第72回(2021年)NHK紅白歌合戦~その1~

 あけましておめでとうございます。2022年もよろしくお願いします。

 さてフォーマットは変わりましたが、今年も年始に大晦日放送されたばかりの紅白歌合戦本編をレビューします。NHKプラスで1月7日まで見ることが出来るので、そちらを見ながら、8日以降はアーカイブスとして当記事を是非楽しんでご覧ください。

 東京国際フォーラムの開催が決定した瞬間から、「初めて」の紅白開催という結果となりましたが、2021年の紅白歌合戦は「初」の出来事が例年以上に多くなりました。今回の本編レビューでは、例年以上に「初」というキーワードにこだわって書きたいと思います。

オープニング

 今回は紅白歌合戦は史上初、そして有楽町では49年ぶりとなる東京国際フォーラムからの開催。オープニングは渋谷…ではなく有楽町の空撮から始まります。ヘリコプターからの撮影で紅白が始まるのは第59回(2008年)以来、13年ぶりです。

 楽屋から今回の司会・川口春奈和久田麻由子アナが登場。紅組白組総合の区分け無しということでテロップが虹色の柄になり、デザインも変わっています。テーマに合わせてカラフルな衣装とのことですが、川口さんの服装は薄めの黄色、和久田アナは花柄とは言えややシックな装い。なお前回同様今回もFASHIONSNAP.COMさんが紅白の衣装を特集していますので、勝手ながらTwitterでの紹介文を随所で引用する形とさせて頂きます。

 もう1人の大泉洋は本番が始まったというのに衣装を決められないようで、楽屋から出て来ません。川口さんがドアの向こうから催促。「去年は白い服着てれば良かったんだけども」とボヤく大泉さん、やっとのことで登場した衣装は赤紫を基調とした内容。衣装を褒め合った後に、「司会でもカラーを出していきましょうね」とお互い決意表明。オープニング映像に切り替わります。

 

 映像担当は東京パラリンピック開会式ディレクターの牧野惇、音楽担当はCMソングメインで活動する作曲家・上水樽力。様々な色の煙が生き物や建物や音符になり、それらと一体になったダンサーがダイナミックに踊り出すという内容です。音楽ではベートーヴェンの第九の節が入りますが、これは過去の紅白でも多々あるアレンジなので決して珍しいことではありません。

 そのまま今回のメイン映像に切り替わり、スクリーンにそれが映った状態で司会者3人が高らかに開会宣言。金色の題字に副題は虹色でCÓLORFULの表示、そして両側にテレビ映像を映す大きなモニターがあります。この大型モニターはNHKホールだと設置が難しいようで、つまり言うと紅白初ということになります。

 いつもならここで出場歌手全員集合になるところですが、今回はすぐさま最初の曲のイントロが流れます。放送開始時間から僅か2分30秒、黎明期の1950年代前半になるとさすがに不明ですが、おそらく大晦日に放送されるようになってからは放送開始から1曲目まで史上最短のオープニングではないかと思われます。

解説

・紅組・白組・総合と区分けされていた司会ですが、この年からそういった区別が無くなりました。一応第56回(2005年)に担当した4名も発表時は区分け無しでしたが、仲間由紀恵が紅組担当、山本耕史が白組担当という具合に明確化されています。

・オープニング映像は放送から2年近く経った現在もNHKの公式YouTubeで見ることが出来ます。平成以降の紅白歌合戦オープニングはいずれも凝った内容ですが、公式でしっかり動画を残しているのは今回が唯一です。

・昭和期のオープニングは非常に段取りが多く、トップバッターまで時間を要しました。年代ごとにピックアップすると第14回(1963年)で8分・第24回(1973年)で10分・第34回(1983年)で11分・第43回(1992年)で5分・第52回(2001年)で3分…という具合です。平成以降はかなり短くなりましたが、それでも第72回ほどすぐに始まる紅白歌合戦は他にありません。

 

紅1(全体1):LiSA(3年連続3回目)

・2010年デビュー、2011年ソロデビュー 第70回(2019年)初出場
・1987年6月24日生 岐阜県関市出身
・楽曲:「明け星」(2021/10/18 配信)
  詞・曲:梶浦由記
・歌唱中テロップ:テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編OPテーマ
・演奏時間:2分58秒

