第50回(1999年)「東京砂漠」
ステージ
作詞:吉田 旺 作曲:内山田洋
前歌手:加山雄三、藤あや子
後歌手:(全員合唱)、(ニュース)、野猿
曲紹介:中村勘九郎(白組司会)、大竹しのぶ、渡辺えり子、六平直政
曲紹介のタイミングで、勘九郎さんが主演を務めた『元禄繚乱』で共演した俳優陣が登場します。名前のテロップが無いので、本当に予定外のサプライズだったそうです。色々やり取りした後に前半ラストの曲紹介、「前川清さんです!」と紹介したのは大竹さんでした。やや落ち着かない状況ですが、イントロでは台本通りの紹介がされています。
「クール・ファイブでデビューなさって30年、この50回の記念にこの歌を是非歌いたいとご自分で言ってくださいました。名曲、「東京砂漠」!」
クール・ファイブで第27回に歌って以来、23年ぶり2回目の歌唱となります。これまでの8回は「そして、神戸」以外全てソロ転向後の曲ですが、この年以降はクール・ファイブ時代の曲を紅白で歌う機会が格段に増えました。
照明で夜と星を表現、コロシアム状のセット後方には東京を思わせるビルの光景が映ります。コーラスはありませんが、2コーラス歌ってからは転調してサビ繰り返し。この年の前半ラストを締めるに相応しいステージ、広い舞台に前川さんだけが立つ構図も曲の寂しさを際立たせています。
応援など
好評だったのか当時のスタッフが気に入っていたのか分かりませんが、この年は変装が2回もありました。まずは前半、この年テレビ出演が多かった美容研究家・鈴木その子がゲスト出演するシーンで細川たかしと白塗り。メイク披露後すぐに次のステージ、出番は10秒くらいしかありません。
この年は6年ぶりに19時台からの放送になりましたが、前半ラストの全員合唱も同時に復活します。スティーヴィー・ワンダーが提供した「21世紀の君たちへ~A Song For Children~」、ソロパートは無かったですが前川さんはMAXの4人とチームを組んでの参加でした。
そして後半、郷ひろみ「GOLDFINGER ’99」でもアフロのカツラに顔を真赤に塗った姿で登場(細川たかし・吉幾三と共演)。神田うのがサビの振付を指導しますが、時間が短いどころかメイクもスルーでセリフさえも与えられないという酷い扱いでした。
この年は北島三郎が「まつり」で大トリ。出場歌手・ダンサー入り乱れた賑やかなステージでしたが、前川さんは他の白組歌手何人かと一緒に大漁旗を振り回しています。
第51回(2000年)「長崎は今日も雨だった」
ステージ
作詞:永田貴子 作曲:彩木雅夫
前歌手:布施 明、八代亜紀
後歌手:ピンク・レディー、アリス
曲紹介:和泉元彌(白組司会)
初出場以来31年ぶりに紅白で歌唱、対戦相手の八代亜紀も同様に27年ぶりの「なみだ恋」歌唱でした。DA PUMPの4人と細川たかし・山本譲二・吉幾三・鳥羽一郎がコーラスで参加しています。八代さんが終わってすぐ「さて白組はこの方のために特別にコーラス隊を編成しました。前川清さんが名曲を熱唱します、「長崎は今日も雨だった」」と紹介しましたが、スタンバイに多少時間がかかったようで「あ…生です、まだ準備が出来てなかったでしょうか」と挟む一幕がありました。
冒頭に会釈した後、すぐに左を向いて微笑みます。目線はコーラス隊の方々、左後ろの演歌陣4名と右後ろの若者4名に挨拶して歌に入ります。31年ぶりの「長崎は今日も雨だった」は、少しキーを下げての歌唱になりました。
コーラスは、やはり高音の細川さんが他と比べてやや目立っています。前川さんもそう感じたのでしょうか、間奏後再び左後ろに体を向けます。2番の歌い出しは、そちらに向けて歌った後に頷くパフォーマンスになりました。
基本的に直立不動で歌うのが前川さんのスタイルですが、この年は上に記したように左右へ体を向けて歌うシーンが非常に多いステージでした。その点では、他の年と比べても異彩を放つ内容だったかもしれません。
