先月第14回(1963年)紅白歌合戦の本編レビューをアップしましたが、今回も同様に第25回(1974年)紅白歌合戦について書きます。
1990年代から2000年代前半まで、NHKBS 2で12月末に『想い出の紅白歌合戦』と題して、過去(主に昭和)の紅白歌合戦放送が恒例になっていました。その中で、私が一番最初に過去の紅白を録画して何度も見始めた紅白はこの第25回。というわけで、自分としては昭和の中でも特に思い入れが深い紅白です。また2019年12月に、この年初めて白組司会を務めた山川静夫アナが『私の「紅白歌合戦」物語』という著書が出版されています。特にこの第25回に関しては裏話だけでなく、誌上放送として当時のやり取りもほぼ全て紹介されています。佐良直美さんや由紀さおりさんとの対談もあるので、特に昭和の紅白ファンにとっては必須アイテムではないかと思います。
今回もまず本番前に出場歌手発表があった日という体で記事を書く形から始めます。この年の発表は11月20日で、紅組・白組司会の発表も同日でした。なお年齢ですが、可能な限り当時のプロフィールでいきます。つまり言うと、サバ読んでた人もいるので…。
紅組司会&出場歌手
紅組司会:佐良直美
前回はチータが担当した紅組司会、今回は佐良さんが第23回以来2年ぶり2回目の担当。ここ数年はヒット曲が出なくなっているので、歌手としては落選も考えていてヨーロッパへ逃避することも考えていたようですが、いざ司会が決まってのコメントは「山あり川ありの相手で…」「持ち前の色気で…」という具合。このテンポの良さで、2年前は見事紅組を勝利に導きました。紅組3連勝達成は実現できるのでしょうか。
島倉千代子(18年連続18回目/第8回/1955/36)
美空ひばりお嬢が紅白を去ってはや2年。前回「からたち日記」のトリは見事なステージでした。順当なら今年もトリ、場合によっては「襟裳岬」で同名異曲対決もありそうですが、果たして。
ザ・ピーナッツ(16年連続16回目/第10回/1959/33)
デビュー以来ずっと連続出場を続ける大ベテラン。今年も貫禄のステージを見せてくれそうです。
梓みちよ(5年ぶり8回目/第14回/1962/31)
今年は「二人でお酒を」が大ヒット、見事な紅白返り咲き。胡座をかいて歌うというパフォーマンスも話題になりましたが、紅白でもやはりこのスタイルを貫くのでしょうか。
水前寺清子(10年連続10回目/第16回/1963/29)
もう紅白歌合戦、紅組には欠かすことの出来ない存在。今回司会ではありませんが、佐良キャプテンを支える重要な役割として君臨することは間違いないでしょう。
都はるみ(10年連続10回目/第16回/1964/26)
「アンコ椿は恋の花」でデビューしたのがもう10年前、月日が経つのは早いです。ここ最近国民的ヒットはないですが、まだまだ連続出場して再び大ヒットを飛ばす予感もありあり。
青江三奈(7年連続8回目/第17回/1966/29)
安定した人気で連続出場。ヒットに関しては若干世代交代し始めた感もありますが…。
佐良直美(8年連続8回目/第18回/1967/29)
上述した通り、今回は紅組司会と兼任。2年前は白組司会の宮田輝をステージに引っ張り出していましたが、相手が代わった今回はどうでしょうか。
山本リンダ(3年連続4回目/第18回/1966/23)
「どうにもとまらない」「狙いうち」と比べて随分勢いが落ちた印象のある年でしたが、なんとか連続出場。
いしだあゆみ(6年連続6回目/第20回/1964/26)
落ち着いた雰囲気で聴かせる実力派、外せない存在です。
由紀さおり(6年連続6回目/第20回/1965/26)
「挽歌」がヒット中。おそらく紅白でも歌うものと思われます。
森山良子(2年ぶり4回目/第20回/1967/26)
2年ぶりの紅白復帰。前回と、出産を控えた第22回は不出場なので飛び飛びの出場という形。
和田アキ子(5年連続5回目/第21回/1968/24)
20歳上の三波伸介と互角に張り合う前回の応援団長としての活躍は、本当に見事でした。もちろんパワフルな歌声にも期待。
ちあきなおみ(5年連続5回目/第21回/1969/27)
体調不良で休止した期間もありましたが、見事に復帰。もちろん紅白も連続出場。
小柳ルミ子(4年連続4回目/第22回/1971/22)
ルックスも歌も少しずつ大人っぽくなってきました。「冬の駅」が現在大ヒット中。
南 沙織(4年連続4回目/第22回/1971/20)
過去3年間と比較して今年は大ヒットという形ではないですが、根強い人気。当然の連続出場。
天地真理(3年連続3回目/第23回/1971/23)
高1トリオの出現でアイドルとしての人気は少し落ち着きました。それでも「想い出のセレナーデ」はこれまでにないタイプのバラードでヒットしています。
八代亜紀(2年連続2回目/第24回/1971/24)
「しのび恋」「愛ひとすじ」、そして最新曲「愛の執念」もヒット中。女性演歌では間違いなく最も勢いのある人でしょう。
チェリッシュ(2年連続2回目/第24回/1971/23~25)
引き続き「恋の風車」などがヒットして連続出場。つい数年前まで何組かいた男女デュオの人気は、気がつけばチェリッシュにほとんど集約されたような印象もあります。
アグネス・チャン(2年連続2回目/第24回/1972/19)
今年も「星に願いを」「ポケットいっぱいの秘密」などがヒット。当然の連続出場です。
森 昌子(2年連続2回目/第24回/1972/16)
レコードデビューも紅白出場も1年早い高1トリオ、今回で3人揃い踏み。
ペドロ&カプリシャス(初出場/第25回/1971/25?~??)
