紅白歌合戦・青江三奈の軌跡~ステージ編(1966~1975)~

第17回(1966年)「恍惚のブルース」

ステージ

作詞:川内康範 作曲:浜口庫之助
前歌手:岸 洋子、城 卓矢
後歌手:井沢八郎、三沢あけみ

曲紹介:ペギー葉山(紅組司会)

 「さて皆さま。こういう状態に男性がなったらそれこそみっともなくて見てられませんよ。女性だからいいんです。「恍惚のブルース」。紅白初出場の青江三奈さんに皆さまご声援ください!どうぞ!」。

 ペギー葉山の曲紹介で舞台袖から登場、ドレス姿で歌います。現存している映像が白黒なので衣装の色は分かりませんが、髪はまだ茶色や金色ではない様子。1番と3番をムードたっぷりに歌います。初出場・まだ20代でデビュー1年目ですが、貫禄は既に十分でした。

応援など

 あいうえお順で登場する入場行進、青江さんは出場回全て一番早い音なので毎回先頭で一番目立っていました。両司会者に続く形で登場、ボディラインが見えるドレス姿です。同じく当時白組先頭の常連、アイ・ジョージと軽く挨拶。

 後半加山雄三が歌った後、ペギー葉山が電報を紹介する場面で朝丘雪路と一緒に登場。北海道のファンの方から届いた「ソーランソーラン、チョウシニノッテ。アゲシオドキダ、オシテユケウタイマクレ」の電報を代わりに読み上げています。

 この年はエンディングも中心から端に向かってあいうえお順の立ち位置。「蛍の光」ではペギー葉山が優勝旗を掲げる後ろで、青江さんだけが1人映り込むシーンがありました。

 

第19回(1968年)「伊勢佐木町ブルース」

ステージ

作詞:川内康範 作曲:鈴木庸一
前歌手:江利チエミ、アイ・ジョージ
後歌手:美川憲一、中村晃子

曲紹介:水前寺清子(紅組司会)

 「今度はでございます。男性軍の皆さん。この歌を聴いてですよ。女性軍へ行きたいなんて絶対ダメだからね、九ちゃん。青江三奈さん、「伊勢佐木町ブルース」。どうぞ!」。

 中央の階段から登場。本来なら必殺のため息で決めたい所だったと思いますが、紅白名言集解説・71~ため息がNHKで放送できなかった時代~でも書いた通りカズーの音で代用となります。音は2010年FIFAワールドカップ応援で多用されたブブゼラに近いイメージと考えて良いでしょうか。いずれにしても、代わりにならないということは何となく分かってもらえるのではないかと思います。アイ・ジョージ「夜のストレンジャー」と美川憲一「釧路の夜」に挟まれた夜のイメージ、照明はほとんど真っ暗で青江さんのみにスポットライトが当たる演出。そのためカズーを吹いていたのは紅組歌手陣は佐良直美九重佑三子までは分かりますが、それ以外は白黒・画質悪い・暗いという状態なのでほとんど判別不可能です。

 ただこの画質の中でも、青江さんの衣装にスパンコールが光っていることはよく分かります。肩の出たドレスはセクシーという言葉もしっくり来ますが、グラビアとは全く異なる大人の香り。ハスキーボイスなので、余計にその形容がしっくり来ます。唯一かわいらしかった部分と言えば、イントロで小走りに立ち位置へ向かうシーンだったでしょうか。代名詞のため息は生憎の状況でしたが、笑顔でダイナミックに歌うパフォーマンスは普段と変わらずでした。

応援など

 この年もあいうえお順の先頭で登場。プラカードもあり、入場行進では司会の水前寺清子が掲げていましたがセレモニーでは青江さんに託されていました。

 三沢あけみ「木曽節」の応援にコーラスで参加。チータを筆頭に着物姿で…と言いたいところでしたが、都はるみ島倉千代子扇ひろ子が和服の中で青江さんは1人だけドレス姿でした。