 まずはステージ全体をカラフルな花で埋め尽くしているセットが目をひきます。このアレンジを担当したのはフラワーアーティストの東信メインセットに花があしらわれた例も史上初ですが、常設でなければ一番古い時代だと東京宝塚劇場の第22回(1971年)で導入されたことはあります。

 『鬼滅の刃』タイアップが3年連続で続きますが、和服をイメージしたような衣装も3年連続です。ダイナミックな楽曲に帯の結び目を前にする着こなしなのであまりそれらしくは見えないですが、「和」をイメージした内容のステージがすっかり板についてきました。前半の歌声に少し力が入り過ぎているように聴こえるのは、それだけ紅白歌合戦の舞台でアドレナリンが高まっているということでもあります。第72回紅白歌合戦の幕開けを飾るに相応しい、素晴らしいステージでした。

 進行はおそらく数秒押している様子です。アウトロが終わらないうちに、川口さんの「ありがとうございました!」の声が入りました。

解説

LiSAは『鬼滅の刃』タイアップで3年連続出演ですが、初出場以来同じシリーズのタイアップ曲を歌った例は他にありません。そもそもNHKで放送されている作品を除くと、3年連続で同作品がピックアップされること自体が珍しいことです。

・『鬼滅の刃』シリーズの放送は続きますが、この大晦日時点で放送されている遊郭編の主題歌担当はAimerでした。「残響散歌」が「明け星」「炎」のごとく大ヒットしてそのまま紅白にも出演、入れ替わるようにLiSAの出場は3年でストップします。

・アニメ関連のタイアップが多い彼女ですが、この年辺りからドラマ・CM・スポーツ関連など多岐化します。2023年は映画スパイダーマンシリーズの日本語吹き替え版主題歌「REALiZE」を担当、鬼滅の刃タイアップほどでないとしても高い人気は変わりありません。

 

白1(全体2):郷ひろみ(11年連続34回目)

・1972年デビュー 第24回(1973年)初出場
・1955年10月18日生 福岡県出身
・楽曲:「2億4千万の瞳 -エキゾチック・ジャパン-」(1984/2/25 シングル)…2年ぶり7回目
  詞:売野雅勇 曲:井上大輔
  踊り:United with X 振付:黒須洋嗣
・歌唱中テロップ:デビュー50周年!会場をひとつに
・演奏時間:2分40秒

 早速ガラス棟からの中継、アクロバティックなダンサーがパフォーマンスで郷さんを出迎えます。真っ白な衣装を身につけた郷さんは早くもジャケットプレイ、そのままホール内を駆け抜けます。前回は無観客と筒美京平氏追悼でそういった場面はありませんでしたが、今回は第69回・第70回の演出をそのまま踏襲する形になっています。

 ペンライトを持つ観客は大喜び、マスクはしていますが歓声は自然に挙がります。席はやはり全席詰める形ではなく、ある程度間隔を空けている様子です。当然ですがホールが違うので椅子の色も赤ではなくグレー、それだけで今回はこれまでと一味違う紅白歌合戦であることが分かります。

 第66回以来6年ぶりに観客席設置となったゲスト審査員席ですが、6人全てと腕でタッチするパフォーマンス。1階席中段に設置されるのは史上初、ただ第18回(1967年)では2階席に設けられたこともあるので紅白史上一番遠い位置というわけではありません。

 ダンサーを客席に残して、出場歌手が集まる舞台上に郷さんが駆け足で合流します。前回には見られなかった紙吹雪や紙テープ噴射演出も華々しく入りました。7回目の紅白歌唱になりましたが、何度見ても鉄板で盛り上がるステージです。早くも大泉さんが「ブラボー!」と叫ぶ展開、これからのステージへの期待が高まります。

 なお編曲は村田陽一が担当、今回もまた新たなアレンジになっていました。何回も歌ってはいますが細かい編曲は毎回変わっているので、紅白好きとしてはその違いを感じるのも1つの楽しみ方です。

解説

・NHKホールでは第69回・第70回とロビーから会場に移動する演出が取り入れられていますが、筒美京平メドレーを挟んでこの年も冒頭だけとは言え同様の演出でした。いつの間にかすっかり、紅白名物になりつつあります。

・この年も夏頃までは緊急事態宣言がたびたび出される状況でしたが、12月頃になると規制緩和の方向に動いていました。一定の間隔ごとに着席する光景もまた、2021年を象徴しています。