1971年10月にメジャーデビュー。そのシングル「別れの朝」大ヒットで一気に知名度を上げたフォークグループ。当時のボーカルは前野曜子でしたが、1973年にボーカルが高橋まりに交代後のシングル「ジョニイへの伝言」や「五番街のマリーへ」もヒット。今年発売の曲はあまりヒットしていないので、その点ではやや意外な初出場という印象もあります。ですが昨年の2曲は間違いなくヒットしていて、なおかつ名曲。今回出場歌手の枠が各3組ずつ増えた影響も、もしかするとあったでしょうか。
あべ静江(初出場/第25回/1973/23)
1973年「コーヒーショップで」でデビュー。レコ大新人賞も受賞して、続く「みずいろの手紙」もヒットしましたが惜しくも紅白には出られず。1年経って堂々の初出場という形になりました。今年は「突然の愛」「透きとおった哀しみ」「秋日和」もヒットしていますが、どちらかと言うと昨年ヒットした曲の方で見たいという気持ちもあります。選曲が少し難しそうです。
小坂明子(初出場/第25回/1973/17)
1973年のポプコン・世界歌謡祭で「あなた」がグランプリ受賞。その曲でレコードデビューするとたちまち大ヒット。この1974年全体で見てもトップクラスのレコード売上で、堂々の紅白初出場になりました。ピアノを弾きながら歌うステージは、よく考えると過去の紅白で一度もありません。
桜田淳子(初出場/第25回/1973/16)
『スター誕生!』グランプリをきっかけに1973年2月「天使も夢みる」でデビュー。「わたしの青い鳥」ではレコ大の最優秀新人賞を受賞しました。その期待通り今年もヒットを連発。花の中3トリオと呼ばれ始めたのは昨年のことですが、今年は花の高1トリオとして3人揃っての出場となります。
山口百恵(初出場/第25回/1973/15)
森昌子、桜田淳子と同様こちらも『スター誕生!』きっかけのデビュー。「としごろ」「青い果実」から始まり、今年は「ひと夏の経験」「ちっぽけな感傷」という具合で少し大人びた路線が特徴的。レコードが発売されるたびに伸びる売上は、もしかすると3人の中でもっとも伸びが期待できる存在かもしれません。
主な不出場歌手(紅組)
麻丘めぐみ
前回出場。怪我のため活動休止期間がありましたが復帰済。昨年の左ききほどではないですが今年も「ときめき」「白い部屋」「悲しみのシーズン」はそこそこヒットしてます。路線変更の影響があったのかもしれないですが、少し不可解な印象もあります。ボーダーライン上でもないらしいので…。
欧陽菲菲
前回出場。今年発売の曲がオリコン100位以内に入らなくなりました。
朱里エイコ
前回出場。こちらも前回歌った「ジェット最終便」を最後にオリコン100位以内に入らず。
金井克子
前回出場。「波止場エレジー」は全くヒットしていなかった訳ではないですが、結果的に選ばれず。第19回・第20回は出場歌手に入らなくてもダンスで出演していましたが、もうそういう時代でもなく…。
藤 圭子
「京都ブルース」がそれなりにヒットしていましたが、2年連続で届かず。そもそも前回も「明日から私は」はそこそこヒットしていましたが…。最初のヒットが鮮烈過ぎたせいもあるでしょうか、ちょっとここ2年不遇な印象もあります。
浅田美代子
昨年「赤い風船」でデビュー、今年も「しあわせの一番星」などがヒットしましたが出られず。やはり歌唱力に課題があるのでしょうか…。
夏木マリ
昨年「絹の靴下」がヒット、今年も「お手やわらかに」などがヒットしましたが届かず。それにしても1973年の紅白に出られなかった歌手、よく考えるとものすごく多いですね…。
ダ・カーポ
「結婚するって本当ですか」が大ヒットした男女デュオ。チェリッシュと被ってる、という部分はやはりあるのかもしれません。
アン・ルイス
「グッド・バイ・マイ・ラブ」が今年ヒットしました。ただ常連組と入れ替えるにはまだ支持が足りないといったところでしょうか。
伊藤咲子
