訃報が目立ちます、とはここ10年くらい毎年ずっと思っていることですが、今年は歌謡界で活躍された作曲家の訃報記事を例年以上によく見た気がします。そこで今年、紅白歌合戦に提供実績のある作詞家・作曲家を偲ぶというわけではありませんが、データとしてまとめてみました。
菊池俊輔(1931.11.1~2021.4.24)
映画・テレビ音楽の大家として多数の作品の音楽を担当。『Gメン ’75』『暴れん坊将軍』『仮面ライダー』『ドラえもん』など、この人が作った曲を一度も聴いたことのない人は日本でほとんどいないと思われます。
歌謡曲畑の人ではないので紅白歌合戦とは縁が薄く、日本レコード大賞でも特別功労賞に選ばれていませんが、企画コーナーで以下の曲が紅白で披露されています。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第43回 (1992年) |
タイガーマスク | 東京放送児童合唱団 | 「テレビ40年 思い出の主役たち」コーナーで歌唱 |
第43回 (1992年) |
レッツゴー!! ライダーキック | 少年隊 | 「テレビ40年 思い出の主役たち」コーナーで歌唱 |
第47回 (1996年) |
ドラえもんのうた | 複数の出場歌手 | 藤子・F・不二雄先生追悼企画で歌唱 |
第53回 (2002年) |
レッツゴー!! ライダーキック | w-inds. | 「憧れのTVヒーロー&ヒロイン50年ショー」コーナーで歌唱 |
伊藤アキラ(1940.8.12~2021.5.15)
昭和50年代のヒット曲を多く作詞、その他『ひらけ!ポンキッキ』や『みんなのうた』にCMソングも多く手掛けました。CMは「オー・モーレツ!」「日立の樹」「青雲のうた」「出前一丁」などを手掛けています。
紅白歌合戦は1979年~1981年で6曲歌唱、あとは企画コーナーで歌われる例もありました。紅白未歌唱曲では石野真子「春ラ!ラ!ラ!」、松本ちえこ「恋人試験」、フォーリーブス「ブルドッグ」、うる星やつらの「ラムのラブソング」などがあります。ちなみに伊藤さんも生前の功績が十分名高いにも関わらず、レコ大特別功労賞は無しでした。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第30回 (1979年) |
たとえば…たとえば | 渡辺真知子 | 紅白未歌唱の「かもめが翔んだ日」も作詞 |
第30回 (1979年) |
青春の一冊 | 野口五郎 | |
第30回 (1979年) |
ビューティフル・ネーム | ゴダイゴ | 奈良橋陽子と共作、『みんなのうた』放送曲 第50回(1999年)でも歌唱 |
第31回 (1980年) |
魅惑・シェイプアップ | 内山田洋と クール・ファイブ |
奈良橋陽子と共作、タケカワユキヒデが作曲 |
第31回 (1980年) |
ポートピア | ゴダイゴ | 奈良橋陽子と共作 |
第32回 (1981年) |
裏切り小僧 | 野口五郎 | |
第57回 (2006年) |
南の島のハメハメハ大王 | 天童よしみ 松浦亜弥 |
「みんなのうた45年!キッズショー」コーナーで歌唱 |
小林亜星(1932.8.11~2021.5.30)
「北の宿から」の大ヒットが名高いですが、最も得意としていたのはアニメとCM。「日立の樹」「パッとさいでりあ」など、15日前に亡くなった伊藤アキラ氏のコンビも多くありました。
紅白で歌われていない楽曲はCMが「チェルシーの唄」「ファミリーマートのテーマ」「ベンザエース」、アニメが「ガッチャマンの歌」「コン・バトラーVのテーマ」「にんげんっていいな」、それ以外の楽曲は「野に咲く花のように」「地平を駈ける獅子を見た」「ピンポンパン体操」「あわてんぼうのサンタクロース」などがあります。紅白歌唱曲は意外と少なく3曲、あとは企画でアニソンが歌われる事例がありました。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第23回 (1972年) |
昭和放浪記 | 水前寺清子 | |
第26回 (1975年) |
北の宿から | 都はるみ | 第27回(1976年)と2年連続で歌唱 第18回(1976年)日本レコード大賞受賞曲、同年紅白では大トリ |
第29回 (1978年) |
なんで女に | 都はるみ | |
第43回 (1992年) |
魔法使いサリー | 東京放送児童合唱団 | 「テレビ40年 思い出の主役たち」コーナーで歌唱 |
第43回 (1992年) |
ひみつのアッコちゃん | 東京放送児童合唱団 | 「テレビ40年 思い出の主役たち」コーナーで歌唱 |
第53回 (2002年) |
ひみつのアッコちゃん | 安倍なつみ | 「憧れのTVヒーロー&ヒロイン50年ショー」コーナーで歌唱 |
第61回 (2010年) |
ユカイツーカイ怪物くん | 大野 智(怪物くん)、 上島竜兵、八嶋智人 |
「キャラクター紅白歌合戦」コーナーで歌唱 |
小倉めぐみ(~2021.9.14)
