第74回(2023年)NHK紅白歌合戦~まとめ~

 今回ではや16回目になる紅白歌合戦の総括記事ですが、その前に2024年は年が明けてすぐ能登半島で大きな地震が発生しました。元旦から緊急報道番組メインの編成になったことは過去になく、史上ワースト視聴率とは一応報道されていますがそれどころでない状況が現在も続いています。輪島市や珠洲市など石川県とりわけ能登半島の被害は尋常ならざる状況で、避難を余儀無くされている方が多くいらっしゃいます。亡くなられた方に心よりお悔やみ申し上げるとともに、現地で被災された方々が一日でも早く日常の生活に戻れるよう心からお祈りします。ささやかながら、団体を通じて少額ですが募金の方もさせて頂きました。中には詐欺目的の物もあるので、募金する際は必ず信頼できる企業・団体を通すことを推奨します。

 

 さて「ボーダレス」をテーマにした紅白歌合戦は、これまでと異なる部分が例年以上に多い内容でした。それ故に気になったことも多いですが、個人的に言うと今回ほど主観と客観にズレが生じた紅白歌合戦は他にありません。つまり言うと「個人的に不満はあるものの事情を考えるとベストな選択と言わざるを得ない」、そんな場面が過去にないほど多く見受けられました。

 

司会・進行について

 司会者については今回も全体的にスムーズな進行で、文句をつけるような部分は特に見当たりません。

 これまでの紅白歌合戦で名司会者として起用された方々は個性の強い方が多く、歌手より目立つケースも1人や2人ではありません。そう考えると今回の有吉弘行は実に黒子に徹した司会ぶりで、芸人へのツッコミや「白い雲のように」など要所以外であまり前に出ない謙虚さが印象的でした。これはコロナ禍で目立つ演出が無かった第71回の内村光良に近いタイプで、女優である他の2人を立てようと意図もあったのかもしれません。単に緊張で思い通りにいかなかったという可能性もありますが、「歌番組の主役は歌手」という観点で考えるとこれくらいで丁度良いような気もしました。TBSの深夜みたいな有吉さんを期待した視聴者にとっては不満があったかもしれないですが、状況に応じて立ち振舞を変えることが出来る点を考えるとそれだけ器用だということです。次回も続投で良いのではないでしょうか。

 2年目の橋本環奈は今回も回しに回す進行で、頼もしさ全開の内容でした。それこそ女優業が落ち着いたらMCの仕事がメインになりそうな勢いで、関口宏や児玉清最近だと谷原章介辺りのポジションになっても不思議でないほどです。ただ今年主演する連続テレビ小説『おむすび』は大阪局制作、同局制作の朝ドラ放送中に主演が紅白司会を務めた例はなく、今回の『ブギウギ』も企画コーナーを組めなかったほどです。もし彼女が司会出来ない場合かなり穴埋めが大変なのは必定ですが、彼女の場合は僅かな期間で紅白の台本を全て憶えるという規格外の人物。10月には司会者が発表されますが、その点では例年より注目する必要がありそうです。

 今回想像以上に良かったのは浜辺美波の司会。橋本さんとの仲が良くてやりやすい面もあったと思いますが、軌道修正力・対応力が非常に高い人物であることが見ていてよく分かりました。交友関係も広く明るい性格、画面で見ても華があり、橋本さんと同様歴代の紅白女優司会でも最上位に入る上手さだと思います。今年はNHKと深い関係は無さそうですが、それとは別に続投を望みたいです。また芸能人で男性1・女性2の司会構成は今回が初めてでしたが、全く違和感ないどころかこれまでよりも見やすいという印象までありました。当面は男性アナ1人をサポートでつける形で、そのままこの割合は維持で良いのではないでしょうか。

 高瀬耕造アナは今回サポートに徹した形で、これも良い意味で目立たない司会ぶりでした。どちらかと言うと事前番組で明るくアピールする姿の方が印象的だった面もあります。

 

出場歌手の顔ぶれ・選曲について

 これは発表の際に書いたような気はしますが、同じ選曲が何度も繰り返されること以外は概ね問題なかったと思います。両組トリもメドレー方式とは言え、双方2023年発表の曲がメインになっていたのは大変素晴らしかったです。トリの人選に関してはどうしても気になる面があるため後でじっくり書きますが、トリ前の大胆な人選は今回もっとも良かった部分の1つに挙げられるのではないかと思います。