デビュー曲「ひまわり娘」が話題になりましたが、現段階で桜田淳子や山口百恵が初出場ということを考えるとまだまだ時期尚早といったところでしょうか。
りりィ
「私が泣いています」が大ヒットしましたが、紅白は不出場。
荒井由実
「やさしさに包まれたなら」が収録されているLP『MISSLIM』は素晴らしい出来ですが、現段階ではまだそこまで知名度ないですよね…。
美空ひばり
事前アンケートでは大バッシングもあった前年と比較して順位は戻ったようですが、出場歌手発表前に辞退という形。前回はNETテレビで紅白の真裏23時からワンマンショーを放送しましたが…。
白組司会&出場歌手
白組司会:山川静夫
前回まで通算15度の紅白で司会を務めた宮田輝アナは、今年参議院選挙出馬のためNHK退職。後継者として白羽の矢が立ったのはやはりこの人でした。1956年入局、紅白歌合戦の初担当は第21回・客席インタビュー係として。その後第23回・第24回で総合司会、今年は『思い出のメロディー』司会も務めました。今年は宮田アナの代名詞でもある『ふるさとの歌まつり』の後継番組、『お国自慢にしひがし』の司会も担当しています。『思い出のメロディー』で佐良直美と組んでいたのは、いわば今回の紅白の前哨戦だったと言えるのかもしれません。
とにもかくにも今回初めて白組司会を担当。テンポのある温かい司会が目標、と記者会見で話していました。前任者があまりにも偉大だったので大変難しい役割ではありますが、意外と何とかなりそうな予感もします。新しい司会がどんなものになるか、ひたすら楽しみにしたいです。
春日八郎(5年ぶり16回目/第5回/1952/50)
今回は人気投票枠というものがあるそうで、そこで支持が集まったことで大ベテランが5年ぶり復帰という形になりました。ただ紅組にそれらしい復帰歌手がいないのは気になります。美空ひばり・江利チエミ・越路吹雪辺りはいずれも辞退の方向ですからね…。
三橋美智也(9年ぶり11回目/第7回/1954/44)
同じく人気投票枠。紅白は実に9年ぶり、久々の復帰です。
フランク永井(18年連続18回目/第8回/1955/42)
年齢・キャリアという面では今回必ずしもそうではないですが、連続最多出場という点では島倉千代子と同様、最長記録を更新中。
三波春夫(17年連続17回目/第9回/1957/51)
今年の大河ドラマは『勝海舟』ですが、このタイミングで彼をテーマにした長編浪曲を発表しています。
橋 幸夫(15年連続15回目/第11回/1960/31)
西郷輝彦さんが落選したので、紅白に残る御三家も遂に橋さんだけになってしまいました。
村田英雄(2年ぶり13回目/第12回/1958/45)
前回は糖尿病治療のため欠場、ただやはり白組には欠かせない存在。ベテラン復帰の流れにも乗って無事2年ぶりの紅白出場。
北島三郎(12年連続12回目/第14回/1962/35)
前回は美空ひばりに代わる大トリという重責を見事に果たしました。さすがに3年連続白組トリは難しそうですが、強い存在感で今回も白組をまとめ上げます。
菅原洋一(8年連続8回目/第18回/1958/41)
歌唱力といえばこの人、今回も安定の連続出場。
布施 明(8年連続8回目/第18回/1963/27)
「積木の部屋」がこれまでにないほどの大ヒットを記録しています。そろそろ衣装や演出よりも、持ち前の高い歌唱力がより評価されるべき時期に入ってきました。
美川憲一(7年連続7回目/第19回/1965/28)
ヒットという点では危うい部分もありますが、何とか連続出場。最近ステージ以外の衣装が妙に派手になっているのが、少し気になります。
森 進一(7年連続7回目/第19回/1966/27)
「襟裳岬」が今年大ヒット。あの吉田拓郎が提供しているという点でも大きく評価されています。歌謡大賞・レコ大の最有力候補、となると過去のキャリア含めて紅白でも白組トリ候補場合によっては大トリの可能性もあるでしょうか。
内山田洋とクール・ファイブ(4年ぶり3回目/第20回/1969/26~38)