 この時期はまだ後年のように衣装替えは多くなく、歌の衣装でそのまま終盤まで通します。歌手席だけでなく水前寺清子越路吹雪のステージ応援など、2年前と比べて映る場面はかなり多めでした。

 

第20回(1969年)「池袋の夜」

ステージ

作詞:吉川静夫 作曲:渡久地政信
前歌手:(オープニング)
後歌手:布施 明、いしだあゆみ
曲紹介:伊東ゆかり(紅組司会)

 この年はジャンケンで先攻後攻を決定、結果は伊東ゆかりの勝ちで紅組先攻。ただ第31回(1980年)のクジで先攻を決める演出と異なり、こちらはお互い出す順番まであらかじめ台本通りではないかと思われます。総合司会・進行役の宮田輝が若さを強調する中、伊東さんが最初の曲紹介というところですが、「誰が見ても一番最初はこの人という人。「あ」の字です。青江三奈さん、どうぞ!」で演奏開始。この年総合司会・宮田さんは伊東ゆかり・坂本九の両司会を支える役割ですが、前年と比べても些か強引さが目立つ進行でした。伊東さんの曲紹介はイントロに乗せる形。「それでは女性軍・紅組のトップバッターを送りまして、青江三奈さん「池袋の夜」です」、階段から登場した青江さんはセット中段にいる伊東さんと握手。そのまま歌の立ち位置までエスコートされる演出でした。

 カラーでの放送ですが、この年も現存している映像は白黒。白っぽい衣装に見えますが、もしかすると淡い色の衣装かもしれません。首を巻く生地に無数のアクセサリーを装着、かなり予算を投じたと思われる衣装です。歌は若干速めのテンポで2コーラス。トップバッターらしい勢いも感じますが、本来トリで歌う予定だったことはやはり特筆すべき事項ではないかとも思われます。

応援など

 この年も紅組司会・伊東ゆかりが持つハート型プラカードをステージで代わりに持つ展開。スパンコールが光るドレス姿ですが、出番が一段落した後急いで裏に回りステージ衣装に着替えます。その間舞台ではザ・フラッシャーズなどのダンスに「黒ネコのタンゴ」替え唄で応援合戦、審査員紹介などがありました。

 トップバッターで歌唱後は、そのままの衣装で前半終了まで歌手席で応援。後半はしばらく裏に控えた後、終盤で歌手席復帰。他の年ではショーコーナー以外一切見られない着物姿で、エンディングまで出演しました。

 

第21回(1970年)「国際線待合室」

ステージ

作詞:千坊さかえ 作曲:花 礼二
前歌手:伊東ゆかり、北島三郎
後歌手:森 進一、美空ひばり
曲紹介:美空ひばり(紅組司会)

 万国博覧会が開催された1970年、「国際線待合室」は大阪国際空港を舞台にしたご当地ソングでした。もっとも伊丹市~豊中市の住宅街が周辺にあるため騒音問題も絶えず、結果1994年以降は国際空港としての役割を関西国際空港に譲ります。もっとも国内線に関しては、現在も基幹空港として多くの便が発着しています。

 この年から曲名テロップには作詞者・作曲者のテロップが付記されるようになりました。作曲の花礼二とは長い交際関係で知られています。「国際線待合室」は特に副題もないノーマルな読み方ですが、上に小さな文字で「インターナショナル・ロビー」の文字が付加されています。これは当時リリースされたレコードジャケットでも同様でした。キネコ映像のみが残り、全編の再放送が過去に一度もない第21回NHK紅白歌合戦ですが、逝去して間もなく編成された追悼番組などで歌唱時の映像は放送されています。もう既に髪の色は黒ではない色に染めていました。堂々の2コーラス、美空ひばりがいなければ間違いなくトリだったと思われるトリ前の曲順でした。

 

