さあ、若さには若さで、白組のトップバッターは少年隊。オイ、張り切って行こうぜ!紅白初出場、少年隊、仮面ライダーです!(第37回・加山雄三)
— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) November 19, 2021
1985年の12月12日、この日に少年隊は「仮面舞踏会」でレコードデビューしました。その時点でコンサートの実績や『夜のヒットスタジオ』出演もあって既に人気は高く、オリジナルの楽曲でデビューとなると瞬く間に大ヒット。オリコンシングルチャート初登場1位、『ザ・ベストテン』でも勿論1位獲得。日本レコード大賞他の最優秀新人賞総ナメ、もちろんこの年の紅白歌合戦も堂々の初出場でした。白組トップバッター、初出場として華々しくステージに登場するというタイミングで紅白史に残る事件が起こります。
ハプニングの背景
いまだにネタになる伝説的ハプニングなので、近年でも東山さんがバラエティ番組で話しています。それによると当日の衣装が原因だったようです。
当日は間奏で上着とズボンを脱いで早替え演出をするステージでしたが、早替え後の衣装は生地に白い骨のような柄が描かれた物でした。錦織さんの衣装は赤ですが、植草さんと東山さんの衣装は黒。この衣装で楽屋リハーサルをしていた時に訪れた先輩の近藤真彦が、それを見て一言。
「仮面ライダーみたいだなぁ」
もちろん一言一句正確ではありませんが、確かにマッチさんはこういう事を本番前に言ったらしいです。実際に本番のステージを見ても、仮面ライダーに登場するショッカーと形容するのが一番分かりやすい格好でした。そしてその傍らにいたと言われるのが、曲紹介を担当する白組チームリーダー・加山雄三…。チームリーダーという肩書ですが実質的には司会で、紅白に関して言うとこの年が初担当。かなりの緊張で間違えそうだと言っていたら本当に間違えたという、本人の後日談もあります。
当日のステージ
紅組初出場の荻野目洋子が「ダンシング・ヒーロー」でバシッと決めた後、すぐに少年隊の曲紹介に入ります。イントロが流れる間に「仮面ライダーです!」、全く前触れもなく飛び出した曲名間違いに、当時のお茶の間はどう反応したのでしょうか。大笑いした人よりも、「えっ、今もしかして仮面ライダーって言った?」という驚きの方が強かったかもしれません。実はこのとき聞き逃した人も意外に多かったのではないかと思います。一番最初は暗転状態だったので、引きのショットで映る周りにいた出場歌手の表情は分からず、観客の笑い声も聴こえません(マイクオフにしてた可能性が高いです)。
ドライアイス噴射とともに会場が明るくなって冒頭サビ、3人のショットが映る間に東山さんのズボンだけ先に脱げていることがこの後の引きの絵で確認できます。これは1コーラス後の間奏中に脱ぐ段取りでしたが、結果的に言うと装着していたファスナーが少し緩かったのかもしれません。後年の番組で東山さんはステージ終了後に悔しくて号泣したと話していますが、これは若大将やマッチのせいではなく演出上でこういった失敗があったことが最も大きな理由ではないかと思われます。
とは言え初出場を飾るステージとしてはやはり素晴らしく、ラスト3人が助走をつけてバク宙を披露するシーンでは会場から歓声と共にどよめきが起こりました。特に東山さんは私が推定する限り1メートル超の驚異的な高さです。後年の出場歌手果てはチアリーディングのダンサーなどを含めても、文句無しに紅白史上トップクラスのアクロバティックなシーンでした。
本番中にどんどん問題が大きくなる例の場面
「仮面ライダー」というまさかの間違いに驚愕した視聴者もおそらく多かったのでしょう、NHKには問い合わせの電話が殺到しました(おそらく)。それ以前に言った本人もビックリしたのでしょうか、申し訳無さもあったのでしょうか。次に白組で歌う新沼謙治を曲紹介する前にこんな一幕。
加山「いやー、千田さん、僕がちょっと勢い良すぎました、どうもすみませんでした」
千田「どうも失礼いたしました。少年隊は「仮面舞踏会」でございました、失礼いたしました」
(第37回・加山雄三、千田正穂)— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) October 19, 2021
爽やかにミスを認める若大将は好感を持てましたが、当時の視聴者はもしかするとここで「何かあった?」と認識した人も多いかもしれません。そしてとどめは、この年だけ導入された全国の一般審査員。番組中盤で、「紅白どちらが今頑張ってると思います?」とインタビューされた広島の青年の一言。
両方ともどっこいどっこいだと思いますけど、加山雄三さんの仮面ライダーは点が高いと思います。(第37回・広島の一般審査員)
— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) November 18, 2021
ここで完全に視聴者が、「加山さんが「仮面ライダー」って言ったんだな…」と認識したものと思われます。あとは放送終了後、元旦のスポーツ新聞から週刊誌に至るまで記事に載るだけ。この年の紅白は他にも重大なハプニングがいくつかありましたが、やはり放送終了後の話題は「仮面ライダー」一色ではなかったかと思われます。
後年の紅白でもネタに…
翌1987年、この年の白組司会も若大将でした。少年隊も引き続き大ヒットして「君だけに」で出場しましたが、この時の曲紹介は以下の通り。
さあ、続いては少年隊です。少年隊を紹介する時はちょっと緊張しますね、ハハハハハ。
ここ2, 3年、日本でもすごいミュージカルブームですけれども、その中で日本のミュージカルをと、頑張っているのが少年隊です。彼らには本物の光があります。少年隊、「君だけに」!(第38回・加山雄三)— 昭和の紅白名言集 (@kouhakumeigen1) February 10, 2021
詳しくは紅白名言集解説18で一度書いているので、そちらをご覧ください。
さらに1992年、第43回で少年隊が、いやスタッフが一丸となってネタにしているとしか思えない場面がありました。
(ショーコーナー・「レッツゴー!ライダーキック」を歌う直前に)
加山さん見てますか?♪せまる~ショッカー~(第43回・錦織一清/少年隊)— 平成の紅白名言集 (@kouhakumeigen2) October 20, 2021
何年かに1回は必ずやっているアニメ・特撮メインの企画コーナーですが、これが最初に行われたのは第43回、1992年でした。仮面ライダーの「レッツゴー!ライダーキック」を歌うのも、仮面ライダー自体が紅白に登場するのもこの時が初めてです。ここで少年隊を起用するのは、最初から狙った人選としか言いようがありません。錦織さんの咄嗟に出てきた一言は、おそらくファンだけでなくハプニングを知る視聴者は大笑いだったと思われます。ちなみにこの年の若大将は紅白不参加でした。
そして近年では、第70回(2019年)に特別出演として「浅草キッド」を披露するビートたけしが表彰状芸で披露。仮面ライダーと間違えたくだりに、総合司会の内村光良が「もういいじゃないですか!」とツッコミを入れていました(本編レビューはこちら)。
おわりに
いかがでしたでしょうか。紅白史に残るハプニングですが、当の若大将は現在でも反省はしつつもネタにすることを全く拒否していません。公式の紅白ヒストリーでさえもこのハプニングを紹介しているくらいです。少年隊の方も、特にジャニー喜多川社長は「これで有名になったよ」と逆に感謝するという具合、東山さんも今は良い思い出として語っています。
少年隊の評価は近年高まっている傾向にあり、Twitterでも多くの根強いファンがいらっしゃいます。本日各界のファンや識者が彼らについて語る『令和の少年隊論』という単行本が発売開始されました。興味ある人は是非手にとって、読んでみてはいかがでしょうか。
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