第22回で前川清が病気欠場した代償はあまりにも大きく、「この愛に生きて」「そして、神戸」が大ヒットしたにも関わらず前回前々回も出場できませんでした。鶴岡雅義と東京ロマンチカが今回落選、それでようやくムード歌謡枠が空いたということもあるのでしょうか。待望の紅白復帰です。
にしきのあきら(5年連続5回目/第21回/1970/24)
新進気鋭のアイドルが出てきた関係で徐々に世代交代される側になってる印象もありますが、なんとか連続出場。
フォーリーブス(5年連続5回目/第21回/1968/21~25)
こちらもアイドル人気が徐々に新御三家に取られている印象もありますが、バック転するほどのダンスパフォーマンスはまだまだ後進がいません。今年は新しい歌番組『レッツゴーヤング』でもお馴染みの存在でした。
堺 正章(4年連続4回目/第22回/1965/28)
ザ・スパイダース時代に出場できなかったのはもう過去の話。今はエンターテイナーとして、紅白だけでなくテレビに欠かせない存在になっています。
五木ひろし(4年連続4回目/第22回/1965/26)
歌謡界の若きホープ、前回「夜空」でレコード大賞を獲得しましたが今年も「浜昼顔」「みれん」が大ヒットしています。
沢田研二(3年連続3回目/第23回/1967/26)
マチャアキ同様、GS時代に出られなかった紅白も今ではすっかり欠かせない存在に。
野口五郎(3年連続3回目/第23回/1971/18)
新御三家では最年少ですが、紅白出場に関して言うと2人の先輩。「甘い生活」がこれまでのシングル以上に大ヒット中。
三善英史(2年連続2回目/第24回/1972/20)
男性演歌のホープのひとり。来年の大河ドラマ『元禄太平記』出演も決まっています。
郷ひろみ(2年連続2回目/第24回/1972/19)
「花とみつばち」「よろしく哀愁」など、コンスタントにヒットを飛ばしている現在の男性アイドル第一人者。
渡 哲也(初出場/第25回/1965/33)
1965年に日活からデビュー。1971年以降は憧れの存在でもある石原裕次郎の下で活躍。今年は大河ドラマ『勝海舟』の主演に大抜擢…という矢先に病気でダウン。その中で「くちなしの花」が大ヒットしました。かつて石原裕次郎や小林旭、鶴田浩二など大ヒットしたにも関わらず紅白に出ない大物俳優も多数いましたが、ようやく体調も癒えた今NHKへのお詫びも兼ねる形で紅白出場。
中条きよし(初出場/第25回/1968/28)
1968年高波晃という芸名で歌手デビュー。その後芸名を変え全日本歌謡選手権でグランドチャンピオンになって山口洋子の力添えもあって平尾昌晃作曲で「うそ」で再デビュー…なんだか五木さんと似た経緯を辿っています。その再デビュー曲が大ヒットして紅白初出場というところまで似ています。「うそ」だけでなく「うすなさけ」「理由」も大ヒット、後が続くかどうかはまだ分からないですが…。いずれにしても文句なしの初出場と言えるでしょう。
殿さまキングス(初出場/第25回/1970/28~34)
1967年結成。元はコミックバンドでしたが、1973年に「北の恋唄」で歌謡曲に転向して大ヒット。特に同年11月発売の「なみだの操」は爆発的ヒットを記録しました。その次の「夫婦鏡」もヒットしていて、今回だけでなく次回以降の出場にも期待が持てそうです。
海援隊(初出場/第25回/1972/23~25)
1972年LP『海援隊がゆく』でデビュー。ボーカル・武田鉄矢が歌うというより語る「母に捧げるバラード」が大きな話題になりました。フォークソング中心のエレックレコードから紅白出場は、1969年の設立以来初の事例。
西城秀樹(初出場/第25回/1972/19)
1972年「恋する季節」でデビュー。昨年の時点で「情熱の嵐」「ちぎれた愛」が大ヒット、レコ大歌唱賞まで受賞したにも関わらずなぜか紅白落選。ですが今年も「薔薇の鎖」「激しい恋」「傷だらけのローラ」が大ヒット、堂々全く文句なしの紅白初出場。したがって新御三家もようやく紅白歌合戦に揃い踏みという形になります。