応援など
変なメイクタイムは前回限りで終了します。前半の出番は歌を主体としたディズニーのショーコーナー、「SING SING SING」を細川たかし・西城秀樹と一緒に渋くカッコ良く歌います。マラカスを持ちながらノリノリのシーンも映りましたが、クライマックスのパラパラダンスはアップで映る場面一切無しでした。
その後、初出場の平井堅の曲紹介に稲垣吾郎と登場。「笑顔の似合う男」「ポーズの決まる男」と稲垣さんが話すいい男の条件に合わせてアクションを決めます。同様に司会の和泉元彌も「身のこなしのしなやかな男」とポーズつきで決めますが、それを聴いた前川さんはしなやかというよりもシナシナシナ…という動き。「…前川さんどうかされましたか?」「いや、私もなんでここにいるのか分かんないですよね」、とぼけた前川さんの持ち味が光る内容でした。
前半ラストの全員合唱は「上を向いて歩こう」は伍代夏子・藤あや子と一緒に歌唱。ただ後半は意外にも自身のステージとエンディング以外ほぼ出番無しでした。
第52回(2001年)「大阪」
ステージ
作詞:前川 清・岩井 薫 作曲:都志見隆
前歌手:TOKIO、中村美律子
後歌手:香西かおり、細川たかし
曲紹介:阿部 渉(白組司会)
21世紀最初の紅白ですが、この年の前半は渋い演歌の新曲も多くラインナップされています。TOKIOからモーニング娘。の間は4曲続けて大人向け演歌、その2番目にあたるステージでした。大阪を題材にした楽曲はこちらの記事でも示した通り紅白でも数多く歌われていますが、その中では一番お洒落な楽曲と言って良いかもしれません。ナニワ特有の賑やかさよりも中之島の夜景が似合う曲、と言った所でしょうか。ちなみに「河内おとこ節」を幾度となく歌っている中村美律子は、この年珍しくマイナー演歌(「港町純情」)の歌唱でした。
「これまで、日本中の色々な街を歌い上げてきた前川清さん。今年の歌は大阪の街が舞台です。ご自分で作詞、思いの一杯詰まったこの歌、「大阪!」」
「『親父とおふくろが住んでいた大阪は、僕の第二の故郷です。人情に厚くてあったかくて…そんな大阪の街、いつまでも変わらないでいて欲しい。』前川清さんのメッセージです!」
紫のタキシードで2コーラス、コーラスや踊り・マジックなども無くシンプルに聴かせます。歌手・前川清の素晴らしさを、最大限に引き出したようなステージでした。
応援など
平成以降はコーラスで登場する機会も増えた前川さん、この年も山川豊「泣かないで」のバックコーラスに登場します。布施明・氷川きよし・堀内孝雄・美川憲一も含めた5人の濃いメンバー、サビにはコーラスだけでなく変な振付も含まれていました。同様に加山雄三「旅人よ」のステージに参加、第32回・第48回含めて3回も同一歌手のバックコーラスを務める例はおそらく他にないと思われます。
この年はザ・ドリフターズが歌手として初出場、曲紹介では細川たかし・西城秀樹・布施明とともに持ちギャグを披露。前川さんは「どうも失礼しました」担当、わざわざ駐在さんの帽子まで持参しています。
欽ちゃんファミリーですが『8時だよ!全員集合』『ドリフ大爆笑』にも何度も出演、久々の少年少女聖歌隊コーナーでいかりやさんが最も頼りにしていたのは前川さんでした。和田アキ子とのやり取り後、いかりやさんに「清さん」と指名されます。
いかりや「つまんなそうにしている清さん」
前川「はーい!」
いかりや「いくつになった?」
前川「9歳でーす!」
いかりや「9歳ね。お家の方はお元気ですか?」
前川「元気です!先生!女房がよろしくって言ってました」
いかりや「…9歳じゃあ、女房はいませんですよ」
