アイドルとパフォーマーの境目とは…乃木坂46の一連報道について

 ネット上の噂だけでなく、週刊文春の報道→活動自粛という形で完全に明るみに出た形となった乃木坂46の新センター問題。これについては、考えさせられた部分が非常に多くありました。

攻めた人選・攻めた楽曲

 とにかく今回のシングル「Actually…」は、「攻め」を強く意識した作品です。

 新5期生センター抜擢もそうですが、楽曲もこれまでのシングル表題曲とは全く異なる内容です(細かくはチャートイン時に書く予定ですが)。そうした理由は明白で、昨年の数字的な結果が振るわなかったからです。CD売上はミーグリもあるので大きく下がらないとしても、再生数ランキングを見れば2021年の楽曲があまり伸びていないことがよく分かると思います。3期や4期をセンターにして世代交代を図った一年ですが、内容はともかく結果だけを見ると成功したとは言えない部分があります。5期生の加入を契機に思い切ったことをやりたいという判断は当然で、それ自体は責められることではありません。

 新メンバーのセンター抜擢は珍しいことではなく、むしろ乃木坂46にとっては恒例行事です。「バレッタ」(2期・堀未央奈)、「逃げ水」(3期・大園桃子、与田祐希)、「夜明けまで強がらなくてもいい」(4期・遠藤さくら)という形で過去にもありました。ただいずれもオーディション合格から半年~1年近くの間を空けています。5期生の合格発表は2月1日、元々の予定が前年12月だったとしても、今回の抜擢は最短記録です。YouTubeのお披露目PVは各々100万前後の再生数、反響や報道の扱いはこれまでの加入メンバーと比べても大きい印象がありました。

 また、個人的には「インフルエンサー」「シンクロニシティ」などで既に十二分の結果を残していると思いますが、「恋するフォーチュンクッキー」「サイレントマジョリティー」ばりの楽曲が欲しいとは以前から言われていたようです。それを何としてでも作りたい、という意識も今回の作品に繋がったような気がします(もっとも、それを狙うと9割は失敗する印象が個人的にはあります)。

 新センターのパフォーマンスについては「平手友梨奈の幻影を見てる」という評もあります。これについては正直申し上げると分かりません。ただ当時の欅坂46表題曲の再生数はランキングを見る限り、同時期の乃木坂46より概ね多めです。パッと見て影のある人物であることは何となく共通しているかもしれない、と思いますが…。

報道の原因となった騒ぎについて

 正直加入前の行動については今まで通り不問で良く、今後も余程のことが無い限りこの方針でいくはずですが、結果的に言えば「余程のことが起きた」というのが現状だと思います。

 デビュー前のSNSと言われたTwitterでの書き込みは、確かにこれまでのアイドルとは全く異なる人物像でした。”全く異なる””他にいない””過去にない”というのは世間的な大ヒットに繋がる重要なキーワードで、オーディションで100%の魅力を出せた&事前調査無しとしたら確かに選ばれてもおかしくありません。もしかすると、これ自体が事前調査した結果選ぶ決め手になったのかもしれないと個人的には思うくらいでした。まだ10代であるということを考えると変わることは十分に可能で、この過去だけをもって不採用にするのはいささか違うのではないかと考えます。

 もっともアイドルファンにとっては目を覆いたくなるような光景であることも確かで、これを見て応援を辞めるという人も一定数出ることは免れないと思われます。特に小中学生には絶対に見せたくない物で、ファミリー的な需要がこれをきっかけに大きく減るとしたら、今後の乃木坂46にとって危惧すべきことでもあります。

 今回いったん活動自粛に至った判断は、騒ぎが鎮静するまでの時間稼ぎと彼女を含めた5期生へ「メンバーとして活動するに至って」の研修を強化する意味合いが強いと個人的には考えました。それと同時に、運営にとっては失敗を認めた形でもあるように思います。騒ぎになって本人に危害が及びかねない状況に陥ることは、運営として一番やってはいけないことです。これは今後の活動にも大いなる反省点・ヒアリハットの一つとして業界内で共有される事案になりそうです。

さて、表題についてですが…

 今回一番気になったのは、パフォーマンスについてプライベートや人物像をどこまで持ち込むべきかという部分です。

 メンバーの情報に興味のない、多くある楽曲の中からたまたま1つを選ぶという観点で考えると、正直内容が良ければそれで問題ないと考えます。どんなに共感できない人格だとしても、それに触れることが無ければ全く関係ありません。

