紅白名言集解説・32~決して昭和の紅白は男女不平等、というわけではない~


 1979年紅白の一コマ。サーカスは前年の「Mr.サマータイム」とこの年「アメリカン・フィーリング」で2度紅白に出場していますが、特に男性メンバーは自らのステージ以外でも紅組の盛り上げ役を買って出て、非常に頑張っていました。

・サーカスというグループとは?

 1977年に結成された、男女4名のコーラスグループ。それまでの歌謡界で、4人組の男性コーラスグループ(ダーク・ダックスなど)や3人組の女性コーラスグループ(スリー・グレイセスなど)は過去にもいましたが、男女混合のポップスグループは当時大変目新しい存在でした。同様に男女のグループという観点でも、1対1のデュオや女性1人をボーカルにしたバンドなどはいましたが、男女比1:1のコーラスグループはやはり今までにない組成。更に言うと、ヒット当時のメンバーは3人姉弟に従姉という血縁関係。勿論こういった珍しさだけでなく、コーラスワーク・歌唱力も大変高い評価を受けたグループでした。代表曲は紅白で歌ったCMソングの2曲が一番著名ですが、それ以外もドラマや映画のタイアップを多く担当。特に1980年代リアルタイムを経験した世代は、意外とヒットの割に馴染み深い曲も多いのではないかと思います。

・紅白出場当時のメンバー組成

現在も活躍しているグループですが、時期によってメンバーは変動しています。ヒット当時のメンバーは以下の4人です。

  • 叶正子さん(長女・メインボーカル担当)
  • 叶高さん(長男・グループのリーダー)
  • 叶央介さん(次男・現在はグループを離れて活躍)
  • 卯月節子さん(従姉・基本コーラスが中心)

・「アメリカン・フィーリング」について

 1979年5月25日に発売されたレコードシングル。前の年の「Mr.サマータイム」はカネボウCMソングでしたが、この曲はJALのキャンペーンソングとしてヒットしました。オリコンでは年間21位の記録を残しています。CMをきっかけにヒットして、紅白でも歌われることが多くなったのはこの時期から。1979年で言うと、ツイスト「燃えろいい女」(資生堂)、布施明「君は薔薇より美しい」(カネボウ)、ジュディ・オング「魅せられて」(ワコール)辺りが、ヒットして紅白でも歌われた代表となります。

 “Feeling in America, in America”と、心地よいコバルトの風(歌詞からの引用で申し訳ないですが)が吹き抜けるサウンドが耳に残ります。作詞は「あずさ2号」以降頭角を表しつつあった竜真知子さん、作曲は1980年代アイドルソングを多く手掛け、この曲が初めての大ヒットになった小田裕一郎さん。そして編曲はYMOで頭角を表しつつあった坂本龍一さん。確かにイントロは、当時まだ入りたての電子ピアノの音が印象的。この曲で教授は、日本レコード大賞の編曲賞を受賞しました。紅白では中盤、アメリカからの電報を読み上げた後で上のように曲紹介。歌唱だけでなく、赤と黒のマントを羽織った衣装と、それを活かすような手の動きも印象的でした。ピンク・レディーほどではないにせよ、ただ歌うだけでなく動きで魅せる部分が多いのもサーカスの大きな魅力ではないかと思います。

・紅白での男性メンバーの活躍

 この当時の紅組歌手は応援に駆り出される機会も多いです。1979年で言うと、一番分かりやすいのがラインダンス。他に見られたのは、太田裕美のステージでのコーラス。ただしこの2つは女性メンバーのみの参加でした。一方男性メンバーは、当時存在していた歌手席で紅組歌手を全力で応援する形。それは白組歌手が白組を応援する姿よりも、はるかに格好良く見えました。その中で一番目についたのは、紅組司会・水前寺清子が「涙を抱いた渡り鳥」を歌う後ろで応援するシーン。

 歌手席の前で立ちながら応援した後、間奏で真っ先にチータのそばに駆け出したのはサーカスの男性メンバー2人です。この年のチータは歌手よりも司会として、紅組を率いて勝たせることに全力を注いだのは大変有名な話ですが…。本番までの面談ややり取りを経た中で、もしくはサーカスのデビュー以後にあったやり取りを含めても、チータがメンバーに対して感じたことをそのまま言葉にした曲紹介だったという気がしてなりません。一昨年、サーカスのメンバーだった「アメリカン・フィーリング」が現在過去のメンバー7人でセルフカバーされましたが、それが実現したのも女性メンバー含めた当時のグループ全員が歌唱力だけでなく人としても大変素晴らしい人格の持ち主だったからではないでしょうか。そういう意味では、日本の歌謡曲史上でもっと振り返られて評価されるべきグループのではないかと感じます。

 なお今回話題にした「涙を抱いた渡り鳥」の曲紹介についても名言集で取り上げてるので、いずれ記事にすると思います。これもまたこの年の紅白を語るに欠かせない伝説的な内容なので…。

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