 ステージについては素晴らしい内容が今回も多かったですが、やはり最終的にはYOASOBIが圧倒的な出来でした。後述する制約などが無ければ、おそらくNHKも大トリで考えていたのではないかと想像します。

 

スタジオ使用および収録について

 今回の紅白で一番気になったのは、101スタジオの使い方と中継の多さです。まずは全53ステージの場所を曲順ごとに、表にしてまとめました。

出場歌手場所形態歌唱直前舞台上
新しい学校のリーダーズホールOP・トーク出場歌手全員集合
JO1ホール無し出場歌手全員集合
鈴木雅之ホール無し出場歌手全員集合
Stray Kids101トーク2組客入り
Perfume101無し客入り
すとぷりホールVTR・トークバーチャル
天童よしみ道頓堀ゲストトーク観客多数
キタニタツヤホールVTRバンドセット・アニメ映像
緑黄色社会ホールVTR・トークバンドセット・高校生77名
櫻坂46101無し客入り
純烈ホールトークQRコード映像
anoホールVTR・ゲスト有りトークダンサー多数
BE:FIRST101無し客入り
JUJUホールVTR・トークバンドセット
NiziUホール無し客席からステージ開始
LE SSERAFIMホールトーク
山内惠介浅草ゲストトーク観客多数・芸人応援
乃木坂46ホール曲紹介
郷ひろみホールVTR・トークブレイキン
milet x
MAN WITH A MISSION
101生?VTR客入り
MAN WITH A MISSION
x milet
101生?無し客入り
SEVENTEENホールトーク紙吹雪
水森かおり102トークドミノ倒し
ハマいくホールVTR・トークピアノ
大泉 洋ホールトークドライアイス・紙吹雪
(ニュース)
Mrs. GREEN APPLEホール無しバンドセット他
坂本冬美ホール無し出場歌手8名
MISAMOホールトークダンサー6名
10-FEETホールVTR・ゲストトークバンドセット
NewJeans101収録VTR・MC客入り
ディズニー企画ホールコーナー紹介・VTR
Official髭男dism101収録中継トークバンドセット・合唱映像
椎名林檎ホール曲紹介(歌唱後トーク)バンドセット
ゆずホール曲紹介・ウラトーク中継ダンサー135名
クイーン+
アダム・ランバート
アメリカ収録メッセージ映像・VTRバンドセット
三山ひろしホール年の瀬中継・ゲスト有りトークけん玉128名
星野 源虎ノ門収録中継トークバンドセット
Superflyホール曲紹介(歌唱後トーク)バンドセット
伊藤 蘭101収録中継トークバンドセット
YOSHIKIホールVTR・トークバンドセット
ポケットビスケッツ&
ブラックビスケッツ
101収録VTR客入り・バンドセット
薬師丸ひろ子101収録中継トークバンドセット
寺尾 聰ホールトークバンドセット
Ado西本願寺VTR・曲紹介(歌唱後トーク)シルエット
エレファントカシマシホールトークバンドセット
あいみょんホールVTR・ゲスト有りトークバンドセット
さだまさし両国中継トークバンドセット
石川さゆりホール曲紹介楽器・ドライアイス・紙吹雪
藤井フミヤホールトークギター
YOASOBIホールVTR・曲紹介バンドセット・ダンサー多数
福山雅治ホール年の瀬中継・トークバンドセット
MISIAホールVTR・曲紹介バンドセット・ダンサー・特注セット

 まとめるとスタジオ12組(少なくとも収録5組)、中継6組(収録2組)。つまりホールで歌ったのは52組中34組、全体の約65%です。スタジオ/中継率は第71回以降高くなっていますが、それでも前回は10組・前々回は15組。第71回でも17組止まりなので、数にすると間違いなく歴代最多。全ステージホールからの歌唱が当然だった時代を知っている立場とすれば、隔世の感があります。

