第66回(2015年)NHK紅白歌合戦~まとめ~

 既に報道でもある通り、今回の紅白歌合戦は史上最低視聴率を記録しています。前回の紅白もまとめの記事は相当長くなりましたが、今回はさらに長くなります。一つ一つじっくり取り上げていくことにましょう。

 

・司会

 正直今回綾瀬はるかが紅組司会に決まった時は懸念しか出なかったですが、予想以上に安定した司会になっていてビックリしました。もちろん過去ものすごく上手かった紅組司会の面々と比べると、まだまだそこまで上手いという印象ではありません。ただ2回目の司会としての上達度としては前回があの調子だったので、間違いなく過去最高だったと思います。司会の間違いで笑いが起こった部分はキムタクとトークした箇所だけでした。報道されていた彼女のコメントを見ると、今回司会するにあたって相当な覚悟があったようにも感じられましたが、まさに有言実行という印象で大変素晴らしかったです。各歌手に対するリスペクトは2年前の時点で十分感じていましたので、そこは変わらず良かった点になります。
 唯一気になったとすればマイクを近づけたまま大笑いするシーンが多かったことでしょうか。彼女の明るさがもたらした面でもあるので好感は持てますが、司会としてはどうかと思う部分もあります。紅白に限らず、今後司会業をするにあたっては少し意識した方がいいかもしれません。

 井ノ原快彦は予想通りの安定っぷりで、安定しすぎてちょっと目立たなかった程でしょうか。ただ司会は本来黒子に徹する役割でもあるので、そういう意味では大変理想的な内容でした。少なくとも白組敗戦が彼の司会のせいでないことは断言したいです。またの司会も悪くなかったですが、グループ司会でなく2人で司会したことでスッキリしてると感じる部分も多くありました。
 おそらく彼は『あさイチ』司会が続く限り次回も続投でしょう。紅組司会は今年だと2017年大河主演の柴咲コウあるいは次の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の高畑充希に代わる可能性もありそうですが、しばらくはまた単独司会同士の人選で良いのではないでしょうか。

 両司会共通で感じたのは、今回ものすごく歌う場面が多かったということでしょうか。ここ5年の嵐やV6メンバーである井ノ原快彦に関しては歌手である関係上特に驚きはありませんが、歌手が本職でない綾瀬はるかが歌うだけでなく踊るシーンまで見せてくれるのは想像外でした。さすがにランニングマンはご愛嬌といったところでしたが、ディズニーのコーナーでは大変ハマっていたと思います。全員合唱など歌手が集まるステージに積極的に登場していたのも良かったです。
ここ最近の紅組司会だと松下奈緒はピアノ演奏があり、井上真央は被災地訪問に衣装まで募集していました。堀北真希も被災地を訪問しています。以前と比べて司会そのもの以外の演出にも関わることがかなり増えましたが、2年前と合わせても彼女が一番多いんじゃないかという気がします。そういう意味では次回の紅組司会も期待したくなります。

 総合司会の黒柳徹子は年も年なのでなかなか大変な部分もありましたが、やはり経験者。随所に過去5回紅組司会をやってきただけのことあると感じさせる場面がありました。美輪明宏や両組トリの曲紹介のシーンは、この人がいるかいないかで大きく変わっていたのではないかと思います。往時のように口は回らなくなってきましたがまだまだ元気な印象で、しばらくは総合司会というより顧問的な役割で紅白に関わるのもありかもしれません。

 もう一方の有働由美子も流石の安定感。ただ背中がパックリ空いたドレスは過去になく目立っていました。実を言うと今回の司会ではこの人が一番インパクト強かったかもしれません。そういえば総合司会としても単独で歌手を紹介するシーンが今まで以上に多かった気がします。さすがに第19回・第20回の宮田輝や第56回のみのもんたほどではないにしろ、かなり出ずっぱりな印象が今回あったのは確かでした。もはやNHKの顔とも言っていい方ではありますが、気がつけばもう4年連続。そろそろ替え時なのかもしれません。ちなみに総合司会の最長記録は宮本隆治の6年連続(第46回~第51回)。
なお今回はつけまつ毛がネタになりましたが、脇汗はさすがに大丈夫だったようです。それにしてもここまで色々いじられる総合司会も過去になかったような気がするのですが…。

