今年デビュー50周年を迎えたアリスは、33年ぶりの新曲発表もあった1年でした。11月には有明アリーナでのワンマンライブも控えています。
1970年代のヒット期は紅白に出場していませんが、谷村新司と堀内孝雄は1980年代後半以降、ソロ歌手として何度も紅白で歌っています。今回は谷村さんと堀内さんの2人をデータ&エピソード編として特集、次回以降それぞれのステージレビューを書いていくこととします。
アリス(谷村新司・堀内孝雄)の紅白歌合戦エピソード
1970年代後半は紅白出場無し
「今はもうだれも」「遠くで汽笛を聞きながら」「冬の稲妻」「チャンピオン」「秋止符」…。数多くのヒット曲を世に送り出したアリスですが、その時期の紅白出場は一度もありません。デビュー時にNHKのオーディションに落ちたことが理由だと語っていたそうですが、ツアー中心のスケジュールによる部分も大きかったように思えます。なおテレビ出演は積極的ではないと言え拒否組ではなく、例えば1978年は『夜のヒットスタジオ』に3度出演、『ザ・ベストテン』も毎週ではないものの可能な限り出演はしていました。
アリス時代の楽曲は、第47回(1996年)で堀内孝雄が「遠くで汽笛を聞きながら」を歌った時が最初でした。谷村新司も第49回(1998年)で「チャンピオン」を、当時のツアーバンドアレンジで歌っています。完全再始動に合わせて第51回(2000年)に晴れて初出場、その後第56回・第60回と計3度出演する形になっています。
谷村新司~紅白初出場から数年はVIPに近い扱い
谷村新司がソロで紅白歌合戦に初出場したのは第38回(1987年)、奇しくもアリス1度目の再始動の年でした。アリス時代だけでなくソロでもオファーを断り続けてようやく受諾してもらえたという経緯もあって、NHK側も「昴~すばる~」をフルコーラス・トリ前に歌ってもらうという最大限の配慮がなされました。初出場でトリ前は第19回(1968年)の森進一以来19年ぶり、その後も単体では第67回(2016年)の宇多田ヒカルと第72回(2021年)の布袋寅泰のみ。それだけ丁重に扱われたということです。
その後も4年連続トリ前・フルコーラス、第42回(1991年)ではついに大トリ歌唱となりました。その後はトリ前固定という曲順でなくなりますがほとんどの年で終盤の歌唱、白組歌手の中でも特に重きを置かれる形となります。
堀内孝雄~裏番組主題歌から常連へ
一方堀内孝雄は、谷村さんから1年遅れの第39回(1988年)に「ガキの頃のように」で初出場となります。
演歌とは異なる大人の歌謡曲路線として大ヒットした最初の曲は「愛しき日々」、これは1986年の12月30日・31日に日本テレビで放送された大型時代劇『白虎隊』の主題歌でした。1980年代後半は連続して紅白歌合戦の視聴率が大きく低下した時期ですが、日本テレビはこの時代劇で多くの視聴者を紅白から奪い取っています。初年度となる前年の『忠臣蔵』が15.3%、この『白虎隊』が17.2%。大晦日の紅白裏でこれだけの視聴率を記録するのは、過去にはほぼあり得ないことでした。
「ガキの頃のように」は藤田まこと主演の人気シリーズ『はぐれ刑事純情派』主題歌第1弾、紅白でその年発表の楽曲として歌われたのは全てこのタイアップでした。なお日本テレビの年末時代劇は1993年まで続きましたが、「愛しき日々」は『源義経』(「恋文」が主題歌)が裏で組まれた第42回(1991年)で初歌唱となっています。
ただ大枠で言うとやはりポップスではなく演歌になるようで、曲順などは谷村さんのようなVIP扱いではありませんでした。第45回(1994年)では早くも前半5番手という曲順、終盤で谷村さんより後に歌ったのも河島英五を追悼した「酒と泪と男と女」の第52回(2001年)のみとなっています。演歌も含めると特に1990年代は北島三郎や五木ひろしなどの大御所と同等あるいは高いくらいのCD売上でしたが、曲順や1コーラス半の多い構成はほとんどの年でそういったデータが反映されたないような状況でした。
堀内孝雄~トレードマークの「サンキュー」
厳密に言うと演歌とは異なる「大人のニューミュージック」と言われた堀内さんですが、もう一つ外せないのはやはり歌い終わりの”サンキュー”でしょうか。
紅白初出場の時は「ありがとうございましたー!」で締めましたが、早くも2回目の第40回で「サンキュー!」と高らかに挨拶する形になっています。いつからこれが恒例行事になったのかは不明ですが、何度も紅白出場を重ねるうちに曲紹介のネタにまでなりました。第48回(1997年)では、その挨拶の指導が歌前のやり取りになっています。
