紅白歌合戦・安室奈美恵の軌跡~データ&エピソード編~

 今回は2018年に惜しまれつつ引退した、安室奈美恵の紅白史を記事にします。データ&エピソード編と、全10回のステージ編2記事に分けて書いていきます。

 初出場は第46回(1995年)、ミリオンセラーを記録したのは1997年までの3年ですがこの短期間に多くの伝説を作りました。結婚から復帰以降はそれ以前とまた違う形でトップアーティストに君臨。紅白歌合戦の出場は第54回(2003年)までの9年連続でしたが、アーティスト史としてはむしろこれ以降が本番という印象があります。2000年代後半以降はテレビの歌番組出演さえ無くなりましたが、それだけに引退直前の第68回(2017年)は貴重な出演でした。

安室奈美恵の紅白歌合戦エピソード

初出演は1995年ではなく1993年

 安室さんの芸能界デビューは1992年、SUPER MONKEY’Sのメンバーとしてでした。シングル「恋のキュート・ビート/ミスターU.S.A.」でCDデビューしたのは1992年9月、翌年4月からはNHKの新しい音楽番組『POP JAM ’93』にレギュラー出演します。

 『ステージ101』のヤング101や『レッツゴーヤング』のサンデーズに近い流れで、彼女たちもバックダンサーとして紅白歌合戦に出演します。登場したステージは森口博子「ホイッスル」。画面左から見て2番目の立ち位置で、早替えのため縦一列になるフォーメーションでは一番前。既にグループではメインボーカルを多く担当、他の3人より映る場面も多めですが、それでも2年後はまだしも4年後の光景を想像できた人はほとんど居なかったのではないかと思われます。

 

ユーロビートから小室哲哉プロデュースで時の人に

 ユーロビートカバーの「TRY ME ~私を信じて~」が1995年初頭に大ヒット、そこから「太陽のSEASON」「Stop the music」とヒット連発。おそらくこの時点でほぼ紅白初出場決定という状況でしたが、さらなるヒットを記録したのは秋以降。東芝EMIからソロでavex traxにレーベル移籍してからでした。

 小室哲哉プロデュース最初の作品は「Body Feels EXIT」。斬新な構成と洗練されたサウンドで早々にグループ時代の最大CDセールスを超えます。続く「Chase the Chance」は初のミリオンセラーを記録。紅白歌合戦初出場、多くのヒット曲があった中で選ばれたのは当時の最新作でもあったこの曲でした。

 1996年になるとその勢いは更に加速。「Don’t wanna cry」「You’re my sunshine」「a walk in the park」の3作がミリオンセラー、さらにアルバム『SWEET 19 BLUES』は300万枚以上の売上を記録。大晦日には日本レコード大賞まで受賞。当日は赤坂BLITZでレコ大受賞後すぐ移動して、21時35分に渋谷のNHKホールで歌うというスケジュールでした。ファッションにもおおいに注目が集まり、”アムラー”という言葉が流行語になったのもこの年です。

 

1990年代紅白歌合戦唯一のJ-POPでトリ~華麗な復活

 1997年、「CAN YOU CELEBRATE?」は月9ドラマ『バージンロード』主題歌として自身最大のセールスを記録。オリコン年間ランキングでは2位に50万枚以上の差をつける圧倒的傑出度で堂々の1位でしたが、この年の安室さんの凄さはセールスだけに留まりません。

 10月22日、TRFのダンサー・SAMと電撃的な結婚発表。さらに妊娠中であることも公表、年末まで芸能界は彼女の話題で持ちきりでした。女性ソロ歌手としての記録を次々と更新する活躍、年末の各音楽特番では軒並みトリでの歌唱。そのまま紅白歌合戦でも紅組トリで歌う運びとなりました。

 20歳3ヶ月でのトリは第29回(1978年)・山口百恵に次ぐ歴代2位の若さで第8回(1957年)・美空ひばりより4ヶ月下(学年的には3人とも同い年)。演歌・ベテランが優遇される傾向にあった1990年代において、20代前半でのトリ・J-POPでのトリはこれが唯一。6分台の長い曲であったことも理由としてありますが、4分58秒の演奏時間はこの年のステージ最長記録。記憶は当然として、記録としても歴代の紅白史上に残るトピックスの多いステージとなりました。