 個人的に、今回は初めてラジオ実況を全編通して聴く形になりました。担当したのは高山哲哉アナと中川緑アナ。歌う場面は聴かせて間奏で喋るというのはやっぱり昔からのスタイルになりますね。こちらは「Summer Madness」の長い間奏で高山アナが中川アナに踊りを教授したシーン以外は至ってノーマルでした。高山アナはオンエアバトル司会時、基本的にテンション高く空回りするキャラクターのイメージでしたが、さすがに歌謡コンサートを担当する現在は落ち着いているようです。多分有働アナから総合司会を代わるとしたらこの人かなとは思っているところですが。

・出場歌手選考、企画ステージの扱い、視聴率など

 今回の企画ステージは前半がアニメ紅白、後半がディズニー、スター・ウォーズ、花は咲く全員合唱といったところでしょうか。小林幸子MISIA、あるいは正式な出場歌手ですがBUMP OF CHICKENもこの類に入れて良さそうです。
 アニメ紅白は今回の前半でトップクラスの視聴率を記録したようです。最近のアニメがその直後の『ラブライブ!』だけであとがほぼ昭和というのは若干気になりましたが、ここはやはり一番広い世代に通用するというのが大きいでしょうか。ディズニーの視聴率もいきものがかりから大きく落とすことなく推移して、そのままTOKIOに繋がっているようです。「花は咲く」はやや低下という結果でした。小林幸子はやや減、MISIAは大きく減、バンプは小さい山になっている部分のようです。

 Twitterで眺めながら通しで見ていると、今回総じて歌手力の高い人のステージが評価を得ていました。前半だと島津亜矢、後半だとSuperflyが挙げられます。ただ両組とも歌手別視聴率で見ると若干下がり気味というのは気になるところです。一方演歌はほとんどが数字を落としていて、特に前半だと藤あや子、後半だと石川さゆり五木ひろしの流れが非常に厳しいことになっていました。今回で卒業を表明している森進一も僅かながら数字を落としています。和田アキ子は次が関ジャニ∞ということもあって数字を上げているようですが、やはりこのデータを見ても常連組の風当たりが強くなるのも仕方がないという気がしてしまいます。一方史上初のメドレー4連続になった椎名林檎EXILEの時間帯はかなり視聴率を上げていて、サプライズ演出があったAKB48が歌手別最高視聴率。椎名林檎は数字自体落としてはいますが、Twitterでのステージ反響の大きさはかなりのもの。この辺りは次回以降の選曲・曲順の参考になるかもしれません。サプライズ演出はともかく、メドレーの選曲はもしかすると今後更に増える可能性がありそうです。

 今回はトリの人選で相当なバッシングがありましたが、個別の視聴率推移を見る限りそこで大きく落としたというわけではなさそうです。ただ例年トリで数字が大きく上がることが多いのも事実。さすがに第54回(2003年)のSMAPは極端としても(10%も上昇)、たとえば前回でもで2%(間でサザンを挟んでますが)、松田聖子で更に1.2%上げています。今回は終わった後のエンディングでようやく3%上がる形。これをどう捉えるかは難しいところですが、ここ数年のデータを見てもやはり本来ならその年の新曲・顔でトリを取るのが形としても綺麗と同時に数字にもしっかり表れるというのはよく分かります。個人的に言うと、選曲としては紅白で初めて聴く懐かしい曲も多かったので悪くはないのですが、やはり後半の中盤以降その割合が高過ぎる印象があったので、そこがどうしても気になる点になります。

 なおジャニーズ勢では全体的に横ばいあるいは微増という傾向が見られる中でV6はかなり数字を下げる形になりました。その一方直後のPerfumeの上昇度がかなりのものでした(こちらも次が小林幸子という要因はありそうですが)。今回は枠の多さあるいは曲順にもかなり影響したという話があるので非常にバッシングが多かったですが、仮に今の紅白からSMAPと嵐がいなくなったらどうなるかと言われると返答しようがないというのも事実。個人的にはSMAP関ジャニ∞Sexy Zone(唯一の若手なので)を残してあとはTOKIOをどう考えるかという感じでいいと思うのですが。事務所の特性を考えると必然的に白組のみになるので、余計に枠が目立ってしまうのも難点になります。

 今回本編レビューは演奏時間もあらためて計測する形にしました。おそらく計測しなくてもそう感じたとは思いますが、後半と比べて前半が全体的に短すぎます。そのため進行がものすごく慌ただしく感じてしまいました。よくよく考えるとこれは別に無くてもいいのではないか、と個人的に感じたステージもあります。となると結論はズバリ出場歌手数が多すぎるということです。さすがに放送時間はこれ以上伸ばすことが不可能で、もう少しじっくり前半のステージを作るとしたら、やはりステージ数を減らすことが大前提になるでしょう。減らすべき歌手は視聴率を見る限り分かりきってます。間違えても若手やその年ヒットした歌手ではありません。ここ数年目立ったヒットのない常連歌手です。ここ最近そういう流れは出来つつありますが、いよいよ本格的にバッサリ切ってもいい時期に来てるのではないでしょうか。