台本通りかアドリブかは分からないですが、前川さんが年齢を利用したナイスボケを見せます。その後「すもももももももものうち」の早口言葉でも2番目に指名、こちらは例のごとくしかめっ面ながらも見事に噛まずに歌い切りました。
第53回(2002年)「ひまわり」
ステージ
作詞・作曲:福山雅治
前歌手:アルフレド・カセーロ&THE BOOM、Every Little Thing、(紅白Ring Show)
後歌手:川中美幸、美川憲一
曲紹介:阿部 渉(白組司会)
コーラス:RAG FAIR
6年前の紅白歌合戦きっかけで実現した福山雅治の楽曲提供。これは大変話題になり、当時のオリコン週間シングルランキングで13位を記録しました。ソロ転向後の前川さんで、オリコンTOP50入りしたのはこの曲のみです。近年はセルフカバーの方が多く聴かれているとは思いますが…。
「紅白の楽しみは若い歌手の皆さんとの出会いと言う前川清さんです。今夜はRAG FAIRをコーラスに迎えて心温まるバラードを熱唱してくださいます。曲は「ひまわり」。」。曲紹介ではそういったエピソードどころか、なぜか福山さんの名前さえも出ません。ちなみに福山さんはこの年新曲発表無し、紅白も不出場期で復帰は前川さんと入れ替わりの第60回(2009年)でした。
針葉樹をイメージしたセットを背景にして、切々と語るように歌います。曲紹介の通りコーラスを担当するのはこの年初出場のRAG FAIR、5人の歌声と奥村政佳のボイスパーカッションが響き渡ります。聴かせるバラードですが、マイクを口から大きく離して歌唱力の高さを見せつけるシーンは無しでした。衣装もタキシードではなく、比較的カジュアルな黒いスーツ姿です。ヒット曲ですがコーラス以外は案外あっさりしたステージ、合間無しですぐ次の演奏に入るのはやや勿体ないような気もしました。
応援など
自身のステージでコーラスをしてくれたRAG FAIRですが、彼らの曲紹介には前川さんもお手伝い。6人がアカペラで意気込みを披露した後に、細川たかし・小澤征悦と「ワワワワー」とバラバラのコーラスを披露するのを阿部アナがスルーという役割です。阿部アナが曲を紹介する横で、あまりにもボイパの出来が酷い小澤さんにツッコミを入れていました。
その後、山本譲二「おまえと生きる」のステージで小芝居。長山洋子や細川たかしと一緒に、三角関係の男女を演じています。
第54回(2003年)「東京砂漠」
ステージ
作詞:吉田 旺 作曲:内山田洋
前歌手:山川 豊、香西かおり
後歌手:モーニング娘。、Gackt
曲紹介:石坂浩二
出場歌手の数が他の年と比べても突き抜けて多いこの年の紅白、前半4番手~6番手は異例の6ステージ連続演出でした。『歌の旅』と称して、わざわざ俳優の石坂浩二をゲストに迎えて曲紹介も担当してもらいます。6曲連続ご当地ソングですが曲順は青森(「じょんから女節」)→みちのく(「みちのくひとり旅」)→鳥取(「鳥取砂丘」)→函館本線とおかしなルートを辿っていて、「無言坂」に至ってはここに組み入れること自体が若干無理のある選曲でした。
「東京には高層ビルが増え続け、華やかさとは裏腹に寂しさも溢れます。歌で綴る旅の終わりは、前川清さん「東京砂漠」です」
旅の締めが「東京砂漠」というのはちょっと暗いような気もします。円形のビジョンには東京のビルや人の多さをイメージした映像、風流さも何もありません。「素晴らしい日本を感じて頂けましたか?」とステージ終了後に紅組司会の膳場貴子アナが話していますが、この曲から楽曲・歌手の良さを感じた人はいても、「日本」の良さを感じた人はほとんどいないような気がします。ただステージは相変わらずの熱唱でした。
この曲は1980年代後半~1990年代前半、ダイア建設のコマーシャルソングとして多くテレビで見ることが出来ました。個人的にもこのCMで知った曲です。さすがにバスケットボールに興じる人はいなかったですが、映像のビルを見てこのCMを思い出した人もいたかもしれません。