第22回(1971年)「長崎未練」

ステージ

作詞:吉川静夫 作曲:渡久地政信
前歌手:加藤登紀子、デューク・エイセス
後歌手:五木ひろし、小柳ルミ子
曲紹介:水前寺清子(紅組司会)

 レコードセールスが急低下した年ではありますが、それにしても7番手とはえらく中途半端な曲順です。歌唱曲は「長崎未練」、長崎を舞台にした曲は「長崎ブルース」があるものの、それよりも早く紅白で歌唱する形となりました。

 緑色の光るドレスで、ムードたっぷりに2コーラス歌唱。元々はクラブ歌手でキャバレーの背景がしっくり来る歌手ですが、この年は階段に座るスクールメイツの面々が体を揺らしながら聴く演出。ちょっと歌と不釣り合いにも見えます。なお第21回・第22回は全編映像をチェック出来ていないため、ステージ以外の出演は省略とします。

 

第23回(1972年)「日本列島・みなと町」

ステージ

作詞:吉川静夫 作曲:渡久地政信
前歌手:ちあきなおみ、五木ひろし
後歌手:布施 明、水前寺清子
曲紹介:佐良直美(紅組司会)

 「次は赤どすか、白どすか。どっちでもおへん、青江~。青江三奈さん、「日本列島・みなと町」。観光地のパネルみたいなセットの後ろで佐良さんが紹介。実はこの時着物への着替えが間に合わず、急遽この演出になったという本人の話が伝わっています。

 ピンクのドレスにギラギラのスパンコール、花があるというより光り輝いて眩しいという表現の方がしっくりくる衣装です。釧路・新潟・東京・沖縄と各地の港町を歌うご当地ソングですが、ここでは2番の新潟がカットされています。トリ2つ前という遅い曲順が大変しっくり来る、聴かせるステージでした。

応援など

 オープニングは黄緑色のドレスで登場。相変わらずの先頭で中央部の立ち位置、司会者による選手宣誓の後ろでもバッチリ映っています。

 ショーコーナーなど変わった場面での出番はありませんが、紅組6組目・キャプテン佐良直美のステージを応援する頃には衣装を変えていました。こちらもスパンコールが一際光る派手なドレスです。その直後、応援合戦では茨城県常陸太田市・天神ばやしの祭りに参加。上にハッピを着て、赤い布を両手でひたすら上下に動かしていました。

 歌った後、紅組応援団長を担当した水前寺清子のステージでは間奏で頬にキス。同時期にブレイクした2人は、長年の親友でもありました。

 

第24回(1973年)「長崎ブルース」

ステージ

作詞:吉川静夫 作曲:渡久地政信
前歌手:佐良直美、フランク永井
後歌手:森 進一、(中間審査)、渡辺はま子
曲紹介:水前寺清子(紅組司会)

 「長崎ブルース」は1968年7月の発売で翌1969年オリコン年間ランキング10位。「伊勢佐木町ブルース」と「池袋の夜」の間に大ヒットした曲、というのが分かりやすい説明になると思われます。そんな国民的ヒットに挟まれている状態なので紅白では第19回・第20回ともに歌えず。過去曲主体となった1973年にようやく紅白初歌唱という形になりました。

 「なんですね、有楽町大変結構でございます。でもまあ節電のためになんとなく寂しいなぁという感じも致しますけれども。そこへいきますと、オランダ坂・天主堂・そして平和公園、いつもと変わらぬ美しい佇まいを見せてくれております。長崎の皆さんそうですね、「長崎ブルース」青江三奈さんです」、直前に歌われた「有楽町で逢いましょう」を受けての曲紹介です。1973年特にこの時期はオイルショックの真っ只中、各企業に節電が言い渡され、深夜放送まで休止となる状況でした。

 紫色の生地に金色の蝶が舞う衣装、ギラギラの光こそ少ないものの華やかであることに変わりありません。ただ髪の色はこの年やや黒色寄りで金髪という印象とは異なります。2コーラス、時間にすると2分1秒でかなり短めでした。