 ただそもそも紅白に限らず歌番組は視聴率が全体的に下がってます。前日の日本レコード大賞は30日放送になってから史上最低、Mステスーパーライブも2.6%減でNTVベストアーティストも1.7%減。日本有線大賞やベストヒット歌謡祭も低下傾向にあります(FNS歌謡祭だけは今年わずかにアップしましたが)。いくら大晦日という特別な日で国民行事として定着しているとは言え、いまだに39%も視聴率を取れるのは異常と言っても過言ではありません。国際的な観点から考えると、そういうのは本当に日本だけだと思います。また他の番組と比べても紅白歌合戦がもたらすヒット効果はあまりに大きく、特に”ドラゲナイ””ランニングマン”は曲がリリースした時期よりもむしろ第65回の紅白以降で耳にするようになった印象があります。スポーツ新聞も視聴率が下がった原因を色々分析しているようですが、この辺りの外部の声はあまり耳に入れなくても良いのではないでしょうか。(どうも結論ありきで文章を書いてる気がしてならないので…)

・演出

 まず今回非常に大きなトピックスとして挙げられるのが外部との連携。一つはインターネット方面・とりわけニコニコ動画との連携企画。もう一つはライブ方面・特にCOUNTDOWN JAPANとの中継になります。

 インターネット方面は既にTwitterやLINEのアカウントやスマートフォンアプリが作られていますが、今回はまず新たにInstgram、加えて初となるウラトーク配信がありました。ウラトーク配信の効果は地味に大きく、特にゲストの西川貴教が大騒ぎした場面は非常に多くキャプチャされていました。また本番披露できなかった三山ひろしのけん玉はウラトークでここぞとばかりに大披露。これも映像がなければ凄さが伝わらなかった場面なので大変良かったと思います。

 そしてやっぱりニコニコ動画とのコラボレーション。応援裏実況(ちなみにこれは裏のガキの使いでもありました)の生放送があったのもさることながら、やはり何と言っても小林幸子の特別ステージ。投稿したコメントがそのまま紅白のステージ、ましてやテレビ画像に流れるとは一年前でも想像さえ出来ませんでした。これはもう本当に小林幸子がいなければ成し得なかったことだとあらためて感じます。視聴率という点では大きく跳ね上がる要素でなかったようですが、インターネット上での反応は大変に上々。60代以上のお茶の間にとっては分かりませんが、40代以下の方々には好意的に捉えられた方が多いのではないかと感じます。先々のことを考えるとこういったインターネットとの提携は今後さらに重要性を増します。この部分との連携の発展具合も、今後の紅白の歴史を語る上で大きなトピックスになるでしょう。

 ライブ中継はもうここ数年、とりわけ福山雅治のステージで恒例になっていますが今回ついに幕張のCOUNTDOWN JAPANとの中継が実現する形になりました。WOWOWとの同時放送は前回サザンオールスターズの特別出演で実現していますが今回はこちらで2年連続となります。

 ここ数年いわゆるロキノン系・フェスでお馴染みの方々が紅白に出場することも多くなっていて、特に第64回のサカナクションなんかは分かりやすい例でした。今回の初出場歌手でもゲスの極み乙女。星野源辺りはそのイメージが強いです。所謂音楽ライター・音楽評論家方面もこれに関して言及することが多くなっています。そこで一致するのはやはり、この中継第一号がBUMP OF CHICKENであることは必然だったという意見です。これは当然私も同じ気持ちです。

 彼らはライブを本流としていてテレビ出演はほとんどない方々、こういった形で紅白初出場を果たすというのは”究極”という単語が最も当てはまります。それと同時に45年前から始まるフォークソング方面と歌謡曲界との隔離。フォークソング方面はそのままロック方面に繋がりますが…、とりわけエピック勢台頭が目立った1980年代後半やビーイング全盛期の1990年代前半は紅白との隔たりが非常に大きかった部分もあります。CDJも紅白とのアンチテーゼという意味合いが、意識していなくとも多少は存在していたかもしれません。それが今回こういった中継という形で結ばれたのは、単なるライブ中継以上に今後の紅白・音楽界に大きな意味をもたらすのではないかと思わざるを得ません。場合によっては紅白側だと出場歌手選考に大きく影響を与えそうで、CDJ側だと今回のバンプの時間帯が各日程のヘッドライナーばりに大きな試金石として意味を持つ可能性も出てきます。