応援など
前年は自身のステージ直前だったため不参加の紅白Ring Show(アレンジされた童謡を輪唱するコーナー)でしたが、この年は参加。「雪」のラップを全く笑顔のない表情で披露した結果、「不幸があったんですか?」「顔だけしかめてるだけだよ」と、このコーナーMCの中居正広・和田アキ子から散々にツッコまれていました。
細川たかし「浪花節だよ人生は」では、この年18年ぶりのセリーグ優勝を果たした阪神ファンの1人としてステージに参加。もっとも前川さんが阪神ファンと思われる確証は全く無く、数合わせで登場したという可能性も否定できません(川中美幸や神野美伽辺りは間違いなくファンだと思いますが)。
4回目の出場でトリ前に抜擢された氷川きよしのステージは、歌う前に前川さんが直々に応援。「きよし!頑張れ!きよし!最高!僕もきよしで良かった」、三言目のセリフが実に前川さんらしさ満載です。
第55回(2004年)「そして、神戸」
ステージ
作詞:千家和也 作曲:浜 圭介
前歌手:布施 明、島倉千代子、(全員合唱)
後歌手:夏川りみ、(ニュース)、平原綾香
曲紹介:阿部 渉(白組司会)
コーラス:ゴスペラーズ
阪神淡路大震災が起こった9年前以来の歌唱ですが、この年も新潟県中越沖地震で大きな被害が発生しています。アテネ五輪女子マラソン金メダリスト・野口みずきのスピーチ、出場歌手全員の「上を向いて歩こう」全員合唱、阪神淡路大震災の震災遺児が主人公になっている連続テレビ小説『わかば』主演・原田夏希による、当時の被災者から新潟の被災者に送られたメッセージを読み上げた後にパフォーマンスに移ります。
「きっと、今が一番つらい時です。でも、必ず時が来ます。今の阪神地区の町や私たちのように、立ち直る日がやってきます。希望を胸に、頑張ってください。西宮市・大震災の一先輩より」
「ありがとうございました。来年1月17日は阪神淡路大震災から10年。神戸を歌ったこの歌を、前川清さんが熱唱します。今夜はゴスペラーズの皆さんがコーラスで参加、「そして、神戸」!」
紅白歌合戦では3回目の歌唱ですが、内山田洋とクール・ファイブ時代には1度も歌われていません。紅白でコーラスつきの「そして、神戸」を歌うのは、この時が初めてです。間奏では神戸から中継、カメラアングルは9年前の紅白と同様のハーバーランド・ポートタワーが映る光景でした。なおゴスペラーズのコーラスは、スタンドマイク2本共用ではなく5人それぞれがハンドマイクを用いる形になっています。
震災の鎮魂と追悼、街の復興を祈念して開催される神戸ルミナリエは、10回目のこの年が最も多い来場者数を記録しています。12月の神戸の風物詩として定着しましたがここ2年はコロナの影響で中止、2022年も7月に開催見送り決定になったのは非常に残念です。
応援など
前回の紅白で激励した氷川きよしと、この年は御用改めという形で審査員席を巡回。『新選組!』の格好で自ら近藤勇と称し、翌年の大河『義経』主演の滝沢秀明と5年前の白組司会・中村勘九郎にご挨拶。マイク無しで喋り始める勘九郎さんに、咄嗟にマイクを渡します。「沖田くん、凧揚げじゃ!いや、引き上げじゃ!」、当然本来なら香取慎吾が出てくる所ですが、この年のSMAPは訳あって出場を辞退していました。
後半は旗揚げコーナーに参加。森進一・山本譲二と手を繋ぎ、歌に合わせて赤と白の旗を上げ下げしてもらいますが、やはり動きについていけていない様子でした。
バックコーラスをしてもらったゴスペラーズの曲紹介にも参加。「いやいやこれからね、僕が加わってね名前をねロクスペラーズに変えましょう。そうするとね、やっていけるかもしれない、」そんな前川さんを無視して進行する阿部アナですが、最後は曲名の「ミモザ」を声を合わせて紹介。あとはマツケンサンバにも参加しています。
