・オープニング

 2009年12月31日午後7時15分。開演を知らせる音がNHKホールに鳴り渡ります。その瞬間会場は大きな拍手に包まれます。降ろされている赤い幕の真ん中から加藤清史郎が登場。

「皆さんこんばんはー!紅白歌合戦にようこそ。今年の紅白は記念となる60回。歌手の皆さんが一生懸命心をこめて歌います。最後まで是非お楽しみください。それでは紅白歌合戦、開幕でーーす!」

 マイクを両手に持ちながら、かわいさと元気さを交えた開会宣言です。それが終わると同時に、久石譲指揮のオーケストラ(「歌の力オーケストラ」)の演奏がスタート。舞台の幕が開き、下手側から仲間由紀恵、上手側から中居正広が登場。今回のステージは中央に階段があり、その上にもステージが広がっているという二段構成。上段中央にオーケストラ、その両側に紅組・白組出場歌手が勢ぞろいしています。仲間さん、中居さん、清史郎くんの3人が揃い、「第60回NHK紅白歌合戦!」と笑顔でタイトルコール。

 今回のセットはまるでクラシックのコンサートを思わせるような、高級感あふれるゴージャスな雰囲気。過去59回の紅白歌合戦のセットとは全く違った傾向で、60回目にふさわしい重厚さに満ち溢れています。歌手やゲスト名のテロップもそれに合わせたような書体で、大きく変わっています。個人的に、何度も紅白歌合戦を見た中でここまでセットに感銘を受けたのは今回が初めてです。

 オーケストラが演奏するのは、今回の紅白歌合戦のテーマソングになっている「歌の力」栗友会合唱団の合唱もあります。出場歌手が階段から降りてメインステージに降り立ちます。仲間さん、中居さんが両組の出場歌手を次々に紹介しています。紅組歌手が手を繋ぎながら降りていくのが特徴的。紅組側の先頭はAKB48の神7)、白組側の先頭はNYC boysのフロント3人。紅組最後尾は和田アキ子倖田來未が手を繋いで登場します。少し遅れて白組のラストは森進一北島三郎の大御所2人。

 出場歌手全員登場したところで、総合司会の阿部渉が登場。まずはオープニング指揮の久石譲さんを紹介します。続いて両組の司会者を紹介。仲間さんは4回目、中居さんは6回目の司会という情報も交えています。毎年恒例、中居さんの扇子は今回両面方式で「音楽」「音我苦」「私は音楽が苦手ということでこちら(「音我苦」)でいきたいと思います。」。今年は仲間さんも対抗して、「紅組の仲間」「勝利の由紀恵」と書かれた赤い扇子を見せていました。

 今年のテーマが「歌の力∞無限大」と阿部が紹介したところで、いよいよステージが始まります。昨年同様、今年も画面の左下に歌手名、出場回数、出身地、一行紹介が書かれています。

(解説)
・前回は大橋のぞみが開会宣言を担当しましたが、この年は加藤清史郎が担当。大河ドラマ『天地人』で演じた幼年期の直江兼続役が大きな話題となりました。直後、トヨタ自動車のこども店長にCD発売・作家デビューも果たし、2009年の時の人となります。

・出場歌手入場の演出は前回・第56回(2005年)にもありましたが、舞台中央の階段を降りる形をとったのは第41回(1990年)以来19年ぶり。その後しばらくこの形が定着します。

・オープニングテーマにタイトルがつけられ、新しく書き下ろされるのもこの年が初めてでした。この「歌の力」は翌年の紅白でも各所で使用されます。

浜崎あゆみ(11年連続11回目/第50回/1998/31/福岡県出身)
「Rule」(2009/ayumi hamasaki/Miki Watanabe/初)
~60回紅白オープニングスペシャルステージ!~

 会場が暗転し、映像は逆大奥をテーマにしたPVの冒頭部分に切り替わります。映像の襖が開くと同時に画面も開き、アカペラでサビを歌いながら登場。衣装は胸元が開き、裾が短い赤い着物にエナメルパンツといういでたち。それはどことなく日本を意識して、かつ動きやすさを重視した格好です。
 ステージに向けられた照明は真っ赤、バックの映像は爆発で生じた炎、10人近くいたダンサーはバク転連発で、曲芸を見てるかのようです。サビ前の部分では1980年代の小柳ルミ子のステージのように、複数のダンサーの上に乗っての歌唱を見せています。前年に続く、というより前年を上回る大迫力のステージ。11回の出場の中でも一番の内容だったかもしれません。(3分21秒)

