紅白歌合戦×大河ドラマデータ集(20世紀編)

 先日紅白歌合戦と連続テレビ小説の関係性について、前編後編に分けて記事にしました。今回は同様に大河ドラマについてもまとめることにします。

 朝ドラほどではありませんが、大河ドラマも紅白歌合戦の人選に大きな影響を及ぼしています。今回も作品ごとに、20世紀編と21世紀編に分けてその歴史を紹介します。

1963年~1972年

 大河ドラマ第1作は1963年4月に放送開始された『花の生涯』、1年間放送の最初は翌年の『赤穂浪士』でした。日曜20時台の放送が恒例になったのは第3作の『太閤記』以降、20時ジャストの放送は1969年の『天と地と』放送中の4月以降となっています。

 朝ドラ同様、紅白歌合戦に初めて関わったのは1964年・第15回から。『赤穂浪士』の堀田隼人役で話題になった林与一の特別審査員選出でした(前年に千坂兵部役で審査員の実川延若は紹介で触れられていないので一応除外と考えます)。応援ゲストの初出演は朝ドラより1年早い1965年・第16回。翌年放送開始の『源義経』から藤純子(現・富司純子)が静御前に扮して登場しています。

 年が明けて1月からの放送なので、初期から主役が番宣目的も兼ねて前年の審査員として登場するケースが多いです。ただ反響の多い作品については、放送終了後に紅白に呼ばれるケースもいくつかあるようです。そのため今回、前年に出演したケースは表で太字表記としました。

 出場歌手が俳優として出演するケースもありますが、その場合は紅白で触れられないことも多いです。ただそれにちなんだ選曲がされることも、実際にはいくつかありました。表の出場歌手欄は作品の出演者を指していますが、関連作を歌った歌手も括弧書きで掲載することとします。

 主演は多くの場合審査員として呼ばれますが、出演しないケースもあります。今回は誰が出演しなかったかというデータを入れる目的も兼ねて、歴代の主演俳優も掲載しました。

 昭和期の大河から司会抜擢はありません。『天と地と』に出演した水前寺清子は前年第19回の紅組司会でしたが、番組中で特に触れられる場面なく役もそれほど大きくなかったようなので、大河絡みの司会とは考えないことにします。

放送年度 作品名 主演 出場歌手 審査員 ゲスト その他
1963 花の生涯 尾上松緑 朝丘雪路
1964 赤穂浪士 長谷川一夫 越路吹雪
舟木一夫
(三波春夫)
実川延若
第14回(1963年)
林 与一
第15回(1964年)
舟木一夫は自身が演じた矢頭右衛門七をモチーフにした「右衛門七討入り」を歌唱
三波春夫は赤穂浪士をテーマにした「俵星玄蕃」を大トリで歌唱
1965 太閤記 緒形 拳 緒形 拳
藤村志保
第16回(1965年)
緒形拳は翌年の『源義経』にも出演
1966 源義経 尾上菊之助 舟木一夫
山田太郎
緒形 拳
第16回(1965年)
尾上菊之助
第17回(1966年)
藤 純子
第16回(1965年)
舟木一夫山田太郎は第16回の応援で、劇中の役とは関係の無い牛若丸に扮するシーンあり
1967 三姉妹 岡田茉莉子
藤村志保
栗原小巻
大佛次郎
第17回(1966年)
栗原小巻
第18回(1967年)
藤村志保
第17回(1966年)
大佛次郎は原作者
藤村志保は審査員経験者としては初となる応援出演、作品と同じ姿で登場
1968 竜馬がゆく 北大路欣也 (村田英雄) 三木のり平
第19回(1968年)
村田英雄はこの年「竜馬がゆく」を歌唱
三木のり平は寝巻き姿で、自ら同作で演じた寝待ちの藤兵衛をもじった”寝巻きの藤兵衛”を名乗る
1969 天と地と 石坂浩二 水前寺清子 藤田まこと
第20回(1969年)
藤田まことは別の役で出演も、紅白では石坂浩二の代わりと称して上杉謙信の姿で登場
(武田信玄役はなべおさみが担当)
1970 樅ノ木は残った 平幹二朗 平幹二朗
第20回(1969年)
田中絹代
志村 喬

第21回(1970年)
志村喬は翌年の『春の坂道』にも出演
1971 春の坂道 中村錦之助 舟木一夫 志村 喬
第21回(1970年)
1972 新・平家物語 仲代達矢 仲代達矢
第22回(1971年)
志垣太郎
第23回(1972年)
志垣太郎は作品で演じた源義経の役で出演

 

1973年~1983年

 『勝海舟』『元禄太平記』は放送前年の出演無しでしたが、放送後の紅白はゲスト出演なども多く盛り上がりました。『勝海舟』主演の渡哲也は病気のため僅か9話で降板、「くちなしの花」の大ヒットで辞退ではなく出場に至った理由は迷惑をかけたNHKへの罪滅ぼしという側面もあったそうです。