・ゲスト審査員席はステージ上でも前列でもない1階席中段、NHKホールの紅白では考えられない配置でした。この年はNHKホール改修工事のため東京国際フォーラムホールAから生中継、他の年と異なる場面が随所で登場します。

 

ゲスト審査員紹介他

 あらためて視聴者とホールの観客に向けて3人の司会者が自己紹介。司会者を区分けしないという旨と、今回の番組テーマ「COLORFUL」を説明します。前回の白組司会・大泉さんは例の如くとある方に「洋ちゃん負けたじゃない」「洋ちゃんのせいでしょ」と言われたことをモノマネで表現しますが、その元ネタの方は舞台上にいない様子です。ただ今回は区分けがないので、「気兼ねなく紅組も全力で応援して頂けますから」と和久田アナがしっかり説明。

 今回は国際フォーラム以外でも様々な場所から中継があるということで、大泉さんが渋谷・NHKにいるPerfumeNiziUを呼びかけます。スタジオなので「随分殺風景なところにいるけど大丈夫?」とツッコミますが、ここはあ~ちゃん「なんてこと言うんですか!ゴリゴリ紅白の仕様でやってますんで!」と返します。NiziUMAKOさんとともに、最新技術とスペシャルな仕掛けを駆使したステージを展開すると説明。

 中継中に和久田アナが移動して、ゲスト審査員を紹介。今回は名前の下に一言テロップが書いてあります。審査員の細かい業績については既にこの記事で記したので、ここではテロップとやり取りだけ紹介します。そういえば一人ずつしっかり本番で触れるのは、第68回以来4年ぶりです。

 いつかYOASOBIに自分の作品のテーマ曲を書いてほしいというテロップが表示された三谷幸喜は、自ら審査委員長と名乗ります。大泉さんにたしなめられますが、今度は審査副委員長を自称し始めました。「長くなりますこの方」と大泉さんに言われたら終わりです。すぐさま次の方を紹介。

 清原果耶上白石萌音とはプライベートでも仲良し。こちらは三谷さんみたいにボケることは当然なく、「今日は楽しみです」とかわいらしくコメント。続く坂口健太郎「#俺たちの菅波」SNSで大人気!、これがそのまま和久田アナにも紹介されました。

 石川佳純楽しみにしている歌手 あいみょん、これは近年のゲスト審査員でも多くあるタイプのテロップです。谷真海招致から8年 東京パラリンピックに出場でノーマル。ラストは小池栄子大河ドラマで大泉の妻・北条政子を演じるとの紹介。ただやはりここは元バラエティータレント、「どうも審査委員長の小池栄子です」としっかり被せました。大泉さんが北条政子に扮した小池さんをフリップで紹介、「歴史上の北条政子に似てますよね」「歴史顔です」と絶賛。騒がないように三谷さんと席が離れていると小池さん自ら説明、これについては「一緒に座るといいことねぇからあんた方」としっかりボヤキが入りました。

 さらに和久田アナが審査方法を説明、BS4K・8K・ラジオ中継でも楽しめると説明。ただ恒例のラジオ中継担当者のショットは今回全くありませんでした。佐藤俊吉アナと浅野里香アナが担当していることは、顔写真つきのテロップでしっかり説明しています。

解説

PerfumeNiziUがNHKスタジオから一緒に登場しますが、この2組は大の仲良し。正確に言うとあ~ちゃんが相当なNiziUのファンで、2020年12月にはEテレ『沼にハマってきいてみた』の特集にファン代表として登場。現在もツアーがあるたび必ず足を運んでいるそうです。

・現在の紅白歌合戦に審査委員長の肩書はありませんが、第55回(2004年)まではNHK番組制作局長がその役割を担っていました。審査員紹介では一番最後に軽く名前だけ紹介される形で、番組内でコメントを求められることはありませんでした。

・ゲスト審査員6名は、近年どころか歴代の紅白歌合戦でも稀に見る少なさです。なお著名人が審査員という形で出演するようになったのは、第5回(1954年)が初めてです。

 

白2(全体3):DISH//(初出場)