第56回(2005年)「夜霧よ今夜も有難う」
ステージ
作詞・作曲:浜口庫之助
前歌手:美川憲一、倉木麻衣
後歌手:島谷ひとみ、平原綾香
曲紹介:山本耕史(白組担当)
この年は「スキウタ~紅白みんなでアンケート~」と称して、紅白で歌ってもらいたい曲を大々的に公募。紅白それぞれ投票数の多いベスト100が発表されましたが、「夜霧よ今夜も有難う」はランク外。名曲であることは間違いないですが、わざわざ前川さんに歌わせるという部分も含めて疑問に残る選曲でした。ただ石原裕次郎は第8回(1957年)の応援を除いて紅白に出場した経験は全く無く、持ち歌が紅白で披露されるのもこれが初めてとなります。
銀幕のスターの持ち歌ということで、曲前にこの年のゲスト審査員・山田洋次監督が登場。もっとも裕次郎さんが日活、山田監督は松竹なので一緒に仕事する機会は一度も無かったですが…。当時は翌年公開の映画『武士の一分』撮影中、木村拓哉が横に立っています。山田監督が木村さんをベタ褒めした後に曲紹介。「続いて白組は、歌の銀幕の大スター、石原裕次郎さんの名曲です。「夜霧よ今夜も有難う」、山川…あっごめんなさい!前川清さんです、どうぞ!」
曲紹介を担当する山本耕史が痛恨の大ミス、これを見て笑顔を見せる前川さん。客席にもドッと笑いが起きます。ビジョンに生前の裕次郎さんの写真が次々映る演出、またこの年紅組歌手として出場している平原綾香の父・平原まことがサックス演奏で参加しています。
厚みのあるダンディーな歌声で2コーラス、大人の魅力に溢れたステージでした。一旦深々とお辞儀して、平原さんのサックス演奏が終わった後にまた挨拶。その言葉は「山川でした」。袖で聴いていた木村さんが全力でツッコミ、その後に登場した時に視聴者へ謝罪する山本さんが紹介した歌手は奇しくも山川豊でした(もっとも鳥羽一郎との兄弟デュエット、メインの紹介はみのもんたでしたが)。なおこのミスの顛末については紅白名言集解説・50~山川でした~も参照ください。
応援など
「エロかわいい」が流行語になって大ブレイク、レコード大賞まで受賞した倖田來未がこの年初出場。「エロかっこいい!! 倖田來未 見学ツアー」と書かれた旗を持って、布施明と堀内孝雄を案内します。なおこの際、みのさんに「山川さんじゃないですか、ここにいるのは!」と言われて「山川と申しますよろしくお願い致します」と答えるやり取り、ウケが良かったのは当然ですがサラリーマン姿の3人よりみのさんのアドリブでした。そのまま袖で彼女のステージ観覧、スカートからホットパンツに早替えした場面では3人揃ってナイスリアクションを見せています。
第57回(2006年)「長崎は今日も雨だった」
ステージ
作詞:永田貴子 作曲:彩木雅夫
前歌手:布施 明、森 昌子
後歌手:BONNIE PINK、ゴスペラーズ
曲紹介:中居正広(白組司会)
コーラス:クール・ファイブ
この年11月3日に内山田洋が70歳で逝去、『歌謡グランドショー』の出演シーンも含めた追悼映像が流れます。歌う前に前川さんを含めた5人が勢揃い、白組司会の中居さんとトーク。
中居「さあ、今回は20年ぶりに集まったということですけども、前川さんが皆さんに声をかけられたと」
前川「はい、声をかけさせて頂きました。昔は兄弟みたいにしてずっと過ごしておりましたんで、本当に感謝の気持ちがいっぱいです。久しぶりに会って、どこのとっつぁんだろうと思う気はしましたけども(会場笑い)、でもリーダーの内山田さんがね、こうしてめぐり逢わせてくれたんだなと思っております」
中居「皆さんはいかがですか、久しぶりの」
宮本「いやーもう嬉しくて嬉しくて、もうたまりま、しぇん」
中居「…明るいご様子はお変わりないですね」
前川「そうですね」
宮本「どこ見てんの(一同笑い)」
中居「さあそれではスタンバイの方お願い致します、宜しくお願いします」