 音合わせの大変さ、クオリティーの高いステージを作るという目的を考えると中継の多さはおおいに理解出来ます。特に生演奏バンドセットは本来準備だけでも相当な時間を要します。かつてはバンドを持ち込む一部アーティスト以外は原則NHKが用意する楽団の演奏で、1ステージごとの音合わせはあっても修正程度だったかと思いますが、演歌も減って事前録音メインになる中でバンド演奏主体の歌手が出場となるとやはりそうはいきません。バンドでも事前収録でテレビ出演するアーティストは少なくありませんが、理想はやはりバンドである以上生演奏であるはずです。

 今回は初めて客入りのスタジオライブを採用しましたが、これもアーティストのライブの熱狂度を伝えるにあたって非常に有効な演出です。NHKホールの紅白歌合戦は近年相当ほぐれて来たとは言え観客席の空気は普通のライブと比べて重め、特にダンスで盛り上げるアイドル性強めのアーティストにとってはスタジオの方が間違いなく持ち味を出せるように感じます。実際ウラトークのゲスト出演でもそういった発言がありました。

 このスタジオ使用は前半と後半で性格がはっきり分けられていて、前半はダンス主体の客入り生中継、後半は演出主体の収録がメインになりました。今回通しで見た感想の一つに前半と後半の落差が大き過ぎるという部分がありましたが、これはスタジオの使い方の違いが非常に大きな要因になっています。

 したがって今回のスタジオ使用はメリットが非常に多いです。今後もこの傾向は続くと思われます。それは良いのですが、ホールで見る観客からするとこの中継の多さは熱が落ちます。視聴者の立場としても、これだけあちこち切り替わる状況は見ていて落ち着きを感じなかったです。何と言いますか、紅白歌合戦というより完全に民放で放送されている年末の音楽特番を見ているような感覚でした。いや紅白歌合戦も間違いなく「年末の音楽特番」なのですが、何と言いますか、今まで見てきた紅白と違うという印象は正直感じざるを得なかったです。そこに一抹の寂しさを感じたのは事実ですが、この演出が定着するとこれが完全に「新しい紅白らしさ」になる可能性もあります。そういう意味では、次回のスタジオ活用法(さすがに使わないという選択肢はないはず)がどう進化するかが非常に大きな注目点になりそうです。

 

演歌の演出について

 演歌に何かしらのオプションがつくのはここ10年くらいずっとそうですが、いよいよ末期的症状に行き着いたというのが今回の印象です。けん玉失敗にドミノなど、普通に演歌を紅白で見れないという声が今回は例年以上に多い印象でした。というわけで今度は第67回以降における演歌の演出を振り返ります。