紅白で歌われた楽曲は1曲のみですが、それ以外も南野陽子「はいからさんが通る」「楽園のDoor」にSMAP「君は君だよ」「たぶんオーライ」などをヒットさせています。南野さんと6人時代のSMAPについて語る際には、一番振り返られるべき作詞家ではないでしょうか。なお生年月日は非公表ですが、記事では61歳と報道されています。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第45回 (1994年) |
がんばりましょう | SMAP | |
第46回 (1995年) |
がんばりましょう | SMAP | メドレー「胸さわぎ’96」の1曲として披露 |
桜井 順(1934~2021.9.25)
CMソングで数多くの実績を残した作曲家です。「キッコーマンの唄」「Suica」辺りが一番有名でしょうか。
紅白では1995年に「酒尽尽」が五木ひろしによって歌われています。あとは野坂昭如や加藤登紀子、長谷川きよしが歌う曲としてお馴染みの「黒の舟唄」も桜井さんの作品です。ちなみに作詞の際は別のペンネーム、能吉利人名義でした。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第46回 (1995年) |
酒尽尽 | 五木ひろし | 作詞は能吉利人名義 |
すぎやまこういち(1931.4.11~2021.9.30)
偉大な作曲家であるとともに、フジテレビのディレクターとして音楽番組の礎も作り上げた人物です。1980年代には『ドラゴンクエスト』を担当、ゲーム音楽でも世界に広く知られる存在になりました。「サロンパス」「ハウスバーモントカレー」などのCMソングも担当、東京競馬場や中山競馬場のファンファーレもすぎやま氏の作品です。
多くの楽曲を手掛けていますが、紅白歌唱曲は6曲で意外と少なめ。1960年代後半の発表曲が多くを占めています。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第17回 (1966年) |
ローマの雨 | ザ・ピーナッツ | |
第18回 (1967年) |
恋のバカンス | ザ・ピーナッツ | |
第24回 (1973年) |
学生街の喫茶店 | ガロ | すぎやま氏本人がゲスト指揮者として登場 |
第40回 (1989年) |
ヒット・メドレー | ザ・タイガース | 「花の首飾り」「君だけに愛を」を披露 これ以外にも大半のヒット曲を提供 |
第53回 (2002年) |
亜麻色の髪の乙女 | 島谷ひとみ | 1968年のヒット曲をリバイバルヒットさせたもの 第56回(2005年)でも歌唱 |
里村龍一(1949.2.20~2021.10.5)
演歌を中心に楽曲提供、紅白歌合戦では13曲歌われています。「望郷」「酒」をテーマにした楽曲を得意にしていました。ヒット曲が多いにも関わらずレコ大特別功労賞受賞は無し、もう少し広く評価されてもいいように思うのですが…。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第32回 (1981年) |
望郷酒場 | 千 昌夫 | |
第34回 (1983年) |
酒とふたりづれ | 新沼謙治 | |
第36回 (1985年) |
望郷じょんから | 細川たかし | 紅白で通算4度歌唱、第46回(1995年)では大トリ 第18回(1985年)日本作詩大賞受賞曲 |
第36回 (1985年) |
夢飾り | 島倉千代子 | |
第37回 (1986年) |
望郷旅鴉 | 千 昌夫 | |
第38回 (1987年) |
夢暦 | 細川たかし | |
第40回 (1989年) |
北の鴎唄 | 鳥羽一郎 | |
第42回 (1991年) |
流恋草 | 香西かおり | |
第49回 (1998年) |
冬鴎 | 吉 幾三 | |
第50回 (1999年) |
望郷十年 | 香西かおり | |
第51回 (2000年) |
みれん酒 | 石原詢子 | |
第52回 (2001年) |
志摩半島 | 鳥羽一郎 | |
第54回 (2003年) |
ふたり傘 | 石原詢子 |
川口 真(1937.11.5~2021.10.20)
演歌ともポップスともまた違う、大人の歌謡曲と言えばこの人の右に出る者はいないと言える存在でした。紅白でも16曲歌われていますが、名曲が多いにも関わらず繰り返し歌われる機会が一度もなかったのがあまりにも惜しいです。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第20回 (1969年) |
人形の家 | 弘田三枝子 | |
第21回 (1970年) |
ロダンの肖像 | 弘田三枝子 | |
第21回 (1970年) |
真夏のあらし | 西郷輝彦 | 第12回(1970年)日本レコード大賞作曲賞 |
第21回 (1970年) |
手紙 | 由紀さおり | |
第24回 (1973年) |
ジェット最終便 | 朱里エイコ | |
第24回 (1973年) |
若いふたりに何が起る | フォーリーブス | |
第24回 (1973年) |
他人の関係 | 金井克子 | |
第25回 (1974年) |
積木の部屋 | 布施 明 | |
第25回 (1974年) |
かなしみ模様 | ちあきなおみ | |
