天童よしみ(13年連続14回目/第44回/1970/55/大阪府出身)
「花筏-Hanaikada-」(2009/音羽志保/羽場仁志/初)
~母に捧げる感謝の歌~
ピアノ:島 健

 今回の歌唱曲のテーマは母と子の大きな愛。天童さんが一言その旨を話した後に、ゲスト審査員の杉山愛にコメント。現役時代は母親・芙沙子さんがコーチを務めていて、「私のテニス人生は母なくしては語れない」と話します。
 タッキー&翼にも楽曲提供したことがある羽場仁志作曲ということもあって、演歌というよりは大人のポップスという方がしっくりくる楽曲。彼女の持ち前の歌唱力でじっくり聴かせてくれたステージでした。島健が弾くピアノ以外はオーケストラの演奏も無しで、大変シンプルな編曲です。途中1番のサビで微妙に歌詞を間違える場面あり。(3分12秒)

(解説)
・杉山愛はこの年に現役引退。前年の高橋尚子同様、引退年の紅白ゲスト審査員選出でした。こういった事例は第46回(1995年)の原辰徳がいますが、2年連続となると今後もなかなか出てこないのではないかと思います。なおテニスからの選出は第41回(1990年)の松岡修造以来で、これ以降も今の所新たに務めた人物はいません。

・作曲家・羽場仁志の代表作はタッキー&翼「夢物語」「Venus」、中山美穂「愛してるっていわない!」、藤谷美和子・大内義昭「愛が生まれた日」など。演歌歌手への提供はかなり異例です。一方天童さんの側から見てもあまりないタイプの楽曲ですが、後年第70回(2019年)で歌った「大阪恋時雨」はシンガーソングライター・半崎美子のカバーでした。

・ピアニストの島健は第57回(2006年)にゴスペラーズ「ふるさと」の演奏で出演。クレジットされているのはこの2回のみですが、他の紅白にも出演している可能性はありそうです。過去に2度紅白に出場した歌手・島田歌穂の夫でもあります。

美川憲一(19年連続26回目/第19回/1965/63/長野県出身)
「さそり座の女2009」(1972/斎藤律子/中川博之/4年連続7回目)
~今年の「さそり」は”インド”!~
振付:パパイヤ鈴木、野火杏子 踊り:P’z group、CNC

 「さそり座の女」といえばこの人、というわけで桃組代表として?IKKO(3年連続)はるな愛(2年連続)が登場。いきなり「フォローもし切れないですよ」と中居。桃組応援ということですが、のっけからテンション高過ぎでおかしなことになっています(特にIKKO)。なおはるな愛はこの年15kgダイエットして、ニューハーフ世界のミスコン「ミス・インターナショナル・クイーン」で優勝。桃組も日本から世界に羽ばたく、なんてことを話していますが…。
 今回の「さそり座の女」は初っ端からインディアンテイスト、ダンサーはもちろんのこと編曲もそんな雰囲気。そこにピンクの衣装のはるな愛とIKKOも加わります。1番が終わり、間奏から「トゥース!」の声が加わって画面にオードリー春日の大アップ。しばし音楽が止まった後、上手側の階段上に表れて「皆さん、今年の桃組、本物の春日ですよ」というセリフ。
 真っ青な春日さんの顔がグルグル回る映像は、端的に言うと気持ち悪いの一言。2番では春日さんがステージの下手側へ歩く途中に「ヘッ!」、そして上段に上がって「鬼瓦!」。最後の演奏は「かーすがー!」という声も加わります。何がなんだか、サッパリよく分からないままステージは進行してそのまま終了しました。
 ラストのやりとり。美川「ねえ春日、鬼瓦ってなーに?」春日「いや、春日のすべり知らずの超面白ギャグです」IKKO・はるな「おーだまりー!」全員「鬼瓦!」…。「誰が紅白に選ばれたんですかこれは?」と、完全に中居さんは呆れた口調でツッコミを入れていました。(2分32秒)

(解説)
・年号を変えて、「さそり座の女」は「涙そうそう」に続く4年連続同曲歌唱というタイ記録になりました。なお編曲はオペラ→パラパラ→サンバ→インドという変遷になっています。

・後年、『水曜日のダウンタウン』で芸人史上一番スベった瞬間として春日さんが挙げた場面は、まさにこのステージでした。ピンクのベストを着ているというだけで桃組に参加させられる春日さんが気の毒と思ったのは、個人的な感想。

・さすがにこのステージは評判が良くなかったということでしょうか、いやそれ以前におそらくネタ切れなど総合的に評価してだとは思うのですが、美川さんの紅白出場はこの年限りでストップ。コロッケのモノマネをきっかけとした復活劇は見事でしたが、その後も衣装や演出に力を入れた結果19年連続出場。平成の紅白史には間違いなく欠かせない人だったように思います。なおIKKOも3年連続で一旦途切れますが、はるな愛は次の年も続投しました。