・2011年結成、2012年デビュー
・23歳~26歳・4人組 東京都、北海道出身
・楽曲:「猫」(2017/8/16 シングル「僕たちがやりました」)
  詞・曲:あいみょん
・歌前テロップ:北村 ミニチュア・シュナウザーを2匹飼う「犬派」
・歌唱中テロップ:初出場!サブスクで大ヒット
・演奏時間:2分9秒

 DISH//の4人とともに、楽曲を提供したあいみょんも登場。ストリーミング4億再生の実績がアナウンスされます。北村匠海の「めっちゃ緊張してます」とコメントする姿が初々しいです。舞台袖に移動してあいみょんさんは「気がついたら猫になっていました」と曲名についてコメント。見守る立場であるこちらも緊張している様子です。2曲続けてのステージ、ただ歌前テロップの一言紹介が単なるトリビアになっているのは気になります。

 北村さんのアカペラサビ歌唱からスタート。俳優としても歴代トップクラスの美声が会場に響き渡ります。普段テレビで歌う時とは構成がかなり異なりますが、オープニングをこれで飾るのは上出来でした。熱の入った素晴らしいステージでしたが、演奏時間は2分10秒・1コーラスちょっとという構成は、大ヒット曲としては初出場という点を差し引いても扱いがもう少し…という気もします。「打上花火」でDAOKOが1年遅れで紅白出場した際は早い出番で1分56秒という極めて短い時間でしたが、正直申し上げるとこういう部分まで共通して欲しくはなかったです。

 

解説

DISH//ももいろクローバーZなどを擁するスターダストプロモーション所属、元々は事務所内ユニット・EBiDANのメンバーでした。ここから超特急、M!LK、SUPER★DRAGONなどがデビューして一定の人気を得ていますが、紅白出場が実現したのはDISH//が初めてです。

・「猫」は2017年発表の曲ですが、大ヒットしたのは2020年3月にTHE FIRST TAKEで北村匠海が歌った動画が公開されてからでした。ただ元々のシングル「僕たちがやりました」も、実は同名タイトルのドラマ主題歌として当時ヒットしています。

あいみょんが「猫」を提供した時期は「君はロックを聴かない」が発表された直後、FMラジオでパワープッシュとなり知名度が上がり始めた頃でした。

 

紅2(全体4):NiziU(2年連続2回目)

・2020年結成、デビュー 第71回(2020年)初出場
・16歳~20歳、9人組
・楽曲:「Take a picture」(2021/3/29 配信)
  詞:J.Y. Park “The Asiansoul” / Sim Eunjee / Tim Tan / Ciara Muscat / Mayu Wakisaka
  曲:J.Y. Park “The Asiansoul” / Trippy / Sim Eunjee / Tim Tan / Ciara Muscat
・歌前テロップ1:全員好きなもの2位 フルーツタルト 1位 夜中に食べるフライドポテト
・歌唱中テロップ:”渋谷”の街からパフォーマンス
・演奏時間:2分3秒
・会場:渋谷・NHKスタジオ

 オープニングで自ら曲紹介するのはアヤカ。今回の楽曲ではソロパートが非常に少ないため、代わりにここでメインを張る形になりました。360度の振付でサビを歌った後は小柄なリマ、茶髪ロングのマヤ、黒髪センター分けのリオミイヒ、アメリカ生まれのニナ…とソロパートが続きます。リーダーのマコがウェーブ、金髪がリク。ラップパートはリママユカ、直後のCメロはミイヒニナが担当しています。

 移動量の多い立ち位置に手脚の動きは間違いなく絶品、楽曲も見どころ満載で素晴らしい内容、最後の記念撮影みたいなショットもバッチリ決まりました。クールからカラフルまでを表現したような映像も曲に合っていてとても良いです。ただ構成はフルコーラスで3分の短さが2分に短縮されていました。前回初出場がフルコーラスの3分台だったので、若手ということを差し引いても扱いが随分悪くなっています。どうしたものでしょうか。

解説

NiziUの曲は概ね短く、2分台~3分台の曲が大多数を占めます。4分台の曲は2023年現在、バラードの「Blue Moon」のみ。5分台の曲が多かった1990年代とは隔世の感、むしろ1970年代以前に近い状況です。

・この年の代表曲は「Take a picture」「Poppin’ Shakin’」、年末番組は11月リリースの1stアルバム『U』収録の「Chopstick」が多くパフォーマンスされました。

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