 なお間奏で全国にいる一般審査員の中から、佐賀県有明町(現・白石町)にある干拓地の農家からの中継が入ります。40人近くが1つのテレビの前に集まって、紅白歌合戦を楽しんでいる光景が映っていました。

応援など

 この年は客席ではなくセットの後ろから登場する入場行進。先頭が端に向かって一番後ろが中心に集まる立ち位置なので、珍しくオープニングではあまり目立っていません。この年も光沢が入った衣装で、相変わらずステージ以外もきらびやかで派手です。

 応援演出のない回だったので、この年はエンディングでもう1着着替えるのみです。ジャケットのような衣装を着るのは珍しいですが、光沢が入っているのは相変わらずでした。

 

第25回(1974年)「銀座ブルー・ナイト」

ステージ

作詞:橋本 淳 作曲:吉田 正
前歌手:いしだあゆみ、春日八郎
後歌手:フランク永井、由紀さおり

曲紹介:佐良直美(紅組司会)

 「夜の歌を歌わせたらこの方の右に出る者はまず少ないでしょう。一連のご当地ソングで数々のヒットを生み出しました。今年は「銀座ブルー・ナイト」、青江三奈さんです」。イントロに乗せた曲紹介、夜をイメージした照明演出と合わせてとても絵になっています。

 この年は金色の髪色、さらにボリューミーに巻いて普段と大きく異なる髪型になっています。テレビ実況にも髪型を変えたことが言及されました。1番は紅組側のスペースで歌唱、2コーラス目の3番を歌っている間に中央へ移動。鮮やかな赤色の衣装もよく似合っていて、動きも歌声もしなやかでダイナミック。魅せる・聴かせるを両立するステージで、歌の魅力も十二分に伝わる内容でした。

応援など

 この年に変わった髪型はオープニングの時点でセットされています。2年前とは異なる柄ですが、同じ黄緑色の衣装で登場。

 佐良直美梓みちよの応援でも同じ衣装ですが、中盤の餅つきでは淡い黄色のドレスに着替えています。ラストは歌と同じ格好で参加、この年の衣装は3着でした。

 

第26回(1975年)「神戸北ホテル」

ステージ

作詞:橋本 淳 作曲:吉田 正
前歌手:アグネス・チャン、フォーリーブス
後歌手:内山田洋とクール・ファイブ、伊東ゆかり

曲紹介:佐良直美(紅組司会)

 「デビュー10周年のリサイタルも大成功。都会演歌の第一人者・青江三奈さん。伊勢佐木町・池袋・長崎・銀座、そして今年は神戸にやってまいりました。「神戸北ホテル」」

 やや紫寄りのピンク衣装、生地に散りばめられている光り物がこの年も多めです。大きな花の柄もインパクト十分。「中の島ブルース」とのご当地ソング対決ですが、曲順は中盤で他の回と比較してかなり早め。なお髪型は2年前までと同様に戻ってます。

応援など

 薄い青緑色のドレスで登場するオープニング。この年も舞台中央の立ち位置、他の歌手と比べても映り込むシーンは多いです。

 ラインダンスがこの年から本格的に始まりますが、もう青江さんはこの時点で完全にベテランなので参加はしていません。代わりにこの少し後の森山良子「歌ってよ夕陽の歌を」で他の紅組歌手と応援、珍しいスーツ姿での登場でした。

 三波先生の「おまんた囃子」を挟んですぐ紅組の神輿応援に参加、もっとも法被を上に羽織るだけなので着替えの手間はありません。青江さん他のベテランは提灯や幟を持って盛り上げる役、大きな神輿を担ぐのは若手アイドル歌手の担当でした。

 ラストはセクシーなドレスで登場。着物姿のアグネス・チャンにマイクを向けて「蛍の光」を歌う姿が映りました。白いファーまで仕込んでいて、やはり派手です。

 

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