの織田信長役も大きな話題になりました。本能寺の変は最終回、2月7日に放送されています。

・椎名豪が普段手掛けている音楽はゲームやアニメが多く、演歌を手掛けるのはこのステージが初めてだったかと思われます。『鬼滅の刃』といえば、挿入歌として話題になった「竈門炭治郎のうた」も椎名さんの作曲・編曲でした。

・「天城越え」の照明は赤色が使用されることが多いですが、セットで炎を使うのは12回目にして初。この年は炎を使用する演出が他の年と比べてやや多く、BABYMETALLiSAと合わせて3組使用されました。

白18(全体42):星野 源(6年連続6回目)

・2003年デビュー、2010年ソロデビュー 第66回(2015年)初出場
・1981年1月28日生 埼玉県川口市出身
・楽曲:「うちで踊ろう(大晦日)」(2020/4/15 配信)
  詞・曲:星野 源
  Dr: 河村”カースケ”智康 Ba. ハマ・オカモト Gt. 長岡亮介
Key. 櫻田泰啓 Fl & Key. 石橋英子 Sax. 武島 聡
・歌唱前テロップ:新たな歌詞を加えた「うちで踊ろう(大晦日)」を初披露
・歌唱中テロップ:新たな歌詞を加え 初披露
・演奏時間:4分17秒

 4月のステイホーム期間中にSNS投稿した「うちで踊ろう」ムーブメントをVTRで紹介。101スタジオにいる源さんと中継トーク。「今この時間を生きている皆さんに向けて、生活してる皆さんに向けて、一緒に心の内側で踊りたい、そういう気持ちを込めて新しい歌詞を書きました」というメッセージを残します。

 まずは弾き語りで歌い出し、ここも新しく加えられた歌詞です。すぐにお馴染みのバックバンド演奏で1番。サックスの音色が耳に残る間奏が入っていよいよ2番に入ります。

 あくまで1人の生活を描いたとしても、肝になっている歌詞はAメロやCメロでしょうか。ただやはり一番伝えたいことは、ラストサビの”生きて抱き合おう”だと思います。これはあくまで1度だけ聴いた上の感想で、何度も繰り返し聴くとまた変わるとともに、早いうちにこの新しい歌詞を作らないといけない状況が”過去の思い出”になって欲しいという、そういう気持ちになりました。いずれにしても、人々に対する優しい想いが彼の根底に備わっていることが、この歌詞を作り出したことだけは間違いない事実です。

 

(ウラトーク)
 直美さんもやっていたうちで踊ろう。このタイミングで宮本亞門宮崎美子が加わります。

 第一声から直美さんがグッときてます。本当に大変な時期だったので、亞門さんはこの曲から日本ならではの繋がり方を感じたと話しています。宮崎さんはこの試みを1番に始めたことを賞賛。2番の歌詞は色々喋りながらもじっくり楽しむウラトーク席、喋りは直美さんがやや多め。「頑張ろうって気持ちになる」というのがステージ終了時の感想でした。

 

(解説)
・「うちで踊ろう」はウラトークMCの渡辺直美や白組司会の大泉洋なども参加して、SNS中心に一大ムーブメントになりました。ある人の参加が大変物議を醸し出す形にもなりましたが、それだけ日本の津々浦々に広がったことも確かです。

・この「うちで踊ろう(大晦日)」ステージは年が明けて1月8日にYouTubeでアップされました(現在は削除)。最終的には6月発売のシングル「不思議/創造」のカップリングに収録、現在は配信でも聴くことが出来ます。

・歌前トークからすぐにステージという経過を見ても分かる通り、このステージも事前収録です。2年連続ですが音響が難しいこの回の紅白を振り返ると事前収録の方が間違いなく音は確かなので、何とも言えない部分はやはりあります。

白19(全体43):氷川きよし(21年連続21回目)

・2000年デビュー 第51回(2000年)初出場
・1977年9月6日生 福岡県福岡市出身
・楽曲:「限界突破×サバイバー」(2017/8/26 配信)…2年連続2回目
  詞:森雪之丞 曲:岩崎貴文
  振付:振付稼業air:man 踊り:限界突破ダンサーズ
・歌唱前テロップ:さらなる「限界突破」に挑む!
・歌唱中テロップ:今年は変身!? ラストに注目!
・演奏時間:2分32秒

 力の入った大泉さんの曲紹介、少し演歌っぽい印象もあり。紹介する歌手のジャンルも紛れもない演歌なのですが、楽曲は全くもって演歌ではありません。大きいマントが強いインパクトを残す衣装は、往年のT.M.Revolutionを思い出します。サビで早替えした結果は真っ赤な衣装。それと合わせて、濃いメイクもより浮き彫りになります。

 間奏で黒尽くめのダンサーがステージを隠し、ラストサビが始まると氷川さんが浮き上がり、紅白では久々となる宙吊りでの歌唱。衣装もいつの間にか金色の超派手なものになります。1990年代後半の美川憲一が一番近いと思いますが、楽曲が楽曲なので派手さはこちらに軍配が上がるかもしれません。