(解説)
・ステージに入る前の紹介テロップはこの回も継続になりました。変更箇所は写真の形状が丸から四角に変わった後、NEXT ARTISTの表記が変わったことが挙げられます。なお浜崎さんのステージに関しては、前回がTOP、今回はFIRST ARTISTという表記になっています。また曲名・歌手名・歌詞テロップなどフォントはほぼ全て、ゴシック体から明朝体メインに切り替わっています。

・この「Rule」は2009年2月に発売されたシングル曲で、映画『DRAGONBALL EVOLUTION』テーマソング。タイアップになった作品は興行収入・評判ともに散々な内容でしたが、紅白のステージが示す通り楽曲は上々の出来でした。

EXILE(5年連続5回目/第54回/2001/24~40)
「Someday」(2009/ATSUSHI/miwa furuse/初)
~テーマは”愛” ”夢” ”幸せ”~

 例年トップバッターは出場歌手全員がバックあるいはステージ脇で応援するのが恒例ですが、今年はこれだけのビッグネームであるせいかそれはなし。その代わりに、新しいメンバーも含めた14人が舞台袖に全員集合。その中から代表してATSUSHIさんとHIROさんが楽屋の雰囲気・今年の活動と来年の抱負を語って、ステージに向かいます。むろん新メンバー7人にとっては初めてとなる紅白のステージ。
 メンバーは黒ないし白のTシャツの上にコートのような物を羽織っています。バックダンサーは劇団EXILEのメンバーでしょうか、ステージだけでなくホールの通路にも溢れるほどの大人数。100人以上いそうな雰囲気です。全員白い上着を着ているのでメンバーとの判別は十分可能ですが、やはり区別できないという声もチラホラ。
 歌い終わった後に中居さんが「君良かったよ」と、目の前にいたダンサーの子に声をかけます。彼にとってはきっと一生の思い出になりそうです。なおメンバーは23時45分からTBSのCDTVスペシャルでMCを務める関係で、このステージ以外での出番はありませんでした。(3分21秒)

(解説)
・ダンサーはその後、現在のLDHに所属しているグループのメンバーになった人も多くいると思われますが、細かいデータは分かりません。10代のキッズダンサーと思われる面々も非常に目立っています。

・この年新たに加わったメンバーはSHOKICHINESMITHKENCHI(橘ケンチ)KEIJI(黒木啓司)TETSUYANAOTONAOKI(小林直己)の7名。NAOTOとNAOKIは2012年以降、三代目J Soul Brothersのメンバーとしても出場します。7人から14人に倍増して随分人数が増えたという印象でしたが、2014年には更に5人増員されます。

・「Someday」はメンバーが増えた新生EXILEの第1弾として発売された楽曲。Youtubeには現在も当時の画質のままPVがフル公開されています。いまだに360pの画質なので、あらためて高画質化して挙げ直して欲しい所でもありますが…。

・この年は11月12日に天皇陛下御即位二十年をお祝いする国民祭典で組曲「太陽の国」を献納したことでも話題になりました。翌年5月にCD化されましたが、チャートには反映されていないようです。

AKB48(2年ぶり2回目/第58回/2006/12~26)
「RIVERサプライズ!紅白Remix」
 「RIVER」(2009/秋元 康/井上ヨシマサ/初)
 「涙サプライズ!」(2009/秋元 康/井上ヨシマサ/初)
~世界に羽ばたく秋葉カルチャー!~
振付:牧野アンナ

 2番手のグループは今回こども司会に選ばれた、大橋のぞみ加藤清史郎メインの進行。メンバーを代表して16人がステージ脇に登場。マイクを持って話すのは前田敦子。彼女によると、今回はなんと72人で歌うとのこと。会場が大きくどよめいています。
 その16人での「RIVER」サビから始まります。実際この曲の選抜メンバーは16人なので、おそらくそのメンバーが立っているものと思われます。16人が「紅ー!」と叫ぶと、一斉に残り56人が制服を着て登場。16人もドレスから制服に早替わりして「涙サプライズ!」。♪Happy Birthday to You~のくだりでは、やはり映像に大きなケーキが登場します。メンバー全員で「AKB」「紅V」の人文字は、人数の多い彼女たちにしかできない芸当。ただ上からのカメラワークでは「紅」の糸へんの部分がわかりにくかったです。これは次回に向けての課題でしょうか。(2分14秒)