ちなみに谷村さんは曲中に「ヘーイ!」「カモーン!」と口走ることが多く、第46回(1995年)の「君のそばにいる」や第49回(1998年)の「チャンピオン」などで連呼する様子が映っています。2名ともよくものまねタレントのネタにされていますが、それだけ特徴的な歌手であったと言える証でしょう。
谷村新司の紅白データ~16回分のまとめ
出場回 年齢 | 歌唱曲 | 作詞者 作曲者 | 発売日 | 曲順 | 主なデータ | 他の発売曲 |
第38回 (1987年) 39歳 | 昴~すばる~ | 谷村新司 谷村新司 | 1980/4/1 | 白組トリ前 | 1980年オリコン年間12位 | ・今のままでいい |
第39回 (1988年) 40歳 | 群青 | 谷村新司 谷村新司 | 1981/7/5 | 白組トリ前 | 1981年オリコン年間77位 | ・Far away ・英雄 |
第40回 (1989年) 41歳 | 陽はまた昇る | 谷村新司 谷村新司 | 1979/6/5 | 白組トリ前 | 1979年オリコン年間89位 | ・青い薔薇 -BLUE ROSES- ・男と女に戻る時 |
第41回 (1990年) 42歳 | いい日旅立ち | 谷村新司 谷村新司 | (1978/11/21) | 白組トリ前 | 1979年オリコン年間20位 (山口百恵による歌唱) | ・都に雨の降るごとく ・DREAMS COME TRUE |
第42回 (1991年) 43歳 | 昴~すばる~ | 谷村新司 谷村新司 | (2回目) | 大トリ | ・夏の二週間 ・君を忘れない | |
第43回 (1992年) 44歳 | 三都物語 | 多夢星人 谷村新司 | 1992/6/25 | 白組後半15番手/19組中 | 1992年オリコン年間190位 | ・サライ |
第44回 (1993年) 45歳 | 階-きざはし- | 谷村新司 谷村新司 | 1993/7/25 | 白組トリ2つ前 | 1993年オリコン年間236位 | ・ラストニュース -THE MANのテーマ- |
第45回 (1994年) 46歳 | 昴~すばる~ | 谷村新司 谷村新司 | (3回目) | 白組トリ2つ前 | ・アゲインスト | |
第46回 (1995年) 47歳 | 君のそばにいる | 谷村新司 谷村新司 | 1995/11/20 | 白組後半3番手/15組中 | ・メシアふたたび | |
第47回 (1996年) 48歳 | 愛に帰りたい | 谷村新司 谷村新司 | 1996/10/18 | 白組トリ3つ前 | ||
第48回 (1997年) 49歳 | 櫻守 | 谷村新司 谷村新司 | 1997/8/6 | 白組後半11番手/15組中 | オリコン週間最高86位 | |
第49回 (1998年) 50歳 | チャンピオン | 谷村新司 谷村新司 | (1978/9/5) | 白組後半10番手/15組中 | 1979年オリコン年間8位 | ・心の駅 |
第50回 (1999年) 51歳 | 昴~すばる~ | 谷村新司 谷村新司 | (4回目) | 白組トリ2つ前 | ・AURA | |
第52回 (2001年) 53歳 | 陽はまた昇る | 谷村新司 谷村新司 | (2回目) | 白組後半9番手/14組中 | ||
第53回 (2002年) 54歳 | 昴~すばる~ | 谷村新司 谷村新司 | (5回目) | 白組後半10番手/14組中 | ||
第54回 (2003年) 55歳 | いい日旅立ち・西へ | 谷村新司 谷村新司 | (2003/10/29) | 白組前半12番手/15組中 | オリコン週間最高4位 (鬼束ちひろによる歌唱) |
堀内孝雄の紅白データ~17回分のまとめ
出場回 年齢 | 歌唱曲 | 作詞者 作曲者 | 発売日 | 曲順 | 主なデータ | 主な受賞 | 他の発売曲 |
第39回 (1988年) 39歳 | ガキの頃のように | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1988/5/25 | 白組7番手/21組中 | 1988年オリコン年間91位 | ・日本レコード大賞作詞賞 | |
第40回 (1989年) 40歳 | 冗談じゃねえ | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1989/5/25 | 白組後半9番手/20組中 | 1989年オリコン年間184位 | ・北斗を仰ぎみれば | |
第41回 (1990年) 41歳 | 恋唄綴り | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1990/4/25 | 白組後半7番手/20組中 | 1990年オリコン年間20位 | ・日本レコード大賞受賞 ・日本歌謡大賞受賞 ・日本有線大賞受賞 | ・愛さずにいられない ・川は泣いている |