該当回歌手…演出内容
第67回
(2016年)
三山ひろし…けん玉の大技披露
山内惠介乃木坂46のダンスと貴公子演出
天童よしみ本田望結の踊り
市川由紀乃…初出場・家族の応援
香西かおり…大河ドラマ『真田丸』演出
福田こうへい…東京五輪音頭で出場歌手多数応援
水森かおり…巨大衣装(プロジェクションマッピング)
島津亜矢美空ひばりカバー
五木ひろしAKB48が後ろで応援
坂本冬美菅原小春の踊り
氷川きよし…熊本城から中継
石川さゆり…文楽
第68回
(2017年)
山内惠介AKB48のダンスと貴公子演出
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
丘みどり…初出場・家族の応援
市川由紀乃美空ひばりカバー
福田こうへい村田英雄カバー
天童よしみ…関西出身歌手の応援
水森かおり…千手観音ダンス・宙吊り
島津亜矢…洋楽カバー
坂本冬美…日本全国のお祭り集結
五木ひろし平尾昌晃追悼
氷川きよし…巨大宝船セットで「きよしのズンドコ節」
石川さゆり…富嶽三十六景
第69回
(2018年)
坂本冬美BLUE TOKYOの踊り
山内惠介刀剣男士の演舞
丘みどり畠山愛理の踊り
天童よしみ…YOSAKOIソーラン×ロコ・ソラーレ×筋肉体操
純烈…バーチャル銭湯ライブ
水森かおりメイガスのイリュージョン
島津亜矢中島みゆきカバー
五木ひろしDA PUMPといいね!ダンス
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
北島三郎&北島兄弟…「まつり」で出場歌手集合
氷川きよしDRUM TAOの太鼓、巨大な人形
石川さゆり布袋寅泰のギター
第70回
(2019年)
純烈DA PUMPとダンス
島津亜矢中島みゆきカバー
天童よしみMattのピアノとMatt化
山内惠介…20人の山内惠介ダンスと目からビームが出る巨大人形
坂本冬美King & Princeの和太鼓
丘みどりKis-My-Ft2の踊り
五木ひろしチコちゃん岡村隆史の乱入×筋肉体操
水森かおりメイガスのイリュージョン
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
石川さゆりオーケストラアレンジ
氷川きよし…限界突破
第71回
(2020年)
山内惠介…オーケストラスタジオから中継
水森かおり…巨大衣装×フワちゃん
純烈…リモコンボタン連打で大量紙吹雪
坂本冬美桑田佳祐の楽曲提供&口上&ビデオレター
天童よしみ少年忍者の腹筋太鼓
五木ひろし…50回記念で前半大トリ
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
石川さゆりオーケストラアレンジ
氷川きよし…限界突破
第72回
(2021年)
山内惠介フランク永井カバー
純烈…マジックハンドで握手会
天童よしみ大阪桐蔭高校吹奏楽部の演奏
水森かおり山口百恵カバー、清水寺から中継&カラオケ映像
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
細川たかし…大泉洋と一緒に歌う
坂本冬美スタジオからバーチャル映像演出
石川さゆりKREVAMIYAVIと共演
氷川きよし美空ひばりカバー
第73回
(2022年)
天童よしみ筋肉芸人2名が登場
水森かおり…歌ってる間に謎解きゲーム
山内惠介乃木坂46と一緒にきつねダンス
坂本冬美美空ひばりカバー、日本全国のお祭り集結
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
純烈ダチョウ倶楽部・有吉弘行と「白い雲のように」
氷川きよし…限界突破
石川さゆり…オーケストラアレンジ
第74回
(2023年)
天童よしみ道頓堀から中継
純烈…QRコードでNHKプラスを宣伝
山内惠介…浅草から中継、裸芸人の芸
水森かおり…歌ってる間にドミノ倒し
坂本冬美JO1BE:FIRSTの踊り
三山ひろし…けん玉大皿ギネス記録挑戦
石川さゆり…ウクライナの楽器

 さすがに紅組の大御所3人は多少なりとも歌メインになっていますが、今回の演歌組は桃組演出が物議を醸した第65回(2014年)レベルにまで退化しています。そもそもの演歌歌手が12組から7組にまで減少、ここ5年は2018年の純烈クラスに到達する歌手まで出ていない状況です。新浜レオンや辰巳ゆうとに真田ナオキなど男性はもう少しという段階の歌手も何人かいますが、女性歌手はCDセールスを見る限りで新顔の台頭はかなり苦しい状況。ただそもそも新曲を歌う演歌が第71回の冬美さんを最後に、歌メインになっていない時点で苦しいです。若手~中堅だと第70回の丘みどりがギリギリですが、これも演奏時間1分45秒という歴代トップクラスの短さでした。

 正直演歌の新曲に関してはネットの反応を見る限り、歌どころか奇抜な演出さえも求められない状況になっているような気がします。特に今回の山内惠介は現地の人こそ楽しかったという報告はありますが、個人的には歌手・芸人・ファン・視聴者全てが誰も得しない演出に見えました。芸人の応援も紅白歌合戦における風物詩の一つなので出演することに否定はしませんが、使い方という点では大きな課題が残ります。

 J-POPでも番組が絡む応援はありますが、今回のanoもチコちゃんが登場した時の関ジャニ∞にしてもステージに直接的な影響は及んでいません。そう考えると演歌ファンの方には大変心苦しいですが大多数の視聴者にとって演歌に魅力が無いと思われている、客観的に見てそういう状況にまで追い込まれています。かつてはお年寄りが聴く音楽というイメージもあった演歌ですが、今のお年寄りはグループサウンズ世代だと演歌にシフトするとは思えず、今回の出場者だとクイーン伊藤蘭さだまさしにシンパシーを感じる印象の方が強いです。水森さんや山内さんはそれぞれ現状の演歌で一番ヒットしている歌手ですが…。ドミノで歌っている姿がワイプにまで押しやられていることを考えると、もう本当に来るところまで来ている状況かもしれません。