 『風と雲と虹と』の鹿島玄明役で話題になった草刈正雄は、『雲のじゅうたん』の中条静夫とともに第27回の応援団長を担当します。ただ紅組の浅茅陽子仁科明子と比べても目立つ場面は全く無く、役に関係する衣装も紅白では全く披露されていません。

 西田敏行は『池中玄太80キロ』主題歌「もしもピアノが弾けたなら」のヒットで歌手として初出場を果たしますが、同年の『おんな太閤記』も豊臣秀吉役で準主演という位置づけでした。曲紹介では「おかか 見てくれ晴れ姿」という文言が盛り込まれています。また翌年は脚本の橋田壽賀子が審査員で登場。西田さんは白組歌手として「あゝ上野駅」を歌う前に橋田先生へ出演交渉したり、同作で共演した滝田栄と握手して白組への投票を促したりしていました。

放送年度 作品名 主演 出場歌手 審査員 ゲスト その他
1973 国盗り物語 平幹二朗
高橋英樹
池内淳子
第23回(1972年)
松坂慶子
小鹿ミキ

第23回(1972年)
松坂慶子小鹿ミキは役柄と全く関係の無い形での出演
1974 勝海舟 渡 哲也
松方弘樹
渡 哲也
(三波春夫)
尾上松緑
第25回(1974年)
大原麗子
第25回(1974年)
大原麗子渡哲也の応援で登場、ただし主演交代後のため作品では直接共演していない
三波春夫は同年発表の浪曲歌謡「勝海舟」をトリ前で歌唱
1975 元禄太平記 石坂浩二 三善英史 三林京子
第26回(1975年)
小沢栄太郎
第26回(1975年)
小沢栄太郎三善英史の応援で登場
作品では吉良上野介と清水一学なので主従関係にあった
1976 風と雲と虹と 加藤 剛 森 昌子 加藤 剛
吉永小百合

第26回(1975年)
草刈正雄
第27回(1976年)
吉永小百合は出場歌手経験者としては初となる審査員選出
草刈正雄中条静夫とともに白組応援団長を担当
1977 花神 中村梅之助 中村梅之助
浅丘ルリ子

第27回(1976年)
西田敏行
第28回(1977年)
西田敏行松崎しげるの応援で登場、作品への言及は特に無し
1978 黄金の日日 市川染五郎 市川染五郎
竹下景子

第28回(1977年)
安奈 淳
第29回(1978年)
川谷拓三
第29回(1978年)
川谷拓三は作中で演じた杉谷善住坊の姿で登場、西部劇スタイルの研ナオコと決闘する
1979 草燃える 石坂浩二
岩下志麻
郷ひろみ 岩下志麻
第29回(1978年)
多岐川裕美
第30回(1979年)
1980 獅子の時代 菅原文太
加藤 剛
菅原文太
大原麗子

第30回(1979年)
1981 おんな太閤記 佐久間良子 西田敏行 佐久間良子
第31回(1980年)
西田敏行は放送年に白組歌手として出場、作品での口調が曲紹介でも盛り込まれる
1982 峠の群像 緒形 拳 郷ひろみ
薬丸裕英
緒形 拳
古手川祐子

第32回(1981年)
薬丸裕英シブがき隊として第33回に初出場
1983 徳川家康 滝田 栄 滝田 栄
池上季実子

第33回(1982年)
役所広司
第34回(1983年)
役所広司は翌年放送の新大型時代劇『宮本武蔵』主演として選出

 

1984年~1992年

 1984年~1986年の大河ドラマは明治~現代を取り扱う形になりました。その第1弾である『山河燃ゆ』が放送される前年第34回(1983年)は、審査員の枠を増やした影響で例年より出演が多くなっています。

 1987年~1989年の『独眼竜政宗』『武田信玄』『春日局』は、いずれも作品から流行語が生まれるほどの大ヒット作となりました。ただ放映年にゲスト出演があった『独眼竜政宗』、「今宵はここまでに致しとうございまさる」のセリフが引用された『武田信玄』に対し、『春日局』は放送前も放送後も全く紅白歌合戦で触れられない珍しい形となっています。

 『翔ぶが如く』主演の西田敏行は、大河ドラマから初めて白組司会に選出される形になりました。大河出演は2022年の『鎌倉殿の13人』まで14回、紅白は歌手4回・審査員2回・司会1回・応援2回・ゲスト歌唱1回・ナレーション1回。双方にとって非常に縁深い存在となっています。

放送年度 作品名 主演 出場歌手 審査員 司会/ゲスト その他
1984 山河燃ゆ 松本幸四郎
西田敏行
沢田研二
柏原芳恵
松本幸四郎
三船敏郎
大原麗子

第34回(1983年)
柏原芳恵は放送前年に初出場も、放送年の紅白は落選
1985 春の波涛 松坂慶子 松坂慶子
風間杜夫
名取裕子

第35回(1984年)
1986 いのち 三田佳子 吉 幾三 三田佳子
第36回(1985年)
吉幾三は「雪國」のヒットの他に、『いのち』での演技も話題になった
1987 独眼竜政宗 渡辺 謙 渡辺 謙
第37回(1986年)
渡辺 謙
三浦友和
西郷輝彦
葛西聖司