第42回 (1991年) 42歳 | 愛しき日々 | 小椋 佳 堀内孝雄 | 1986/10/25 | 白組後半10番手/18組中 | 1987年オリコン年間27位 | ・青春でそうろう ・さよならだけの人生に | |
第43回 (1992年) 43歳 | 都会の天使たち | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1992/3/11 | 白組後半10番手/19組中 | 1992年オリコン年間104位 | ・日本レコード大賞ゴールドディスク賞 ・日本有線大賞有線音楽優秀賞 | ・恋文 |
第44回 (1993年) 44歳 | 影法師 | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1993/4/25 | 白組後半10番手/18組中 | 1993年オリコン年間104位 | ・日本歌謡大賞受賞 | ・波の調べに |
第45回 (1994年) 45歳 | 夢の道草 | たきのえいじ 堀内孝雄 | 1994/3/25 | 白組前半5番手/10組中 | 1994年オリコン年間152位 | ||
第46回 (1995年) 46歳 | 東京発 | たきのえいじ 堀内孝雄 | 1995/3/10 | 白組前半3番手/10組中 | 1995年オリコン年間430位 | ・夢酔枕 | |
第47回 (1996年) 47歳 | 遠くで汽笛を聞きながら | 谷村新司 堀内孝雄 | (1976/9/20) | 白組後半11番手/15組中 | オリコン週間最高51位 | ・酔いれんぼ | |
第48回 (1997年) 48歳 | 愛しき日々 | 小椋 佳 堀内孝雄 | (2回目) | 白組前半6番手/10組中 | ・愛が見えますか ・坂道 | ||
第49回 (1998年) 49歳 | 竹とんぼ | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1998/3/18 | 白組後半5番手/15組中 | 1998年オリコン年間174位 | ・カラスの女房 | |
第50回 (1999年) 50歳 | 続・竹とんぼ-青春のしっぽ- | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 1999/3/20 | 白組前半9番手/13組中 | 1999年オリコン年間280位 | ||
第52回 (2001年) 52歳 | 酒と泪と男と女 | 河島英五 河島英五 | (1976/6/25) | 白組後半トリ3つ前 | 1977年オリコン年間43位 (河島英五による歌唱) | ・時代屋の恋 | |
第53回 (2002年) 53歳 | かくれんぼ | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 2002/3/20 | 白組前半5番手/13組中 | 2002年オリコン年間407位 | ・灯 | |
第54回 (2003年) 54歳 | 河 | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 2003/3/19 | 白組前半10番手/15組中 | 2003年オリコン年間307位 | ||
第55回 (2004年) 55歳 | カラスの女房 | 荒木とよひさ 堀内孝雄 | 2004/4/28 | 白組前半6番手/13組中 | オリコン週間最高89位 | ||
第57回 (2006年) 57歳 | 愛しき日々 | 小椋 佳 堀内孝雄 | (3回目) | 白組前半8番手/14組中 | ・不忍の恋 |
アリスの紅白データ~3回分のまとめ
出場回 | タイトル | 歌唱曲 | 発売日 | 曲順 | 主なデータ |
第51回 (2000年) | アリス・ミレニアム・スペシャル | 冬の稲妻 ジョニーの子守唄 チャンピオン | 1977/10/5 1978/6/20 1978/12/5 | 白組後半7番手/15組中 | 1978年オリコン年間16位 1978年オリコン年間18位 1979年オリコン年間8位 |
第56回 (2005年) | アリスプレミアム2005 | 狂った果実 遠くで汽笛を聞きながら | 1980/7/5 1976/9/20 | 白組後半9番手/14組中 | 1980年オリコン年間38位 オリコン週間最高51位 |
第60回 (2009年) | チャンピオン | (左に同じ) | (2回目) | 白組後半6番手/14組中 |
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