 また7回目のギネス記録挑戦になる三山ひろしもハプニング的な形で失敗となり、ややバツの悪い結果になりました。けん玉の挑戦も近年の紅白における風物詩として定着してはいますが、このまま20回30回も続けるのは歴代のデータとしてどうなのか…という懸念もあります。この機会に少なくともけん玉ギネス記録挑戦ではなく、仮にけん玉をやるとしても何か形を変えた方がいいのではないかという気がします。

 

トリについて

 紅組はMISIAが5年連続、白組は福山雅治が4年連続。今回も双方トリに相応しいステージは見せてくれますが、さすがに記録的な長さになってワンパターンという印象は否めません。

 ただこれは実を言うと非常に難しい問題で、いざ代えると言ってもなかなか簡単に代えることは出来ません。演歌歌手がメインでトリを張っていた時は共通のオーケストラによる生演奏だったので音合わせの手間は発生せず、2000年代~2010年代のSMAPは漏れなく事前録音でした。

 現在連続でトリを担当している2人は大人数のサポート持ち込みの生演奏、MISIAは近年セットにも大きく力を入れています。今回はYOASOBIの後に年の瀬中継を挟む形でしたが、ここ3年両組トリの直前は中継のステージです。それだけ歌う前に準備に時間がかかるということで、必然的にトリで歌うアーティストは限られた存在になってきます。

 ダンス主体でSMAPクラスの国民的人気のグループは、今回出場しなかったSMILE-UP.(旧ジャニーズ事務所)にもいません(Snow Manでもこのクラスには達していないと思ってます)。そうなると必然的に生演奏が出来る大物クラスがトリに適している形になります。これでも紅組はSuperflyあいみょん椎名林檎、いざとなれば石川さゆり坂本冬美と揃っていますが、白組は百歩譲ってもゆずのみ、本来それが可能であるはずの星野源Official髭男dismがスタジオ収録主体になっている状況です。

 

ウラトーク

 今回も前回同様スタジオ使用の進行でした。MCのパンサーは特にゲストコーナーにおける向井さんの進行が上手く、三者三様の働きで良い味を出していました。ただ前半ゲスト出演が多過ぎでメインであるステージ実況がほとんど出来なかったのは大きな課題点。ゲストとのやり取りも重要なので難しい部分もありますが、もう少しそちらに目を向けられる環境を作る必要はあったと思います。これは出演者ではなく担当スタッフの問題です。

 あとは前回のチョコレートプラネットにしても今回のパンサーにしても、人柄の良さが多少抑制していると感じさせた面がありました。もっとバナナマンやサンドウィッチマンのように暴走しても良いと思います。例えば今回ゲストに出演した大泉洋はボヤキの独壇場状態になっていましたが、私としてはウラトークに関して言うとあれくらいまでやって良いと思っています。パンサーの2年連続も見たいですが、審査員・司会・歌手を経験している大泉さんを本当にウラトークMCに起用するのも個人的には一つの手かもしれません。

 

おわりに

 今回は連続テレビ小説『ブギウギ』がらみの企画が予定されていたはずで、そう考えるとこれが実現しなかったのは残念の一語に尽きます。ただスケジュールの都合を考えると致し方ない現実もあり、2024年にあらためて組まれる可能性も十分にあります。あとは旧ジャニーズ事務所の問題もおそらく昨年の今頃には想像していなかったことで、制作は例年以上に大変だったものと思われます。そう考えると試行錯誤してここまでの内容に持ってきたのは、やはり流石だったと言わざるを得ません。

 紅白歌合戦は時代とともに変容する番組で、60年前の紅白と今の紅白は曲や歌手だけでなくセットの作り方やカメラの数からして現在と全く異なります。今回K-POPの出演者が増え、スタジオでのパフォーマンスが増えたのもまた時代の移り変わりの一つと解釈できます。世帯視聴率もそうで、家族でテレビ1台の時代はとっくに過ぎていまやビデオデッキやハードディスクレコーダーが無くても見逃し配信で簡単に見られる時代。60年前の視聴率80%はあり得ない話で、現在は30%取るだけでも十分過ぎる数字という声が大勢を占めています。「蛍の光」が結果発表の前になり、優勝旗授与も無くなったりでいよいよ”歌合戦とはなんぞや”状態となっていますが、それでも日本の行事として定着している紅白歌合戦は余程のことが起こらない限りまだまだ続くのではないかと思っております。ただ今回は能登での大地震が元旦に発生、1日ズレていれば大晦日です。いずれ急遽報道番組が組まれて、紅白歌合戦そのものが中止になる年も出てくる可能性は否定できません。