坂本冬美(7年連続21回目/第39回/1987/42/和歌山県出身)
「また君に恋してる」(2009/松井五郎/森 正明/初)
~ビリー・バンバンの名曲をカバー~

 こんなタイミングでゲスト審査員の勝間和代にコメント。「不況もデフレも全部吹っ飛ぶ勢いで是非このまま一年歌って頂けると、景気もよくなるんじゃないかと思います」とのこと。なお勝間先生は時々ビックリするくらい真顔になっていた場面がありました。
 今回も観客席から冬美ちゃんコールが巻き起こります。彼女の大ファンという水樹奈々も登場。2曲続けてのステージですが、次の細川さんの紹介中にイントロの演奏が始まりました。
 紅白歌合戦も21回目の出場ですが、今回初めて着物ではなく洋装で歌います。衣装は白いパンツルックに毛皮を羽織っています。演歌とはまた違った味ではありますが、聴かせるステージであることは変わらず。バックに何もないシンプルな演出も良かったです。ステージ脇の奈々さんもウットリしながら聴いていました。
 気がつけば女性演歌の常連も50歳超えが大半となり、多くいた同年代の歌手も伍代夏子と彼女だけになってしまいました。演歌だけにこだわらない活動を展開している面は非常に好感が持てます。第47回(1996年)以来トリのステージはないですが、そろそろもう一度トリを務めてほしいというのが私の思いです。(2分32秒)

(解説)
・「また君に恋してる」は2009年1月リリース、当初は「アジアの海賊」のカップリング扱いでした。中村あゆみが提供した楽曲も話題になりましたが、より評判を呼んだのは『いいちこ』のCMソングとなったこの曲でした。元々はビリー・バンバンが2007年にリリースした楽曲、冬美さん歌唱版がヒットするとともにこちらもロングセラーとなりました。

・同年のカバーアルバム『Love Songs~また君に恋してる~』もヒット、こちらは本来の購買層よりも若い世代でのヒットが目立ちました。21世紀の冬美さんを代表する楽曲で、もしかするとこの曲のヒットが無ければ現在まで連続出場することも無かったかもしれません。

・舞台袖で聴く奈々さんは元々声優ではなく演歌歌手を志望していて、特に「夜桜お七」は初めて聴いた時に強い衝撃を受けたそうです。曲紹介でも触れられていた父親から、幼少期に日々厳しいレッスンを受けていたとのこと。ちなみにその後冬美さんとは、歌番組で何度か一緒に歌う機会もあったようです。

細川たかし(3年ぶり33回目/第26回/1975/59/北海道出身)
「望郷じょんから」(1985/里村龍一/浜 圭介/9年ぶり4回目)
~全国に響け!驚異の歌声~
三味線:栗原光康社中

 デビュー35周年ということもあって、3年ぶりの復帰となった細川たかし。今回は曲順が曲順ということもあって、第46回(1995年)や第51回(2000年)と比べると少し時間に余裕がない印象を受けました。1コーラス半の構成は、初めて紅白で歌った第36回(1985年)と同様です。
 相変わらず細川たかし以外出来ないような歌唱は健在でしたが、さすがに過去3回と比べると少し落ちるかな、という印象はあり。逆に言うと過去3回があまりにも凄過ぎたというだけの話で、これでも十分に持ち味を発揮した素晴らしいステージであります。三味線はおなじみ栗原光康社中、100人以上いるように見えますが、これは間奏以降に登場した映像のもので実際は階段ステージ上に30人ほど。
 なお過去2年のこともあるのか、2006年以前の紅白で何度も見せていた欽ちゃん仕込みの笑いを取るシーンは今回なし。本番後の打ち上げも自粛したそうな。(3分15秒)

(解説)
・「望郷じょんから」は1985年日本レコード大賞最優秀歌唱賞、3年間だけ設けられた紅白の表彰では銀杯を受賞しています。第46回の大トリは5分近く歌うステージで、文字通り度肝を抜かれる内容でした。「北酒場」「矢切の渡し」「心のこり」「浪花節だよ人生は」も良いですが、細川さんの真骨頂となるとやはりこの曲だと思います。

・2年連続辞退の内訳は、2007年が出資法違反容疑したエル・アンド・ジー主催のコンサート出演絡み、2008年は暴力団のゴルフコンペ参加絡み。仮にこの2回がなければおそらく出場のはずで、第66回(2015年)まで41年連続という形になるはずでした。