「さあ、前川清さんそしてクール・ファイブの皆さんは20年ぶりの復活ということなんですけども…。今夜限りです。本人にお伺いしたんですけども、今後このように集まる機会は無いとおっしゃってました。一夜限りのステージでございます。さあそれではまいりましょう、デビュー曲です。「長崎は今日も雨だった」」
舞台中央で前川さんが挨拶、画面左側のマイクに小林さんと岩城さん、右側のマイクに森本さんと宮本さん。岩城さんは本来内山田さんとペアですが、ここでは小林さんとペアになっています。6年前のステージはキーを下げていましたが、この年は37年前に歌った時と全く同じ高さに戻っていました。衣装も第53回以降スーツが続いていましたが、この年は5人揃ってタキシード姿に戻っています。
間奏では内山田さんの写真、クール・ファイブのメンバーが内山田さんを胴上げする姿も映りました。初出場の時は実を言うと全く異なる内容のステージでしたが(こちらで執筆済、バンドスタイルでした)、往年のイメージ通りの内容であることは間違いありません。5人集まって肩を組むエンディングは、この年の紅白歌合戦でしか見られない美しい光景でした。
応援など
1990年代は細川たかし・吉幾三とトリオを組んで仮装していましたが、この年も前年同様堀内孝雄・布施明と一緒にショーコーナー登場。『2006スーパーレビュー』コーナーでこの年新語として定着した「ちょい悪オヤジ」風ファッションのモデルとして、シャツの襟を大きくはだけたカジュアルな姿で登場しています。
第58回(2007年)「そして、神戸」
ステージ
作詞:千家和也 作曲:浜 圭介
前歌手:布施 明、香西かおり
後歌手:水森かおり、(おしりかじり虫)、AKB48他アイドル
曲紹介:笑福亭鶴瓶(白組司会)、中居正広(紅組司会)
コーラス:クール・ファイブ、ムーディ勝山
この年『オールザッツ漫才2006』をきっかけに各番組からオファー殺到、一躍時の人となったムーディ勝山が応援に登場。「右から来たものを左へ受け流すの歌」が大ウケ、紅白でムード歌謡を唯一歌う前川さんの場面で登場するのは自然の流れでした。ここでも挨拶代わりに例の歌披露、持ちネタの締めとして流用している「ああ~この東京砂漠~」を前川さん本人が一緒に歌っています。鶴瓶さんの横にいる中居さんもセロテープで付け髭をつけて悪ノリ、「鶴瓶がポロリする~」と歌います。そのムーディさんがなぜかクール・ファイブに参加してコーラス、もっとも本人からは「本当に一緒に楽しんでくださいませ」と快諾されたよう様子。「ムーディも加わった…(横でふざける中居さんに向かって)やかましい。前川清&クール・ファイブ、「そして、神戸」」。
”アーーー”と歌うクール・ファイブの4人、岩城さんの横でムーディさんが一人ハンドマイクを持っています。”パヤッパ~”と歌うムーディさん、芸人としては美味しいですがコーラスとしては尋常では無いくらい下手で悪目立ちしています。過去3回、特に直近2回の「そして、神戸」は震災も関係しているので極めて厳かなステージでしたが、このステージにはそれらと真逆の悪フザケ状態です。
それでも前川さんはいつも通りに熱唱しますが、うっかり2番ラスト前にそちらへ目をやった結果、あまりの絵のおかしさに思わず噴いてしまいます。とは言えその後の聴きどころは何とか持ち直し、マイクを大きく離す凄まじい声量をしっかりアピールしていました。29回出ていますが意外と前川さんは歌詞間違いなどのミスは無く、唯一あったトチリと言えばこの場面くらいです。
「そして、神戸」はクール・ファイブ時代1度も紅白で歌われておらず、グループとしては発売35年を経てようやく初歌唱となりました。もっともコーラスに変な人が混じるとは想像していなかったと思いますが…。なおこれまでの3回は「そして神戸」と読点無しの曲名テロップでしたが、この年は「そして、神戸」としっかり表記されています。