主な不出場歌手(白組)
水原 弘
「君こそわが命」で奇跡のカムバックから、7年連続出場を最後に再び落選。確かにヒットが出なくなり、借金の噂もまた出始めていますが、白組のまとめ役として考えると大きい存在を失ったようにも思います。
西郷輝彦
こちらも連続出場がついに10年でストップ。1970年「真夏のあらし」以降の激しいアクション路線は、そのままヒデキに引き継がれる形でしょうか。
上條恒彦
前回はヒットがなくても世界歌唱祭歌唱グランプリの評価がありました。ただ今回はそういうわけにもいかなかったようです。
ぴんから兄弟
前回出場。今年もそれなりにヒットはしているはずですが、「女のみち」の爆発的ヒットがかえって仇になっているようにも見えます。
ガロ
前回出場。やはり「学生街の喫茶店」以降の人気の落ち方が悪い意味で見逃せない形になったのでしょうか…。
鶴岡雅義と東京ロマンチカ
メインボーカルの三條正人がソロ歌手転向のためグループ脱退。フジテレビ『夜のヒットスタジオ』レギュラーも降板、落選は致し方無しでしょうか。
中村雅俊
「ふれあい」で今年7月に歌手デビューするや否や大ヒット。自身主演の民放ドラマ主題歌とは言え、話くらいはあってもいいような…。
吉田拓郎
前回同様、おそらく辞退。
かぐや姫
「神田川」で前回無理となると、それより若干ヒットが落ちる「妹」「赤ちょうちん」で出場というわけにもいかないでしょうか…。
井上陽水
ロングセラーになっているLP『氷の世界』は、後年の音楽史にも残りそうなほどの傑作ですが…。
グレープ
「精霊流し」が大ヒットしましたが、1973年10月デビューというキャリアの短さもあってか出場には至らず。
山本コータローとウィークエンド
この年「岬めぐり」が大ヒット。ソルティー・シュガーの「走れコウタロー」は結局紅白に縁がなかったですが、この曲も同様。森さんが拓郎さん作曲の「襟裳岬」を歌い、ペドロや海援隊が紅白出場を果たしたとは言え、やはり歌謡曲とフォークソングの隔たりはまだまだ大きいということでしょうか。1974年は他にもふきのとうやN.S.P.など、フォークグループの新顔が多くヒットしていますが。
フィンガー5
さすがにメインボーカルが12歳~13歳では夜9時以降の出演は厳しいですね。
講評
あらためて1974年のヒットと照らし合わせながら調べると、特に白組側に「テレビ全盛期」という時代が垣間見える選出のようにも見えます。歌謡曲とフォークソングの距離が少し縮まった一年とは言え、やはりレコード売上が高い=紅白出場という図式がフォークのジャンルで成立していない面もありますね。拓郎陽水辺りは辞退だと容易に推測できますが、グレープやウィークエンド辺りは当時オファーの話があったかどうかという点も含めて気になります。ただ当時はレコード売上よりも人気歌手アンケートの方が選出の決め手になったという話も聞きます。売上が高くても、広い世代や地域で浸透していると当時あまり看做されていなかったのかもしれません。まだテレビやラジオがメディアの中心、インターネットどころかBS・CSチャンネルさえも存在していなかった時代、個々で音楽の嗜好が大きく変わるというほどではまだありません(多少その萌芽は出てきていたとしても)。
この当時ボーダーラインの選出に関しては、有識者にご意見を伺うその名も「ご意見を伺う会」というものが存在していました(そのまんま)。そこから選ばれたのは紅組がザ・ピーナッツ、森山良子、山本リンダ。白組が村田英雄、美川憲一、にしきのあきら、三善英史。一方ボーダーラインに選ばれながら漏れたのは岸洋子、金井克子、藤圭子、水原弘、ぴんから兄弟、上條恒彦。ただこのボーダーライン、私は合田道人氏の著書で知りましたが、当時出場歌手発表と同時に新聞報道とか雑誌での掲載とかあったのでしょうか。そこもちょっと気になっています。
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