(解説)
・最初にステージに登場した16人はほぼ「RIVER」の選抜メンバーです。名前を挙げると前田敦子大島優子高橋みなみ篠田麻里子板野友美小嶋陽菜渡辺麻友峯岸みなみ宮澤佐江河西智美秋元才加柏木由紀宮崎美穂北原里英松井珠理奈までは同様。あと1人ですが、小野恵令奈だけ松井玲奈と交代する形になっています。えれぴょんと言われた彼女は翌年9月にグループを卒業、その後ソロ活動に入りますが2014年に引退。一方松井玲奈はグループを抜けた現在も女優として活躍中です。

・選抜に入っている松井珠理奈は当時12歳。これは第48回(1997年)で初出場したSPEED・島袋寛子の年齢を1つ下回っています。もっとも珠理奈さんは早生まれなので、中学1年生という年齢は同じですが…。

・72名の内訳はAKB48の正式メンバー42名に研究生やSDN48からのヘルプ28名、プラスSKE48からW松井の2名…だったと記憶。むろんNMB48など、他の48グループはまだまだ発足前の段階でした。当時のメンバーで2021年もグループに所属しているのは柏木由紀宮崎美穂のみ。大家志津香がまだ研究生で、横山由依がオーディションに合格して3ヶ月という段階でした。

・2年前の出場は1期~4期までで、この回では5期以降が初出場となりました。7期まではおそらくこの紅白のステージに立っているものと思われます。この年初出場と思われる主なメンバーは北原里英指原莉乃高城亜樹など。あとW松井もこの年が初出場となっています。

・オリコン週間1位を獲得するのはこの年10月の「RIVER」が初めて。前年の「大声ダイヤモンド」以降徐々に人気を拡大していった結果ですが、本格的に社会現象化するのは次の年。

・当然ながら、72人がメンバーとして紅白のステージに立つのは当時最多記録。翌年以降、それは彼女たち自身によってどんどん更新されていきます。

flumpool(初出場/第60回/2008/24~25)
「星に願いを」(2009/山村隆太/阪井一生/初)
~去年デビューの関西出身4人組~

 清史郎くんがフリップを使って曲紹介。「去年10月デビュー」「関西出身の4人組」「ライブがすごい!」と書かれています。ちなみにライブの質の高さは個人的にROCK IN JAPAN FESTIVALを見に行った時にも感じたことなので、本物です。ステージに向かう前には、山村さんが紅白初出場の知らせを聞いた時の感想を話す場面もありました。
 ”逢いにゆこう”を”逢いたくて”と歌い間違えた箇所はあったものの、初出場らしい緊張感と初々しさ、そしてボーカル山村隆太のひたむきさが前面に出ていたステージでした。ベース尼川元気の右目が隠れている髪型は少し気になりましたが、個性という面ではそれもありでしょう。アミューズの先輩ポルノグラフィティのように、今後紅白の常連になる可能性も十分秘めた内容でもあったように感じました。(2分21秒)

(解説)
・flumpoolはA-Sketch所属アーティストの第1号としてデビュー。2008年10月のメジャーデビュー曲「花になれ」はCDではなく、配信限定シングルとしてのリリースでした。au KDDI「LISMO」のキャンペーンソング、この響きもすっかり懐かしくなりましたね…。楽曲はヒットして、早くもその年のMステスーパーライブにも出演を果たします。

・A-Sketchからシングルで発売されたのは、この「星に願いを」が初めてでした。CDもヒットしていましたが、どちらかと言うとやはり着うたフルを筆頭とする配信の方が目立っていたような記憶があります。

・アミューズからはこの年16年ぶりに福山雅治が紅白出場。もちろん、Perfumeやポルノグラフィティも連続出場を果たしています。一部からは福山さんのバーター、という声もあがりましたが、実績を残して紅白出場を果たしてのは間違いないことでした(勿論事務所が最初から相当力を入れて売り出したアーティストだったのも事実ですが)。