紅白名言集解説・34~大滝詠一さんサブスク解禁記念~


 テレビでパフォーマンスすることが無かったので、当然生前の紅白歌合戦の出場もなかった大滝詠一さん。ですが提供曲は過去5曲ほど歌われています。そして上で挙げたように、一度だけですが名前も出ています。というわけで、今回は「紅白と大滝詠一の歴史」について書いていきます。

・初の紅白歌唱曲は森進一「冬のリヴィエラ」

 『A LONG VACATION』が大ヒットしたのは1981年、この年に提供曲で大ヒットしたのは松田聖子さんの「風立ちぬ」ですが、「夏の扉」を選曲したためその年の紅白歌唱は無し。その1年前は太田裕美さんに「さらばシベリア鉄道」を提供していますが、こちらもその年は「南風」を歌唱。1981年も歌われる機会があったと思いますが、当の本人は不出場。当時の紅白で「さらばシベリア鉄道」を歌うシーンも、つい想像したくなります(もっとも、仮に出ていても「君と歩いた青春」になる可能性も高そうですが)。

 というわけで、紅白歌合戦で初めて歌われた提供曲は森進一さんの「冬のリヴィエラ」。初の演歌系歌手への提供が大変話題になって大ヒット、1983年・第34回にトリ前での歌唱でした。セルフカバーは全編英語詞に置き換えた「夏のリビエラ」、これは今回のサブスク解禁で『DEBUT AGAIN』から聴くことが出来ます。

・1990年代は「夢で逢えたら」がヒット

 下に紅白歌合戦で歌唱したリストと、主な未歌唱曲も挙げましたが、あらためて見ると楽曲提供は1980年代中心で、1990年代以降は自作曲を含めた新しい曲の発表は少なくなります。その時期で最も脚光を浴びたのは1996年~1997年。ラッツ&スターが再結成して「夢で逢えたら」をカバーしたことが大きな話題になりましたが、同時期に実は『ロングバケーション』が大ヒットドラマのタイトルに拝借されるという事象も起こっています。これは翌年同じ木村拓哉主演の『ラブ・ジェネレーション』主題歌の「幸せな結末」に繋がる話になるわけですが…。話を戻すと、ラッツ&スターのシングルはコマーシャルで大量オンエアされて、紅白歌合戦初出場を果たします(なぜか1980年のヒット時期に出場がない上に、著書他での言及もないんですよね…)。新たなアレンジで加えられた田代さんのセリフが、紅白では上に紹介した通りファンと大滝さんへのメッセージになりました。

・2013年12月30日に突然の逝去

 思いがけない形で訃報が舞い込んだのは2013年の年末。時間があれば当然何かしらの追悼コーナーが設けられる所ですが、台本も完成されている以上やはり難しかったようです。ただ前の年久々に紅白で「冬のリヴィエラ」を選曲した森進一さんは、この年「襟裳岬」の歌唱ではありましたが、急遽胸に黒い喪章をポケットに入れる形で故人を悼む形になりました。なお「冬のリヴィエラ」は、当日テレビ東京の年忘れにっぽんの歌で歌唱されています。

 最後に、参考として大滝さんが提供した楽曲の紅白歌唱曲と、同じく有名ながらも紅白で歌われていない楽曲の表を掲載します。それにしても『A LONG VACATION』は今日で40年前の作品になるわけですが、いつ聴いても本当に全く色褪せないですね…。「君は天然色」「カナリア諸島にて」「恋するカレン」「さらばシベリア鉄道」なども勿論ですが、個人的には「FUN×4」で太田裕美さんが歌う”散歩しない?”の部分が一番好きです。

・大滝詠一さんの提供紅白歌唱曲一覧

年度該当回歌手楽曲特記事項
1983年第34回森 進一冬のリヴィエラトリ前での歌唱
1986年第37回小林 旭熱き心に小林旭はこの回9年ぶりに紅白復帰
1988年第39回小泉今日子快盗ルビイテロップでは「怪盗ルビイ」と誤表記
1994年第45回小林 旭熱き心に2回目の歌唱、大人数の合唱をバックにしたステージ
1996年第47回RATS&STAR夢で逢えたらカバー曲、この年再結成して初出場。田代まさしが間奏でメッセージ
2012年第63回森 進一冬のリヴィエラ2回目の歌唱、前半トリ
2018年第69回松田聖子風立ちぬメドレーの中の1曲として歌唱、1981年発表曲
2020年第71回鈴木雅之夢で逢えたらグループとソロ両方で歌われるケースは前川清・谷村新司・堀内孝雄以来

・紅白で歌われていない主な提供曲一覧

発売時期歌手楽曲特記事項
1980年11月太田裕美さらばシベリア鉄道1980年は「南風」を選曲

1981年はご意見を伺う会で落選、その後年末に活動休止発表

1983年5月薬師丸ひろ子探偵物語オリコン年間4位の大ヒットも、アンケート結果が低いことを理由に出演交渉すら無し
1995年2月渡辺満里奈うれしい予感ちびまる子ちゃんのオープニングテーマ

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