大塚 愛(6年連続6回目/第55回/2003/27/大阪府出身)
「Is」(2008/愛/愛/初)
~ラブソングならこの人におまかせ!~

 楽屋ロビーからの中継。紅白応援隊の関根麻里テリー伊藤がリポーター。北島三郎の面々が揃っています。「初出場の時はどういう気持ちだったのですか」という大野くんの質問に、「ただ一生懸命歌えばいい、それだけ」と答える46回目出場のサブちゃん。勢いが大事ということも話しています。そんなサブちゃんと会うことを楽しみにしていた相葉くんは「全国の北島ファンに敬意を示して」ということで握手。
 紅白の和風をアレンジしてみました、というのが本人の弁らしいですがどう見てもそういう風には見えない衣装です。髪型は爆発ヘアー、スカートの左側にはなぜか鳥かご。一応着物を大塚愛風にアレンジしたと解釈すればいいのかもしれませんが一言で言うと、訳がわからない衣装です。ちなみにこれは、『LOVE is BEST』のジャケットそのままの衣装みたいですね。
 バックバンドも全員背中にハート型の風船をつけています。大体曲名も「Is」と書いて「イズ」と思いきや「アイズ」。何がどうなっているのかサッパリわからないステージですが、大塚愛らしいステージであることは間違いないです。彼女のアルバム曲はぶっ飛んだ曲も一定数ありますからね。そういう意味では、らしさを見せていて上出来のステージだったと言えるのでしょう。最後は「良いお年を!」の挨拶で締めました。(2分18秒)

(解説)
・この年はシングル発売が前年のアルバムからのリカット「バイバイ」のみ。ただ11月に発売されたベストアルバム『LOVE is BEST』に2曲新曲が収録されていて、その1つがこの紅白でも選曲された「Is」でした。

・もう1つの新曲はRIP SLYMEのSUとコラボした「aisu x time」。そのSUとは翌年6月に結婚、次の年の3月には女児を出産します。2018年に離婚しますが、その原因はSUさんの不倫。この騒動は彼女のみならず、RIP SLYMEの活動休止にまで発展する大問題になってしまいました。

・翌年の「I xxx」はNコン課題曲ですが、妊娠中ということもあって紅白出場という形にはならず。連続出場は6年で途切れます。歌手活動は2011年に再開。結婚前のような大ヒットではありませんが、ベテランらしいペースで地道に活動を続けています。

レミオロメン(初出場/第60回/2003/29~30/山梨県出身)
「粉雪」(2005/藤巻亮太/藤巻亮太/初)
~名曲「粉雪」が紅白に初登場!~

 初出場のレミオロメンが登場して歌前トーク。山梨県の観光大使でもある彼ら、「紅白に出ることが一番大きいのではないでしょうか」とボーカルの藤巻亮太は話します。ステージ脇に博多華丸・大吉、タカアンドトシ、チュートリアルの3組が控えていますが無視して進行。スタッフの伸ばしの指示が映ります。地元を愛しているというトーク中に存在に気づく司会2人。博多・北海道・関西を愛している3組ということで。「粉雪」をいつも歌っているタカさんが一節披露、「こなーーきじーーじい」と大ボケ。面白かったですが、変に頭に残るので視聴者には逆効果な気も…。
 藤巻さんが歌い出しからかなり緊張している様子。あまりの緊張で、ララライの後の歌詞で舌が回らなくなるハプニングも発生。ですが、生のバンド演奏と藤巻さんの歌唱は紅白ということで、いつも以上に力強い内容であったことは言うまでもありません。やや短い印象もありましたが、素晴らしいステージでした。山梨県の皆さんもきっと、大喜びだったと思います。(3分16秒)

(解説)
・山梨県出身の紅白出場歌手は田原俊彦、爆風スランプのサンプラザ中野、THE BOOMのメンバー3人など。探せば意外といます。あとは森進一が鹿児島県出身ではありますが、生まれが山梨県甲府市なのだそうです。ただ笛吹市に限定すると、レミオロメンの3人が唯一の紅白出場となるようです。

・「粉雪」は2005年11月リリースの大ヒット曲。それ以前からブレイク間近という位置づけでしたが、ドラマ『1リットルの涙』挿入歌として一気に火がつきました。以降は音楽ファン以外でも広く知られるバンドとして認知されるようになります。この年の初のベストアルバム『レミオベスト』が発売、年始にエイベックス系のOORONG RECORDSにレーベル移籍した年でもありました。

・バンド活動は2012年に活動休止、ベースの前田啓介が業界を引退して農業を営んでいるようなので、再結成される可能性は高くなさそうです。ドラムの神宮司治とボーカルの藤巻亮太は引き続き音楽活動を継続中。