 一方、優れた人格がそのまま優れたパフォーマンスに繋がるケースも多くあります。これはアイドルに限った話ではなく、パフォーマンスどころかあらゆる仕事に共通している事項です。とは言え全員が全員そうでないことも確かです。

 既に大きく報道されたスキャンダルを背後に抱えた彼女については、今後人によって見方が大きく異なるのではないかと思われます。どうしてもあの報道がチラついて正当な目で見られない、という人は間違いなく多いと思われます。ただそれを凌駕するパフォーマンス、他の人が持っていない魅力をアピールすることが出来れば、そういったマイナスな印象を持つ人は徐々に少なくなっていくはずです。

 アイドルに関しては活動の特性上、メンバーのパーソナルな部分が純粋なミュージシャンと比べて前に出がちな傾向がどうしてもあります。また乃木坂46は日本を代表するトップアイドル・清純性が特にファンから求められがちなグループなのでなおさら難しい部分が存在しています。これが楽曲やパフォーマンスを形成する上で、魅力になると同時に制約が生じる部分もあるのですが…。個人的にはその制約が様々な面で「足枷」になっている印象もあるので、そこを少しずつ外していくのも一つの手ではないかと思われます。ある意味では今回の抜擢が制約を外した部分かもしれないですが、「少しずつ」ではなく「突然」だったからついていけないファンが続出したように見えます。

残された新4期生と5期生は…

 また乃木坂46には、固定化されている選抜とアンダーの問題が長年顕在しています。

 選抜自体は握手会→ミーグリの結果に準拠しているので、それをもって人選することに異論は全くありません。ただどうしても人気メンバーは自然と集中するもので、新しいメンバーがそこに食い込むのは以前と比べても難しい状況になっています。同じスタートラインだった1期生と比べて後から入った人はどうしてもアピールしにくい状況になるので、『乃木坂工事中』辺りを見るとそれが顕著に表れる面があります(内容はそうならないように相当頑張ってる方だと思いますが、そこに出るメンバーも最近は入れ替わり少なく…)。だからこそ4期生メインの番組を作った、とも言えますが。あとは”選抜メンバーの後ろの方”と”アンダーで目立つ”のとではどちらがいいのか、という部分も議論のしどころです。

 最近は選抜メンバーでなくてもミュージカルなど個々の活躍は増えていて、ほとんど選抜に選ばれない2期生の山崎怜奈はむしろ他の選抜よりもメディア出演が多いくらいです。1期・2期の卒業が増えた分現在は入れ替わりでチャンスは増えていますが、20代後半のメンバーが少なくなった今年は多少卒業が少なくなると予測することも出来ます。魅力あるメンバーに力を入れることは全く問題ないですが、スタートラインが同じメンバーに関しては出来る限りある時期まで平等にチャンスを与えて欲しいと思っています。

乃木坂46の将来

 おそらくメンバーの入れ替えを続けながら、モーニング娘。やAKB48のようにずっと続くグループになると思います。ただ何かしらの原因で大きく人気が下がる場面は必ず起きます(もしかすると今回がそれに当たるのかもしれないですが)。またプロデューサーの秋元康も今年で64歳、そろそろ新しいムーブメントを起こすには難しい年齢になりつつあります。48グループや他の坂道グループも同様ですが、彼の存在無しで続けられるかどうかが今後のポイントではないかと思われます。

 正直、今回の抜擢を聞いた時は「さらに高い人気を得るか」か「大きく人気を落とすか」のギャンブルに出たと感じました。ただ現状の様子だと後者になりそうな可能性が高く、かなり心配です。とは言え一応の結果はまずCD売上や再生数の伸びを見て判断する必要はありますが…。もっとも乃木坂46は結成から10年、これくらいの活動期間になると本来人気が下がる方が自然です。少なくとも人気低下にファンが悩んでいた様子はあまり無く、そもそも本来悩むべき事柄ではありません。

 ファンに対してはそれぞれの考えがあるので、私からどうするべきかと書くのは越権行為というものです。それぞれ感じた通りに行動すればいいと思います。ただ当事者を含めたメンバーや直接関係ない人を傷つけるような行為は、SNSも含めて慎むべきではないでしょうか。私から言えるのは、それだけです。

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