 

 ティーザー&YouTube再生数からの分析記事は、5日か6日夕方頃を予定しています。ビルボードチャートの紅白効果は発表がある10日を予定していますが、14日くらいまでずれ込む可能性も高いです。第75回の紅白予想は、例年通りに8月頃から始める予定です。

 昨年は51年分の紅白歌合戦の演奏時間&原曲比較に力を入れましたが、今年は出場歌手の紅白歌合戦特集記事の追加&更新を少しずつやっていく予定です。また再生数ランキングは今年記事を作り直して完全リニューアル、今年はもしかするとこちらがメインになるかもしれません。

 それではここまで読んで頂きまして、ありがとうございました。2024年も、当サイトをよろしくお願いします。

コメント

  1. 新年明けましておめでとうございます。そして、ここまで更新していただきありがとうございました。2019年頃から拝見しており、毎年楽しみにしています。これからも頑張ってください。
    紅白の内容についてですが、音楽特番としてはどの番組よりもクオリティが高く、伊藤蘭・クイーン・YOSHIKI・『テレビが届けた名曲たち』など紅白でしか見られない企画も多く、十分に楽しめるものでした。司会も目立ちすぎず、自分が過去に見た中(20代前半なので10年ほどですが)では見やすい回に感じました。しかし、かつてないほどのスタジオ・中継・収録や韓流グループの多さは、長年の視聴者にとっては受け入れがたかったかもしれません。個人的には、これで良かったと思います。
    視聴率については、民放の音楽特番が軒並みワーストを更新し一桁となっているため、紅白についても想定内でした。しかし、見逃し配信が普及しつつあるとはいえ、地区によっては10%近く数字を落としている場所もあり、このままでは国民的番組では無くなるという危機感はあります。とはいえ、国民的な歌手や全世代が知るヒット曲はもはや存在せず、目玉のアーティストも一通り出し尽くした印象があり、さらにジャニーズの不在もあって今年は特に人選が難航したと推察します。その中で前半29.0%・後半31.9%という視聴率は健闘したとも言えます(後半30%割れも覚悟していました)。
    最後に、番組そのもののあり方についてですが、この数年で番組のロゴが変わり、優勝旗・司会の組分けが無くなるなど、急激に変わったという印象が強いです。そのせいか打ち切り論やNHK不要論まで年々増えていますが、『紅白』の看板が無くなっても大晦日の音楽特番は続いて欲しいです。民放の音楽特番も一通り視聴しましたが、予算が縮小されているのか過去の名場面や余計なVTRが多く、年々クオリティが落ちていると感じました。だからこそ、スポンサーが不要で予算が潤沢な公共放送が音楽特番を作る意義は大きいです。いずれにせよ、自分は今後の大晦日もNHKを見続けるつもりです。