・タカアンドトシは2年前におしりかじり虫のコーナーに出演して以来2回目の紅白出演。チュートリアルと博多華丸・大吉は初の紅白でした。いまや華丸・大吉はNHKの『あさイチ』メインキャスターになっているので、なんだか隔世の感もあります。

川中美幸(12年連続22回目/第32回/1973/54/大阪府出身)
「ふたり酒」(1980/たかたかし/弦 哲也/3年ぶり3回目)
~夫婦演歌の代名詞!「ふたり酒」~
写真提供:三浦惠美子

 阿部渉アナが登場して中間審査の呼びかけ。前半トリの曲紹介担当として、第41回(1990年)白組司会の西田敏行が登場。「もう一度夫の顔をよく見て、妻の顔をよく見て、仲良くしようと思っていただきたい」と夫婦愛を称える曲紹介。ちなみにここでいう夫婦は、釣りバカ日誌のみち子を指しているようです。
 赤を基調とした着物に金色の帯という衣装。川中さんの手の動きをきっかけに、会場手拍子。温かいステージです。長年寄り添った夫婦の笑顔の写真の映像が、この曲に更に説得力を持たせていました。(2分28秒)

(解説)
・「ふたり酒」は3年前トリで歌い、1981年・第32回の紅白に初出場した時にも歌われた楽曲。ちなみに西田さんも、同じ第32回に「もしもピアノが弾けたなら」で歌手として初出場を果たしています。

・みち子さんと22年連れ添ったという話もありましたが、実際の西田さんは1970年代の早い段階で結婚。放送当時で30年以上、現在も仲睦まじい夫婦生活を続けています。

・歌手・司会・応援・審査員にナレーションと史上最多のバリエーションで紅白出場を達成している西田さんですが、意外にも第41回以降は間が空いてこの年が19年ぶりの出演でした。同じNHKだと大河ドラマも常連で主役を3度務めています。来年の『鎌倉殿の13人』にも出演決定していますが、これで通算14作目の出演。そもそも第41回で務めた白組司会も、その年主演した『翔ぶが如く』繋がりでした。

森 進一(42年連続42回目/第19回/1966/62/鹿児島県出身)
「花と蝶」(1968/川内康範/彩木雅夫/41年ぶり2回目)
~紅白連続出場記録更新中!~

 明るい青にスパンコールのタキシード。幕が降りている中で歌います。紅白で歌われたのは初出場の時でもう41年も前、間奏ではその時の映像が流れました。当時もカラー放送ではありましたが、資料映像としては白黒しか残っていない時代です。
 何が凄いかといいますと、41年前とキーが全く変わってないことですね。20歳と61歳では声質も全然変わるはずで、普通少しくらいは衰えるものですが全くその様子なし。それどころか今の方が年を重ねた分、説得力があるように聴こえます。42年連続出場している凄さをまざまざと思い知らされたステージでした。新曲がヒットしなくなってここ最近は昔の曲ばかりになっていますが、ステージに関して言うと病気で倒れない限りまだまだいけそうな気がします。
 なおこの曲の作詞は川内康範。テロップだけでなく曲紹介でも作曲者とともに名前が呼び上げられました。あの騒動が解決しなかったら今回のステージもなかったんだな、としみじみ。(2分42秒)

 前半のステージ終了後に投票結果発表。総合司会の阿部アナとオードリーの2人が登場。ここでは春日さんだけでなく、若林さんの姿もあります。
 結果は68123vs115428で白組がかなり優勢。すかさず「春日の桃組入っていないんですか!」とクレームを入れる春日さんですが、4人しかいないとツッコミが入ります。というわけで、阿部アナが後半の見どころを紹介して5分間のニュース。「武田アナ頑張れ!」「馴れ馴れしいな」というオードリーのやり取りが大変秀逸。スタジオの武田真一アナも、少し笑みを浮かべていました。

(解説)
・「花と蝶」は曲紹介にもあった通り、初出場の時に歌われた楽曲。41年ぶりの歌唱は史上最長ブランク記録でしたが、後に「港町ブルース」「よこはま・たそがれ」「男の子女の子」が順番に更新していきます。

・1968年・第19回紅白歌合戦はカラー放送でしたが、当時は番組保存する余裕がありませんでした。現存している映像は当時の総合司会・宮田輝宅で録画されたもので、一度再放送されましたが相当映像が乱れている箇所もありました。紅白の保存が定例化されるのは、第23回(1972年)以降になります。

・前半終了直前に春日さんが武田アナの名前を呼び上げますが、ニュース担当のアナウンサーの名前が紅白で読み上げられるのは史上初めてのことでした。また、前半終了時に芸人ゲストが登場するのもこの時が初めてです。詳しくは紅白名言集解説・74~この後9時から後半戦をお送りします~で記事にしているので、是非そちらも参照してください。