応援など
舞台転換の繋ぎとして白組楽屋からの中継が入ります。今ではステージ裏側の中継が入るのも珍しくありませんが、この当時は前例がなく史上初の試みでした。「宮本さんと会うたら儀式があるんですよ」ということで、鶴瓶さんが宮本さんの頭に跨いで乗る若干際どい絵が映ります。TOKIOのメンバーを筆頭に、白組歌手陣からは大ウケでした。
なおクール・ファイブとの共演が3回続きますがいずれも出場歌手としては「前川清」表記、オープニングとエンディングはいずれも前川さんのみの出演でした。
第59回(2008年)「東京砂漠」
ステージ
作詞:吉田 旺 作曲:内山田洋
前歌手:キマグレン、いきものがかり
後歌手:川中美幸、宮沢和史& in ガンガ・ズンバ&ザ・ブーム
曲紹介:小野文惠(総合司会)
コーラス:クール・ファイブ
前川さん、そしてクール・ファイブは数多くのヒット曲があるものの、平成の紅白で過去の持ち歌を歌う際は「長崎は今日も雨だった」「そして、神戸」「東京砂漠」のローテーションでした。内山田さんの死後クール・ファイブとしての出演は3回目、そうなると選曲も自然にそうなるものです。「噂の女」「中の島ブルース」辺りも聴きたかった所ですが…。
紅白4回目となる「東京砂漠」は歌前に六本木上空から中継、小野文惠アナがヘリコプターから案内します。東京タワーが美しく光る中、「続いての登場は、今年デビュー40周年を迎えた前川清さんです」と曲紹介の流れになります。「デビュー当時、故郷長崎に帰りたくて仕方がなかった前川さんの目には、余分な物を削ぎ落とした鉄骨だけの東京タワーが妙に寂しく映ったそうです。お聴きいただくのは名曲「東京砂漠」」、紅白でヘリコプターで曲紹介したステージは今も昔もこのステージ以外にありません。
舞台のセットも豪華になり、このステージでは巨大な金色のシャンデリアみたいな大きな飾りが天井に吊るされています。高級感が溢れる雰囲気ですが舞台は前川さんとクール・ファイブの5人のみ、こういったセットだからこその寂しさも感じる演出です。あとはこの年、前川さんの左耳にイヤモニがセットされています。これも29回目の出場にして初めてのことでした。
間奏から2番の歌い出しでも、東京上空からの中継が挿入されます。デビュー40周年ですが相変わらずの熱唱です。ただ1度限りと言っていたはずのクール・ファイブは気がつけば3年連続、歌唱後には白組司会の中居さんに「去年ね、今夜限りとおっしゃってましたけどもね、今年も今夜限り復活して頂きましたありがとうございました」と若干皮肉られています。2年前の紅白以降気が変わったようで、2007年にはユニットとしての新曲までリリースされていました。
応援など
細川たかしどころか堀内孝雄までいなくなり、この年になるとふざける場面もありません。歌以外の出演も、北山たけしの遠藤実追悼ステージに登場する程度でした。
おわりに
2000年代以降は演歌系のリストラが特に白組で進み始めた頃で、山本譲二、山川豊、鳥羽一郎、堀内孝雄…と順々に落選していきます。前川さんも2009年に残念ながら落選、以降の紅白出場はありません。2008年で還暦を迎えた前川さんも、さすがに世代交代の波には勝てなかったようです。この年まで出場していれば30回目、さらに長崎の後輩・福山雅治と一緒に出場という形になったのですが…。
非常に高い歌唱力を礎にしたステージは勿論ですが、ユニークなキャラクターという点に置いても紅白歌合戦には欠かせない存在でした。3回に分けたレビューを全て読んで頂ければ、その点も十分垣間見ることが出来ると思います。是非よろしくお願いします。
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