 妊娠・出産を経て活動再開最初のステージも紅白歌合戦。1998年、2年連続の「CAN YOU CELEBRATE?」はトリ前まで出番を引っ張る曲順でした。階段からステージに降りて客席から大きな拍手、それに感激して思わず泣いてしまった瞬間は紅白歌合戦史上に残る名場面です。この時の瞬間最高視聴率は関東地方ビデオリサーチ調べで64.9%、平成の全ステージで最も高い数字を記録しています。

 

やがてTKプロデュースから離れ独自のダンス路線へ

 2001年からは小室哲哉プロデュースを離れ、セルフプロデュースに入ります。紅白歌合戦出場は「Say the word」「Wishing On The Same Star」「SO CRAZY」と続きますが、同時にステージとオープニング・エンディング以外での出演が無くなります。1990年代はバラエティ番組や歌番組の出演も多数ありましたが、結婚後前者はほぼ無し、後者も段階的に減っていきます。また21世紀当初は先進的な音楽に世間がついていけなかった部分もあり、CDセールス低下のみを持ってヒットしなくなったと評される記事もよく見かけました。

 「ALL FOR YOU」がドラマ主題歌でヒットした2004年、連続出場していた紅白歌合戦をついに辞退します。コンスタントな音楽番組出演も2006年が最後、マキシシングル『60s70s80s』が好セールスを記録した2008年にはもうテレビ出演ほぼ一切無しでライブ中心の音楽活動になっていました。その一方で同年代前後の女性中心から大いなる支持を獲得、その強固さはTKプロデュースの時以上では無かったかと思われます。

 

 

歌手活動引退、その前に最後の紅白歌合戦出演

 リオデジャネイロオリンピックのNHK中継テーマソング「Hero」を歌った2016年も紅白出場が期待されましたがやはり辞退、ただその翌年の引退発表も世間にとっては青天の霹靂、驚きの出来事でした。それに際して日本テレビとNHKでは特集番組が組まれ、紅白歌合戦も12月19日に特別出演が決定します。

 紅白最後の曲として披露された「Hero」は意外にも3分台の短さでしたが、VTRや歌前トークで約6分。合わせて10分近い時間が用意されました。両組トリ前にあたる曲順、出番を引っ張るという意味では第48回・第49回とも共通しています。世帯瞬間視聴率がもっとも高いステージだったことも、同様でした。

 

安室奈美恵の紅白データ~10回分のまとめ

出場回
年齢
歌唱曲作詞者
作曲者
発売日曲順主なデータ主な受賞他の発売曲
第46回
(1995年)
18歳
Chase the Chance小室哲哉、
前田たかひろ
小室哲哉
1995/12/4紅前半5/101996年オリコン年間10位・TRY ME ~私を信じて~
・太陽のSEASON
・Body Feels EXIT
第47回
(1996年)
19歳
Don’t wanna cry小室哲哉、
前田たかひろ
小室哲哉
1996/3/13紅後半トップ1996年オリコン年間9位・日本レコード大賞・You’re my sunshine
・SWEET 19 BLUES
・a walk in the park
第48回
(1997年)
20歳
CAN YOU
CELEBRATE?
小室哲哉
小室哲哉
1997/2/19紅組トリ1997年オリコン年間1位・日本レコード大賞・How to be a Girl
・Dreaming I was dreaming
第49回
(1998年)
21歳
CAN YOU
CELEBRATE?
小室哲哉
小室哲哉
(2回目)紅組トリ前1998年オリコン年間54位・I HAVE NEVER SEEN
第50回
(1999年)
22歳
RESPECT the
POWER OF LOVE
小室哲哉
小室哲哉
1999/3/17紅後半3/141999年オリコン年間40位・SOMETHING ‘BOUT THE KISS
第51回
(2000年)
23歳
NEVER END小室哲哉
小室哲哉
2000/7/12紅組トリ2つ前2000年オリコン年間32位・日本レコード大賞特別賞・LOVE 2000
・PLEASE SMILE AGAIN
第52回
(2001年)
24歳
Say the wordNamie Amuro
R. Mainberg,
T. Johansson
2001/8/8後半5/142001年オリコン年間109位・think of me
第53回
(2002年)
25歳
Wishing On
The Same Star
Dian Warren
Dian Warren
2002/9/11紅22/252002年オリコン年間150位・I WILL
第54回
(2003年)
26歳
SO CRAZYMichico, TIGER
Full Force &
Jennifer “JJ” Jhonson
2003/10/16紅前半トリ2003年オリコン年間264位・shine more
・Put ‘Em Up
第68回
(2017年)
40歳
Hero今井了介
今井了介
2016/7/27特別出演2016年ビルボード年間29位・Just You and I
・Finally

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