第27回 (1976年) |
嫁に来ないか | 新沼謙治 | |
第28回 (1977年) |
旅愁~斑鳩にて~ | 布施 明 | |
第28回 (1977年) |
東京物語 | 森 進一 | |
第29回 (1978年) |
コーラス・ガール | 和田アキ子 | |
第29回 (1978年) |
トーキョー・バビロン | 由紀さおり | |
第31回 (1980年) |
サンタマリアの祈り | 西城秀樹 | |
第32回 (1981年) |
たそがれラブコール | 小柳ルミ子 |
喜多條忠(1947.10.24~2021.11.22)
フォークから演歌まで、昭和から令和まで長く幅広く活躍した作詞家です。里村さんもそうですが、70代は演歌だとまだまだこれからの活躍が期待できる年代ではないかと思います。
紅白歌唱曲は15曲。未歌唱曲のヒットは「ハロー・グッバイ」「赤ちょうちん」「アン・ドゥ・トロワ」「からたちの小径」「いつか街で会ったなら」などがあります。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第27回 (1976年) |
苺の季節 | 堺 正章 | |
第27回 (1976年) |
メランコリー | 梓みちよ | |
第27回 (1976年) |
時には一人で | いしだあゆみ | |
第28回 (1977年) |
風の駅 | 野口五郎 | |
第28回 (1977年) |
やさしい悪魔 | キャンディーズ | |
第28回 (1977年) |
港・坂道・異人館 | いしだあゆみ | |
第29回 (1978年) |
さよなら宗谷 | 春日八郎 | |
第30回 (1979年) |
大阪ものがたり | 角川 博 | |
第33回 (1982年) |
みだれ髪 | 小柳ルミ子 | |
第43回 (1992年) |
神田川 | 南こうせつ、かぐや姫 | 1973年の大ヒット曲 第43回は南こうせつ、第50回(1999年)はかぐや姫のステージとして披露 |
第44回 (1993年) |
妹 | 南こうせつ | 1974年のヒット曲 |
第59回 (2008年) |
凍て鶴 | 五木ひろし | 第60回(2009年)まで2年連続の歌唱 |
第66回 (2015年) |
スポットライト | 山内惠介 | |
第70回 (2019年) |
望郷山河 | 三山ひろし | |
第71回 (2020年) |
北のおんな町 | 三山ひろし |
新井 満(1946.5.7~2021.12.3)
作家として名高いですが、「千の風になって」の作曲はこの人です。また第39回(1988年)では特別審査員として登場しました。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第57回 (2006年) |
千の風になって | 秋川雅史 | 第59回(2008年)まで3年連続で歌唱 |
第60回 (2009年) |
万葉恋歌 あぁ、君待つと | 小林幸子 |
鈴木 淳(1934.2.7~2021.12.9)
1960年代までは妻である有馬三恵子とのコンビで主に和製ポップスを、彼女との離婚後1970年代中盤以降は現在の妻・悠木圭子とのコンビで女性演歌を多く手掛けました。その点では歌謡界で稀有な存在とも言える作曲家です。
該当回 | 楽曲 | 歌手 | 備考 |
第18回 (1967年) |
小指の想い出 | 伊東ゆかり | 当時の妻・有馬三恵子の作詞 |
第19回 (1968年) |
月夜と舟と恋 | 梓みちよ | 当時の妻・有馬三恵子の作詞 |
第20回 (1969年) |
初恋のひと | 小川知子 | 当時の妻・有馬三恵子の作詞 |
第21回 (1970年) |
思いがけない別れ | 小川知子 | |
第21回 (1970年) |
四つのお願い | ちあきなおみ | |
第22回 (1971年) |
私という女 | ちあきなおみ | |
第24回 (1973年) |
なみだ恋 | 八代亜紀 | 妻・悠木圭子の作詞 第51回(2000年)でも歌唱 |
第26回 (1975年) |
ともしび | 八代亜紀 | 妻・悠木圭子の作詞 |
第32回 (1974年) |
なみだの宿 | 石川さゆり | |
第37回 (1986年) |
港町純情 | 八代亜紀 | |
第45回 (1994年) |
女…ひとり旅 | 田川寿美 | 妻・悠木圭子の作詞 |
第46回 (1995年) |
みれん海峡 | 田川寿美 | 妻・悠木圭子の作詞 |
第49回 (1998年) |
哀愁港 | 田川寿美 | 妻・悠木圭子の作詞 |
第49回 (1998年) |
浮雲 | 香西かおり | 妻・悠木圭子の作詞 |
第52回 (2001年) |
夢の涯て~子午線の夢~ | 小林幸子 | |
第53回 (2002年) |
おまえと生きる | 山本譲二 | 妻・悠木圭子の作詞 |
第54回 (2003年) |
逢えて…横浜 | 五木ひろし | 妻・悠木圭子の作詞 |
あらためて、偉大な故人の方々の冥福を心より申し上げます。ありがとうございました。
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