 ただNHKホールで紅白を見る観覧者という立場で見ると、中継は映像で見るという形になるのでどうしても盛り下がってしまうのは否定できない事実。またずっと紅白歌合戦を毎年見ている立場からすると”紅白らしくない”という意見も必然的に出てきます。そしてライブ中継は必然的に生演奏・フルコーラスなのでどうしてもNHKホールで歌う出場歌手との格差が大きくなります。このバランスをどうするかというのは今後の大きな課題になるとともに、演出面で最も難しい部分になるのではないかとも感じます。

 個人的に終盤に中継を入れなかったのは大きなプラス要素だったと思っています。やはり紅白の終盤・とりわけトリは格別な意味合いを持つのでそこの雰囲気は今回同様、次回も継続して欲しいと感じているところです。ただ人選と選曲に関してはまた別問題なのでその点は留意して欲しいですが。

 映像演出ではPerfumeのステージも今回大きな実験として重要な役割になっていました。前回までののステージもそうですが、これに関してはいかに最新の技術を取り入れるかの見本市の様相になっています。大変素晴らしいことではありますが個人的に気になったのは基礎の部分。マイクオンオフを含めた音響が今回ちょっとイマイチでした。時間制限が厳しい中で行われるリハーサル、非常に大変だとは思いますが、音楽番組である以上音の部分は本当に基礎の基礎の基礎になる部分。そこは一番入念にしっかりとやって頂きたいと切に願います。

 あとは今回踊りを入れる場面、アイドルが後ろで何かする場面は例年以上に前半に固まってた印象がありました。なんだか毎回ノルマのようにステージに入れられてる印象があるので、そこはもう無理しなくてもいいんじゃないかなとも個人的には思うのですが、どうでしょうか。確かにそれなりにステージは賑やかになるので自分としてはそのままでも別にいいのですが、それで視聴率が大きく上がるという要素にはならないようにも感じるので…。

・会場

 NHKホールの改修は2020年以降を予定しているようです。おそらく第70回まではNHKホールだと思うのですが、その後はどうするのでしょうか。日本武道館を初めとしたアリーナ会場、あるいは思い切って大阪か福岡と言った地方で紅白歌合戦を開催するのも面白いかなと思い始めていますが…。いずれにしても前回まとめで書いた通りホールで開催するには手狭な印象も出てきているので、先のことをそろそろ考えた方がいい段階ではあると思います。

 

・審査方法

 今回は全体的にかなり総投票数が減りましたが、これは単純に嵐担当の方々が純減した分なのかでしょうかそれとも視聴率低下がそのまま表れた形なのでしょうか。ちょっと気になる点になります。さすがに今回の流れで白組勝利だと根本的に審査方法を変えるか勝敗をつけるのをやめるか考えないといけない段階に入るかもしれないとは思いましたが、無事紅組勝利でホッとしました。
そうなると次回もこの方式続行か、あるいはニコ動裏実況の票数を加える形になるでしょうか。インターネットの連携で最もいじりやすい部分は間違いなくここだと思うので、この辺りは柔軟に考えてもいいと思います。ゲスト審査員のボールだけで決めるのも個人的には味があって好きですが、今はそういう時代でもないですからね…。参考までにニコ動裏実況の投票結果は前半終了・後半終了ともに紅組がリードでした。

 

・ウラトークチャンネル

 笑いあり涙ありで実に盛り沢山な内容でした。バナナマンもそうですが、個人的には久保田祐佳アナに特にアッパレをあげたいです。2年連続ですが、そろそろミス・ウラトークと名付けたくなるくらいのレベルに達してきました。勿論この企画は続投希望。おそらくそういう運びになるのは間違いないでしょう。

 

・最後に

 今回のテーマは”ザッツ日本!ザッツ紅白!”でしたが、裏テーマはまさしく「実験」だったと思います。外部の連携もそうですが、なにげにジャニーズの選出関係も個人的にはそれだったと思ってるほどです。それくらいにチャレンジングな試みが目立つ紅白でした。その結果が最低視聴率だったとも言えるので、おそらく内部のスタッフも今回の数字にはそこまで悲観してないように思います。ただ楽観視してこの調子で、というわけには関東だけでなく全国的に視聴率が下がった以上そうはいかないはず(仙台だけ視聴率が上がったのは羽生くん効果でしょうか)。やはりここは基本通り、マンネリと言われても良いものはそのまま引き続き取り入れて評判の良くない部分はしっかりテコ入れする。そこをしっかりやって頂いて次回に活かして欲しいと思います。

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