 あまりにも凄いステージ、内村さんはつい「毎年楽しみになってきた」と話します。その気持ちは自分にもありますが、一歩間違えると本当にさそり座の女の再来になりかねない予感もあるので、次回の氷川さんのステージは若干慎重に考えて欲しいところです。

 

(ウラトーク)
 前回も凄かったですが今回はより凄いという前フリ。事前情報何も無しで初めて見るステージは最初から大興奮。亞門さんが歌唱力に感心する中でまず1回目の変身に大歓声。2回目の変身はもう皆さん言葉にならない状況で、大爆笑。本職の演出家である亞門さんも大絶賛の内容でした。

 

(解説)
・ついに宙を舞うことになった氷川さんですが、紅白の宙づり演出は第65回(2014年)の以来6年ぶり。それ以前が第57回(2006年)のDJ OZMAなので、1990年代と比べれば見る機会が随分少なくなっています。

・早替えも複数回見せるのは第64回(2013年)のSexy Zone以来で、めったに見られるものではありません。また氷川さんはこれで4年連続早替え演出を採用、こちらもおそらく小林幸子美川憲一以来の記録だと思われます。

・振付稼業air: manは第68回(2017年)「きよしのズンドコ節」の振付を手掛けています。ちなみにオフィシャルページによると、当時テロップ無しでしたが第67回のSEKAI NO OWARI「Hey Ho from RPG」も担当していたようです。

紅20(全体44):松田聖子(8年連続24回目)

・1980年デビュー 第31回(1980年)初出場
・1962年3月10日生 福岡県久留米市出身
・タイトル:「瑠璃色の地球 2020」
 楽曲:「瑠璃色の地球」(1986/6/1 アルバム『SUPREME』)…19年ぶり3回目
  詞:松本 隆 曲:平井夏美
・歌唱前テロップ:ひとつしかない この地球を守りたい
・歌唱中テロップ:世界の危機 祈りをこめて

・演奏時間:3分50秒

 止まりそうにない内村さんと大泉さんの雑談を二階堂さんが止めてVTR紹介。コロナに限らない地球規模の危機を題材にしたVTRが流れます。宇宙から見た地球…、というわけでJAXA宇宙飛行士・野口聡一さんからメッセージ。

 「今わたしは地球上400kmを飛行している国際宇宙ステーションにいます。今年2020年は皆さんにとって大変な危機の年であったと思います。耐え忍ぶ一年だったと思います。でもこの地球を見ていると2つ思うことがあります。私は今、1日に地球を16周していますけれど、陽は必ず昇ります。そして、ここから見る宇宙は本当に美しいです。この地球は本当に美しいです。一つしか無いこの地球を守りたい、松田聖子さんの「瑠璃色の地球」の一節が本当に心にしみます。日本の皆さん、我々と一緒にこの美しい地球を守っていくために、一緒に頑張っていきましょう。」

 司会者トークに戻ります。内村さんは30日に野口さんと交信、ネットは見ていて紅白も1月2日に録画して送ってもらって見るとのこと。当初この予定ではなかったと思われますが、結果的にはNHKホールでのステージとなりました。

 聖子さんの歌唱はいつになく丁寧で、想いも相当あれど溢れ出過ぎることもない、大変聴きやすい内容でした。もちろんバックの映像は宇宙の中の美しい地球が描かれています。引きのショットでは、会場のライト全てが宇宙の夜空で彩られています。1986年、もう34年も前の曲ですが、2020年に聴いても何ひとつ古さを感じません。本当にいつの時代でも通じる、名曲中の名曲だとあらためて感じます。

 

(ウラトーク)
 1日に地球を16周しているくだりで一同驚き。亞門さんは今年「この歌、今年しみましたよね~」としみじみ話します。1月2日に見るという野口さん、副音声聴いているかな?と盛り上がりますが、宮崎さん「そりゃないと思う」と実に真っ当なご意見。聖子さんがスタンバイする様子も、審査員ルームのモニターでには映っているようです。

 一同聴き入ってます。変なことはほとんど全く言いません。ある意味、ウラトーク席の2人もほとんど仕事を忘れている状況でした。

 

(解説)
・野口さんは第56回・第61回でゲスト審査員として現場の紅白を見ています。宇宙飛行士で紅白に直接出演したのは現在でも彼が唯一で、今回もメッセージを番組のために残してくれる辺り相当愛着のある番組であることが分かります。

・「瑠璃色の地球」は第37回・第52回で歌唱、第52回でもタイトルに2001の年号が付加されていました。今回は2020年7月に「瑠璃色の地球 2020」セルフカバーとして配信された編曲での歌唱になっています。

・「瑠璃色の地球」は1986年発表ですが、当時はアルバム『SUPREME』収録曲でシングル発売はありませんでした。この年に娘の神田沙也加を出産、そのためテレビ出演は大晦日のレコ大と紅白が唯一で当時多く放送されていた歌番組では披露されていません。

・第65回以降この年まで連続出場、紅白でも非常に重要な役割を果たしています。第72回も出場が予定されていましたが、12月18日に愛娘が急逝。そのショックは非常に大きくそのまま辞退、コンサート活動には復帰したもののテレビ歌番組には現在まで出演がありません。

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