第38回(1987年)
大河ドラマ主演が2年連続紅白出演は極めて異例
語りの葛西アナは第38回で3人が登場するシーンのナレーションも担当
1988 武田信玄 中井貴一 中井貴一
若尾文子

第38回(1987年)
流行語になった「今宵はここまでに致しとうございまさる」は、
第39回で紅組司会・和田アキ子が引用する場面あり
1989 春日局 大原麗子 五木ひろし
吉 幾三
紅白歌合戦で一切触れられなかった大河ドラマは『花の生涯』とこの作品のみ
1990 翔ぶが如く 西田敏行
鹿賀丈史
西田敏行 西田敏行
第40回(1989年)
西田敏行
第41回(1990年)
西田敏行は放送年に白組司会を担当、大河主演が司会をする初のケースになる
1991 太平記 真田広之 宮沢りえ 真田広之
沢口靖子

第41回(1990年)
宮沢りえは第41回に紅組歌手として出演も、翌年大河についての話題は無し
1992 信長 緒形直人 中山美穂 緒形直人
鷲尾いさ子

第42回(1991年)

 

1993年~2001年

 1993年~1994年はこれまで大河どころか時代劇でもほぼ取り扱われたことのないテーマで作品を制作、そのため放送時期が不規則になりました。『琉球の風』が1993年上半期、『炎立つ』は3部に分けて1993年下半期から1994年春、『花の乱』は1994年春からの放送で、1995年以降は従来通り1年間放送に戻ります。

 1999年は『元禄繚乱』から中村勘九郎、2000年は翌年の大河『北条時宗』から和泉元彌が白組司会に抜擢されます。放送前の作品出演者が紅白の司会を担当するのは、この時が初めてでした。また紅組も、1996年『秀吉』の淀役で話題になった松たか子が19歳の若さで司会に抜擢されています。

放送年度 作品名 主演 出場歌手 審査員 司会/ゲスト その他
1993 琉球の風 東山紀之 小林 旭 富司純子
森 光子
第43回(1992年)
谷村新司が主題歌「階-きざはし-」を担当
紅白では放送された年にあたる第44回で歌唱
1993
1994
炎立つ 渡辺 謙
村上弘明
稲垣吾郎
坂本冬美
高橋克彦
村上弘明

第43回(1992年)
高橋克彦は原作者
坂本冬美はイメージソング「恋は火の舞 剣の舞」も担当、紅白でも第44回に歌唱
1994 花の乱 三田佳子 小林幸子
松岡昌宏
三田佳子
市川團十郎

第44回(1993年)
都はるみがイメージソング担当も、紅白では歌われず
1995 八代将軍吉宗 西田敏行 賀来千香子
第45回(1994年)
江守 徹
森田 剛

第46回(1995年)
ナレーション/近松門左衛門役の江守徹は第46回オープニングで語りを担当
森田剛TOKIOのバックダンサー・V6として出演
1996 秀吉 竹中直人 松岡昌宏
玉置浩二
竹中直人
第46回(1995年)
宮本隆治
第46回(1995年)
第47回(1996年)
松たか子
第47回(1996年)
総合司会の宮本隆治は同作の語りを担当
大河ドラマ出演者が紅組司会に抜擢されるのは第47回が初
1997 毛利元就 中村橋之助 中村橋之助
第47回(1996年)
1998 徳川慶喜 本木雅弘 本木雅弘
第48回(1997年)
1999 元禄繚乱 中村勘九郎 (三波春夫) 松平 健
第49回(1998年)
中村勘九郎
大竹しのぶ
渡辺えり子
六平直政

第50回(1999年)
中村勘九郎は放映年に白組司会を担当
大竹しのぶ他3人はサプライズ出演
三波春夫は第50回で10年ぶり復帰、赤穂浪士をテーマにした「元禄名槍譜 俵星玄蕃」を歌唱
その他スタッフも、小林幸子のセット準備で出演
2000 葵 徳川三代 津川雅彦
西田敏行
尾上辰之助
ジェームス三木
第49回(1998年)

津川雅彦
草笛光子

第50回(1999年)
ジェームス三木は第49回時点で脚本担当と紹介される
2001 北条時宗 和泉元彌 藤あや子 渡辺 謙
木村佳乃

第51回(2000年)
川原亜矢子
第52回(2001年)
和泉元彌
浅野温子

第51回(2000年)
放送前の大河主演が紅白歌合戦司会を担当したのは第51回が初
浅野温子は役と関係のないカジュアルな格好で白組応援、審査員席とのやり取りもあり

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