  2. Kerseeさん初めまして
    自分は過去にKerseeさんの紅白座談会に参加していた者です(現在名前を変えましたが)
    Kerseeさんの紅白レビューやブログを楽しみに待ってました
    そして今回のレビューやまとめ記事も充分に考察されており納得出来る内容でさすが紅白歌合戦を知り尽くしていると思いました
    自分も最近や特に力を入れて音楽番組を見るようにしていたのですが今年の紅白も個人的にはクオリティやステージの良さという点では前回と同じように維持されていたと思いました
    ですが、今回の最低視聴率更新の報道や紅白歌合戦の変革において気になるところも出てきました
    今回シークレットゲストが出てこなかった点では残念の一言につきますが、本来の歌合戦の歌手を活かす(恐らくそれが本来のあり方)という点では充分であるかなと思いました
    特に近年はゲストに頼りきりになっていたと思う部分もありますので今回は本来の歌合戦出場歌手を充分に活かしていたと感じましたがサザンや中森明菜等が出演しなかったことに関して残念がある人もいるのも事実かなと思います
    そして特に気になる点に関しては今年のテーマ「ボーダレス」についてです
    個人的にはこのテーマに関する意見もKerseeさんから聞きたかったなと思うのでもし機会ありましたらそちらに関しても言及していただけたらなと思います…個人的には良く言えば多様性に富んだ紅白、悪く言えばまぜこぜで統一性のなかったと言える可能性があるのでは無いかと思いました…少なくとも前回のテーマに比べると少し印象度が落ちてしまったかもしれないと思いました
    最後に長くなりましたが今年の紅白はある意味これからの紅白を作る点でも重要になるかと思うのでこれからも自分は紅白を見ていきます!またKerseeさんのレビューや過去の出場者歌手に関する記事も楽しみにブログを見ていきます!また今年もよろしくお願いします!

  3. 今回の紅白の更新もありがとうございます。

    まぁまず今回視聴率は過去最低だろうとは思っていました。
    確かに過去最低でしたが、どちらも30%を割るのではとは思ってましたので結構健闘はしたほうなのではと思います。
    以前にも言った通り、今はもう家族そろってテレビを見る大晦日ではありません。地上波テレビ以外の選択肢はもはや多様化されています。
    そうなってしまえば最初からテレビなんて観ない人だって一定数はいるでしょうし、視聴率の回復はもう難しいのかもしれません。

    内容については決して悪くない、10-FEETやYOSHIKI・YOASOBIのステージに至っては近年のなかでも屈指の良さでした。
    とはいえ「歌合戦」が見たいのにパフォーマンス系ばっかりと指摘する声が多いのも確かです。
    現状、若者人気の高いアーティストは殆どがダンスグループであり、紅白の黄金時代を知る人からしたら歌で勝負していないと思われてしまうのは無理もありません。
    それが結局紅白歌合戦の、そしてNHKへの不信感というのに繋がってるのかもれませんね。
    だからこそ「ボーダレス」というテーマがあるべきなんでしょう。
    認識のボーダーを取っ払らい食わず嫌いせずに楽しんで観る。それが大事なのかもしれません。

    今年一年間も興味深い記事を楽しみにしています。ありがとうございました。

  4. 更新お疲れ様です。カーシーさんの統括記事を読むまでが紅白の楽しみだと思っています。

    今年の紅白、個人的には楽しめましたが消化不良感も否めないです。

    1番の要因はサプライズ感の不足かと考えます。ここ数年は当日に未発表楽曲の披露や、直前になっての大物出演の発表などサプライズが多かった印象ですが、それに慣れた弊害か今年の紅白は「何も無いんだ‥」とやや拍子抜けの印象を抱きました。

    あとは特別企画の位置付けも、最近の紅白の「特別」に重点を置いたものより、2007-2008年辺りと同じく「企画」に重点を置いたものが多く、何か消化不良を感じました。

    これは寧ろ悪いことではなく、最近の紅白がサプライズや特別感を使い過ぎた反動だと思います。

    (視聴率は下がるでしょうが)次回以降はいっそ特別企画を無くして、正規の出演者だけで時間をフルに使う原点回帰を狙ってもいいかもしれないなと思いました。

  5. 更新お疲れさまでした。紅白の記事のコメントとしてふさわしくないかとも思いましたが、せめて一連の更新が終わったタイミングで、存在だけでも知っておいてもらいたいと思い紹介させていただきます。

    同時刻(紅白でいうと郷ひろみさん〜ポケビ、ブラビあたり)に行われたSnow ManのYouTube生配信Liveのアーカイブが残されています。彼らが紅白の裏で2023年の締めくくりとして発信したパフォーマンスを、ぜひ観てみていただきたいです。(全体で3:52ありますが、第1部1:50、休憩を挟んで第2部0:32です)
    https://www.youtube.com/live/8HpnZ6YAAqg?si=IUzPJWASN179nmDF

    ちなみにですが、昨日のテレビ番組で、佐久間さんと加藤諒さんが、2001年の紅白にミニモニ。のバックダンサーとして隣同士の位置で出演していたという話をしていました。

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